138.はじめてのFPS(後編)
「おっとと...ピンの拠点ここですね」
「あ、そうですね」
「車は...停まってなさそうですね。僕が先行するのでついてきてください」
「はい...」
〇【お、ついた】
〇【いなそう?】
〇【ドアも開いてないし】
〇【いないか?】
〇【お】
ドライブしながら雑談していると目的の山小屋にたどり着いた。外から見る限り中には誰もいなそうに見える。
「んー...いないですね!じゃあ、次の収縮までここで待機しましょっか」
「了解です」
〇【誰もおらんか】
〇【nice】
〇【いい位置だ】
〇【ナイス】
〇【ええやん】
「そういえば...あの、四月一日さん」
「あ、頼でいいですよ」
「え?」
「いや、四月一日ってあんまり呼ばれることなくて。なんか違和感すごいんですよねー」
「あぁ...」
〇【それはそう】
〇【頼くんって苗字呼びのイメージないよな】
〇【らいらい】
〇【たしかに】
〇【頼くんだもんな】
僕の場合いつも苗字+さん呼びがデフォだけど、たしかに無人島人狼の時は四月一日さん呼びはあまりされてなかったような気がするな。
「みんなからも頼くんとからいらいとか呼ばれてるのでお好きな方で呼んでください!個人的にはらいらいがオススメですけど」
「じゃあ...頼くんで」
「はい!」
〇【しっくりくる】
〇【頼くん♡】
〇【魔性の男だ】
〇【らいらいスルー】
〇【最近コミュ障ガード突き抜けてくる人多いよね、いい意味で】
「それでなんですか?」
「いや、あの...頼くんはどういうゲームやってるのかなぁと思って」
「僕ですか...んー、いろいろやってるからなぁ」
〇【バーテックスとか?】
〇【TD2】
〇【いろんなのやってるよね】
〇【FPS系】
〇【バーテックスのイメージ強いわ】
「まぁ、FPSだとバトグラ、バーテックス...あとはタイムドライブとかですかね。他ゲーだとスピ6とかMoMとかもやってますよ」
「へぇ...」
〇【マ、ム】
〇【あ】
〇【闇のゲームが何個か混ざってるな】
〇【MoMとTD2はまずい】
〇【闇】
バトグラ、バーテックス、スピ6は知ってるけど他2つは聞いたことないな。
「その...MoMってゲームはどういうゲームなんですか?」
「あれ...もしかして興味あります?」
〇【あ】
〇【あ】
〇【まずいw】
〇【引きずり込まれるぞw】
〇【あ】
え、なんか急にコメント欄がざわつき始めたんだけど...もしかしてやばいゲーム?
「いや...聞いたことなかったのでどういうやつなのかなぁっと思って」
「あぁ、なるほど。MoMは5対5で相手陣地のマテリアルっていうやつを破壊するゲームなんですけど、フルパだとすごい盛り上がって楽しいですよ」
「へぇ...それってランクとかもあるんですか?」
「まぁ...…ありますよ」
〇【重要“フルパだと”】
〇【声に陰りがw】
〇【あそこは魔境】
〇【ランク...?】
〇【セラリツには刺激が強すぎる】
頼くんの声が急に闇を帯びた声色になったのでこれ以上の詮索はやめておくことにする。おそらくランクには魔物が住んでいるのだろう。
「お、そろそろ第2収縮来ますね」
「僕はどこ見ればいいですか?」
「じゃー、こっちから見ててもらえますか?」
「わかりました」
〇【助かった】
〇【エリアどこになるかなぁ】
〇【範囲入れ!】
〇【どこくるかな】
〇【外れませんように】
右上の時間が0秒になり円の範囲が先ほどの半分程度まで縮まった。この山小屋はなんとかギリギリ円の中に収まっている。
「範囲は...お!ギリここ入りましたね。てことはN方向から来る可能性高いですね。車とか来てないですか?」
「今のところは...あれ?もしかしてあれ人かな...?」
「スナイパーは左シフト長押しでスコープ覗けますよ」
「えっと...あ!N方向から徒歩で2人歩いてきてます」
「じゃ、やっちゃいますか」
〇【いっけー!】
〇【初戦闘だ!】
〇【ちょっと遠いな】
〇【倍率低いか】
〇【当たるかなぁ】
うわ、なんかちょっとドキドキしてきた。
「撃っていいですよ!偏差あるのでちょっと上狙ってくださいね」
「は、はい...。あ、当たりました...!」
「いいですねー。どんどんやっちゃってください」
〇【やるねー】
〇【当たってる当たってる!】
〇【いいやん!】
〇【初心者?】
〇【上手いな】
障害物もなかったので狙撃された敵はどうすることも出来ないようでなんとかキルすることが出来た。
