133.メタノヴァ1日目
【メタノヴァ1日目】早く家に帰りたい【陽月リツ】
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【瀬良リツ】チャンネル登録者数70.8万人
※このコメントは瀬良リツさんによって固定されています
●【鳩・荒らし・指示・ネタバレ・自治行為はしないように!!1人の時はRPが外れる場合もあります!】
〇【くるか】
〇【お】
〇【固定助かる】
〇【きた!】
〇【きたー!】
「はぁ...やっと着いたのか」
〇【お】
〇【お!!】
〇【来た!!】
〇【きたあああああああああ!!】
〇【空港だ!!!】
大きなキャリーケースを小脇に抱え、僕は空港のエントランスから出てきた。
「ゆうちゃん、有名インフルエンサーになるって言ってこの街に来たらしいけど...」
〇【ゆうちゃん!?】
〇【ゆうちゃん呼びだ】
〇【ゆうちゃん草】
〇【ちゃんとRPしてんな】
〇【おお】
僕はインフルエンサーになるために家出した妹を連れ戻しに来た兄役なのだが...。
「とりあえず電話かけるか」
〇【電話あるんだ】
〇【お!】
〇【ゆうちゃん!】
〇【登録名草】
〇【至宝で笑うw】
陽月ゆう【ゆうちゃん】と登録された電話番号にかけると数コールの後、ゆうが電話に出た。
「あ...もしもしゆうちゃん?」
『あ、りっくん!!』
〇【りっくん!?】
〇【りっくん!?】
〇【草】
〇【双子っていうかカップルじゃねーかw】
〇【りっくんw】
「空港に着いたんだけど、ゆうちゃんはどこにいるの?」
『あ、今ねーステラっていうライブハウスにいるよー!りっくんも来る?』
「いや、来るって...」
『タクシーとかバスとかあるからね!』
「うーん...」
〇【かっるw】
〇【軽いなw】
〇【可哀そうw】
〇【草】
〇【草】
迎えに来てくれるという選択肢はないんだろうか。
『それじゃー、待ってるからね!』
「わかった...」
『気を付けてきてねー』
「はいはい」
〇【尻に敷かれてて草】
〇【かわいそ】
〇【草】
〇【RPでもゆーちゃん優位なんよね】
〇【草】
「はぁ...えっと、空港がここだから...結構遠いな」
〇【3キロか】
〇【割と遠いな】
〇【3キロね】
〇【ため息ついてるやんw】
〇【タクシーかバス?】
確かにこの街にはタクシーやバス、電車という公共交通機関が存在しているらしいがコミュ障を拗らせた僕が他人と接しなければいけないような行動をとるだろうか...いや、ない。
「歩くか」
〇【!?】
〇【歩くんだよねw】
〇【草】
〇【当然のように徒歩を選択ッ!】
〇【3キロ歩くんかw】
キャリーケースを引きずりながらとことこライブハウスへ向かう。
「荷物重いな。って、うわっ!」
〇【!?】
〇【びっくりした】
〇【なんだ】
〇【爆発?】
〇【なんだなんだ】
景色も見つつ歩いていると、遠くで大きな爆発音が響き渡りたまらずその場に伏せた。
「なんだ今の...」
〇【こえー】
〇【びっくりした】
〇【怖いですねー】
〇【この街ではよくあること】
〇【なんか落ちた?】
あまり意識してなかったけどさっきからあっちこっちでパトカーのサイレンの音が鳴り響いてる。
「早くゆうちゃん連れ帰らないと」
〇【一応ゆうちゃん連れて帰るのが目標なのか】
〇【治安悪そうだもんね】
〇【そうだね】
〇【兄さん】
〇【サイレンもようなっとる】
立ち上がって再び歩き始めようとしたところで後ろから一台のパトカーがこちらに向かってきた。
何かこちらに叫んでいるようだったが、聞こえないふりをしていると僕の隣に停車し車から降りてきた。
「お兄さん、ここらへん危ないですよ!」
「え...あ、あの」
「とりあえずパトカー乗ってください!安全な場所まで送りますので!」
「あぁ...はぃ」
〇【草】
〇【※RPです】
〇【素のセラリツで草】
〇【いつもの俺やん】
〇【僕のRPするのやめてもろて】
「どこまでお送りしましょう?」
「あの...ステラという場所まで」
「はいよー」
〇【軽いなw】
〇【かっる】
〇【第一住民だ】
〇【気の良い人だな】
〇【ガッチガチで草】
有無を言わさずパトカーに乗せられて後部座席で小さくなる僕のことなど気にもせず、陽気な口調で警官は語り始めた。
「お兄さん、もしかして今日この街に来られた方ですか?」
「えぇ、まぁ」
「あー、そりゃ災難ですね」
「災難...?」
〇【なんだ】
〇【なんかあるんか】
〇【災難?】
〇【おや】
〇【イベント?】
「いやぁ、実は最近このあたりでマフィア同士の抗争が起こってましてね」
「マ、マフィア...」
「さっきの爆発聞きました?ロケットランチャーですよ、ロケットランチャー」
