第30話 西の森のゴブリン
日曜日に新たに評価とブックマークが増えました!!ありがとうございます!!
土日はPVが下がるんで、自分の中では我慢の日って呼んでます。
しかしその我慢の日が歓喜の日となるとは!
これでモチベが更に上がったので頑張っていけそうな気がします。
本当にありがとうございました!!
夜に1回だけ魔物の気配で目が覚めた。
領都方面からやってきて付近をうろうろした後、森の奥の方に向かっていった。
その後は朝まで何事もなく寝ることが出来た。
目覚めると既に着替えが用意してあり、マリアは朝食の準備をしていた。
天幕の外に出るとすぐにマリアが温かいお茶を入れてくれる。
スープは既に出来ていて、昨夜ソースを絡めて干しておいた肉と卵をスキレットで焼いていく。
最後に僕が好きな柔らかいパンを軽く炙って出来上がり。
マリアが作ってくれた朝食セットの出来上がり。昨夜仕込んでおいたお肉がベーコンみたいにカリカリしていて、半熟の目玉焼きと絡めるととても美味しい。
スープはジャガイモと干し肉を煮込んであって、昨夜出汁を取った干しエビと煮干しも具として入っている。
昨夜出汁をとった出し殻だけどまだまだ良い味がでているし、具としても美味しかった。干し肉からも良い出汁が出ていて、複雑な味を醸し出していた。
ジャガイモが煮込まれてとろみがついていて、パンに良い感じに絡んで食べやすかった。
マリアの料理は美味しいなぁ。朝から元気が出てきた。今日はダンジョン付近を重点的に回って索敵しまくるから、きっと体力を使うぞ。
ダンジョンに近付いてくると気配察知にかなりの数の反応が出てきた。
索敵できる範囲内に何か所か10~30体の反応が固まっている。これがコロニーという事なんだろうな。
コロニーは5か所で確認できた。あとはそれらを回って、魔物の種類を特定していく事にする。
リヤカーを目立たない場所に隠し、結界石を置いておく。効率よく見回るには身軽になるのが良いと思い、余計な荷物は全て置いていくことにした。
僕らが派遣された時点で西の森関連のクエストは全てキャンセルされており、ダンジョンにも進入禁止のお触れが出されている。
だからこの付近にいる他の冒険者は居ないはずだ。
一番近いコロニーに近付いて行くと、マリアが「ゴブリンです。」と言って、姿勢を低くした。
まだ姿は見えない距離だが、臭いでわかると言った。
頑張って臭ってみたが僕にはちょっとわからなかった。流石はベテラン冒険者だな。
見つからないように気配を消しながら静かに近付いて行く。
茂みに隠れて魔物を観察してみると、以前戦ったゴブリンと同じ様なやつが12匹。
少し身体が大きくて額に角が1本生えた個体が5匹。
明らかに身体が大きくてガッシリとした個体が1体。通常のゴブリンの2倍以上の大きさに見える。
鑑定の結果ゴブリンジェネラルというのが大きい個体らしい。そして鑑定2の効果なのかLV39と表示があった。
通常のゴブリンより一回り大きい角の生えた個体はホブゴブリン、一番LVの高い個体でLV16という事だった。
因みに通常のゴブリンでLVの高い個体はLV5だった。
全部で18匹だが、マリア曰くジェネラルが居る事が問題だという。コロニーにジェネラルが居るという事はダンジョン内部にロードかキングが居る可能性がとても高いらしい。
コロニーというのはダンジョン内部に巣食う群れの糧食調達部隊だという事だ。外に出て狩りをしてダンジョン内部に持ち帰っているという。
コロニーの規模が大きければ大きいほどダンジョン内に潜む群れの数が増えるという事らしい。
僕らは静かにその場を離れ、次のコロニーに向かう。
その他のコロニーを回ってみるが、やはり同じ様にジェネラルが1匹と、ホブも数匹、ゴブリンが多数と。同じ様な構成だった。
途中フォレストウルフがそのコロニーに襲われてやられている場面を見た。フォレストウルフはそのまま担がれてダンジョン方面にコロニーが進んでいった。
森に魔物の気配が少ないのはそれが原因だろう。
既に気配がこれだけ少ないという事はスタンピードが始まるまでの猶予は残りわずかという事だと思う。
森の魔物を狩りつくして食料がなくなれば次は町の人間が食料になるという事。
僕らはリヤカーの場所まで戻ると急いで領都に向けて出発する。
道中マリアと相談した結果、途中で野営を挟まずに簡単に食事だけ済ませながら、夜も休まず領都へと急いだほうが良いだろうという事になった。
昨日野営したポイントにはまだ明るいうちについたが、そこで歩きながら食べられるようにサンドイッチを10個作った。
昨夜作ったベーコンモドキと、茹でたジャガイモをスライスして挟み、そこにマヨネーズを塗ったサンドイッチだ。
パンの大きさもある程度大きいので、2食分としては充分な量になるだろう。
とりあえず昨夜作った大量のベーコンモドキを使い切りたかった。モドキというだけあって日持ちもしないだろう欠陥品だしね。腐る前に大量消費だ!
