第34話 終わり良ければすべて良し
新たに評価とブックマークを2件頂きました。
どうもありがとうございます!!
ブックマークに関しては「あ!増えた!!」と喜んでいたら翌日には減っていたりと、毎日ドキドキしながら観察させて頂いております。
評価に関しては取り消したりとかできないのかな?
もの凄く嬉しい事に評価いただいている3名のかた全員最高評価を頂いており、評価ポイント平均が☆5ってステータス画面に表示されているのが本当に嬉しいです。
もちろん☆1個でも評価して頂けるのであれば嬉しい事なのですが、満点評価っていうのはやっぱり満足していただけたっていう事なんだろうな?と勝手に思っております。
毎日頑張ってコツコツ書いておりますので、とても励みになります。
本当に励みになってますよ!
前書きでダラダラと申し訳ありません。
皆さま読んでいただいて本当にありがとうございます!!
救護兵達が世話しなく動き回っている。倒れこんだ冒険者や兵士に声を掛けて、次々と適切な処置を施していく。
大量に用意された回復ポーションを惜しみなく使い、大きな怪我は薬師がその場で対処していく。
スタンピード開始直後から負傷者は迅速に安全な場所に運ばれていき、四肢欠損などの大きな怪我を負った者は出たが、殆ど死者は出ていないという。
きちんとした作戦の元、救護班が動きやすいような同線を確保できていた作戦勝ちと言えるだろう。
本当にこの町は凄いな。ミルドレイク伯をはじめ、ギルドマスターや各クランのリーダー達、領兵の人達も皆そろって凄い。
少ない人数で倍以上いた魔物たちを壊滅させてしまった。
僕は既に魔力も体力も尽きてボロボロだった。でも怪我はなんとかなったし、目立った外傷もない。今はただ休みたい。
そんな僕をマリアはずっと抱きかかえていてくれている。幸せ枕が心地よい。
本当はそろそろ動けるんだけど、今はこの心地よい枕に抱かれて休んでいたい。
「おいおい、英雄様は美女の胸でおやすみか?」ミルドレイク辺境伯が僕の隣にドカっと座り込んでニヤニヤしている。
「本当に助かった。あの時はもうダメかと思ったよ。お前のおかげでキングを倒すことが出来た。本当にありがとう。」ミルドレイク伯は深々と頭を下げた。
「やめてくれ。止めも刺せない程無力な俺に頭なんて下げるな。キングを仕留めたのはあんただろ。俺じゃない。」ほんと無力を痛感した。もう大剣を振り回す魔力も残ってなかったんだよね。しかもカウンターとれなきゃあんな相手にダメージ与える事も出来なかったと思う。結局止めを刺してくれたミルドレイク伯が居なければ勝てなかったと思う。
「おいおい、お前が切り倒してくれなかったら俺にだって止めは刺せなかったぜ。お前のおかげだ。英雄はお前だよ。」ミルドレイク伯は全く引かない。頑固だなぁ。年取ると頑固になるっていうけどもうそんな年なんじゃないかな。きっと加齢臭とか凄いぞ。
「じゃぁ2人で倒したって事にしといてくれ。メインはあんたで、俺は補助だ。それ以上は認めない。」僕は身体を起こして手を差し出す。
「そういう事にしておこう。」ミルドレイク伯は僕の手を取ってギュッと握ってきた。いてーいてー、力強すぎこの人。
3000を超える大群を相手にしたにも関わらず、町への被害は少なかった。門付近の木立がかなりの量伐採された事と、魔物たちが進軍してきたところが巨大な獣道になってしまったことぐらいか。
大量に残った魔物の死体は門の中に運び込んで、門の外に残った大量のバリケードと櫓を解体して薪にしていく。
回復した冒険者や兵士が協力してテキパキとこなしていく。僕も少し休んで魔力が回復したので、バリケードを薪に変える作業を手伝う。
【ウィンドエッジ】でバリケードを丁度いい大きさにどんどんと切り刻んでいく。これぐらいの火力で済むなら結構使ってられる。
隣では先日僕に絡んできたバカな冒険者が戦闘用の斧でスパスパと器用に薪を割っている。
僕は魔法でスパスパスパ。
彼は斧でスパスパスパ。
2人でどんどん薪を積み上げていく。
スパスパスパ。
スパスパスパ。
お互いに意識しあってどんどんスピードが上がっていく。なんだこのバカ負けるかっての。
スパスパスパ。
スパスパスパ。
バリケードはいつの間にか無くなっていた。
「はい俺の勝ちー。」僕は山のように積みあがった薪を前に、えへんと腰に手を当てて勝ち誇る。
「はいはい、俺の負けですよ。先日はすまなかった。子供相手に大人げなかったよ。」僕に絡んできた冒険者はそういって頭を下げた。
「子供じゃねーし。俺は15歳だ。」僕はぷんすこ怒る。
「そうか、すまない。」そういって冒険者は手を出してくる。
「わかれば良い。」僕はその手を取り握手をした。
「俺は港町ネフレシアを拠点に活動してる冒険者スパークだ。20歳彼女募集中だ。よろしくな。」自己紹介きた。まぁ彼女募集中とかどうでもいいんだが。
「疾風だ。領都を拠点に活動を始めたばかりだ。15歳彼女とかは特に募集してない。」ちゃんと自己紹介できた。快挙かもしれない。しかも揉め事を乗り越えて友情が芽生えるとかちょっとドラマみたいじゃない?グレートなやつかな?3年B組かな?
