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13.事情聴取


僕は寝ぼけ眼を擦りながら通学路に立っていた。


昨日のコラボは我ながら初めてにしてはよくできていたと思う。あの後、アルファさんとディスコードを交換してまたコラボしようと約束した。言ったら営業妨害と怒られるかもしれないが、ああ見えて意外と面倒見がいいらしい。


まぁ、そのやり取りのせいで深夜の2時ごろまで起きていたのでまだ少し眠いのだが。  




今日はこのまえのことを踏まえて少し遅く家を出ることにした。これならおそらく篠宮さんたちにはエンカウントしないだろう。



篠宮さんといえば、あの総司との話し合いのときに桜花がすれ違ったと言っていたがもしかしてあのシーンを見られていたのだろうか?


だとすればかなりまずいのだが、今のところ彼女からこちらに直接のコンタクトはないし彼女自身が不審な挙動をしていることもない。だとすれば、篠宮さんは偶然あの付近で用事があって僕たちのことは見ていなかったということだろうか。そうであれば一番良いのだが。



後ろの方からこちらに向かって走ってくる足音が聞こえた。


「律月ちゃーん!」


後ろから急に飛びつかれ、少し体勢を崩した。視野外からの攻撃は危険なのでやめてほしい。


「おはよー!」


「おはよう、桜花」



桜花はまだ抱きついたままにこっと微笑んだ。

傍から見れば百合展開万歳なのだが、精神が男の僕としては例え幼馴染だとしても異性のこういう態度には多少ドキッとするものがある。

失礼、かなりドキっとする。


それを悟られないようにあえてクールに振る舞う。


「今日は朝練ないのか?」


「んー。今日は久々に律月ちゃんと登校したくて!それに朝は自主練だから行かなくてもいいんだ!」


「そっか。あと歩きにくいから離れて」


「んー...」



依然として抱きついている無理やり引き剥がした。このままだと僕の心がもちそうにない。



「そういえば、この前篠宮さんとすれ違ったって言ってたよな?」


「えーと、いつだっけ?」


「おととい」


「あー、総司ちゃんと話してたとき?」


「そうそう」


というか、総司もちゃん付けされてるのかよ。


「その時篠宮さん何かなかったか?」


「なんかって言われるとなぁ...」


首を傾げて悩んでいる。なんか、推理漫画の事情聴取みたいだな。


「あ、そういえばあの時の篠宮さん私見て急いでどっかに行っちゃったみたい。その前はわかんないけど」


「あー、そうか」


ということは、何かやましいことでもあったのだろうか。これは怪しい。


「桜花。ちょっと頼みがあるんだけど」


「いいよ!」


いや即答かよ。もう少し考えて発言したほうがいいと思うけど。ちょっと将来誰かに騙されないか心配だ。


「篠宮さんに僕のことバレてないかそれとなく聞いてみてほしい。勿論、僕のことは伏せて」


「んー、わかった。やってみるよ。そういえば、あのとき普通に素が出てたもんね」


「ちょっと油断してた」


あそこは滅多に人が来ないし、朝っぱらだということで学校内だというのに完全に油断しきっていた。


「律月ちゃんはそういうところいっつもツメがあまいねー!」


ニヤニヤとしながら小馬鹿にしてくる桜花にムカッとして脇腹を軽く突いてやった。


「とにかく頼んだぞ」


「あいあいさー!」





***************


【櫻木桜花視点】


律月ちゃんと別れたあと、私は一度自分の教室に戻って篠宮さんとどう話そうかプランを練っていた。

律月ちゃんが話す限りだとあの時篠宮さんに普段の姿を見られてしまったらしい。私的には他の人にもいえば皆優しいから普通に受け入れてくれると思うんだけど...。まぁ、中学校で律月ちゃんはトラウマを抱えているので慎重になるのは仕方のないことなのかもしれない。



昼休みになって律月ちゃんのクラスに行くことにした。教室を覗くともう律月ちゃんの姿はなかった。恐らく一人でいつもの場所で食べているのだろう。


教室の端でお弁当を食べている篠宮さん達を見つけた。さて、談笑しているところ悪いがちょっとお時間いただこう。



「篠宮さん、ちょっといいかな?」


「ん?あーっと、櫻木さん?うん、いいよー!ごめん、ちょっといってくる」


「いってらー」


「ごめんねー」


私は人通りの少ない場所に彼女を連れていった。こういう言い方をするとちょっと危険な香りがするな...。



「それでどうしたの?」


「うん。ちょっと聞きたいことがあって」


律月ちゃんからはあくまでも慎重に聞けと言われている。


「この前、すれ違ったとき篠宮さん私見て急いで行っちゃったように感じたから私なにかしちゃったかなーって。ああ!別に責めてるわけじゃなくてね」


ちょっと強引だったかもしれない。


「あー...あの時ね。ちょっといらぬお節介で瀬川さんにこっそりついていったら櫻木さんが来たから思わず逃げちゃってさ...」


「お節介?」


やはり、律月ちゃん絡みだったか。



「3組の日下部くんに呼び出されてたから何かあるのかなーって魔が差しちゃってね」


総司ちゃんは眼光がちょっと鋭いので学校モードの律月ちゃんとのセットはたしかに心配になるのはわかる。


「でも、見たら楽しそうに話してたし完全に余計なお節介だったなー。このことって瀬川さんには話してるの?」


ここは話していないというほうが都合がいいかも。


「知らないよ」


「あー、よかった!ごめんだけどできれば話さないでおいてもらっていいかな?気持ち悪がられたら嫌だし」


「いいよー」


ま、律月ちゃんはこういうことで人を気持ち悪がったりはしないけどね。



「楽しそうに話したって言ってたけど」


「んー、なんか日下部くんと話してるときに「ボク」とか言ってたからさぁ...。多分、私の知らないアニメとかの話なのかもしれないけど」


「...そっか」


律月の兄貴...めちゃくちゃやばいところ聞かれてますぜ...。

よりにもよって、そういうところを聞かれたのか。でも、彼女はアニメの話だと勘違いしているようだしセーフかな?



「櫻木さん!」


「は、はい!」


急に彼女が私の手を握って顔をじっと見つめてきた。



「私、瀬川さんと仲良くなりたいの。もしよければ手助けしてくれない?」


んー篠宮さんにはわるいけど律月ちゃんは多分面倒臭がるだろうなぁ。でもこういう頼まれごとに昔から弱いんだよね...。いっつも断れないし。


「まぁ...できることがあれば」


私のばか!

このことは律月ちゃんには言わないでおこう。



「そう、ありがとう!じゃあ、私のことは悠ってよんで!」


「じゃあ、私は桜花って」


「桜花本当にありがとうね!それじゃ、もういいかな?」


「あ、うん。時間とってごめんね」



彼女は手を振って小走りで去っていった。そろそろお昼休みが終わる時間か。私も急いで教室に戻って少しでもお腹にいれておかないと午後もたないな。



それにしても篠宮さん改め悠ちゃんと律月ちゃん。

私の立ち回りが二重スパイみたいになりそうだなぁ...。




さて、どうやって私は立ち回ればいいんだ...?

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