道中交替でリヤカーを引きながらサンドイッチもパクついて先を急ぐ。
夜が更けてきたころ、気配察知で前方に魔物の気配を確認した。
最初5匹分の反応だったが、近付くにつれてその数が増えていく。
見えるぐらいまで近付いた頃にはその数は12匹になっていた。そして見た感じもっと居る事もわかった。
鑑定の結果一番近くにはゾンビが5匹、その後ろにスケルトンが7匹、さらに周りにゴーストが10匹ぐらい浮かんでいる。
どうやら気配察知にゴーストは入らないようだ。
LV平均はだいたい20前後だった。
リヤカーを引いていたマリアが立ち止まり、戦闘体制に入る。
【ファイアアップ】【クイック】マリアと自分に肉体強化をかける。
マリアは弓を強く引くと横に動きながら次々に弓を放っていく。長弓は放つまでの時間は掛かるが、威力がとても強いようだ。
矢が当たるとゾンビの身体に大きな穴が開いていく。
動きながらなので命中率は下がっているようだが、ゾンビもスケルトンもマリアに引き付けられて動いていく。
そこへ僕が飛び込み首を狙って切り付けていく。後ろからスケルトンの首を切り付けると首が簡単に落ちていった。
5体分のスケルトンの首を落としたあとは2匹残ったゾンビの首に切りかかった。
ゾンビの首は硬く僕の短剣が食い込んで取れなくなった。しまった、思ったように切り倒せない。
肉体強化をかけていても僕の腕力が低くて普通に首を斬り落とすことも出来ないのかもしれない。まぁ剣術を学んでいるわけでもないし僕の実力がこんなもんだっていう事か・・・。
ゾンビは振り返り僕に掴みかかろうとする。
僕は短剣から手を放し後ろへ飛ぶ。
飛んだ先には頭を落としたはずのスケルトンが立っていて、手に持った片手剣で僕に斬りかかってきた。首を落としてもスケルトンは倒せないのか。
時間の流れがゆっくりになり、斬撃を左に躱す。剣が通り過ぎるタイミングで手首を掴んで僕もその方向に身体を回転させながら背負い投げの要領でスケルトンを投げ飛ばす。
【ズババババババババッ!!!】派手なSEと共に投げ飛ばしたスケルトンがグルグル回りながらぶっ飛んでいき、木にぶつかって砕け散った。
いやいや、どんだけ飛んでくんだよ。っていうかあのSE出たな。投げにもクリティカルってのるのかよ。どうせならさっきゾンビに斬りかかった時に出てくれりゃ良いのに。
首のないスケルトンは首が無いのも意に介さずに、次々と僕に切りかかってくる。
マリアはゾンビを倒し終わったようだ、僕の近くのスケルトンめがけて矢を放っている。
しかし命中して骨が砕けても、スケルトンはまだ立ち上がってくる。
【ウォーターアロー】マリアが矢に水の魔法を乗せた攻撃をしていく。
大きな水の矢はスケルトンの身体をごっそりと貫き、身体の大部分を失ったスケルトンは活動を停止していった。
僕は切りかかってきたスケルトンを同じ様に投げ飛ばして、残りのスケルトンにぶつけてみた。
【ズババババババババッ!!!】派手なSEと共にスケルトンは両方とも砕け散る。
上空をフワフワ飛んでいたゴーストが火球を作って飛ばしてくる。
それほど早いスピードでは無いが、当たれば命は無いだろう。それぐらい大きな火球だ。
僕は距離をとり、マリアに寄っていく。
スケルトンを倒し終わったマリアが僕に話しかける。
「ゴーストは実体がないので物理攻撃は効きません。」そういうと矢に水の魔法をかけて放つ。
【ウォーターアロー】
大きな水の矢がゴーストを貫き四散する。
僕もそれに倣い火球を作り出してゴーストに放つ。
【ファイアボール】
バフンとゴーストに当たってゴーストは消えたように見えた。
しかしその後ゴーストは再び姿を現し、僕に向かって火球を打ち出す。
火属性はダメっていう事か?