〇【こっわ】
〇【ロケランw】
〇【やべーワード出てきたw】
〇【抗争あるんだ】
〇【治安悪すぎるw】
ロケットランチャーでマフィアの抗争って...アニメとか漫画の世界でしか聞いたことないワードだ。
「あ、すみません!自己紹介がまだでしたね。私は無頼カンジと言います!」
「陽月リツ、です...」
「陽月...もしかして、ゆうちゃんのご家族とか?」
「ゆうちゃんとは...双子の兄で」
〇【お!】
〇【ゆうちゃんの知り合い】
〇【知ってる人だ】
〇【お】
〇【ぎこちないw】
まだ来て日も浅いだろうにもう名前を知られているとは。
どこでもコミュ力強者だな、ゆうは。
「あぁ、噂の!」
「噂...?」
「ゆうちゃんがかっこよくて何でもできて私のことをいつも第一に考えてくれる超完璧お兄ちゃんだって言ってましたよ!」
〇【草】
〇【ブラコンじゃねーか!】
〇【草】
〇【もりもり】
〇【スパダリで草】
ゆうちゃん、僕怖いよ。
何が怖いってコミュ力クソ雑魚なのに第一印象スパダリで見られることが怖すぎるよ。
「リツさんは何をしにこの街に?」
「あの...ゆうちゃんを家に連れ戻しに」
「へぇ、確か家出してきたんですよね」
「...はい」
〇【知ってるんだ】
〇【声ちっさw】
〇【限界だw】
〇【大丈夫かセラリツw】
〇【草】
「まぁ、ご家族からしたら心配ですよねー。この街は危険も多いし」
「そう、ですね」
「でもまぁ、嫌なことばっかりじゃないですよ」
「はぁ...」
〇【初日からマフィアの抗争に出くわすしな】
〇【危険しかない】
〇【ほう】
〇【危険が危ない】
〇【へぇ】
「お、そろそろ目的地ですよ。あの建物です」
「あ、どうも...」
〇【あざます】
〇【ついたー】
〇【雰囲気あるね】
〇【おー】
〇【ついたか】
着いた場所にはネオンに光る文字で『STELLA』と書かれた看板が掲げられ、店の外壁には複数のバンドらしきポスターが貼られていた。
「あ、最後に」
「...?」
〇【お】
〇【なんだ】
〇【ん?】
〇【うん?】
〇【お】
お礼を行って車内から出ようとすると無頼さんは僕の方を振り返って声をかけた。
「もし良ければゆっくり観光でもしていってください。この街には素敵なこともたくさんありますからね!」
「あ...はい。ありがとうございます」
「それでは、またどこかで!」
〇【ではまたー】
〇【では、またー】
〇【ではまたー!】
〇【ではまたー!】
〇【ではまたー】
そういうと無頼さんはキザな笑顔を見せてそのまま去って行った。
「気の良い人だったな...」
〇【優しそう】
〇【ね】
〇【いい人そうだった】
〇【いい兄ちゃんだった】
〇【また会えるかな】
「ていうか...ゆうちゃん、もしかして中にいるのか」
〇【そりゃそうじゃ】
〇【そりゃね】
〇【わかるよ】
〇【入るんだ!】
〇【がんばれ】
ゲームの中とはいえ、人生でこういう陽の気が蔓延しているような場所に入ったことがないので普通に緊張する。
意を決して扉を開くと何やらライブ演奏中らしく薄暗い店内の中でステージだけがスポットライトで照らされていた。
「あ、りっくん!こっちこっち!」
「ゆうちゃん...」
〇【お!】
〇【ゆうちゃんだ!】
〇【いた!】
〇【お】
〇【いたいた】
扉の前で縮こまっているとバーカウンターの方から声を掛けられ振り返るとゆうちゃんが手を振っていた。
「あ、リンさん!りっくんにうちと同じのお願い」
「はいはい」
「さ、座って座って」
「あぁ...」
〇【嫌そうw】
〇【為されるがまま】
〇【草】
〇【草】
〇【ゆうちゃんだ】
本当は早く店を出たいのだがゆうの勢いに押されるままにカウンター席に座ってしまった。
「リンさん、この人が言ってたりっくん!」
「あぁ、いつも自慢してるお兄さんね」
「陽月リツです...」
〇【ここでもw】
〇【スパダリね】
〇【草】
〇【逃げられないよ】
〇【スパダリです】
「りっくん、この人はリンさん!この店の店長だよ」
「リン・キャンベルよ。よろしくね」
「...よろしくお願いします」
〇【お姉さん系だ】
〇【りっくん大丈夫かw】
〇【お姉さんだ!】
〇【色気すご】
〇【セラリツw】
「リンさんはね、うちがこの街に来て初めてあった人で今はリンさんの家にお世話になってるんだ」
「まぁ、ゆうが可愛いからお世話したくなっちゃうんだよねぇ」
〇【流石ゆうちゃん】
〇【コミュ力たっか】
〇【草】
〇【さすゆう】
〇【それはそう】
まだゆうもこの街に来て1週間だというのに溶け込むのが早すぎる...。
「うちの妹がありがとうございます。何かお礼とか...」
