26.誰しも一度は世界を救ったことがある(後編)
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「勝っ...た...。はぁ、何回目でしたっけ?」
〇【10回目】
〇【10かな?】
〇【ようやく勝てたw】
〇【運だけど勝ててよかった】
魔王軍四天王の一人が治める国に入るといきなり背後から襲撃された。強制イベントが発生し、監獄ようなところに閉じ込められてしまった。ギミック的にはちょっとした脱出ゲーム要素かもしれない。
敵を倒しつつ四天王のいる王座にたどり着いたのはいいものの、ここからが大変だった。
相手がキュアラ持ちだったため、いいところまで体力を削れてもどんどん回復されてしまうのだ。こちらも回復するのだがMPの差でジリ貧になってしまって何度も負けた。
10回目の今回は相手がたまたま回復しなかったのとクリティカルが重なってなんとか倒すことができた。
〇【まぁ、ここで詰む人結構多いからね】
〇【昔ここで諦めかけたわww】
〇【まじでクソ敵】
〇【魔王より印象強い】
「回復持ちは主人公の特権なんですよ。チート要素ですから」
〇【わかる】
〇【チート持ちw】
〇【回復スキルで無双な件】
〇【まぁ、何回も復活できる時点でチーターやけどね】
「まぁ、レベルが上がったときに魔法も覚えたのでそれはラッキーでしたね」
〇【攻撃力アップは使える】
〇【アプレル】
〇【本来ならこれが1つ目なのか】
〇【運いーねー!】
[アプレル:一定の時間攻撃力を上げる]
まだレベルの低い現状だとかなりありがたい。
本当はここからあと3人の四天王が「やつは四天王の中でも最弱...」的なことをいって戦闘があるのだが、3時間で終わるライト版なのでバッサリカットされている。
まぁ、他の三人はこの四天王に比べるとそこまで強くはないらしいんだけどね。
「で、次はようやくラスボスですね」
〇【魔王戦だ!】
〇【もう魔王か】
〇【ちょっと厳しくない?】
〇【レベル上げしたほうがいいかも】
〇【そうね】
確かに今の戦いでこれほどの苦戦を強いられたなら、ラスボスと戦えば確実に勝てないだろう。
ちらりと時間を確認するが、時計の針はそろそろ日付を越えようとしている。明日から学校もあるのでできれば早めに終わりたい。
「ん〜...とりあえずお金も貯まったので装備買いましょう」
〇【そうしよ】
〇【いつまでも鉄だとね】
〇【いーね】
〇【魔法ももう一つくらいほしい】
とりあえず、武具屋に向かう。
『いらっしゃい!ここは武具屋だよ。何か買うかい?』
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▷鋼の剣(1500G)
錆びた剣(2000G)
鋼の鎧(1800G)
錆びた鎧(2500G)
魔導書(2000G)
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「錆びた剣?なんでこんなの売ってるんですか?ていうか、高い...」
〇【まあ大抵こういうのは、ね?】
〇【まぁ】
〇【さっき鍛冶師の人いたよね】
〇【なんかありそう】
〇【私、気になります!】
そういえば先程「俺は伝説の鍛冶師だ!」というやつが酒場にいた気がする。
「こういうのはテンプレですしね。あと残りのゴールドで魔導書も一つ買います」
〇【いいね!】
〇【ガチャだーー!】
〇【テンプレ大事】
〇【ガチャの時間だぁ!】
錆びた装備をセットで買った。どうやら、このままでは装備できないらしいのでアイテム欄にしまっておく。
とりあえず酒場に向かってみると、奥の方の席に鍛冶師と名乗る男が座っていた。
『わしは伝説の鍛冶師カジータだ!お前、その持ってる剣打ち直してやろうか?』
〇【いた】
〇【セリフ変わってるね】
〇【おお】
〇【錆びてるのって打ち直すんか?】
ここは迷わずイエス。
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▷はい
いいえ
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『少し待ってろ。急いで打ち直してくるからな!』
男はいそいそと酒場を出ていったと思ったら、すぐに戻ってきた。
『ほら、もとよりも頑丈に打ち直しておいたぞ!お前はこの国を救ってくれた勇者様だからな。お代は結構だ!』
カジータから受け取った剣のステータスを確認してみる。
[勇者の剣:初代勇者が身につけていた剣]
[勇者の鎧:初代勇者が身につけていた鎧]
「テンプレですね...」
〇【やっぱりね】
〇【テンプレやなー!】
〇【これって最強装備じゃね?】
〇【なんで店に売ってるんw】
〇【大人の都合です】
しかし、ステータスは今までの装備とは比べ物にならないくらい強い。
本当はこの装備を手に入れるためにはほか3人の四天王を倒し、幽閉されている伝説の鍛冶師カジータを助けなければいけない、らしい。
「どうでしょう。これで魔王戦いけますか?」
〇【微妙】
〇【うーん...50:50】
〇【運次第かな】
〇【いけるよ!】
みんなからの反応は正直頼りないが時間的にも厳しいので行くしかない。
〇【魔導書やらんの?】
〇【そういえば】
〇【ガチャしてなかったな】
〇【ガチャ?】
「あ、そうですね!魔導書ガチャやりますか」
〇【ガチャの時間だーー!】
〇【ガチャだああ!】
〇【やっちゃぁぁぁ!】
〇【ガチャ!】
「いきますよ」
例によって勇者の体が光り始める。
[ボアを覚えた!]
