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第29話 初めてのお仕事

ちょっとまったり回が続いてますが、そろそろ動き出します。

まぁ自分はまったりとした話が好きなんで、どうしてもまったり回が増えてしまうようです。

まったりが嫌いな方には申し訳ないです。

 昨夜はギルドの酒場でマリアとお酒を飲みながら夕食を食べた。


マリアは酔っぱらってしまうと可愛い物の話を延々とした挙句、僕の頭を抱き寄せてなでなでしながら眠ってしまった。

絡み酒じゃないだけマシだが、僕がちょっと恥ずかしいから、あまり人前では飲ませない方が良いかもしれないなと思った。なでり酒と名付けよう。2人だけの時なら許そうと思う。


朝起きてからマリアに昨夜のことを聞いたが殆ど覚えていない様子だった。

そして今朝もマリアはテキパキと僕の着替えを用意してくれたりと働き者だった。ありがとう。


昨日同様、ギルドの酒場で朝食を食べていると、受付のケイトさんから声を掛けられた。


「本日は早速指名以来が入ってますよ。領主様からです。」僕に依頼書を渡すとケイトさんはマリアの隣の席に座った。


なになに?西の森のコロニー調査?

「コロニー調査?」わからないことはすぐ聞きましょうと言われてはいないがすぐ聞いてみた。


「最近ダンジョンのある西の森で、魔物との遭遇率が異常に増えているんです。それで領主様はスタンピードを懸念しておりまして。その調査をお願いしたいとの事です。」ケイトさんが分り易く説明してくる。


「あくまでも調査ですので、最悪の場合は逃げてしまって構いません。今回のクエスト報酬には響きませんので。」危険だと判断した場合は逃げて来いってことね。


「スタンピードの前兆として、ダンジョン外にいくつかのコロニーが形成されることがあります。コロニーが出来ていた場合にはその規模と数、魔物の種類なんかを報告していただければOKです。」なるほど、スタンピードの話は聞いていたしね。その調査っていう事か。


「西の森のダンジョンっていうのは領都から近いのか?」それによっては野営の準備が必要だね。


「ダンジョンまでは徒歩で1日程の距離になります。森の中ですが、道が出来ていますので迷う事は無いと思います。マリアも行ったことがあるから大丈夫よね?」片道で1日か。野営の準備は必要だね。ってかマリアは冒険者時代にダンジョンに行ったことあるんだね。マリアはうんうん任せておけと頷いている。


「この依頼の完了期限みたいなものはあるのか?」買い出しも必要そうだし、急を要する事ならすぐに出ないとだしね。


「とくに決められてはいませんが、コロニーを発見した場合にはなるべく早く報告して頂けるとありがたいです。」まぁそうだよね、急ぎだよねそりゃ。もし準備も出来ずにスタンピードがおきたら大災害だからね。


「マリアどう思う?」マリアに相談してみる。


「もしスタンピードが発生すると領都だけじゃなく他の町にも被害が及ぶ危険があります。出来るだけ早く対策をする事が一番だと思います。私の冒険者時代の装備もすぐに用意できますので、すぐにでも出発するのが良いかと思います。」マリアは乗り気のようだ。以前から領主様からの指名以来をこなしてたって言ってたしね。受けた方が良いって事なんだろうな。


