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第7話 旅の始まり

やっと旅が始まります。

 目が覚めると泉から光の柱が立っていた。

昨日と同じようにサラは泉の前で祈りを捧げている。


その様子を体を起こして眺めていた。


『目が覚めたようじゃな。おはよう。』僕の視線に気が付いたのかサラが声を掛けてきた。

「おはよう。邪魔しちゃったかな?」

『今終わったところじゃ。』サラが僕の隣に座る。


「そういえば今更なんだけど、僕この泉で水浴びとかしちゃったけど、大丈夫だったのかな?清らかな泉を汚しちゃったんじゃない?」

昨日から気になってた事を聞いてみた。


『なぁに、それぐらいの事で汚れるようじゃ世界の穢れは祓えんよ。儂もいいものを見せてもらった、礼を言いたいぐらいじゃ。』サラはいたずらっ子の様な目で、からかうように僕を見た。


「そ、そうか」僕は顔を真っ赤にしながらごまかすように顔をそむけた。

あんな恥ずかしい思いをしたのは初めてだった。初体験。サラには責任を取ってもらわなきゃな。うん。

そんなくだらない事を考えながら気持ちを落ち着かせた。



ルエダの実で朝食を済ませ、すべての荷物をまとめた。

そういえば、荷物をまとめている時にサラから泉の周りに生えている薬草を持って行けと渡された。


『この泉の周りに生えているこの薬草は、きっと旅の役に立つじゃろうよ。もし使う機会が無ければそのまま売ってしまえばよい。薬草の中でも珍しい物じゃから高く売れるじゃろ。』そういってサラが薬草の葉を束ねたものを鞄にしまってくれた。



旅の準備は整った。あとは出発するだけだ。


「サラ、出発するよ。色々ありがとうね。サラのおかげで魔法も使えるようになったし、食料も確保できた。泣きそうなぐらい寂しかったけど、サラが居てくれたから耐えられた。」この世界に来て初めて会った人物。色々教えてもらったし、支えにもなってくれた。感謝してもしきれない。


『まぁなに、ノームのじいさんが来たらすぐ追いかけることじゃし、そんな今生の別れのような挨拶をせんでもいい。』サラは僕の頭を撫でながら優しく言ってくれた。


いつかサラが追い付いてきてくれたら、楽しい旅の話を聞かせられるように。美味しい料理を食べさせてあげられるように。頑張っていこう。僕は心に誓った。



『あ、そうじゃ。大切なことを忘れておった。』僕がサラに背中を向けて歩き出すとサラが呼び止めた。


『お前様の言葉は儂にしか通じんのじゃった。この世界の言葉を教えておくぞ。』サラはそう言うと僕の頭をギュッと抱きしめる。弾力も乏しいサラの胸に顔を押し付けられ息苦しい。ちょっとドキドキする。ドキがムネムネする。胸だけに。



頭の中に何かが入ってくる感覚。目がチカチカして倒れそうになる。それをサラが支えてくれた。



『これで大丈夫じゃ。この世界の住人がつかう言語をお前様の頭に叩き込んでおいたぞ。文字に関しては一から学んでもらうしかないが、会話には困らんじゃろう。まぁ元々お前様は人との会話が苦手なようじゃがな。』サラが優しい笑顔で頭を撫でてくれる。


目のチカチカもおさまって、なんとか一人で立てるようになった。


『もう大丈夫そうじゃな。文字に関しては、元々この世界での識字率は極端に低い。読み書きできんでも何も恥ずかしい事は無いじゃろ。』サラが慰めてくれる。

「元々勉強は得意な方だったし、学ぶ機会があったら勉強してみるよ。」僕は前向きな返事をすると前に歩き出す。

文字通り前に向かって。

いよいよ旅が始まる。



『森を抜けて街道に出たら右に進むんじゃぞ~。二日も歩けば町にでるからの~。』サラが離れ行く僕の背中に声を掛けてくれる。


 僕は振り向かず手を上げて軽く手を振った。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を見せたくなかったから。





