33.推しの雑談
悠とのデートもといお出かけから家に帰ってきた。
なんというか、その場のノリと雰囲気だけで流された感があるけど今回のお出かけはおおむね成功したと言っていいだろう。
最初こそ緊張してぎこちなかったが、最後のほうには緊張もほぐれ心から楽しむことが出来た。
悠との距離も縮まった気がする。いずれ本当のことを明かさねばならない時がくるだろうが、今はこれが精一杯だ。
「ん...はぁ...」
背伸びして大きく息を吐き、ベッドに腰掛けた。
配信で報告会をしようか悩むけど、さすがに疲れてるし今日は早く寝ようかな。
着替えるために立ち上がると、スマホに1件の通知が送られてきた。
〇リリカ・ルルーシア
今日は20時からまったり雑談しますよ~!
日曜日に殿下の配信?基本的には平日しか配信しないから珍しいな...。
着替えを済ませた後、パソコンの前に座りヘッドホンを装着する。
【雑談】最近どうですか?【フロムヒア/リリカ・ルルーシア】
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【リリカ・ルルーシア】チャンネル登録者数24.3万人
〇【リリカスタンバイ!】
〇【リリカスタンバイ!】
〇【リリカスタンバイ】
●【リリカスタンバイ!】
〇【珍しいな】
〇【リリカスタンバイ!】
「あー、あー。声入ってますね?みなさん、どうもごきげんよう。フロムヒア所属、ブルーレスト王国公爵令嬢のリリカ・ルルーシアです!」
〇【ごきげんよー!】
〇【ごきげんよー】
〇【ごきげんよー!!】
●【ごきげんよー!】
〇【週末に殿下を見られるという喜び】
「あ、そうですね。確かに土日はあんまり配信したことないので珍しいかもですね!いつもは公務とかがあるんですけど、今日は特別にお休みだったんですよ」
〇【なるほど】
〇【できれば休んでほしいけどね】
〇【公務お疲れ様です】
「皆さん、今週どうでしたか?私はちょっと外に出る用事が多くて疲れました...」
〇【雨降っててダルかった】
〇【まぁ、いつも通りよ】
〇【とくには】
〇【お疲れ様です】
〇【普段は外出てないんだ?】
〇【ライバーは出不精だから...】
「ん?失礼な人たちですねー!私だって公務とかで外出することも多いんですからね!」
〇【公務なら仕方ない】
〇【本当に?】
〇【それならね】
「じゃあ、いつもどおりマッシュメロン拾って行きましょうか」
〇【お】
〇【合点】
〇【送ってきたわ】
「えーと、まずはこれかな?」
『殿下いつも楽しい配信ありがとうございます。ふと疑問に思ったことがあるんだけど、なんで公爵令嬢なのに「殿下」何ですか?あと公爵令嬢って普通は公務ってしないと思うんですけど、何か特別な理由が...?もしよければ答えてくださると幸いです』
「あー、確かに...。普通は殿下って皇族につけるものですからねー」
〇【確かにね】
〇【最近見始めたから俺もそれ思ってたわ】
〇【まぁ、公爵令嬢もある意味皇族みたいなもんだし】
〇【考えたことなかったな】
「殿下っていうのはですね。初期のころに誰かが言って広まった感じですかね?あんまり覚えてないんですけど。まぁ私も、そういえば殿下って皇族だけ...って気づいたころには広まってたので手遅れでしたね」
〇【いや草】
〇【草】
〇【間違ってるって気づいてたんかいw】
〇【草】
「あとは公務についてですけど、普通の公爵令嬢は公務とかはもちろんしないでしょう。普通ならパーティに行ったり、婚約破棄されたりなんて感じなんでしょうけど」
〇【悪役令嬢ものの序盤やん】
〇【草】
〇【婚約破棄w】
〇【どこのラノベですか?】
「まぁ、なぜ私が公務を行っているかといいますと端的に言えばうちの国が普通じゃないくらい人手とお金がないからですね。皇族だけでは国家の運営がままならないので私のほうまで仕事が回ってくるということなのですよ」
〇【人材・資金不足のブルーレスト王国...】
〇【ブルーレスト王国ェ...】
〇【貧乏王国】