「1キルナイスです!」
「アシストありがとうございます」
〇【ナイス!】
〇【記念すべき初キル!】
〇【ナイス!】
〇【上手いよ】
〇【偏差撃ちうまい】
こういうゲームやったことなかったからなんかキルするだけで達成感すごいな...。
「ちょっと相手の物資漁ってくるんで師匠は周囲警戒しててください」
「わかりました」
〇【なんかあるかな】
〇【車の音はしないな】
〇【警戒えらい】
〇【いなそうやね】
〇【いいねー】
「師匠、バッグのレベル何ですか?」
「えっと...2です」
「じゃあこいつら3持ってたんで持っていきますね」
「あ、ありがとうございます」
〇【おー】
〇【持てる量が増えるやつね】
〇【いうてあと何持つんだ】
〇【ええね】
〇【ナイス】
今のところこの容量で足りてると思ってたんだけどあと何持てばいいんだろう。さっき拾おうと思ったけどやめたフライパンとか拾っておこうかな...。
「あ...こいつらスキャンビーコン持ってますね」
「スキャンビーコン?」
「次の安置がわかるやつですね...使ったんですけど、見えます?」
「あー...この白い円ですよね」
「そうです」
〇【また逆側かw】
〇【反対】
〇【なんもなさそーw】
〇【運悪いなw】
〇【がんばえー】
第2収縮の円の中で今いる位置から反対側にもう一つ薄い白色の円が映し出されていた。
「先行きますか」
「行きましょう」
「これが最終なんで勝ちいきましょっか」
「...はい」
〇【拠点とっとこ】
〇【いこいこ!】
〇【先にね】
〇【平原かぁ】
〇【あと5パーティか】
車に乗り込んでとりあえず最終安置の中にある拠点を目指す。どうせここまで残ったんならチャンピオンが取りたい。
「うわー、なんかここらへん誰が芋ってそうだなぁ」
「警戒しておきます...」
「師匠ありがとうございます...って、お!今撃たれましたよね?」
「撃たれましたね...」
〇【いもってるな】
〇【警告かな】
〇【あーあ】
〇【頼くんに喧嘩売っちゃったね】
〇【声が嬉々としてるw】
道路を走行していると自分には当たらなかったのだが明らかに民家から発砲された。通り過ぎると撃つのをやめたかんじを見るにおそらく警告射撃だろう。
「これー...なめられてますよね、師匠?」
「えっとー...なめられてますね」
「そうですよね!じゃあ、やりにいっちゃいましょっか」
「あ...はい。行きましょう」
〇【いけぇ!】
〇【やっちゃえ、セラリツ!】
〇【戦闘狂頼くんw】
〇【草】
〇【なめられたらやるしかねぇ!】
僕に気を使って静かにやる作戦だったけど、多分いつもの頼くんは最初からガンガンキルしにいくタイプなんだろうなぁ。
「家に近づいたら僕が正面から入るんで、師匠は裏の窓から暴れてください」
「わ、かりました」
「じゃ、行きますよ!せーの!」
〇【いけー】
〇【暴れろw】
〇【ショットガンが光る】
〇【いけぇ!】
〇【裏からね】
せーのの合図とともに頼くんが正面切って家の中に入って行って銃撃戦が始まったのを尻目に僕は急いで裏に回り込む。
「1人やってます!あと1人もローです!」
「は、はい...!」
「そこの部屋です!」
〇【タイマンだ!】
〇【緊張する】
〇【ゴー!】
〇【頼くん相打ちか】
〇【ワンオンワンだ】
頼くんに指示された部屋に入ると角で銃を構える敵と目が合う。
射線をずらすために一度ローリングし、相手の頭にレティクルをクロスヘアを合わせて撃ちぬいた。
「や、やりました」
「ナイスー!」
「今起こしますね」
「ありがとうございます」
〇【すげぇw】
〇【しょ、初心者...?】
〇【なんだ今の冷静なローリングは】
〇【絶対前やってただろw】
〇【ヘッショで草】
「師匠...実はやってました?」
「いや、全然やってないです...!」
「まじで今のは歴戦の猛者のムーブでしたよ」
〇【まじでそれなw】
〇【冷静すぎたw】
〇【何気にPS高いんだよなw】
〇【角待ちにヘッショきもちー!】
〇【なんで逆にやってこなかったんだw】
自分でもあの瞬間なんであんなに冷静に行動できたのかわからないくらい今になって動悸がすごい。
「いやぁ、成敗してやりましたね」
「頼くんがすっきりしたならよかったです」
「ええ、すっきりしました!」
〇【よかった】
〇【頼くんもナイス!】
〇【すっきりしたならよし!】
〇【いい仕事した】
〇【あと3パ!!】
「お、最終収縮も始まりましたね」