「わかった、受けよう。」依頼書をしまい席を立つ。



「野営が必要になるから急いで買い出しをしてくる。」マリアに告げると僕は市場に向かう。マリアは急いで自分の装備を取りに行くと言っていた。


ギルド前に集合という事で僕らはそれぞれの目的地に散って行った。



前回の旅での事を踏まえて今回は少し日持ちのするものを中心に選んだ。肉類に関しては途中で狩りをする事前提で、干し肉を最低限だけ買って。


小麦粉は前回使いきったので新しい物を購入した。米もあるし、1kgぐらいあればいいかなって感じで。


あとは乾物類だね。干し椎茸とか干しエビとか煮干しとかそういうの。出汁もとれるし使い勝手がいい。


野菜はじゃがいもだけ買った。常温で日持ちするからね。


たまごも前回わりと常温で日持ちすることも分かったから購入した。


とりあえずこれぐらいで、あとは現地調達で済めば良いかなって感じだね。


どっちにしてもそれほど長い期間じゃないから無いものは無いで諦める方が良い。あるもので対処しよう。


ギルドに戻るとマリアは既に待っていた。リヤカーのような物と一緒に。


「どうしたの?これ。」マリアの横にあるリヤカーを見ながら聞く。


「遠征の時にはあると便利なのでギルドで借りてまいりました。」なるほど、徒歩だと荷物があまり持てないからね。こういうものを使うわけね。


マリアはメイド服の上から部分的な防具を身に着けていた。武器は銀色に輝く長弓を持っている。


「じゃぁ出発しようか。」時刻はまだ昼前。調査しながらでも結構距離は稼げるだろう。



西の森へ向かうと、聞いていたとおりに小道があった。街道みたいにちゃんと整備はされていないが、毎日人が通るからか、ちゃんと道としてわかるほどに拓けている。


リヤカーを引いて歩けるぐらいの幅も十分あるし、休憩する場所も所々に発見できた。


最初マリアが一人でリヤカーを引くと言って聞かなかったんだけど、仲間なんだから交替でいこうという僕の申し出を聞き入れてくれた。引き役と押し役を交替でやる事にした。


勿論肉体強化で引く力は余裕でもつから、適度に休憩さえとれればある程度無茶は効く。行きは体力もあるので少しペースを上げて進んで行く。


道中マリアからは西の森のダンジョンの話や西の森に出る魔物の種類なんかを聞いていた。


西の森にはゴブリンを中心にフォレストウルフとロングファングボア、あとは稀にオークなんかも出るそうだ。夜になるとゴーストやゾンビやスケルトンも出る事もあるそうだが、結界石がとても効くらしいので出遭う事は無さそうだ。


今まで異常に増えていると報告があった魔物はゴブリンで、最近かなりの数が確認されているとのことだった。ゴブリンは集団戦となると連携が非常に厄介な相手だという事で、遭遇した時には注意が必要だなと思った。


道中索敵してはいるが、今のところ大きな反応はみつけられていない。小さい反応を追い、角のある1m程のねずみ型の魔物のホーンラットを1匹狩ったぐらいだった。夕食の為にね。


それに関してもわざわざ追って行ったぐらいで、歩いていれば普通に逃げて行ってしまうぐらいだった。


「聞いていた話よりも魔物の気配が無いね。」リヤカーを引きながらマリアに話しかける。


「あまりにも少なすぎる気がします。普段だったらわざわざ探さなくても向こうから襲ってきているはずです。」なるほど、普通なら1日歩いているだけで何度か戦闘になってるはずなんだね。


異常な数のゴブリンが見かけられてるって話だったのに逆に何にも遭わないっていうのが怪しく感じるね。


道中何組かの冒険者とすれ違っていたが、彼等も魔物と遭遇していないという話だった。



出発してから6時間ぐらいだろうか。まだ日はそれほど傾いてはいないはずだが、森の中はもう既に暗くなってきた。



丁度いい広さの広場をみつけたので、今夜はここで野営することにした。

天幕を建てて、結界石を置いていく。リヤカーと天幕を置いても十分にカバーできるはずだ。


効果範囲が目に見えると助かるんだがな・・・。

鑑定でそういうのがわかれば良いのに。って思ってると薄っすら結界石から光が出ているのが見えた

。その光が届く範囲が効果範囲なのかな?天幕からリヤカー、焚火のある場所まで全て光の範囲に入っている。これが効果範囲という事なら多分大丈夫だろう。


でもなんでいきなりこんなもの見えるようになったんだろう?ステータスを確認してみると、鑑定がついに2になっていた!!

