第3話 さようならおにぎり
既に5話までは書き上げているんですが、チェックする度に書き換えたいところや書き足したい事など出てきてしまって・・・。なかなか進まない筆に少し焦っていますが、少しペースを上げて投稿しています。
『儂はお前様が気に入った。特別に儂の加護を与えよう。まぁ既に強い魔力を感じるからその素養はあるんじゃろうがな。加護があれば楽に火を操ることが出来るようになるじゃろう。特別じゃぞ?』なんだか特別を激推ししてくる少女。
確かにステータスを確認した時に魔力があるのは知っていた。だが慌ただしく過ぎていく時の中でその事をすっかり忘れていた。火の魔法かぁ、使えると料理とかも楽に出来そうだ。
『いや、料理て!火系統は最強の攻撃魔法じゃぞ?火の精霊たる儂が最後に生み出されたのは最強系統を世界に伝える事を創造神が躊躇していたからにほかならん。』
「僕は別に最強になりたいわけじゃないんだ。人を守るため、自分の正義を貫くための力があればそれでいい。料理はあれだ、趣味だ。」
『そうか(笑)お前様はホント面白いのぉ。ますます気に入った。お前様の信じる正義見てみたいのぉ。儂がこの泉を守護して今年で100年経つ。泉の守護は四大精霊で100年ごとに交替することになっておるんじゃ。次はノームのじいさんが引き継ぐことになっておる。交替のノームじいさんが来たらお前様の旅に合流してもよいかのぉ?いやダメと言っても勝手についていくがな?』
「もうそれ断る事できないよね?問答無用でついてくるって事だよね?理不尽極まりないんだが。でもまぁこの先一人で不安ってのは確かだし、君みたいな可愛い女の子が一緒なら旅も楽しくなりそうとか、もうなんかそういうの口にしてるのだけでも恥ずかしいんだけど・・・。」心で思った事も伝わってしまうから恥ずかしげもなく口にしてしまった事に自分でも驚いている。こんなに本音でしゃべったのはおばあちゃん以来だけど、そういやこっちもおばあちゃんだったな、おばあちゃんよりおばあちゃんだった。
『お前様さっきからおばあちゃんおばあちゃんうるさいのじゃ。確かに人族から見たら3600歳はおばあちゃんofおばあちゃんじゃが精霊の感覚で言えばピチピチじゃぞ?見た目でもわかると思うがうら若き乙女じゃぞ?もっと喜んだらどうじゃ?』確かに見た目はピチピチ、というよりもロリロリ。あぁこれが噂のロリババアか・・・。
『いや、ロリババアとか失礼な事言うとあれじゃぞ、もう罰とかあてちゃうんじゃからな!!』もうなんだか凄く可愛いこの精霊。
『か、可愛いとか、いまさらそんな事言っても・・・。許してやるんじゃが、もう。』顔を真っ赤にしながらうつむく精霊神。
『まぁもうじき交替なんじゃが、精霊の感覚じゃ、いつノームのじいさんがやってくるかわからぬ。それまでお前様を待たせるのも悪いしの、お前様の準備ができ次第いつでも出発するが良いよ。儂の加護はもう既に与えた。旅で困ることも、危険もないじゃろ。』
どうやら既に加護をいただいているようだ。ステータスを確認してみると一番最後の欄に火の精霊神の加護と書き加えられていた。
「ありがとう、でもとりあえずあがっていいかな?」長話の間にしっかりと服を洗った僕はもうすっかり恥ずかしさとかどうでもよくなっていた。僕一人全裸なのはちょっと不公平さを感じるんだけど、精霊神だしな・・・。文句言ってもしょうがないなって気がしてきた。
洗った服は絞って木の枝に引っ掛けて干す。明日の朝には乾くだろう。あ、そうそう。この世界に飛ばされて来た時に空を見ると真上に太陽があったんだ。向こうの世界を出たのが夕方だったけど、こっちではお昼ぐらいだったって事になる。
だから安心してあたりを探索したんだけど、なんだかんだあって結局今は日が落ちたばかり。明日の朝には乾くことを願っておにぎりでも食べよう。すっかり忘れてたけどお腹ペコペコなんだったよ・・・。
洗濯物も干したところで、下着なしだけど制服を着た。ちょうどいい感じの台もあったのでそこに腰かけておにぎりを食べる事にした。そういえば精霊ってごはんとかどうすんだろ?おにぎりあげた方がいいかな?