[ボア:激しい炎で相手を焼き尽くす]
〇【ボアだ!】
〇【一番有名な魔法だね】
〇【いいねー】
〇【これは使いやすい!】
MP消費も少なく連発しやすい割に威力を申し分ないので、かなり重宝する魔法だ。
これで今覚えている魔法はキュアラ・アプレル・ボアの3つ。そして装備も勇者装備。
「よし、じゃあ最後のラスボス戦いきますよ!僕もちょっと眠くなってきたのでチャチャっとやっちゃいますよ」
〇【おー!】
〇【やっちゃうw】
〇【耐久?】
〇【フラグかな?】
魔王城は大陸の西端の孤島にぽつんと存在している。中には程々に敵はいるが今の装備だと結構余裕だ。
そして、ついに魔王城の最上階にある玉座にたどり着いた。
『よくここまでたどり着いた、予言の勇者よ』
魔王は玉座に横柄に座ったまま、こちらを見下ろしている。
『我が名は魔王ヴァリス。魔を統べ、この世界を支配するものだ』
おお、なんというかいかにも魔王らしい。最新作の魔王とかだとちょっと人間臭い部分とかもあって倒しづらかったりしたんだけど。
『我としても無駄な血は望まぬ。貴様が我の軍門に下ると言うなら四天王として国を任せるが、どうだ?』
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▷はい
いいえ
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「え。ありがとうございます」
〇【いや草】
〇【詐欺やん】
〇【騙されるなw】
〇【これはい押したら結構戻されるんよな】
まぁ、ここはさっさと終わりたいので【いいえ】を選択する。まぁ、たとえ詐欺だとしても端金で危険な旅に出される国よりは魔王軍についた方が魅力的ではあるんだけれども。
『ならば仕方あるまい。死んで後悔するがいい!!』
バトルフェイズが開始された。これを倒せば終わりだ!
「よし!やっていきましょう!!」
〇【頑張れー!】
〇【やったれ】
〇【何回でおわるかな?】
〇【頑張れ!!】
〇【ゴー!】
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[魔王ヴァリスはヒュードを唱えた!凍てつくような冷気が襲う。75のダメージ!]
かなり痛い...体力の半分持ってかれた。ここはキュアラで一旦回復しないと。
[キュアラを唱えた!体力が82回復した]
〇【きついねー】
〇【頑張れ!】
〇【地味に削られてる】
〇【きつ】
相手が魔法を撃ってきては回復し、スキをみて魔法をいれたりしてみるが正直埒が明かない。なんやかんやで長い間膠着状態に陥っている。
体力は全快だがいつまでもこう回復ばかりではジリ貧になるだけだ。こちらからも積極的に仕掛けていかないと。
「よし、仕掛けますよ」
まずは「アプレル」で攻撃力を上げる。一旦回復などしつつ、魔法を撃ってこないタイミングでもう一度「アプレル」を重ねる。これで攻撃力の倍率が最大になった。
そして、ヴァリスが素手で攻撃してくるタイミングで先程覚えた「ボア」を唱える。
[ボアを唱えた!魔王ヴァリスに150のダメージ!]
〇【結構いくね!】
〇【削れてるよ!】
〇【重ねがけだから1.5倍の火力か】
〇【効いてる効いてる!】
MPの残量的にもキュアラとボア合わせて残り数ターンが限界だ。あとは運にかけるしかない。
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「これで、どうだ...?」
[ボアを唱えた!クリティカルダメージ、魔王ヴァリスに200ダメージ!]
そこで立ち絵のヴァリスが膝をついた。
『くっ、まさかここまでとはな...。しかし、覚えておけ。我らの意志は引き継がれる!再び闇がこの世界を支配するその時まで束の間の平和を楽しむがいい!!』
それだけいうとヴァリスは光の粒子になってサラサラと消えていった。
「勝っ、た...?」
〇【勝ったーーー!!】
〇【おめでとう!】
〇【勝った!!】
〇【うおおおおおお!】
〇【おめ!!!】
「はぁ、なんとか倒すことができました。最後のクリティカルが出なかったら、わからなかったですね」
〇【最後はステゴロよ】
〇【危なかったね】
〇【運げーまー】
〇【なんにせよ良かった!】
ちらりと時計を見ると時計の針が思いっきり12時を過ぎていて、そろそろ1時をむかえるところだった。
「え、もうこんな時間!?あぁ、配信終わります!今回のゲームは初心者向けに開発されたものです公式サイトから無料で遊ぶことができるのでみなさんも是非やってみてくださいね」
〇【案件かな?】
〇【案件ぽいw】
〇【ドタバタしとるな】
〇【これくらいの時間はまだ昼だよ】
〇【焦らんといて】
明日から学校があるのに...急いで寝ないと。寝坊なんてしたら折角の皆勤賞がなくなってしまう。
「じゃあ、今日はこれで配信終わります。では、また!」
〇【では、またー!】
〇【ではまたーーー!】
〇【ではまた!】
〇【出羽三山】
◎このライブストリームは終了しました。
【ドラファン】RPGの王道【瀬良リツ】
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【瀬良リツ】チャンネル登録者数9.3万人
ゲーム配信を文章化するのはもうやめます。疲れました。