泉を出発して5分、森から草原に出た。遠くに街道が見える。あの街道を右の方に進めばいいわけだな。


草原を街道に向けて歩き出したその時、森の方から嫌な気配が近寄ってくる。

咄嗟に森から離れ振り返る。


さっきまで僕が立っていたところに2頭のフォレストウルフが飛び出してきた。1匹は片目がつぶれている。

「もしかしたら昨日の仕返しに来たとか?」一応聞いてみるが流石に狼は答えてくれない。


狼たちはジリジリと左右に分かれ僕を挟み込むような形に移動していく。


森から出たことだし、火の魔法を使ってもいいが・・・。

せっかくなら素材をゲットしておきたいところ。だから選択肢は風の刃一択だな。


僕は左手に盾を構えると右手で風の刃を作りだす。飛び掛かってきたらすぐに撃ち出せるように。


狼たちは丁度僕を挟み込むような所まで移動すると、左右から一斉に飛び掛かってきた。


同時にいけるか?

後ろに素早く避けると狼たちが交差するところをめがけて風の刃を放つ。

2頭の狼の首が飛び、死体が左右に転がっていく。

 計算通り2頭同時に仕留めることが出来た。


2頭が飛び掛かってきた時、不思議と時間の流れが物凄く遅く感じた。だから余裕で避けることが出来たし、2頭同時に狙うことも出来た。

これはかなり凄い事なのでは?僕強くなってる?


自分の掌に向かって「鑑定」


名前:火神疾風

年齢:14歳

LV:5

HP:240

MP:1200

腕力:25

知力:42

体力:18

素早さ:560

器用さ:80

スキル:鑑定1・気配察知1・反撃術・火属性魔法・風属性魔法・魔物解体・多言語理解

加護:火の精霊神サラマンダーの加護


結構レベルも上がってるなぁ。MPと素早さがかなり上がってる、それ以外は・・・、まぁそこそこか。

体力とかこれ大丈夫か?ってぐらい低いけど・・・。肉体強化でなんとかなるもんかなぁ?


それとスキルがいつの間にか増えてる。

気配察知とかいつの間に覚えたんだか。

あと、反撃術?なんだこれ・・・。

それと魔物解体とか1回しか解体してないのに覚えてるし。


2頭の狼の皮を剥いで短剣を使い脂を落としていく。水は無駄に使えないのでその辺の草を使い汚れをぬぐう。綺麗に畳んで蔦で括る。

スキルを習得しているだけに昨日よりも素早く作業が終了した。

昨日と同じく肉は勿体ないが置いていく。草原に置いておくのはまずい気がしたので少し森の中に入ったところに運んでおいた。



気を取り直して街道までの道を進む。想像していたよりも距離があったようで街道に出るまで30分ぐらいかかった・・・。

広い草原だから目測がくるっていたようだ。



体力が低いからかこれぐらいの距離でもう疲れてしまう。ステータスって大事なんだなぁ。

体力が低いのは困るから、これからはそのへんを強化出来るようにトレーニングをしなければいけないかもしれない。まぁコツコツ頑張ろう。そういうの得意だし。それぐらいしかできないし。




街道を右方向へ少し進むと前方で煙が上がっているのが見えた。誰かが焚火でもして休憩しているのかな?


しばらく歩くと段々と煙が近付いてきた。草原の中にある街道だが、煙が上がっている辺りには小さな林があるようだ。


更に近付くと、どうやら馬車?の様なものが停まっているのが見えた。

その横の焚火の傍に横たわる女性。そして馬車の傍で座り込む男性の姿が見えた。

馬車のところまで来ると座り込んだ男性と目が合った。男性は困り果てたような表情を浮かべ座っている。


「何か問題でも?」人と会話するのは本当に苦手なんだが、何か困ってる様子の人間を放ってそのまま通過することなどできない。

っていうか助けてくれと言わんばかりの表情でずっと見てくるおじさんを無視とかする勇気なんてないよ・・・。


「そうなんですじゃ。突然馬車の車軸が折れてしもうて立ち往生しておりますのじゃ。病気の妻を町の治療所まで連れていく途中だったんじゃが・・・。」なんとか修理しようと一生懸命頑張ったであろう男性の手はあちこち切れて血まみれだった。