〇【まぁ殿下自ら実家の雪かきするような国やからな】
〇【ブルースラム王国】
「最近私を知ってくださった方は知らないかもしれないですけど、この配信も王国の宣伝活動のために行っているものなので公務の一環なんですよね」
〇【言われてみれば確かに】
〇【広報部リリカ様】
〇【今のところブルーレスト王国がめっちゃ雪降るのとド貧乏ってくらいしか知らないけどねw】
「そうですねー...そのうちブルーレスト王国プレゼンとかしますか?それも面白そうですね」
〇【面白そう】
〇【楽しみ!】
〇【期待しとくわ】
〇【観光スポットとかね】
「それじゃあ、次のやつに行きましょう」
『殿下こんばんは!デビューから半年おめでとう!』
〇【そういえば半年か!】
〇【めでてぇ】
〇【もうそんなにたったか】
〇【いろんなことがありすぎてあっという間だったね】
〇【意外と最近デビューだったんだ】
「確かデビューした日が去年の12月末でしたね。あの頃は半年後に企業勢になって24万人も王国民の人が増えるとは思っても見なかったですよ」
〇【殿下の才能故よ】
〇【今勢いあるうちの一人だからね】
〇【俺たちブルーレスト王国に強制移住されてんのか...】
〇【1周年のころにはもっとすごいことになってるよ】
「本当に皆さんには感謝しかないです!じゃあ、次にいきましょう」
『梅雨の季節ってじめじめしてるから発汗しづらくて意外と熱中症になる人多いらしいから殿下も気を付けてね。ところで全然他意はないんだけど、熱中症ってゆっくりと言ってもらってもいい?』
〇【草だが】
〇【よし違和感ないな】
〇【草】
〇【他意の塊やんw】
〇【他意ないやろ!いい加減にしろ!】
「熱中症ってゆっくり」
〇【きたない!】
〇【抜け道が!】
〇【くそう...】
〇【詰めが甘かったか...】
〇【王国民大敗北】
〇【草】
「私がそうなんでも言うと思ったら大間違いですよ!いつまでもちょろいと思わないことですね!!」
〇【強くなってしまった】
〇【つよつよ殿下はわしが育てた】
〇【この発言自体がすでにフラグなんだよなぁ...】
『殿下!!次のマロの人がすごい深刻な表情をしてました!もしかしたら、なにか大変なことが起きたのかもしれません。僕のことはいいから彼をお願いします!』
〇【なんだこのマロw】
〇【おもろいなw】
〇【なんやねん】
〇【次のマロ杞憂マロ】
「なるほど、そういうなら次のマロの人を助けてあげましょう」
『痛風痛すぎ。でもビール止まらねぇw』
〇【痛風wwww】
〇【いや痛いけども】
〇【草】
〇【痛風で深刻な表情してるの草】
〇【ビール飲むなやw】
〇【アルコール狂だったか】
「うーん...救いようがないですね!」
〇【バッサリ】
〇【救いようがねーわ笑】
〇【クソマロなんだよなぁ】
〇【このコンボ奇跡的にハマってて草】
「そんなこんなでそろそろ1時間ですね。じゃあ今日はこれくらいで終わりにします」
〇【このマロで終わりか笑】
〇【お疲れ様】
〇【早いね】
〇【おつかれ】
「では、今日の配信はここまで。ご機嫌麗しゅう!」
〇【ご機嫌麗しゅー!】
〇【麗しゅー!】
〇【ご機嫌麗しゅー!】
〇【ご機嫌麗しゅー】
〇【ご機嫌麗しゅう!】
◎このライブストリームは終了しました。
【雑談】最近どうですか?【フロムヒア/リリカ・ルルーシア】
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【リリカ・ルルーシア】チャンネル登録者数24.3万人
やはり殿下の配信は良い。いずれ万病にも効くようになるだろう。
配信のコメントで言われて気づいたが、デビューから半年も経っていたのか。記念に新しくオリジナル曲でも作って王国民アカウントのほうに動画あげようかな...。
「はぁ...」
僕はヘッドホンを外し、ベッドに横になった。
と同時に急激に瞼が重くなる。やはり、このタイミングで来ると思っていた。
もはや、読めるようになっている。
若干のうんざりさを感じつつ、僕の意識はだんだんと薄れていった。




