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第36話 褒美?そんなもの最初から無かった

先日の前書きで魔の週末と書きましたが、なんだか知りませんけど土曜日のPVの伸びが半端なかったです。

ご拝読頂いた方どうもありがとうございます!

ホント一人でも読んでいただいている方がいると思えるだけで毎日頑張っていけています。

本当にありがとうございます!!

 解体作業3日目、作業も滞りなく夜には無事終わり、最後の炊き出しにはあっさりなオークしゃぶしゃぶを作って皆で食べた。

ゴマダレが上手い事出来たのが個人的に収穫だったなと思っている。ゴマと味噌は合う。


最後に、3日がかりで仕上げたベーコンを給料替わりに全員に配り、また解体の仕事を斡旋(あっせん)するから覚悟しておけと解散した。


この計画については後ほど説明したいとおもう。


町の住民もほぼ戻ってきていて、町はスタンピードなんか無かったかのように以前のような活気を取り戻していた。


ミルドレイク伯も事務作業を滞りなく済ませ、ギルドも冒険者も普段通りの生活をを取り戻していた。



そして次の日、ミルドレイク伯からスラム街の件で会議をしようと声を掛けられていた。


僕とマリアはミルドレイク辺境伯の屋敷にやってきていた。既にギルドマスター、サブマスターのケイトさん、それとギルドの解体担当のガンドさん、スラム街代表のマッシュ、炊き出し部隊のセレナも到着していた。

ギルドマスター以外は皆緊張の面持ちだ。

マッシュは借りてきた猫のようにソファの下に潜ってしまうんじゃないかというぐらい委縮(いしゅく)している。


豪華な応接室で待つこと数分、すぐに隣の応接室に通された。

既にキャスも資料を揃えていてくれて、ミルドレイク伯と一緒に出迎えてくれた。



僕はキャスの隣の席に座り、マリアはキャスが用意した資料を全員に配ってくれる。


「では、早速始めたいと思う。まずは資料に目を通してくれ。」キャスが立ち上がり、スラム街再生計画の説明を始めた。



まず概要はこんな感じ。


1:新施設を建設。スラム街のバラックを一斉撤去し、埋立地を完全に埋め立てて、新たに大きな建物を建設する。建物の概要については後述する。


2:解体所の設置。ギルドから解体作業に関する業務の委託。一定の手数料で冒険者の持ち込む魔物の解体を行う。解体場所はギルド内で行い、食肉可能な肉についてはスラム街で買い取りをする。


3:食堂の開店。買い取った食肉はスラム街に建設した建物に輸送。解体を依頼した冒険者には解体数に応じて無料お食事券を配布し、スラム街に建設された建物内にある食堂で無料で食事が出来る。もちろん一般のお客さんも食事可能。食堂で出されるメニューは疾風が提供するレシピを使用し、他店では食べられない独自の料理を提供していく予定。食堂の営業時間は昼から夕食時まで。酒類の販売は禁止とする。(以上の事でギルドや一般の酒場、レストランと住み分けをさせる。)


4:寺子屋の開校。スラム街の住民及び町の住民、冒険者にいたるまで、ミルドレイク領内の住民であれば誰でも無料で学ぶことができる学び舎として開く。修学期間は設けない、自分で満足が行く学力がつくまで通うことが出来る。学べる内容は文字の読み書き、簡単な算術とする。ミルドレイク領だけに限らず、リーザスタッド王国、というかこの異世界全体での識字率の低さを解消すると共に、簡単な算術を学ぶことにより、新たな職に就くチャンスを増やし、住民の基礎学力向上を目指す。受講は無料。当面の講師はミルドレイク家の侍女、執事が担当してくれる予定。いずれは卒業生を教師として採用し、運営を続けていく。


5:職業訓練所の設置。農業・林業・建築・工業・調理の5業種についての職人を育成するため、訓練所をスラム街に建設する施設に設ける。領都及び領内にある町や開拓村での各職種に就くための訓練を、各業種の人間を講師として招き行う。訓練終了後は領内の職場への就職もサポートする。希望就業場所についてはある程度相談可とする。職業訓練所はスラム街の住民だけではなく、希望者には広く開放し。領内への住民の受け入れも同時に行う。

