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2.推し活とは即ち生きること

僕がVライバーになる数ヶ月前のこと。

僕が今の推しに出会ったのは物珍しさからのことであった。



ブロンドのロングの髪に控えめに主張する蝶の飾りをつけ、異国風のブレザーを身に纏う凛とした雰囲気の少女の名は『リリカ・ルルーシア』


彼女がデビューしたのは2019年冬、このころにはVという概念が次第に世に知れ渡りつつあり5強と呼ばれる存在の方々は登録者が50万人を超えていた。



そのころから僕はいろいろなVの発掘作業に日々いそしんでいた。なんて言ったって高校に入ったばかりでまだ友達とかも余裕でできると思っていたし・・・。



そんな中で彼女を見つけたのはサムネイルに惹かれたからである。




【雑談】初配信から2週間が経ちました【リリカ・ルルーシア】

20人が視聴中

  ↑19 ↓0 □ 

リリカ・ルルーシア チャンネル登録者数539人



僕がその当時ハマっていたVは5強などもれなく全員が3Dモデルで活動するVライバーだったのだが、彼女は2Dのアニメキャラ風なボディで配信をしていた。


興味本位で僕は彼女の配信を開いてみる。



「いやー、まぁそういうわけでチャンネル登録者数も500人を突破いたしました!これもひとえにファンの皆様のおかげです!」



○【500人おめでとー!】

○【めでてぇ!】

○【2週間で500人だから10か月後には1万人・・・?】

○【いや、これはもっと伸びるね(古参面オタク)】


「そうですねー・・・。やっぱり、活動の目的としてはやっぱり1万人突破することですかね。どれだけかかるかわかりませんが頑張りたいですね!」



2Dならではの右に左に大きく揺れる彼女はとてもいい笑顔だった。声色からもこの配信を心の底から楽しんでいる様子がよくわかる。その笑顔を見た瞬間に僕は一瞬にして彼女に落ちた。一目ぼれである。



キャラデザも自分の趣味にがっちり一致していた。ブロンドロングにスレンダー体形。貴族学校のような高貴な制服を身に纏った姿。極めつけにはメガネの着脱可能!



公式設定には、


ブルーレスト王国の公爵令嬢。

王国は地下資源の輸出で発展してきた国だが、地下資源の枯渇により国家の財政は悪化。傾きかけた王国を再興するべく一族郎党が集い、一番華のある公爵令嬢リリカが王国の広告塔としての役目を任命された。本人は国のために精一杯尽くそうと、王国の発展のために、ひいては一族の繁栄のために配信をする。



とかかれていた。

いや、ブルーレスト王国・・・。




設定とはいえ、頑張っている彼女を応援したいのは本当だし、ファンとして自分も何かできればいいのだが・・・。




僕は彼女がしているゲーム実況を見ながら悩む。

これだけの人材、世間に受け入れられないわけがない。あと彼女に足りないのは話題性、というか一気に情報を拡散する爆発力。


それをどう補うべきか・・・。






彼女の配信を見ていると画面の横に出てくるあなたへのおすすめを見て、一つの妙案を思いついた。

もしかしたら、これなら少しづつ彼女のファンを増やせるかもしれない。










【V切り抜き】Vライバー入門編

365,807回視聴

  ↑5320 ↓15 

【Vをすこれ】



この頃面白いVの切り抜き動画がちらほら現れ始めていて、面白い動画は高確率でかなりの再生数を稼いでいた。といってもほとんどの場合は5強と呼ばれる存在を見に来ているのだけど、その中に別のVを入り込ませることによって、Vオタにとっても新人発掘がしやすい動画となる。


サムネイルで5強の画像をドーンと使って客引きをする。新人やリリカなどのVと5強のバランスは4;6程度にはなるがこれくらいが適切だろう。



もちろん切り抜きに使用しているVの規約の確認はしている。本当はもう少し入れたい人もいたのだが、切り抜き不可の人だったので諦めた。まぁ、そういう人は自分で切り抜きをあげたり、動画を編集したりする人が多いからしょうがないのかもしれないな。





