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8.決めていないことがあった


殿下が引退っていった瞬間、まじで焦った。


その後の発表があと5秒遅れていればたぶんパソコンを叩き割っていただろう。キーボードクラッシャーよろしく。


「企業Vか...」



僕は椅子に深くもたれかかりながらさっきの殿下の配信を思い返していた。



今まで殿下は個人バーチャルライバーとしてここまで頑張ってきた。それこそ最近は登録者数10万人を突破してライバーの中でも中堅クラスの知名度を誇っている。



企業バーチャルライバーというのは基本的に先に出たライバーの人気の積み重ねによってその後デビューする人たちのスタート値が変わる。


僕はフロムヒアの公式ホームページを開く。



まだ新設ということでデビューを控えた5人のライバーたちが公式設定とともに載っていた。


この子たちがデビューするのは1番早くて5月下旬頃と書いてある。つまり、殿下がフロムヒアという名前を宣伝してその後正式に1期生のこの子たちがデビューするというわけだ。


0期生と言っても1期生よりも前にデビューしているから、というわけではないらしい。優秀そうな個人勢をスカウトして事務所入りするときに引退せずにそのまま加入することができるシステムなんだとか。



「なるほど、よく考えるもんだ」



0期生は殿下の他に2人いる。


一人目は「神部カグラ」現在登録者数17万人

巫女系バーチャルライバーとして活動していて、活動内容は雑談やゲームなど。普段の凛々しい姿とは裏腹にホラゲーのときにみせた半泣き声のギャップに陥落するファンも多い。

因みに僕も彼女の配信はたまに見ているが、普段は宝塚女優っぽい感じでかっこいいのにホラゲーのときにだけ女の子出されたらもうスパチャ投げるしかなかった。断じてこれは浮気ではない。




二人目は「エル・オーアル」登録者数10万人

ファンタジー世界の冒険者のような見た目をした女性なのだが、彼女は自分がバ美肉であると宣言しており、ボイスチェンジャーをつかって配信している。自分からよくおじさんネタをするのだが、普段の言動があまりに可愛すぎることで「本当はおじさんと言い張る幼女なのでは…?」とファンの間で思われている。

確かに中身がおじさんだとしても彼女は絶対に幼女だ。間違いない。



そしてもう一人、ここに入るのがリリカ・ルルーシアだ。

綺麗系、幼女、可愛い系と棲み分けもちゃんとされているしいいんじゃないだろうか。まぁ、フロムヒアの他の子たちがデビューしたら多少はかぶるところもあるだろうが。













フロムヒアのホームページを端から端までチェックしようとマウスホイールをぐりぐりしていると、急に電話がかかってきた。

僕に電話をかけられる相手はそんなにいない。なぜなら、家族以外にはほとんど電話番号を教えていないからな!

・・・。



「もしもし、何、総司?」


『あぁ、ちょっと言いたいことがあってな』



電話の主は日下部総司(くさかべそうじ)。僕の数少ない友人の一人で、幼馴染の片割れだ。


『非常に言いづらいことなんだが...』


「何だよ。水くさい。僕と総司の仲じゃないか」



『そうか。...実は俺の友人がお前のことが気になるらしくてな。幼馴染の俺からお前に聞いてほしいって...。3組の中田っていうやつなんだが』



まぁまぁまぁ。とりあえず少し待とう。




「ちなみに聞くけど性別は?」


『もちろん男子だ』


・・・。

まぁ、女子だったところで付き合うわけではないんだけど。男子だったら、僕視点ただのBLなんだよ。



「聞いた僕が馬鹿だった...あぁ、友達だと思ってたのに」


『律月が水くさいって言ったじゃないか!』


「そんな話だと思うか、普通!頼み事かと思ったわ。というか、絶対OKしないってわかるでしょ!そっちから最初から言ってくれよ」


『いや、俺も絶対無理だって言ったんだが...そしたら周りがお前と付き合ってるんじゃないのかって疑われて、仕方なく...』


泣き入りそうなほど小さくなった声を聞いて僕は、そういえばこいつは生徒会とかやってるくせにプライベートではめちゃくちゃ泣き虫だったと思い出した。



「わかったって。僕も悪かったよ。とにかく、その中田君とやらには後日無理だって伝えておいてくれ」


『...そうだな。わかった』


そうだ。

彼になら別に配信のこと言ってもいいんじゃないか?まぁ、幼馴染だし、配信をやってるってことだけ教えてやろう。こいつも実は根っからのオタクだからな。流石に身バレはしないだろうから。軽く報告して切るか。