【エアバレット】大き目の空気の塊をゴーストに放つ。
バフッ、ゴーストに命中するがやはりゴーストは元に戻る。
風属性でもダメってことか?
マリアが頑張って何度も水の矢を撃っていくが、まだ3体ぐらいしか倒せていない。
残りのゴーストも火球を作り僕たちに向かって飛ばしてくる。
手詰まりだ。僕の攻撃が効かない。マリアに任せるしか無いのか?
マリアの様子を窺うが、魔力はまだありそうだが避けるのに集中していてなかなか攻撃が出来ないでいる。
なんとかしないと。
「おい!存在感の薄い雑魚ども!!」こっち向け。
「お前のクソとろい攻撃なんか当たるもんかよ!!」俺の方を見ろ。
「悔しかったら俺に当ててみろ!!!」俺に向かって火球を撃ってこい。
残り全てのゴーストの注意が僕に向く。
火球を作り出して次々に僕を狙って撃ってくる。それを僕はヒョイヒョイと躱していく。
ただでさえ遅い火球がスローモーションで見えるんだからそりゃ避けるだけなら楽勝だわ。
その間にマリアはゆっくりと狙いをつけてゴーストを撃ちぬいていく。2体3体同時に射貫いている。
流石マリアだ。僕はヒョイヒョイと火球を避けてゴーストの周りをグルグル回る。
ゴーストは僕の動きを追い、その場でグルグル回転している。
動きが止まったゴーストなんかマリアの敵じゃない。
最後のゴーストをマリアが射貫いた頃、マリアの身体が光を放つ。
鑑定でマリアを見てみるとLVが34になっていた。
LVアップの光なのかな?それとも新しいスキルでも身につけたとか?ちょっと意味は解らないが、戦闘は無事に終了した。
最初ゾンビに斬りかかった時にはスローモーションにもならなかったし、クリティカルも出なかった。
その後スケルトンに斬りかかられた時には2回ともスローモーションになって、投げ技が2回連続クリティカルになった。
確率の問題か?とも思ってたんだけど、これはそれだけの事じゃない気がするな。
おそらくこれは反撃術ってスキルのおかげなんだよな。襲われるとスローモーションになるって事と、SEが聞こえてクリティカルが出るって事。
反撃って事だから自分から攻撃に行った場合には適用されないって事なのか?
自分の掌をみつめる。
名前:火神疾風
年齢:15歳
LV:24
HP:950
MP:7570
腕力:50
知力:125
体力:67
素早さ:2360
器用さ:230
スキル:【鑑定2】・【気配察知5】・【反撃術】・【火属性魔法】・【風属性魔法】・【魔物解体】・【多言語理解】・【挑発】・【神聖魔法】
加護:@@@@の加護 火の精霊神の加護
鑑定が2になって見える項目が増えてるかなって思ったんだけどそういうわけじゃなかった。あ、気配察知が5になってるな。そういえば見える距離が増えてる気はしたんだ。
【気配察知】:周囲に居る生物の位置を正確に把握する能力。LVが上がるほど正確に遠距離まで察知することが出来るようになる。
ってなんだこれ。気配察知のスキル説明みたいなの出たな。もしかして鑑定2の効果ってこれの事か?
