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41.筋肉は裏切らない(後編)


薄暗い森の中にある一本道をどんどん進んでいく。


この走り方は普段のランニングとは違って意外と腿にくる。普段のランニングはできるだけストライドを意識して走っているのだが、これはももを上げることを重視しているので全く違う部位を使っている。



「まだ序盤ですけど汗ばんできましたね...」


〇【きついよね】

〇【汗prpr】

〇【↑きっしょw】

〇【気軽にライン越えすなw】


こいつら...次第に狂暴になっていくな。

僕の枠だからいいけど、このノリをほかのライバーさんのところでやってたら絶対許さないからな?




『中ボスが現れました!まずはクランチで先制攻撃です』


「うっわ...」


〇【露骨に嫌そうw】

〇【草】

〇【素出てますよ】

〇【いやそうな顔すな】



敷いてあるマットの上に寝転がり、サポートの声に合わせて上半身を持ち上げる。この調子だとゲームの終盤には腹筋がねじ切れるか6パックになってるかの2つに1つだと思う。


「くぅ...!はぁ...くっ!...はぁ...」


〇【なんかエッティですね】

〇【なんていうか、その、下品なのでやめておきます...】

〇【↑自重できてえらいw】

〇【なんか...】

〇【使えるね】



『相手の攻撃です!プランクでガードします』


クランチの次はプランクか...。

今の僕は腹筋が細胞レベルで破壊されているので、おなかに力が入らない。


「気軽にこのゲームやるんじゃなかった...」


〇【草】

〇【草】

〇【ちっちゃい声で言うなw】

〇【草だが】


このゲームなら僕にもできるだろうと考えていた時の僕をぶん殴りたい。



「はぁ...はぁ...もー無理...」


マットの上に仰向けになって荒い息を整える。


〇【満身創痍で草】

〇【大丈夫か?】

〇【草】

〇【息きれとるねぇ!】

〇【弱音がw】




『さぁ、とどめです!プッシュアップで攻撃しましょう』


合図に合わせてリズムよく腕立てする。

まぁまぁこれもきついが、死んだ腹筋に比べればまだ容易い方だ。



『敵を倒しました!』


〇【おめ】

〇【やった!】

〇【口数減ってるw】

〇【倒した!】


しゃべる気力があるなら体力の温存のほうに回すんだ。




『沼地に突入しました!ランジを使って抜け出しましょう。ストライドを広げ、重心を低く保ったままゆっくり足を踏み出します』


懇切丁寧に画面にやり方が出てくるが、よくもまぁゲーム会社はこんなもの作り出したものだ。

どの層に向けて開発したものなんだよ。子供は絶対にやらないぞ。



『沼地を抜けたようです!』


「・・・」


〇【しゃべらなくなっちゃったw】

〇【無言w】

〇【疲れてんねぇ!!】

〇【草】




『さぁどんどんギア上げていきましょう!』


ふぅ...。


「なんかこのサポートを無性に消してやりたいって言う気持ちが芽生えてきたんですけど、これが恋ですか?」


〇【いいえ殺意です】

〇【サポート鬼畜なんよw】

〇【極限状態で壊れてきてるw】

〇【殺意高w】

〇【あおられとるw】




走るだけならいつもやってるから余裕なんだけど、それに筋トレが入ると途端に足が重くなる。



「こうやってずっと走ってるゲームになりませんかね...。タイムトライアルみたいな感じで」


〇【別ゲーなんよ】

〇【マラソンしとけw】

〇【ラーメンの麺抜きやんけ】

〇【草】

〇【これもタイムトライアルならあるけどね】




『障害物があります!タイミングよくジャンプして回避しましょう』


「ここでジャンプ...」


〇【きついねぇ】

〇【とことん鬼畜w】

〇【20歳男性にするからさぁ】

〇【裏目にw】


この足が重くなったタイミングでジャンプさせるところをみると、このゲームの開発者は人を健康にする目的じゃなくて明らかに過剰疲労で殺そうとしてる。



「よっ、と...ほっ...ほっ」


〇【かわいい】

〇【かわよ】

〇【うまいねぇ】

〇【いいね】