「そういえばさ。僕からも言いたいことがあるんだ」


『ん?なんだ』




「最近、僕バーチャルライバーになったんだよね。それだけ。それじゃー」


『えっ・・・はぁ!?いきなり何...』



切る前に何かと言っていたようだけど何を言っているか聞こえなかった。まぁ、総司だしいいか。明日は月曜日だし、明日聞けばいいだろう。






 


さて、現在の時刻はPM10:30。この時間帯はライバーたちが一番活発な時間である。今から配信してもさほど人は集まらないだろうが、そういえば初配信でやっていないことを思い出した。



とりあえず、枠をとって決めるだけ決めたらすぐ締めよう。






【タグ決め】初配信の続き【瀬良リツ】

903人が視聴中

 ↑578 ↓4 □

【瀬良リツ】チャンネル登録者数5.3万人



〇【突発か?】

〇【タグそういえば決めてなかったな】

〇【殿下の配信終わったから始めたんか】

〇【告知してないね】

〇【忘れてるんじゃね】

〇【待機】




「あ、どうも、瀬良リツです。2回目の配信がこんな感じで申し訳ない。みんなほかに見たいライバーさんもいると思うから秒で終わらせますよ」


〇【初配信後半戦みたいなもんだと思えば】

〇【瀬良先生を見に来てるんだよ】

〇【爆速配信、助か...るのか?】




「とりあえず、配信タグなんだけど...何か案あります?」


〇【瀬良工房】

〇【瀬良放送中】

〇【リツオンライブ】

〇【リッツパーティ】

〇【今日瀬良】

〇【リツセライブ】

〇【瀬良展覧会】




「あー、今日瀬良いいですね。野球あんまり知らないですけど」


〇【よっしゃ!】

〇【リツセライブ...】

〇【京セラ大阪ドーム知ってるだけ野球わりと知ってるよ】





「じゃあ次は...ファンタグ?これいるかな」


〇【ほしい!】

〇【絶対いる】

〇【なかったら困る】

〇【くくりづけみたいなものだから】

〇【一体感よ】




「じゃあ、面倒くさくなってきたから僕が、あ、ってコメントしてその真下に来た奴にするよ」


〇【ちょ、いいのかそれ?】

〇【なんかスナイプするやついそうだな】

〇【やばいやつになるのを阻止しろ!】

〇【へへへ...】

〇【守れ!!】

〇【ラグを読むんだ】




「じゃあ、行きますよー。はい」


〇【リツ友】

〇【瀬良ロイト】

〇【リツイート】

〇【瀬ラックス】

〇【セラピスト】

●【あ】

〇【叡智絵描いてほしい民】

〇【立直】

〇【お客さん】

〇【中性子】

〇【リツナー】

〇【瀬良リス】




「...っと、スゥーーー...。ではファンネームは...叡智絵描いてほしい民で」


〇【やりやがったw】

〇【守れんかった...】

〇【瀬ラックスもあぶないだろ!】

〇【やったぜ!】

〇【リスナーの総意みたいなの草】

〇【背徳感が...】



「ファンアートは...これこそいるかな?まぁ、いいや。これは『瀬良リツ見て』にします。二連続事故が起こらないように」


〇【チッ!】

〇【英断】

〇【事故は起こしてはならない...】

〇【俺らこれから叡智絵描いてほしい民って言わなきゃならんのか...】

〇【リスナー名公言しづらいw】



まぁ、これくらい決めれば大体大丈夫だろ。

困ったらその都度決めればいいし。




「多分、これくらいですかね?それじゃ11時回ったことだし、今日は終わります。では、また」


〇【ではまたー】

〇【ではまたー】

〇【ではまたー!】

〇【ではまた!】

〇【終わりの挨拶これでいいのか?】

〇【まぁ、そのうち勝手に決まるよ】



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