第43話 洞窟探索
本日もご拝読ありがとうございます。
今日は少し短めですが、区切りの良いところまでって事でご了承ください。
最近今まで苦手であまり飲まなかった梅酒にはまっております。
梅酒ソーダでほろ酔い気分で書いた今作、失敗していませんように><
ルイス部隊長が出発してから1時間程度経過した。既に日は傾きかけていて、急いで呼びに行っても暗くなる前までには帰ってきてくれないだろうなと予測している。
ルイス部隊長が戻ってくるまでに動きがあっては困るので、僕はマリアを洞窟の入り口が見える木の枝の上から警戒してくれるように頼むと、洞窟の中に調査に向かった。
誘拐された人たちは無事なのか、相手は誰なのか、人数は何人なのか。気配察知でみつけた気配が全て犯人だとすると犯人は52人だ。他に動物っぽい気配が2つあるがそれは馬車の馬だと思われる。
誘拐された人が生きて中に居るのだとしたら、犯人は40人という事になるか。今現在誘拐された人は12人だからね。わざわざ誘拐するぐらいだからすぐに殺しはしないよね?そう信じてる。
入り口付近には人の気配は無いが、洞窟の奥200mぐらいの所に忙しく動く気配が感じられた。
物陰に隠れながら先に進むと話し声が聞こえてきた。その話し声が聞こえるぐらいの距離まで進んでいく。
「俺たちは歩きだってよ。」
「馬車には全員乗り切れないからな。」
「獣人どもなんか引きずっていけばいいじゃねーか。そうすりゃ俺たちは歩かずに済むだろう。」
「大事な生贄が死んだらどうすんだ。どんだけ苦労して12人集めたと思ってんだ。それにどっちにしろ俺たち全員は乗り切れねえさ。」
「そりゃそうだけどよ。ここから教会まで徒歩だと丸1日かかるぜ。その間も魔物に襲われるかもしれないってのによ。」
「生贄優先だろ。俺たちが死んだって生贄さえ生きてりゃ儀式は行えるんだ。俺たちの事なんか最悪見捨てて行くだろうぜ。」
「例えそうなったとしても、儀式さえできりゃ俺たちの死も報われるってもんか。」
隠れている角の先で会話している声は2人。他に気配が2つあるが、それは馬だろうな。物音から察するに、馬車に荷物を積みながら会話しているようだった。
話の中でわかった事は。
1:誘拐された12人は無事生きている。
2:誘拐した獣人は生贄と呼ばれている。
3:目的地は教会
4:何かの儀式を行おうとしている。
5:その儀式の為には仲間の犠牲が出ても構わないという程大事な儀式らしい。
今迄聞いていた話で犯人は獣人を捕まえて奴隷にすると思われていた。
犯人はルーデンス帝国の人間か、その関係者だと思われている。
今聞いた話から想像するに、その考えは全て間違っていると言えるだろう。
その教会とやらがどこにあるのかはわからないが、ここから徒歩で丸1日の場所にあると思われる。
そして出発は今夜だろうと予測した。今準備を急いでやっているようだしね。暗くなってから出発すると考えるのが妥当だと思う。
だとすると最悪ルイス部隊長を待っている余裕はないかもしれない・・・。
洞窟の中で魔法をぶっ放したら崩落する危険があるから、獣人たちを乗せた馬車が洞窟の外にでてから攻撃を仕掛けるべきか。
2人で対処するとしたら・・・。まず馬車を止める。
話しぶりから想像するに、洞窟から出てきた所で攻撃を仕掛けたとして、襲われたと気がついたら馬車は一目散に逃げるだろう。逃げる馬車を走って追い付いて止めるのは困難だ。
だからまずは馬車を止めるしかない。マリアに御者を撃ちぬいて貰うか。それでも止まらなきゃ馬車の車輪でも撃ち抜いてもらうしかないか。
すると残るはあと39人の犯人達。2人でなんとかできるかなぁ・・・。ちょっと不安だな。でもやるしかないってな。
その不安を解消するにはもう少し調査する必要があるな。しかしそれまでに何かあっては困るので1回マリアに事情を説明した方がよさそうだ。
僕はそーっと外に出るとマリアに事情を説明した。獣人たち12人は無事な事。敵の数は40名という事。相手はルーデンシア帝国とは関係なさそうな事。ルイス部隊長達の帰りが間に合わないかもしれない事。
その上でマリアには馬車の御者を狙撃してもらう事を話した。もし僕が中に居る時に急に馬車が出てきたら止めてくれと伝えて、僕は再び洞窟の調査に戻った。
先程の場所までは何事もなく進めた。先程作業をしていた2人の姿はもうそこにはなく、気配から更に奥に居るとわかった。
隠れていた角から奥に進むと、馬車にはある程度の荷物が積んであり、12人ぐらいが座れるぐらいのスペースが空けてあった。
積んでる木箱には鳥、烏かな?烏の横顔がデザインされた紋章のようなものがついている。どこかの国の紋章だろうか。
気配を気にしつつ、付近を調べていくと、どうやら洞窟はその先で随分狭くなっていっているようだ。それでここに馬車を停めているのだろう。
通路を進んでいくと、分かれ道になっており、左右に向かう道がある。
右の先には15名の気配があり、左には残り37名分の気配がある。
12名の人質に3名の見張りがついているとすると右側には敵が3名って事か。1人で3人を静かに始末できるだろうか?
多分気付かれて他の敵を呼ばれたらこの狭い通路で挟み撃ちになり無事では済まないだろう。
そして逆に15名の方が全て敵だったらこっそり救出ってのはかなり無理があるな。
僕は静かに気配を殺しながら右の通路を進んで行く。これ以上進むとみつかるぐらいの距離まで進み聞き耳を立てる。
話し声等は聞こえてこない。気配もあまり動きはない。
そっと覗いてみる。先に見えたのは白いローブに身を包んだ男達だった。5名ぐらいの男達が火を囲んで座っている。その奥は見えない。
あれが全て敵だとすると人質の数が合わない。人質を左右に振り分けている事は考えにくいので、こっちにいるのは全て敵とみて良いだろう。大ハズレだったな。
では左の通路の先に人質が居るって事だな。そうすると37名中敵が25名って事になる。こっちの15人を魔法で生き埋めにした所で僕一人で敵う人数ではない。
これは洞窟内で片をつけるのはちょっと難しいかな。
聞き耳を立てるが話し声は聞こえてこず、なんの情報も得られない。
僕は静かに分かれ道まで戻っていく。左側の通路から人がくる気配はなかったのが救いだった。恐らく夜の移動に備えて休んでいるんだろう。
馬車を奪ってしまおうかとも考えたが、もし人質を盾にとられてしまうと対処に困りそうだ。馬車を先に出させた方が良いと思う。
やはり洞窟から出てくるところを御者だけ狙撃して止めた後、全員の注意を僕に引き付けてマリアに個別撃破していってもらうのが得策だろうか。
39名のどんな攻撃をしてくるかわからない敵を相手にどう立ち回ればいいのか考えてみる。
大きな魔物とかじゃない、相手は人間だ。広い空間なら39名の攻撃ぐらいなんとかなるんじゃないか?
反撃術のおかげでスローモーションに見える。素早さのステータスも高い僕が身体強化をかけて、スローモーションで逃げれば39名の攻撃ごときでやられはしないだろう。
今までうまくやってきたんだし、今回も上手くできる。いやうまくいかせる。
盗賊だってあの人数を一人で対処できた。
今回はマリアが居るんだ。
最悪でも僕は避けているだけで終わる。
きっとできる。
頑張れ僕!!頑張れマリア!!