「いーのいーの。それにゆうにはこの店手伝ってもらってるから」
「そうそう!うち、今ここでアルバイト中なんだ!」
〇【ほう】
〇【えらい】
〇【バイトとかあるんだ】
〇【へぇ】
〇【バイトか】
「アルバイト...」
「うん、ここなら定期的にいろんな人がライブしてるからたくさん交流出来るでしょ?」
〇【まぁね】
〇【なるほど】
〇【夢のためにね】
〇【しっかりしてる】
〇【確かに】
バンドメンバーやアイドルなんかと繋がることで横の繋がりを作るという意味では理には適っているのかもしれない。
「そういえばリツくんは外大丈夫だった?」
「え...大丈夫というと?」
「今、ちょっとマフィア同士のいざこざで街が騒がしいのよ」
〇【あ、さっきのね】
〇【さっき聞いたやつか】
〇【あ】
〇【爆発】
〇【あぁ】
「それならさっきここまで送ってくれた警察官の方にお聞きしました」
「警察官?」
「はい...無頼さんという方に」
「あぁ、カンジくんね。あの子はちょっとチャラいところがあるけど真面目で良い子だから何かあったら頼るといいわよ」
〇【チャラいんだw】
〇【第一住民いい人そうでよかった】
〇【へぇ】
〇【よかった】
〇【そうなんだ】
「それで...マフィア同士の抗争っていうのは、この街では珍しくないんですか?」
「んー...まぁ、珍しいってことはないけど。そう毎日あることでもないかもね」
「はぁ...」
〇【珍しくないんだ】
〇【こっわ】
〇【巻き込まれなきゃいいけど】
〇【へぇ】
〇【危ないな】
ゆうが巻き込まれて危険な目に遭う可能性もあるよな...。
「まぁ、マフィアって言っても基本的にはみんな優しい人ばかりよ。ほら、あの子とか」
そう言われてカウンターから振り返ると一人でお酒を片手にライブを鑑賞している一人の女性がいた。スーツを着ているが年齢的に僕たちとあまり変わらなそうに見える。
「あぁ見えてマフィアのメンバーの子だしね」
「え...!?あんな子が...」
「まぁ、この街ではそう珍しくもないからね」
〇【まじか】
〇【たしかにスーツはきまってる】
〇【雰囲気あるね】
〇【へぇ】
〇【どこにでもいるんだ】
僕のイメージだとマフィアっていうとガタイのがっちりした強面の男性ばっかりだと勝手に思ってた。
「ゆうちゃんは何かトラブルとかには巻き込まれていない?」
「んー、特には?ていうか、あの子ともうち友達だよ!」
「へ、へぇ...」
〇【すごw】
〇【さすゆう】
〇【草】
〇【マフィアにも屈さない女】
〇【すご】
ゆうちゃんに黒いつながりが...。
「まぁ、でもエクリプスっていうマフィアには気を付けた方がいいかもね」
「エクリプス?」
「赤いスーツを着てるマフィアなんだけど、あそこは市民にもお構いなしだから」
〇【へぇ】
〇【怖いね】
〇【あの子は黒スーツだから違うのか】
〇【なるほど】
〇【エクリプス】
「あまり私も詳しくはないけど、今抗争してるのだってエクリプスとザ・スカ―っていうところらしいわよ」
「へぇ...武闘派なんですね」
「あ、そういえばフェンさんがエクリプスがなんたらって言ってた気がする!」
「フェンさん?」
〇【また新しい人が】
〇【フェンさん?】
〇【誰だ】
〇【エクリプスとザ・スカ―ね】
〇【何個マフィアあるんだろう】
話を聞いていたゆうが横からぐいっと割り込んできた。
「そのザ・スカ―ってところのボスね」
「ボス...」
「初日に車で街案内してくれたんだ」
「...もう、なんて言っていいのかわからないよ」
〇【やばw】
〇【ゆうちゃんw】
〇【!?】
〇【言葉を失うw】
〇【やばすぎだろw】
黒いつながりどころかマフィアのボスとのつながりまで...。
もしかしたらゆうがこの街を裏で支配する時もそう遠くはないのかもしれない。
「ところでりっくん、今日泊まるところあるの?」
「いや...まだ。どこかのホテルでも泊まろうかと」
「あ、そうなんだ!じゃあ、近くにあるホテルまで案内しようか?」
「あぁ、ありがとう」
〇【優しい】
〇【ありがと】
〇【ゆうちゃん♡】
〇【お】
〇【ホテルとかあるんだ】
「じゃあ、お会計を...」
「あぁ、それなら大丈夫よ」
「え?」
〇【おや】
〇【隣の方がお支払いしてる?】
〇【お】
「今日、初日でしょ?サービスよ」
「あ…ありがとうございます」
「この街を楽しんでね」
〇【優しい...】
〇【いい女だ】
〇【リンさん...♡】
〇【リンさんいい人だ】
〇【この街にはいい人しかおらん】
僕は深々とお辞儀をしてお店を出た。
初っ端からマフィアの抗争に巻き込まれかけそうになったけど、カンジさんやリンさんみたいな優しい人に初日から出会えたのは幸運だったのかもしれないな。