「そのへんに生えてる木は勝手に切って大丈夫なものか?」木を見ながら男性に聞く。


「へ?大丈夫とはどういうことですかの?」質問の意味をよく理解できていないような雰囲気の男性。


「車軸をなおすなら木材が必要になる。枝を折って使っても強度的に弱くなってしまうからな。木を切って木材を調達するほかあるまい?だが勝手に木を切ると土地を管理している団体等から怒られたりしないものか?という意味で聞いている。」なるべく男性に伝わりやすい表現で再度聞いた。


「おぉ、そういう事でしたか。多分問題無いと思いますじゃ。」男性は質問の意味を理解したようで答えてくれた。


馬車に近づくと手を広げて車軸の幅を測り、車軸を握って太さを測った。



そして二人から少し離れたところに生える木に向かって【ウインドエッジ】風の刃で木を切り倒した。あとは大体の太さになるように木を切り刻んでいく。


大まかに形が整ったらあとは短剣を鉈のように使い形を整えていく。肉体強化のおかげでこれらの作業もサクサク出来る。


馬車のところに戻り、実際に合わせてもう少し整えて、馬車をグッと持ち上げ車軸を交換していく。

その様子を口をぽかんと開けて見ている男性。



「まだお若いというのに魔法を使ったり、怪力で馬車を持ち上げたりたいしたもんじゃぁ~。」男性は目を真ん丸にしながら声をあげた。



車軸の修理の為に馬は馬車から外され、近くの木に繋がれていた。

馬車を手で押して少し動かしてみる。ガタガタゴト。問題なく動くようだ。

馬車を見たときになんとなく車軸の構造が理解できて。同じような形をイメージしながら加工してみたが、思ったよりも上手くいったようだ。


「これで問題なく動くはずだ。」男性に声を掛ける。

「ありがたやありがたや。」男性は手を擦り合わせて神様を拝むように僕を拝んでいる。


「そんなことより早くこの女性を病院へ運んだらどうだ?」焚火の傍で横たわっていた女性を抱え馬車に乗せてやりながら男性へ言った。女性はかなり苦しそうだった、顔色が凄く悪い。


「なんと礼を言ったらよいもんか。儂の全財産をお渡ししても足りない程の恩をどう返せばよい事か。」男性は涙を流しながら僕の手を握る。さっきまで座っていたから気が付かなかったがこの男性背が凄く高いんだが・・・。僕の身長が平均より低いってのはあるが、この人背高過ぎじゃないか?多分180cm近くあるぞ。


「礼などいらん、勝手にやっただけだ。早く病院へ連れて行ってやれ。」僕は背を向け歩き出す。身長差にコンプレックスを感じたからじゃないよ、人見知りで人の顔見れないのと、あまりにも感謝してくるから照れもあって顔真っ赤だからだよ。


男性は急いで馬車の準備を整え焚火を消す。そして馬車を動かし僕の所まで追いかけてきた。

「この先のシルエラの町へ行かれますのなら、この馬車に乗っていって下され。町に着いたら是非お礼をさせていただきたい。」男性はただでさえ低い腰を更に低くして僕に言った。もしかしたら僕が小さいからそれに合わせてくれたまである。



「では、世話になる。」このままずっと並走されるのもしんどいので、男性に促されるまま僕は馬車に乗ることにした。


男性の隣に座り遠くを眺める真似をしながら男性からは顔をそむけ、首に巻いたストールをグッと持ち上げる。


人と会話もまともにできないのに、馬車で隣に座って移動するとかどうしたらいいんだろう?もう頭の中パニックで大騒ぎなんだが。

旅の始まりから波乱の展開にこの先が思いやられる僕であった。

とうとう旅が始まりました。

トラブルから始まった旅ですが、どうなっていくことやら・・・。

どうぞこの先もお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。

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