他領からの住民の流入も視野に入れている。その場合に生じる手続きや他領との軋轢に関しては政治的な判断を必要とする為、キャス及びミルドレイク伯に一任するものとする。


6:簡易宿泊所の設置。現在住居の無いスラム街の住民の為に宿泊所を設置する。いずれは領内各町・村への住居の確保を済ませ、簡易宿泊所は職業訓練所の生徒及び冒険者の宿としてシフトしていく予定。


施設が居住可能な状態になるまではギルドの宿泊所を暫定的にスラム街の住民の為の住居として使用する事とする。


寺子屋教師、職業訓練所の講師への給料についてはミルドレイク領の予算から出すこととする。公務員扱いって事ね。


解体所、食堂、簡易宿泊所の職員はそれぞれの施設での売り上げから給料を出すこととする。


余剰分の利益に関しては、施設の維持管理、福利厚生に使うためにキャスが代表として財団を設立し、そこで責任をもって管理される。



以上がキャスと僕が夜を徹して話し合った、スラム街再生計画の概要だ。一応概算で利益がマイナスにならないように手数料や給料などは算出してみた。


唯一マイナスになる要因としては初期投資である。スラム街に新たに設置する施設の建設費。それと当面の運営費用。これを算出してみると、どれほど施設を小規模に設定したとしても、莫大な費用が必要とされることとなった。というような内容だった。昨日まではね。



実は前日の夜に僕とマリア(アルカディア)は個人的にミルドレイク辺境伯から呼び出されて、今回のスタンピードでの報酬及び褒賞についての話があった。


スタンピードに伴うコロニー調査の指名依頼の報酬と、スタンピードにおける貢献褒賞。その報酬を支払うと言われた。

ミルドレイク伯から提示された額はかなりの額だった。


正直今お金には困っていない。幸いここに至るまでに結構稼がせてもらっているし、これから稼げる目途も立っている。


それに何より提示された額は、スラム街再生計画の予定している初期投資額を大きく上回るものだった。


そこで僕はミルドレイク伯に、今回のスラム街再生計画にアルカディアへの報酬をそのまま投資してくれないかと交渉した。



ミルドレイク伯は「お前正気か?」と何度も言っていた。同席してもらったキャスは悩んでいた費用が捻出できる喜びで変な顔をしていた。嬉し泣きなのか笑いながら怒る男の顔なのかクシャおじさんの顔なのか笑い男の顔なのか訳が分からない。

マリアはなんか誇らしげな顔でうんうんと頷いていた。



という事で懸念していた初期投資に関しても捻出できたので、スラム街に住む住民の数と世帯数、そして職員を希望する人間の再確認と、施設の間取り、その他必要な事を会議で決めていく。


そして出来る限り運営が楽になるように、各部署の担当者を決めて、それを財団代表者としてキャスが取りまとめていく。


あと僕の仕事は食堂で出すメニューを考えてレシピを提供し、食堂の担当者セレナに指導していくだけになった。


あとは全てキャスに丸投げである。面倒な代表とか僕はやってられないので大助かりだ。

キャスにしてみれば領主を継ぐ為の大きな足掛かりになるだろうし、僕らは自然とwin-winの関係になれた。


え?スタンピードに関する褒美が無くなってる?そんなもの最初から無かった。そう思えば良いだけの話。


正直、建設費や諸々でかかる諸経費を支払っても、当初ミルドレイク伯から提示された報酬額はかなり余る。その余った分は返させてくれとキャスが言ってくれているので、余ったら少しお小遣いくれるって思ってれば得した気分になれるでしょ。


それにこの町が潤ってくれたら、僕らに割のいい指名依頼も回してくれるだろうしね。


損して得取れとはこういう事だと思うんだ。

だから僕はこれでいいのだ。マリアもなんだか満足そうな顔でうんうん言ってるから良いんだと思う。


こうして色々な事が会議で決まっていき。スラム街再生計画は始動したのである。

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