3.同じステージへ
【記念歌枠】10,000人突破したよ!【リリカ・ルルーシア】
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【リリカ・ルルーシア】チャンネル登録者数1.5万人
「みなさん、どうもごきげんよう!ブルーレスト王国ルルーシア公爵令嬢のリリカです。初見の方ははじめまして。いつも見てくださっている方はありがとうございます」
〇【ごきげんよー!】
〇【ごきげんよー!】
〇【ごきげんよ~!】
〇【ごきげんよー!】
〇【一万人めでてぇ】
「本当にありがたい限りです!二週間前に500人突破して一万人目標にとか言っていたのがうそみたいですね」
〇【なんか2週間前くらいから一気にふえたよね】
〇【え、切り抜き見てないんか?】
〇【俺も王国民ニキの切り抜きから殿下のこと知った】
〇【俺も】
「本当ですよ!王国民さんの切り抜き動画のおかげでね。私という存在を多くの知っていただいているのでね。王国民さんには感謝しかないですよ」
〇【王国民ニキみってる~?】
●【うッ・・・】
〇【いたw】
〇【ダメージ受けてて草】
〇【彼が限界化するのはしょうがない。俺だってそーなる】
〇【しれっとスパナついてる】
「あ!王国民さん。本日はお越しいただきありがとうございます」
〇【旅館かな?】
〇【公爵令嬢女将・・・】
〇【言い方が草】
「感謝の気持ちも込めて、一番最初に歌うのは王国民さんに作っていただいたオリジナルソング。聞いてください『PRINCESS』!!」
いや、ガチで心臓止まったかと思ったわ。
推しが自分のこと認知してくれているだけでも限界化案件なのに、そのうえで自分の作った曲の生歌聞けるとかもはや限界化通り過ぎて賢者タイムだわ。
いや、忘れてください。
「どうでしたか。ちゃんと歌えてましたかね?」
〇【88888888888】
〇【雰囲気変わるね】
〇【8888888888888】
〇【よかった】
〇【8888888888】
〇【8888888888888888888】
「それはよかったです。歌枠のためにまじめにカラオケに通った甲斐がありました!」
●【そういうまじめなところもすしや・・・】
〇【王国民ニキ草】
〇【言語能力溶けかけてて草】
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「というわけでね。そろそろ配信終わろうかなーと思います!今日は来てくれてありがとうございましたー。次の目標は5万人!今日も今日とてお国のために頑張ります!それではご機嫌麗しゅう!」
〇【ご機嫌麗しゅう!】
〇【ご機嫌麗しゅうー】
〇【ご機嫌麗しゅう!】
〇【ご機嫌麗しゅー】
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「はぁー・・・」
やっぱり殿下の配信は何かに効く。いずれどんな病気にも効くようになるだろう。
それにしても今回のオリジナルイメージソングの制作で気づいたことがある。自分の承認欲求が強く過ぎる。おそらく前世でいろんなジャンルに手を出していたのもそういうことなのかもしれない。
この承認欲求は今回の歌枠で殿下が直接言及したことでさらに増大した。
もはや、山月記。自分が虎になる前にどうにかしてこのフラストレーションを開放する方法を探らなければ・・・。
「ん・・・?」
僕はパソコンの画面をじっと見つめる。
モニターには配信終了と書かれた殿下の歌枠。
「僕がVのママになればいいのでは・・・?」
この男限界化していて急に狂ったわけではない。
V業界のママというのはいわゆる自分の体を描いてくれるイラストレーターのことを指す。V業界でも配信に現れると「○○ママ~」とレスポンスをもらえることがある。
善は急げだ。
とりあえず、自分のSNSアカウントを作成する。何枚か昔に書いた殿下を含む推しの絵を投稿し、「フリーのイラストレーター。依頼募集中」と書いた。
今日アカウントを作ったばかりだし、仕事の依頼が来るのはかなり後になるだろう。それまでに僕は僕でイラストの練習をしなくてはならない。
〇リツセ
@Rituse_mob
#今日からイラストレーター始めました
こういう感じの奴を描いています!
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2020/2/16
6件のコメント 1545件の高評価
【絵柄好みです。頑張ってください】
【リリカ殿下かわいい!】
【So cute!!】
一週間後にはかなりの数の高評価がついていた。初めてイラストを投稿したにしては大成功といえるだろう。フォロワーの数も徐々にじわじわと増え始めている。この調子でいけば、いつ依頼が来てもおかしくはない!
・・・
・・・
・・・
一か月たっても一件も依頼はこなかった。どうしてなんだ!
あれからフォロワーの数は1万人を突破して、投稿するイラストも高評価の数が5000を安定して超えるようになってきた。
それなのに・・・いったいどうして?
もしかして、実績がないからまだ仕事を依頼するにはまだ信用が足りていないということなのだろうか。たしかに趣味で描いているだけの一般人だし、そりゃそうかもしれんけど。
どうすれば、自分を売り出せるか。
僕は3日ほど考えた挙句、リリカ殿下の配信を見てようやく決心を固めた。
「僕が受肉するか...」
僕が自分の描いたイラストでVtuberになれば、それは活動実績に含まれるしそういう活動目的にも使用できますと宣伝もできる。一石二鳥の作戦である。しかし、この作戦にはマジノ戦線並みの大きな穴がある。
僕は人前で話すのが苦手だが、それと同じだけネットの人達と話すのも苦手だ。リアルでもコミュ障、ネットでもコミュ障とか救いようがないのだけれど、それだったらリアルのほうが幾分ましである。
だって、ネットって匿名だから自分の心が見えやすいし、簡単に人のことを貶められるじゃん。心豆腐メンタルな僕にそれが耐えきれるのかと言われれば、「くっそおもんな」というコメントが見えた瞬間配信終わってそのアカウント抹消するくらいには人生の忘れられないトラウマランキングにノミネートするだろう。
自己承認欲求は強いくせに、バッシングには超がつくほど弱い。
これはもしかしたら前世に起因することなのかもしれないが真相は定かではない。
こうやっていいわけを三日間朝起きて、通学中、授業中、休み時間中、四六時中ずっと考えて、結局自分がVになることが推しに認められる第一歩だと自分を納得させた。
Vになるにあたって自分の設定を考えた。
こういう設定は自分の特徴などから考えるのが一番いい。そのほうがぼろが出にくいし、キャラ崩壊もしにくい。まぁ、イラストレーター系Vなら別に設定なんてあってないようなものだけど。
【瀬良リツ】
売れないフリーのイラストレーター。生粋のオタク気質で、アニメ・漫画・Vなどジャンル様々対応。もともと会社と契約していたが、独立する。しかし、あまり仕事の依頼が来ないため、Vになって宣伝しようと思い立つ。いつもはスイッターにて1日に一度絵を投稿している。
なんか、設定というよりほんとうのことみたいになってしまった。いや、8割がた本当なんだけどさ。
設定は出来上がったし、見た目はどうしようか。あんまりにも自分好みにしすぎると男受けしかしなそうだし、ここは無難なデザインにしよう。
一応「僕」という一人称ではあるが声は完全に女性なのだし、ジェンダーレスっぽいかんじでいこうとおもう。
黒髪のマッシュショートで首にチョーカーを付けているデザインだ。
このチョーカーは僕が好きな漫画のキャラクターからとったものだが、まぁ権利的には大丈夫だろう、そんなに似てないし。
「よし…できた」
イラストは完成した。そう、「イラスト」は。
ここからはLive2Dを駆使して、この体を動かせるようにしなければならない。
ここからまた2週間ほどの時間を要することになる。
結局のところそれが完成したのは僕が高校2年生になってからだった。