試しに反撃術を注視してみる。
【反撃術】:自分に襲い掛かる相手の動きがゆっくり見えて、【反撃の一撃】を放つタイミングがとりやすくなる。
思っていた通りの効果だな。【反撃の一撃】ってのはなんだ?
【反撃の一撃】:相手の攻撃にタイミングを合わせて攻撃を出すと、必ず【会心攻撃】になる。
あー、この【 】で囲まれた文字は鑑定で見れる単語って事なのかな。
【会心攻撃】:攻撃の威力が300倍の威力になる攻撃。
え?300倍??ダメージ1の攻撃だとしても300ダメージ出るって事?
100ダメなら30000ダメって事?やり過ぎじゃない?
とんでもない倍率ゲームに頭パニックなんだが。
ってそうか、今迄カウンターキメてた時だけクリティカル出てたって事か。
確実にカウンターをキメていけば100%クリティカル出るって事だよね。しかもカウンターキメやすいようにスローモーションになってくれるっておまけ付きで。
第30話にしてやっと僕の能力が判明しました。って30話とか意味が分かんないけど。
でもまぁとにかく今までモヤモヤしてたことがやっと理解できて頭スッキリ祭りでわっしょいわっしょいなんだよ。
これからの戦いはそれを意識しながら戦えば良いって事だね。
さっき僕が役に立たない空気ちゃんになりかけていたから救いの光が見えた気がする。
これからはマリアだけに負担を掛けないでも良いって事だね。僕も頑張るよマリア!
そんな事を掌みつめながらぶつぶつ言ってると、マリアは黙々と討伐証明部位を集めていた。手伝えって言ってよ。
スケルトンの討伐証明部位は頭蓋骨だという事で、吹き飛んでしまった物以外5個の頭蓋骨を回収する。ゾンビは証明部位が同じく頭だという事だったが、ちょっと腐った頭を持っていくことをためらい今回は諦める事にした。
ゴーストに関しては持ち帰れる部位がそもそも存在しない・・・。夜の魔物たちコスパ悪すぎでしょ・・・。
せっかくリヤカー引いてきたのに持ち帰るものがスケルトンの頭蓋骨5個っていうのは寂しすぎるなぁ。
でもまぁマリアの話だと、コロニーに手を出してしまったら、他の部隊を呼ばれて大変なことになっていただろうという事だから、これでよかったのかもしれないな。うん。
まぁ調査は無事済ませたんだし、クエスト報酬だけでもちゃんと貰えるんだから良しとしましょうよ。それに先を急がないといけないんですよ僕達。
準備を整えると再びリヤカーを引き領都へと向かう。そこから日が明けるまではもう何者にも襲われることは無く、順調にサンドイッチを食べつつ進んで行く。
太陽が真上に達する前に僕たちは領都へと着く事が出来た。
その足でそのままギルドへ向かうとケイトさんに詳細を報告する。
ケイトさんはそのまま会議に入るという事なので僕たちは一旦部屋に戻り休むことになった。
目途が立ったら呼びに来てくれるという事だったのでそれまでは寝る事にしよう。流石に一晩寝ずに歩いてきたから眠いんだ。
部屋に戻ると僕たちはお湯で身体を拭き、ベッドに潜り込む。こんな時でもマリアは僕の頭をなでなでしてくれる。ちょっと強行軍で疲れが出ていたが、そんな疲れも吹き飛ばしてくれるぐらい暖かい手だ。
きっと上手くいく。スタンピードが起こっても町を守ってみせる。
僕は決意を胸に、眠りについた。
やっとこの物語のタイトルを説明できる日がやってきました。
疾風察し悪すぎてなかなかスキルについて説明してくれないから困ってたんですよね。
まぁ自分の匙加減一つなんですが・・・。