「サラマンダーさんおにぎり食べる?僕お腹ペコペコなんで今から食べるところなんだけど。」一応聞いてみた。
『儂の事はサラと呼んでいいぞ。サラマンダーさんなんて、そんなよそよそしい呼び方するでない。親しい者は皆そう呼ぶ。じゃからお前様にもそう呼んでほしい。』『あ、それと精霊は直接食べ物を摂取することはせんのじゃ。まぁ戯れで食事をすることもあるが、普段は大気から直接魔素を取り込んでおる。遠慮せんで一人で食べるがいい。』
「わかったよサラ。それじゃいただきます。」
シーチキンマヨネーズの包みを綺麗に剥いで、スーーーーーーーーーっと匂いを嗅ぐ。きっとこの異世界じゃもう2度と食べられない味だろう。この世界の事はまだ何もわからないけど、米・海苔・シーチキン・マヨネーズ、全部揃う事はないだろうな。「さよなら、そしてありがとう。」僕は涙を流しながら最後のおにぎりを味わった。
『お、おいお前様・・・。そ、そんなに美味しいのか?それ』サラが指を咥えてこちらを見ている。
「食べてみるかい?」そう言って食べかけのシーチキンマヨネーズおにぎりを差し出してみた。
『お前様が大事そうに涙を流しながら食べてる物を奪うわけにはいくまいよ・・・。で、でも一口だけ・・・。』よだれをダラダラ垂らしながらめちゃくちゃ物欲しそうに見ているサラ。
【ぷっ!】思わず吹き出してしまった。なんて可愛いんだろう(笑)これで最後のシーチキンマヨネーズなんて涙流してたのがおかしくなる。
「半分っこしよ。」残り半分のシーチキンマヨネーズを差し出す。
一瞬のうちにおにぎりにかぶりつくサラ。僕の手まで食べちゃうんじゃないかってぐらいの勢いでかぶりついた。あ、でも一口でバクってわけじゃなくて半分しかないから少しづつ味わって食べてたよ。可愛いなぁ。
『こ、これは美味いもんじゃのぉ。まろやかな酸味と塩気の効いた味が良い。周りを包むつぶつぶの食感も心地いいし、黒い紙のようなものもパリパリしてていい食感と香りじゃ。人間の食べ物なぞ興味なんてなかったというに。さっき料理が趣味だと言っていたのは本当のようじゃな。』まふまふまふ
「これは僕が作ったものじゃないんだ。コンビニで買ったおにぎりだから、誰か知らない人が作ってくれたんだろうな。」
『そうか、コンビニか、知らない人な、その知らない人に感謝じゃな。』まふまふまふ、美味しそうにおにぎりを食べるサラ。言ってることはちょっと意味不明だけど。
『こんな美味しい食べ物初めてなのじゃ。』
ほっぺにご飯粒をつけながらにっこり笑うサラ。
食べ終えたようなので次のおにぎりに手を伸ばす。次のは明太子おにぎりだ。
包装を綺麗に剥ぎ取り、今度は最初から半分こに分ける。半分をサラに渡す。
『貴重なお前様の世界の食べ物を半分貰ってしまって悪いのぉ。』すまなそうな顔でこちらをみるサラ。
「そんな顔しないでいいよ。誰かと一緒に楽しく食べる事も食事として大事な要素だよ。」
『お前様は優しいのぉ。ふむ、これは・・・、ピリっとしてるが凄くいい香りじゃな。海の香りがする。中身が変わるだけでこうも違う食べ物になるとは。これは美味しいのぉ。』サラはニコニコしながら少しづず大事そうにおにぎりを食べていた。
食後はペットボトルのウーロン茶でのどを潤す。そのウーロン茶もサラに差し出す。
『これはまた口内がスッキリする飲み物じゃな。とてもうまい。この泉の水より儂は好きじゃ。』ただのウーロン茶で喜んで貰えるとは思ってなかったがこれはこれで嬉しい。
「ごちそうさまでした。」『ごちそうさまでした。』サラも真似して手を合わせてくれた。
「これは食べ物に対してありがとうございますっていう感謝の言葉みたいなものなんだ。」
『そうか!いい言葉じゃな』サラはニコニコしながらそう答えた。ほっぺについているご飯粒がめちゃくちゃ可愛かった。
今回は可愛い精霊神をたくさん書けて嬉しいです。一応メインヒロインになる予定ですので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。