それにしてもここまで伸びるとは思わなかった。

投稿してから1週間で36万再生、300近くのコメントもついている。

コメントの中には、


【リリカって子結構かわいいね。チャンネル登録したわ】

【たしかに。最近2D勢増えたよな。リリカちゃんその筆頭だし】

【見たことなかったけどまだいい人材残ってるな。今年でどれだけ伸びるか】

【見た目がどストライク】




など。リリカに対するコメントもちらほら散見される。

それにリリカの登録者も少し前に600人程度だったのがこの動画のおかげかはわからないが1週間で3000人ほどにまで増えていた。なかなか見る目のある者たちが集まっているようだ。




ここで第2弾


自分は前世では行動系のオタク。

イラスト、作曲、なんでもござれ。


となれば、次に作るのは、


【V音MAD】ココロオドライバー

504,678回視聴

  ↑1万 ↓56 

【Vをすこれ・ブルーレスト王国民】






いや、思ったより伸びすぎた。

どんだけみんな音MAD好きやねん。確かにまだVの音MADの動画なんて数えるくらいにしかなかったけどさ。Vの絶叫が聞きたいのか、それとも元曲が聞きたいのか・・・。これだとどちらかわからんな。






そうそう。

この動画を契機にチャンネル名を少しだけ変えることにした。

こうやってリリカの要素を少しづつ増やしていって、サブリミナル的に洗脳をしていこうという寸法だ。今回の音MADにもリリカの比重は前回と比べてかなり増やしている。結構彼女はホラゲーとかもするので悲鳴SEには困らない。悲鳴助かる。






なんにせよ彼女が世に知られ始めているということはいいことだ。コメント欄でも少しづつではあるが同志が増えてきている。ここは一度再生数目的ではなく、リリカファンのための動画を作るべきだろう。




そういえば最近前世のことについて少々整理してみたのだが、イラストや作曲はもちろんのこと。コミケで同人誌を売ったり、ラノベを制作したりなどかなりマルチな才能を持っているようだった。行動的なオタクというよりはただのオタク極めすぎた人だった。


すごいね。





僕は編集続きで疲労気味の脳をエナジードリンクで無理やり起こしながら、次の動画の制作に取り掛かる。




【リリカ・ルルーシア】PRINCESS【非公式イメージソング】

153,009回視聴

  ↑1万 ↓30

【Vをすこれ・ブルーレスト王国民】




リリカのオリジナルソングである!

1週間でなんとか仕上げた。作詞作曲動画まですべて自分で作ったのでまじりっけなしの僕の愛だ。さすがにボーカルは自分でするのは恥ずかしいのではじめはボーカロイドを用いようと考えたのだが、リリカ・ルルーシアのイメージに合う声がいなかった。

僕は様々な歌い手の動画を閲覧しつつ、ぴったしだと思う声の人にボーカルを依頼した。

もちろんお金はかかるが、これも推し活だと考えれば悪くはない。あぁ、推しのためにお金を使っているときほどこの世で一番有意義な金の使い方だと実感できるときはない。



それにしても、いつもの切り抜きよりは再生数が落ちるもののかなりの人たちがこの動画を再生しているようだ。リリカ単体の動画でもこれだけの再生数が取れるのは単にファンが増えたからなのか、元からのファンがめちゃくちゃ再生しまくっているのか・・・。





「ふぅ・・・」


僕はコメント欄の反応を見ようと開いてみると一番上のほうに【リリカ・ルルーシア】の文字があった。おちつけおちつけおちつけ・・・。


本人巡礼済み?まさか殿下(最近決まったリリカの渾名)からのコメントがあるなんて。え、マジ?泣きそうなんだが。限界化通り越して一周回ってるんだが?


心臓を物理的に押さえつけて、恐る恐るシークバーを下に下げる。



●【リリカ・ルルーシア;私の曲!?めちゃくちゃかっこよくて好きです!良ければ配信とかで取り上げてもよろしいですか?】


◎【殿下の御心のままに!お好きにお取り扱いください!】

〇【王国民ニキやっぱり生粋のブルーレスト民なんだな】

〇【多才能すぎんか?作詞作曲編集MIXetc.】

〇【レスポンスの速さが尋常じゃない】



たった今コメントしたばかりのようだ。

考えるよりも前に手が動いていた。自分の作った曲を推しが歌うとかもはやファンの中でも最上級の喜びだ。



「はぁ・・・てぇてぇ・・・」


僕は限界化しつつもたまっていた殿下のアーカイブ消費のために疲労困憊の中、動画を開いた。




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― 新着の感想 ―
[一言] スペック高ぇ羨まし。 現実でも、推しに認知されたら嬉しいものですよね。
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