「これくらいで...かわいいとか、言うんじゃない...!」


どうせかわいいとかいいながらパソコンの前では真顔で打ち込んでるんだろ!!僕には全部わかってるんだ。


〇【草】

〇【極限状態でいつもよりSっ気強くて草】

〇【素出てますよ】

〇【草】



『なんとか障害物ゾーンを突破しましたね!あそこに見えるのがゴールです』


少し進んだところにゴールと書かれたアーチが見えた。あそこに行けばこの苦痛は終わる...。



「これで...終わり...」


〇【おつかれー】

〇【おつかれー(愉悦部)】

〇【本当にそうかな?】

〇【おやおやおや】



喜びもつかの間、残り十数メートルところでいきなり何かが空から降ってきてゴールをふさいだ。

全身が真っ赤に染まったドラゴンが口から炎を噴き出して僕の行く手を遮る。



『ボスが現れたようです!今まで教えた筋トレで敵を倒しましょう!』


「・・・」


〇【顔が...w】

〇【絶望しとるw】

〇【大丈夫か笑】

〇【絶句よ】

〇【フラグ建てるからさぁw】



「さて、今回の配信はこれまでということで...」


〇【終わるなw】

〇【草】

〇【草】

〇【あきらめたらなんとやらですよ】

〇【諦めたw】


くそ...もう二度とこのゲームやるもんか。




『まずはプッシュアップからです!』


用意したマットが汗で湿ってきた。額の汗をタオルで拭うが、体が火照って拭いても拭いても滝のように流れ出てくる。



「これはまだラクな方なので」


腕もパンパンだが、なんとか気力を振り絞って体を上げる。




『効いてるみたいですよ!次はスクワットです』


「僕にも致命傷レベルで効いてるよ...」


〇【草】

〇【草】

〇【鬼畜サポートw】

〇【効いてる、効いてるぅ!】

〇【(#^ω^)ピキピキ】



肩幅に足を開き、膝がなるべく前に出ないようにゆっくり腰を下ろす。



『いい感じですよ』


「ちょっと黙ってて」


〇【草】

〇【こわいめぅ...】

〇【ダークリツ出てますよ】

〇【草】

〇【怖ぃ...】



『もう少しで倒せそうです!最後にクランチでとどめです!』


「それは僕にとどめってことですか?」


〇【草】

〇【イライラw】

〇【セラリツ死んじゃうw】

〇【お前...消えるのか】

〇【最後よ】



これが最後だと思えば...。

なんとか最後の力を振り絞って体を持ち上げる。おそらく今服をめくったら僕の腹筋はモナ王みたいになっているんじゃないだろうか。



「くっ...ラストォ!!」


するとドラゴンは最後の悪あがきのように大きく炎を吐いて、翼を広げて逃げ去って行った。



〇【おめでとーー!!】

〇【クリアだあー!!】

〇【おめ!】

〇【おめでとう】

〇【おめでとー】


「はぁ...なんとかクリアすることが出来ました」


全身がもうボロボロだ。



『クリアおめでとうございます!では次のステージに...』


「さて、それではこれくらいで今日は終わりたいと思います」


〇【閉じるな!】

〇【逃げたw】

〇【強制終了w】

〇【これステージ5まであるぞ】

〇【草】



「いや、もう...本当に勘弁してください」


このままでは死んでしまう。

まぁ明日死ぬことはほぼ確定しているんだけど。



〇【許したるかw】

〇【草】

〇【声が切実なんよ】

〇【仕方ねえなぁ】

〇【かわいそうになってきたw】



「では、今日はここまで。では、また。......これ絶対もうやんない」


〇【ではまたー】

〇【草】

〇【なんか聞こえたw】

〇【ではまたーw】

〇【ではまたー!】

〇【ではまたーww】






◎このライブストリームは終了しました。

【FA】実はこう見えて体力には自信あります【瀬良リツ】

61,922回視聴

 ↑3438 ↓16 □

【瀬良リツ】チャンネル登録者数15.2万人









○瀬良リツ

@Rituse_mob


もう二度としません。


2020/6/28

41件のコメント 3189件の高評価

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