まぁ色々あったが、彼も無事でスタンピードを乗り越えた。魔物相手に最後まで戦い続けていたのも見ている。なかなか優秀な冒険者みたいだ。港町ネフレシアって言ってたな、いつか行ってみたい。新鮮な海の魚食べたい。どっちかっていうとそっちメインだけど、こいつに会うのも悪くない。
僕らはまたいつか会おうと約束し別れた。
あ、そういえばマリアはギルドのお手伝いに行かせてる。ケイトさんが今回の件で事務仕事がいっぱいあって、ギルドが大変な事になってるっていう事だったからね。
僕も手伝おうかなって思ったんだけど多分僕には事務仕事向いてないから・・・。出来る事をやった方が良いと思ったんだ。
でも薪割りも終わっちゃったし、次はなに手伝おうかなーって歩いてたら、門をくぐると山のように積まれた魔物の死体にギョッとした。
町の外にそのまま放置しておくと血の臭いで他の魔物が寄ってくるっていう事で町の中にいれてあるらしい。
だが、解体できる人員が少なくてその処理が滞っているそうだ。
オークなんかは食料としている地域もあるっていうから、早いところ解体して食肉に分けた方が良い気がするけどな。
それこそスラムの人に寄付するとか使い道はいっぱいあるのに。
いや、むしろスラムの人に解体教えて仕事としてやってもらえばいいのでは?
こういうのを提案する相手っていうとミルドレイク辺境伯になるのかな。スラム街をどうにかしないとって言ってたし。でもなんか部外者が勝手にこういう事提案するってのも失礼な話かもな。
せめてマリアに相談してから決めるべきことだろうな。ただでさえ僕なんか子供みたいに見られてるしな。
まぁとりあえず僕に今できる事はこれだろうな。
解体作業をしている人に声を掛けてみた。
解体作業をしていたのはギルドの職員さんだった。ギルドで買い取りしている部位を切り取り、要らない部分は焼却処理とするそうだ。
オークの食肉の部位に関しても聞いたが、今回は住民を避難させている関係上、食肉を買い取ってくれる飲食店が居ないそうで、食肉部分も焼却してしまうという事だった。
勿体ないなぁ。流石に焼却ってのはどうなのかなぁ。って思った僕は、食用部分を譲ってくれと交渉した。
どうせ焼却してしまうという事だったので解体を手伝ってくれるならと、二つ返事で許可は下りた。
少し待っててくれと、その場を離れ。マリアに聞いていたスラム街へと足を運ぶ。
スラム街は門から割と近くにあり、外壁沿いに進むとすぐに着いた。こんなに近くにあったんだな。
聞いていた通り、かつてゴミを埋め立てていたという広場を中心に、バラックの小屋が立ち並んでいた。ゴミ処理をしていた関係か、町の建物からは少し離れていて、結構広大なスペースが空いている。
今は皆避難していて、ガランとしている町の中心部とは違い、このスラム街はそこかしこに人が座り込んでいて、ただただ時が過ぎるのを待っている。そんな風に見えた。
みんなガリガリに痩せ細っていて今にもお迎えが来そうな佇まいに見えたからだ。それぐらい生気が感じられない。
「おまえたちに代表者は居るか?」地面に座っていた男に僕が尋ねる。
男は無言で奥に座っている背の高い男を指さした。
「おまえがここの代表者なのか?」指をさされた男に僕が聞く。
「代表なんてしてねぇよ。ただ一番の古株なだけだ。」背の高い男はぶっきらぼうにそう答えた。
「まぁいい。仕事が欲しいやつはいないか?金は払えないが、代わりに食事を提供しよう。」偉そうな物言いだが、雇い主というのはそういうものだろう。我慢してくれ。
「くいもんがあるのか?どれぐらいある?すぐ食えるのか?町の皆避難しちまって残飯も漁れないんだよ。」虚ろな表情だった男の目に光がさした、ように見えた。僕ににじり寄り縋り付いてくるぐらいの勢いで質問してくる。周りにいる人達もうつむけていた顔を上げて聞き耳を立てている。
