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115.打ち合わせ3回目


『おはようございます』


「あ、おはようございます」


『お、おはようございます。本日もよろしくお願いします!』


「よろしくお願いします」


定刻になったため、佐井さんと黒森さんがディスコに入ってきた。今日は出来上がったモデルの最終チェックを含めた最後の打ち合わせだ。



「さっそくなんですけど仕上げたモデル確認してもらいたいんですが」


『はい、大丈夫です』


ファイルを確認してディスコで『黒森玲音』のデータを送った。前回の最後にもらった要望をもとに手直しを加えた完全体黒森玲音だ。



「送りました」


『はい、受け取りました。確認します』


『あ、ありがとうございます』


自分でも完成したデータを開いて見てみるが中々に良い出来だと思う。自分の娘だという贔屓目もあるのだろうが今僕が出来る最高の作品だと自負している。



『『...』』


「どう...でしょうか?」


受け取ったデータを見て二人は黙ってしまった。


あれ、もしかして何か不備があっただろうか...?



『め...っちゃくちゃ感動しました!!先日お願いしたケープのデザインも制服にばっちりあってて!ボーイッシュな見た目なんですけど華奢な分、儚さが際立っているところとかもう最高で!これが私の体になるんだと思ったら...』


『玲音、ちょっと落ち着いて』


『あっ...すいません!自分語ると長くて...』


「いえ、お気に召していただけたようでありがたいです」


沈黙に弱いタイプだから不安になってしまったけど大丈夫だったみたいだ。それにしても限界化するくらい喜んでくれたのなら僕も嬉しい限りだ。



『私も見た瞬間完成度に圧倒されました』


「ありがとうございます」


『動作テストも行っていいでしょうか?』


「あ、はい。お願いします」


昨日自分でも裏で特殊エモートも含めて動作確認はしてみたので大丈夫だとは思う。



『じゃあ玲音やってみて』


『え...じゃあ』


恐る恐るといった感じで黒森さんが動作テストを行う。



『お...おお!すごい...すごいです!』


「特殊エモートのほうは大丈夫ですか?」


『あ...大丈夫です!ばっちり動きます!』


先週言われた通り眼帯を外したら目が光るという特殊エモートをつけたのもいい味出していると思う。何か決め台詞を言ったり技を出したりしたときに光らせればいい感じに映えそうだ。



「よかったです」


『ほんとにありがとうございます!』


「何か後から確認して不備があればまた連絡していただけたら修正しますね」


『はい。ありがとうございます』


さて、あとは何かなければ解散の流れではあるが。



「何もないようならもう解散ということになるんですが...大丈夫ですか?」


『私は大丈夫ですが...玲音何かある?』


『あ...あの、何かあるってほどじゃないですけど...』


黒森さんが何か口ごもる。僕も逆の立場なら緊張して何も言えないだろうからわかる。



「なんでしょうか?」


『解散前にちょっとしたお話とか、しませんか?』


打ち合わせの後に緩い感じで冬コミの作業でも行おうと思っていたが、今日は特にタイトなスケジュールというわけではないので後回しでいいか。それより娘との交流の方が大事だ。



「自分は大丈夫ですよ」


『じゃあ、私はお先に抜けますね。瀬良先生お疲れ様でした』


「あ、はい。佐井さんお疲れ様です」


佐井さんは気を利かせてくれたのか先に落ちて行ってしまった。佐井さんとは打ち合わせも含めてまだ数度しか連絡を取り合っていないがこういうの含めて節々から『出来る女』感がひしひしと伝わってくるんだよね。



『せ、瀬良さん...』


「はい」


二人っきりの場面はあまり僕も得意ではないんだけど相手が自分よりも緊張している分なんだか楽な気持ちだ。



『先日もちょっと言ったと思うんですけど、私瀬良さんの大ファンでいつも配信で元気もらってて』


「あぁ、ありがとうございます」


ファーストコンタクトですごい勢いでまくしたてられたからよく覚えている。



『自分語りにはなるんですけど...いいですか?』


「大丈夫ですよ」


『実は昔ちょっと鬱状態みたいになってて何もやる気が起きない時期があったんですけど、その時に瀬良さんの配信に出会って私も挑戦してみようって気持ちになったんです』


いつの配信のことだろう?フロムヒアに応募したということはやっぱりフロムヒア2期生の応募の雑談のことだろうか。何にせよ僕の言葉がこうやって誰かに影響を与えているということがわかってなんだか不思議な気持ちだ...。



『そして...夢にまで見た瀬良さんとこうして話が出来ているだけで本当に幸せなんです』


「...そこまで喜んでいただけたなら僕も嬉しいです」


今まで面と向かって僕のファンと話したことがなかったから改めてこうして話してみて少し照れくさい。



『それでよろしければなんですが...』


「はい」


『私の初配信...見に来てくれませんか?』


「いいですよ。もとから見るつもりでしたし」


『本当ですか!?ありがとうございます!』


ゆうの時もそうだけど僕が作り出した『黒森玲音』という娘の人生で1度しかない初配信を見逃すわけにはいかないからな。



「いつデビューするかは決まってるんですか?」


『えーっと、まだ詳しくは決まってないんですけど来年の1月あたりには』


年末はフロムヒアもいろいろな企画とかで忙しそうだし、それが落ち着いてからっていうことなのかな。



「じゃあデビューして落ち着いたら配信でコラボしてくれませんか?」


『はい...え!?コラボですか!?』


「僕、自分の娘とコラボするために配信してるのでもしよろしければ」


『全然もう!私なんかで良ければ!!』


よかった。半年以上活動してコラボ回数が少ない僕でも娘の黒森さんとは普通にお話し出来ると思う。



「じゃあ...初配信とか準備とか頑張ってくださいね。応援してるので」


『はい、ありがとうございます!』


「何かあったら気軽に相談ください。僕にも力になれることはあると思うので」


『何から何まで...私頑張ります!今日はありがとうございました!お疲れ様です!』


「お疲れさまでしたー」


そういって僕はディスコから落ちた。前から言おう言おうと思っていたコラボの約束もVのママという立場を使って取り付けることが出来たし万々歳だ。


おそらく黒森さんの方が僕より年上なんだろうけどめちゃくちゃ素直で妹のような可愛げがあってなんだか撫でまわしたくなった。


でもコラボするときは裏とは違って音声データで聞かせてもらった中二病ロールプレイで接することになるだろうし接し方も変わってくるだろうな。どうしよう...ロールプレイとはいえ冷たく接されたら泣いちゃうかもしれない。


この作品を読んでいただきありがとうございます!皆様からの応援が執筆の励みになりますのでよろしければ気軽に感想やご意見を送っていただけると幸いです。


また、少しでも面白いと感じていただけたら下の[☆☆☆☆☆]から評価もお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分は全然遅いと思いませんよ! 更新してくれるだけでありがたいです
[一言] ゆっくりでええんやで
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