ずっと上がらないなーって思ってたけど。もしかしたらもっと詳しく見たいって気持ちが足りなかったのかもしれないな・・・。


望めば何でも手に入るなんて思った事無かったけど。思いが強ければ願いも叶いやすくなるのかもしれない。強欲過ぎるのは良くないかもしれないけど、無欲も悪い事なのかもしれないなと思った。



そんな事してる間にマリアが窯を作って薪を拾ってきてくれていた。

薪に火をつけて十分な火力が出るように火を安定させる。



まずは小麦粉に軽く塩を振り水を混ぜつつ捏ねていく。良い感じの硬さになってきたら一回寝かせておく。


その間にスキレットに水を入れて沸かす。煮干しと干し椎茸を入れて少しの間出汁を取る。


良い感じに色付いてきたらラム酒と醤油を入れて、とろみが出るまで煮詰めていく。焦げないように火加減を調節しながらね。



寝かせた小麦粉の塊を再度捏ねていく。十分な硬さになったらそれを平らに伸ばしていって折畳む。


あとは適度な太さに切っていって、鍋にたっぷりのお水を入れて茹でていく。


昼間狩ったホーンラットのお肉を食べやすい大きさに切っていって、それを網で焼いていく。塩を振って少し焼き、仕上げにさっきスキレットで煮詰めたソースを少し塗って炙る。


茹で上がったうどんに煮詰めたソースをかけて絡めて、炙った肉を乗せて。


「つゆ無し肉うどんの完成!」うどんつゆ作るには鍋がもう一つ必要だったので、つゆ代わりに煮詰めた出汁ソースを作ってみた。


まぁあまりうどんっぽくないけど焼うどんみたいで美味しそうだ。


何が出来るのか興味津々だったマリアに盛り付けたうどんを渡してあげる。

すすらなくても食べやすいようにうどんは少し短めに切ってある。フォークで巻き巻きして食べてねとフォークを渡す。


「魚の良い香りがしますね。」煮干し多めで出汁をとったのでかなり魚の香りが強い。


「しょっぱいけど甘さもあってこのソースとても美味しいです。」マリアがうどんにソースを絡めつつ食べていく。

良い感じに煮詰まって、ラム酒と醤油だけでも甘さととろみが十分に出る。便利なお酒だ。


上に乗せたホーンラットのお肉もちょっと筋張っている所もあったがとても美味しかった。1mぐらいの大きさがあると2人でも食べきれないぐらいのお肉がとれた。

余った分は余ったソースに絡めて干しておく。明日の朝にでも使ってもらおう。朝ごはんはマリアの担当だ。


1品しかないけど、遠征中だしね。鍋もう1個欲しいな。次は鍋買い足そう。そう思った。


食事の片付けをしている時、遠くで魔物の気配がしていたが、少しうろうろしたあとに何処かに去っていってしまった。

結界石の効果がちゃんと出ているようだ。


結界石もあるし、寝ている間に殺気を感じればすぐ起きられるので、まぁ大丈夫だろうと見張りは立てずに天幕に入る。火の始末はちゃんとしてね。


天幕は2人で入っても十分な広さが確保出来ていた。

僕がブランケットにくるまると、マリアが隣で頭を撫でてくれる。


そう、マリアと一緒の部屋で寝ることにも慣れてきたが、寝るときには必ずこうやってマリアが僕の頭を撫でるんだ。


いや、これがとても安心して気持ちいいんだけど。最初はドキドキだった。


ほんとマリアはお姉さんって感じがする。きっと弟を思い出しながら撫でてくれてるんだろうな。弟さんの分まで僕がマリアに甘えようと思う。


まるで聖母のような。あ、聖母マリア様。今気が付いたけどマリアは聖母マリア様かもしれない。それほどの優しさを感じている。


名は体を表す。サラもそう言ってたっけ。僕にとってはマリアが聖母マリア様なんだね。


僕は胸の前で手を合わせて祈りを捧げた。

神様、マリアと逢わせてくださりありがとうございます。


こうして西の森での1日目が過ぎていった。

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