表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/170

64.発覚


8月に入ってから一気に気温も上がり夏らしさも全開といった様子で、今日も今日とて太陽が燦燦とアスファルトを照らしている。さっきテレビでアナウンサーがラニーニャ現象のせいでこれからどんどん気温が上がるとか言っていた。



「あっついなぁ~...」


この暑さのせいで3年使ったクーラーも壊れてしまって物置から引っ張ってきた扇風機を使っているけどやはりパワーが足りていない。滴る汗をシャツの袖で拭いながら若干冷たい机に顔を引っ付ける。今日はエリや他の友達も予定があるらしいし午前中に適当に宿題を済ませたらやることもなくなってしまった。



「よし...」


こういうときこそライバーさんの配信を見て気を紛らわそう。最初はリッキーと話せる話題が欲しくて見始めたVライバーだけど近頃はどっぷりハマってしまってフロムヒアのライバーさん以外にもいろいろな人を回ってみている。


今日は...そうだ。この前アリス様が参加していた無人島人狼で気になっていた人物がいたんだった。確か瀬良リツさん、だったかな?





【お昼雑談】明るいうちから【瀬良リツ】

 6,592人が視聴中

〇瀬良リツ [ライブ配信中]




「お!配信してる」


検索してみると今現在配信しているようだ。あんまり知らないんだけど本業がイラストレーターの人、だったかな?

私はサムネイルをクリックして配信を開いた。




【お昼雑談】明るいうちから【瀬良リツ】

6,592人が視聴中

 ↑4832 ↓9 □

【瀬良リツ】チャンネル登録者数21.5万人



「えーと、みなさんこんばんは...じゃなくてこんにちは。瀬良リツです」


〇【待ってた!】

〇【待ってた】

〇【マテ茶!】

〇【まってた】

〇【待ってた】


へぇ...見ため通り結構中性的な声なんだなぁ。平日のお昼なのに同接数もかなり多く彼女(彼?)の人気さがわかる。



「今まで夜の20時とか遅い時間帯にしか配信したことないのでなんか新鮮ですね」


〇【そうね】

〇【平日なのも珍しいね】

〇【セラリツこの時間お仕事中では?】

〇【幸せや】

〇【この時間って忙しくないの?】


というかこの声...どこかで聞いたような。

いや、もしかしたら前に切り抜き動画とかで見たことがあるのかな?最近いろんなライバーさんの切り抜きをしているチャンネルを見てるし。


でもこの声もっと身近で聞いたような...?





「あー、なんかお腹すいてきたな...。実はまだ何も食べてないんですよね。ちょっと適当に持ってきてもいいですか?」


〇【いいよ】

〇【持ってきな】

〇【今日はゆるいね】

〇【ゆるいかんじ好き】

〇【食べてもろて】

〇【じゃあ俺も食べようかな】

〇【俺も昼飯食いながらこの配信見てる】


そういえば私もおなかがすいてきたな。何か持ってこようかなぁ。



「ミュートにして...よし」


〇【おや?】

〇【ミュートできてない件】

〇【ごそごそ聞こえる】

〇【ミュート怖い...】

〇【ミュートできてない!】


ごそごそっていう音が聞こえるけどもしかしてミュートできてないのかな?アリス様の初配信でもあったけど。



「ん?...電話」


〇【これやばくないか?】

〇【ミュート気づけ!!】

〇【気づいて!】

〇【電話はまずい】


電話!?それふつーにやばくない?

私もコメントで伝えてみるもリツさんは気づくことなく電話に出てしまった。



「あ、桜花?今...はちょっとやることあるけど。うん...うん...」


〇【桜花?】

〇【誰や】

〇【ギャルちゃんか!】

〇【悪いと思いつつ聞いてしまう】


がっつり人の名前出ちゃってる!これって完全に放送事故だよね...って、ん?桜花?



「あー、5時からね。わかった。てか、別にこういうのはラインでいいじゃん。いや、まぁ別にいいけど」


〇【タメ口のセラリツええな】

〇【タメ口リツ好き】

〇【ギャルちゃんなのか...?】

〇【約束かな】



いや...ちょっと待って。



え、嘘。

どこかで聞いた声だと思ったら...リッキーの声とそっくりなんだけど...。






・・・いやいやいや!!


