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27.今日寝てないわーってやつ


篠宮悠の朝は早い。



別段、なにかするわけでもないのだがいつも早めに家を出る。強いて言うなれば、同じ時間に登校してくるリッキーを横目で眺めているくらい。



いつもは友達と話しながらホームルームまでの時間をつぶすのだが、生憎今日は風邪で休むらしい。どうぞお大事に...。



仕方がないのでリッキーがくるまでスマホでもいじりながら待とうとリッキーの席に座って待つ。


が、待てど暮らせど一向に現れる気配がない。


もしや、リッキーも風邪?




「席つけー」


ホームルームの鐘とともに先生が入ってきた。仕方がないのでよっこいせとリッキーの席を立つ。

すると、教室の後ろの方から息を切らしながらソロソロとリッキーが入ってきた。すごい汗もかいてるし、走ってきたんだろう。レアなリッキーだ。   






「リッキー、おはよー!」


「...」


ホームルー厶終わりに項垂れるリッキーに近づいて声をかける。だが、反応がない。


し、死んでる?!




まぁ、そんなことはなく疲れて寝ているようだった。おいおい、まだ1時間目の前だぞー!




1時間目は古文の授業。最初の方はなんとか頑張っていたリッキーだったが30分をすぎるとこくりこくりと船を漕いでいた。


時々急に起きたかと思えば急いで板書をして、終わるとまた眠りにつく。忙しいやっちゃ。


「...すぅ」


いや、今ちっちゃい声で「すぅ」っていうてますけど。かわいい。


 


2時間目は体育。柔軟体操もそこそこに、バスケットボールを持って各々好きなように遊び始める。リッキーはというと体育館の端っこの方で壁にもたれかかりながら、やはり爆睡していた。


そーっと近づいて隣に座る。


「すぅ...すぅ...」


「...」


「すぅ...す......」


止まった。



「...スルメゲソ.....すぅ...」


「!?」



リッキー今どんな夢見てるの!?到底私には「スルメゲソ」なんて言葉をくちばしるシチュエーションが思い浮かばないんだけど。「スルメゲソ」ってなに?





体育が終わってからも寝ぼけた様子のリッキーに付き添ってなんとか教室まで戻った。


こうまで寝不足ということは昨日の夜は相当夜遅くに寝たに違いない。お昼にでも問い詰めてみたほうが良さそうだ。








お昼になるといつも通り桜花がリッキーを迎えに来ていた。リッキーは4時間目が終わった瞬間に電源が切れてしまって机に突っ伏している。


「律月ちゃんどーしたん?」


「んー...なんか朝からこんな感じなんだよね。本人はずっと寝ぼけてるから聞けないし」


「そっかぁ」


桜花は腕を組んで悩む素振りを見せる。



「じゃあ昼休みだけでも保健室のベッドで寝させてあげようか」


「いいね。そうしよう!」



眠るリッキーを背中に背負う。

なんかめちゃくちゃ華奢だな...ちゃんとご飯食べてる?リッキー、身長は女子にしてはそこそこあるだけにちょっと心配。








「悠ちゃん、おつかれ」


「リッキーめっちゃ軽かったから余裕よ」


「律月ちゃんは昔からインドアだからねー」



昼休み中は眠るリッキーの顔を眺めながら桜花と弁当を食べる。そういえば、桜花とご飯を食べるのは初めてかもしれない。


「リッキー、爆睡してるね」


「そうだね。律月ちゃん夜更かししたのかなぁ?」


「うーん...配信みてたんじゃないかな」


「配信?」



あ、桜花はVライバーとかは知らない感じだからわからないのかも。



「うん。ライバーさんっていって生配信する人達がいるんだけど、その人の配信見てて寝不足なのかなーって思ってさ」


「あぁ、Vライバーさんね」


「え、知ってるの?」


スポーツにしか興味ないのかとおもってたけど。



「あ、ううん!あのー、律月ちゃんが前に好きだって言ってたから!」


「そうなんだー。私もリッキーがすきそうだなーって見始めたの」


「そっかぁ。私も見てみたいんだけど部活とかで忙しくて...」



桜花は陸上部の期待のエースだと陸上やってる友達が言っていた気がする。よく見たら彼女は私よりも若干小麦色がかっていて健康的な肌をしている。スポーツする女の子っていいよね。





昼休みも終わりかけになってきたのでリッキーを揺さぶる。


「んん...」


「お。おはよう、リッキー」


「あ、僕...保健室で寝てたっけ...」



お、今日は「僕」だ。

寝ぼけてるからまだ目がとろーんとなっている。



「眠そうだから悠ちゃんが運んでくれたんだよ」


「ん...そうなんだ...」


「じゃあ、教室かえろっか?」


「ん...」



手を貸して立ち上がらせるとそのまま私に寄りかかってきた。まだ眠気は取れていないらしい。これはワンチャン夜更かしどころじゃなくてオールしてるかもしれない。


「もー、律月ちゃん!」


「いいよいいよ。疲れてるっぽいしまたおぶるよ」


「あ、でもさっき悠ちゃん運んだから、今度は私が...」


桜花が近寄ってくるが手で制する。



「いいえ、お構いなく」


「そ、そう」


キリリとした表情でリッキーを背中に乗せる。多少のボディタッチ・スキンシップは女子の特権。それに普段のリッキーなら恥ずかしがってまだこういうことさせてくれなそうだし、今のうちに堪能しておくんだ。






午後からの授業はというともはや睡魔にあらがうこともなく机の上に突っ伏して轟沈したまま終わってしまった。放課後には特別に部活を休んできたという桜花が80%寝ているリッキーを背負って帰っていた。


今日はリッキーとまともなこと話せなかったな...。

まぁ、でもそのかわり普段とは違うリッキーが見れたわけだし結果オーライということにしておこう。



彼女に今日の話をしたらどんな顔をするだろう。


照れるリッキーの姿が今から楽しみだ。



感想や評価もどうぞよろしく。




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