「あ、じゃあ...移動しますか」
「そうですね。行きましょう」
〇【平原かぁ】
〇【遮蔽なさそうだなぁ】
〇【勝てー!】
〇【がんばれ!】
〇【他パで争ってくれー】
頼くんの回復を待って車に乗り込んだ。マップで見る限り最終安置はだだっ広い平原のようだ。
「これ...なんか銃声聞こえません?」
「あー、遠くの方で...」
「これ他でやりあってますね」
〇【お!】
〇【まじか】
〇【ラッキー!】
〇【漁夫だ!】
〇【漁夫行ける!】
安置の際を車で外周しながら近づいていくと銃声が聞こえてきた。残りは僕たちも含めて3パーティなのでここでチャンピオンが決まる。
「まだこっちに気づいてないっぽいですね」
「そう...ですね」
〇【やりあえー】
〇【いける】
〇【まじでちゃんぽん行ける!】
〇【おー】
〇【ちゃんぽん!】
しばらくして銃声が止んだ。パーティ数が2になっているのでどうやら右にいるパーティが勝ったようだ。
「じゃ、車で突っ込むので適当に暴れてください」
「え...?」
「行きますよー!」
〇【草】
〇【ロードキルだ!】
〇【つっこめー!】
〇【うおおおおおおおお!!】
〇【バーサーカーだw】
僕の考える隙もないまま、僕たちの乗っている車は全速力で敵がいる方向に突進していく。
途中でこちらに気が付いた敵が銃を構えたが、その瞬間には回復中の敵1人を思いっきり弾き飛ばしていた。
「こっちキルしてます!残りそいつだけ!」
「あ...武器が...」
〇【いっけー!】
〇【あ】
〇【マチェットw】
〇【ナイフキルか】
〇【マチェットw】
焦るあまりショットガンを取り出すつもりが、僕のキャラはおもむろにマチェットを取り出しながら車から降りてきた。
その様子に相手も一瞬怯んだようだったので、覚悟を決めて思いっきりマチェットを振りかざした。
『大勝利!!今日はちゃんぽんだ!』
「ナイスちゃんぽん!やりましたね!」
「なんとか...」
〇【きたああああああああああ!】
〇【ちゃんぽんきちゃー!】
〇【うおおおお!】
〇【おめでとう!!】
〇【ちゃんぽん!!】
流石にでかいナイフ片手に悠々と車から降りてきたら敵もびっくりするよな...。
「初FPSで3キルはすごいですね」
「頼くんのおかげですよ...それに最後のは、ちょっと例外だと思いますし」
「まぁーちょっと見たことはないですね」
〇【草】
〇【ナイフキルw】
〇【笑ったw】
〇【最後にねw】
〇【3キルはすごい】
なんにしてもチャンピオンとれたのは普通に嬉しいな...。
今までなんでこんなに面白いゲームをやってこなかったんだろうと後悔するほど面白かった。
「もう1時間たったんですね...」
「まー、バトグラは1ゲームが長いですからねぇ」
〇【そうねw】
〇【結構長いよね】
〇【1時間もたったのか】
〇【最後まで残るとね】
〇【はっや】
マッチ中ずっと集中していたので張りつめていたものが緩み、その分疲れがドッと襲ってきた。
「まぁ、ちゃんぽんもとったことですし今日はしめますか」
「そうですね」
〇【おつ!】
〇【ナイスちゃんぽん!】
〇【オツカレ!】
〇【お疲れ様】
〇【もう1時間か】
「最後にみんな、なんでこの2人で急にバトグラデュオをしたのか...わかる?」
〇【え?】
〇【なんだ】
〇【まじで...?】
〇【え?】
〇【大会⁉】
「まぁ、特に何の理由もないんだけど」
「ちょっと僕もびっくりしてました...」
〇【ないんかいw】
〇【草】
〇【セラリツw】
〇【草】
〇【なんかの大会出るんかと思ったw】
僕が知らない間に何かの大会にエントリーしているのかと思って変な汗が出てきたよ...。
「じゃあ、今度は師匠からスピ6教わる配信ですかね?」
「あ...そんな話しましたね」
〇【楽しみにしてる】
〇【おぉ!】
〇【それはやってくれ!】
〇【うおお】
〇【楽しみ!】
「じゃあ...えっとなんだっけ...」
「...え?」
「あ!みなさんでは、またー!」
「あ...では、また」
〇【ではまたー!】
〇【ではまたー】
〇【ではまたー!】
〇【デハマタ―】
〇【ではまたー!】
なんかこういう自分の身内ネタみたいなのを知られてるの...ちょっと恥ずかしい。
◎このライブストリームは終了しました。
【バトグラ】荷物持ちなら任せてください【瀬良リツ/四月一日頼】
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