そんなわけないって!たしかにリッキーはVライバーさん好きだし話は面白いけど、人見知りなリッキーが配信なんてできるわけ...。

まぁ桜花って言ったって割と探せばいる人名だし、声もいつも私と話す時よりちょっと低いし...他人の空似だよね?



「あー、あれ?ミュート外れてるんですけど...」


〇【おかえり】

〇【やぁ】

〇【おかえり】

〇【デートの予定かね】


ようやくミュートが外れていることに気付いたみたいだ。さっきは全然気づいてなかったけど意識して聞いてみるとやはりリッキーと被るところがある気もする。


そういえばリッキーとまだ友達になる前、リッキーと日下部くんが二人で話しているのを見かけたことがあったけどその時の声がかなり似ているような...。




「あ、いや別に今のはギャルちゃんじゃないですよ。僕の幼馴染の子です」


〇【!?】

〇【幼馴染!?】

〇【え!?】

〇【ギャルちゃんのほかに女!?】


少し考え込んでいる間に話が飛んでしまったが、ギャルちゃん?



「いつも空いてるときにその子に付き合ってランニングしてるんです。てか、ギャルちゃんにあんな感じで接せられませんよ」


〇【ランニング?】

〇【なにそのシチュ】

〇【最高やんけ】

〇【ギャルちゃんとはまだか】


たしかに前に桜花に付き合って時間のある時にランニングしていると言っていた。というか本当に瀬良リツさんがリッキーだったとして、もしかしてだけどギャルちゃんって私のことかい?


まぁ、確かに髪染めてるしピアスもあけてるけどネーミングが安易すぎやしない?






「この後ちょっと編集だけしてからアーカイブ載せます。それではお疲れさまでした。では、また」


〇【ではまたー】

〇【了解!】

〇【ではまたー!】

〇【ではまたー!】

〇【了解!ではまたー!】


1時間少々といったところで予定に備えるために配信を終わるようだ。


もしかして映画を見に行った時に秘密があるって言ってたのはこれのことだったのかな...。そうであればこちらから切り出すのも違うしなぁ。

90%くらいの確率で確信しているんだけどそれとなくばれないようにリッキーに電話してみることにする。


2コールほどしたところでリッキーは出た。



「もしもし。どうしたの、悠?」


私と話しているときはやはりさっきよりも若干声が高い。



「いやぁ別に何かあるってわけでもないんだけどね。最近元気かなーって」


「まぁ...ほどほどに元気かな。悠は?」


「元気だよー!あ、いや...リッキーに会えないのは寂しいから元気じゃないかも」


「なにそれ」


電話の向こうでクスクスと笑っているようだ。かわいい。



「そういえばね、リッキーってランニングしてるって言ってたじゃん?私もそれ聞いてから運動しなきゃなって思ってちょくちょく走るようになったんだよねー」


「へぇーそうなんだ。実はちょうど今日走る予定入ったんだけど...悠も来る?」


「......それって何時ころ?」


「えーっと確か5時くらいかな」


うん...これは確定かな。



「あー、ごめん。5時からはちょっと用事あるかも」


「そっか。じゃあ今度予定会えば一緒に走りたいね」


「そうだね。ごめんね、私の暇つぶしにつき合わせちゃって」


「ううん、全然いいよ。私も暇だったから」


「ありがと。じゃあまた」


「うん、また」


通話の切れたスマホを握りしめて大きくため息をついた。今更だけどなんとなくリッキーのプライベートな部分を勝手にのぞいてしまった気がして罪悪感がすごい。


私たちも一緒に出掛けたり話したりしてかなり仲良くなったと思うけど、やっぱり桜花や悔しいけど日下部くんと話しているときのリッキーは力を抜いて素のままでいるような気がする。できるならば私もそちら側に行きたい。



「よし...」


もしこの秘密を打ち明けてくれたのなら、私も小学生のころにリッキーに救われていたことを告白しよう。そしたら今よりももっと素のままで笑いあえるくらい仲良くなれる気がする。



てか今気づいたけど瀬良リツとして活動してるときはリッキーの一人称「僕」なのか。普段のリッキーは大人しめなかんじだけどそれはそれでアリだな...。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白いです。 良い物語をありがとうございます。
[一言] バレたー!!笑 さぁ今後の展開どうなっていくのか 続き気になる〜
[一言] ついにバレてしまったかw ニヤニヤが止まりませんありがとうございます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