「慌てるな。ここにいる全員が十分に食べられるぐらいの量はある。仕事をしたらその報酬で食わせてやる。どうだ?仕事をする気はあるか?」思っていた何倍もの食いつきで少し気圧されているが、食いついてくれるのはありがたい。
「何の仕事だ?出来る事か?いや出来ないことでも構わない。なんでもやる。」そこらに座ってる人が僕のところに集まって口々に質問してくる。
「仕事の内容は魔物の解体だ。解体した肉を俺が調理する。解体の方法は俺が丁寧に教える。調理が出来るものがいるならその手も借りたい。」一人でも多くの手伝いが欲しい。なんせ魔物の数は3000を超えるんだから・・・。オーク肉で手伝ってくれるっていうなら安いもんだ。どうせ焼却する肉だしね。焼いて食った方が絶対いい。一人でも手伝ってくれるっていうならその一人に全員分の肉を持たせてやってもいいと思っている。
しかしそんな心配は要らなかった。その場にいた人間全員が手を上げたのだ。
僕はそこにいた全員を引き連れて門の広場に戻る。
解体をしていたギルド職員が目を真ん丸にさせて僕達を見る。
「こいつらに解体を教えて解体作業をさせたい。人数分のナイフを借りれないか?それと大きな焼き網か鉄板を貸してくれ。炊き出し用のやつがあるだろ?」ギルド職員に頼んでみた。当然貸してくれるよな?って感じで聞いてみた。ダメで元々だけどね。
「す、すぐに用意します!」ギルド職員はそういうとギルドへと走っていった。
5分ぐらい待っているとギルド職員は大きな箱を抱えてやってきた。箱の中にはたくさんの解体用ナイフが入っている。あるじゃないあるじゃない。
僕は引き連れたスラムの人達を集めて魔物解体講座を開いた。目の前で僕が何匹か解体して見せて、次に代表者一人にやらせて、横から口を挟んでアドバイスしていく。
要領を掴んだ人には他の人に教えるように言ってそうやって次々と出来る人数を増やしていく。そうするとあっという間に解体出来る人が増えていった。
そんな事をしていると他のギルド職員が炊き出し用の焼き網と大鍋等をいっぱい持って来てくれた。
門の広場で火をたくのはまずいだろうと、スラム街までそれらを運び、落ちているレンガと石を組んで簡易炉を何個か作っていく。
料理班として来てくれた人達と共に料理の準備をしていく。先程大量の薪を作っていたので勿論それを利用させてもらう。
肉以外の食材と調味料は僕が遠征用に買い込んでいたものを使おうかと思っていたんだけど、ギルド職員がギルドにあった物を持ってきてくれた。感謝しかない。
あとでギルドマスターやケイトさんにもちゃんとお礼言わないとだな。
大鍋も借りられたのでスープの仕込みを調理班に指示して、後をお願いして一旦広場の様子を見に戻る事にした。
広場に戻るとギルド職員や、解体が得意な冒険者達もいっぱい広場に来てくれて、まだうまく解体が出来ないスラムの人達に丁寧に教えてくれていた。
さっきまで一人のギルド職員がモソモソと解体していたのが嘘のように、数えきれないぐらいの人が皆で一生懸命解体作業をしてくれている。
「こんなに解体進んじゃうと焼却する量が増えすぎて焼却しきれませんよ。」なんてギルド職員が嬉しい悲鳴を上げていたぐらいだった。
まぁ焼却処分なら僕の魔法でサクッとやってしまえばいいかと思ってるけど、まぁ本当に困ってそうなら手伝おう。
こんなに多くのギルド職員や冒険者が手伝ってくれるとは思っていなかったので僕は感激している。
もうこうなったらここにいる全員分の食事を作ってしまうか。と言ってもスープと焼肉だけどさ。とにかく肉は大量にある、なんせ300体分のオーク肉があるんだから。
食材は無駄なく有効に使わないとね。