第24話 エルフの実力はいかに?
最近凹む事案が多く発生していて、少しモチベが落ちてきているようです・・・。
気持ちを切り替えて頑張っていこうと思ってはいるんですが、なかなか難しいですね。
何か良い事おきろ!!と常に他力本願な本日の夢現でした。
昨夜はマリアの過去を色々と聞いてしまった。
僕のことは殆ど話してないけど、僕が泣き虫だったり、弱かったりするのをマリアにはしっかりと知られてしまっている。
いつか僕の事も話そう。聞いてもらおう。
和食に温泉、色々な魅力を感じた町ユガーラ。準備を整え隊商は領都へ向け出発する。
あ、出発前に醤油と味噌とお米を買ったよ。シルエラの町で買った食材もだいぶ使ったしね、割とスペースに余裕はあった。といっても程ほどにね。
出発の前にキャスと執事のランバさんと隊商のレイ隊長と話し合った結果、マリアの強い要望もあり、僕の担当する5番馬車の上での警戒にマリアも一緒に加わることになった。
元冒険者でBランク相当の腕もあるというマリアの話を聞くと、レイ隊長も警護兵リーダーも二つ返事で許してくれた。
ただみんなの突き刺さるぐらいの鋭い視線が凄く気になったけどね。
キャスはもうすっかりと、マリアがメイドを辞めて僕についていく、って言う話を了承しており。逆に応援すらしてくれている。
元々側仕えとして侍女が2人ついてたので、キャスのお世話は侍女2人と執事のランバさんで十分だったそうだ。
昨日の霧は嘘のように晴れていて、馬車は順調に進んでいた。
マリアは馬車の上で器用にお茶の道具を出して僕にお茶を入れてくれた。
今僕はお茶を飲みながら優雅に警戒任務を行っている。
マリアは自分の事を半人前だと言っていた。
昨日からマリアに色々と世話を焼いてもらっているけど、どうみたってマリアが半人前には見えない。
色々な事に気が付いて、僕がして欲しい事を先回りしてやっておいてくれる。これがメイドか!って感心するぐらい素晴らしいメイドさんだと思ってる。
でもそれでも自分を半人前だと思っちゃうぐらい、ミルドレイク家のメイドさんっていうのは凄いのかもしれないな。
昼休憩を済ませ、山もある程度下ってきた頃。ゴツゴツした火山岩が剥き出しだった山道は、薄暗い森の中の街道になっていた。
鬱蒼と茂る高木に囲まれ閉塞感漂う暗い森だ。
気配察知4でかなり広範囲の索敵ができるようになった。
あ、そうだ昨夜寝る前に自分のステータスを確認したところレベルが20に上がっていて、気配察知も4に上がっていた。
気配察知も4になると結構遠くの魔物も察知できて、多分1kmぐらい先まではわかるんじゃないかな。はっきりとした距離は測ってないのでわからない。
今のところ魔物の気配は何個か発見できるが、こちらへ襲い掛かろうとする殺気は感じられていない。
シルエラの町周辺ではあまり感じられなかった大きい魔物の気配も感じるから、やはり山のこちら側が危険なのは確かなようだ。
馬車は順調に進み、今夜の野営場所へとやってきた。
近くに川があり、森の中だが11台の馬車を停めて野営できるぐらいの大きな広場が空いていた。
しかし、この野営場所に到着する前から川のあたりに大きな気配が1個あるのを感じていた。
一応警護兵リーダーにそれを告げたところ、リーダーも同じ様に感じていたらしい。
野営準備をする前に警護兵はその気配の場所を探ってみる事になった。
川に着くとそこには全長4m程の大きな猪がいた。鑑定の結果【ロングファングボア】と出た。確かに長い牙だ。
遠く茂みの中から観察していたが、相手もこちらの気配を既に感じているようだ。じっとこちらをうかがっている様子。
「私にやらせてください。」マリアが名乗りを上げた。元Bランク冒険者で弓の使い手。新入りの自分の腕を示したいようだ。
【ファイアアップ】【クイック】マリアの肩に手を置いて身体強化をかけてみる。マリアの身体から赤と緑のオーラが出る。成功した。
身体強化は自信に対するバフ効果だけじゃなく、見方に対しても支援バフとして使えるって事なんだね。
前回警護兵の副リーダーが味方に身体強化をかけていたのを見て、僕もできるか試したかったんだ。練習台にしてごめんねマリア。
「ありがとうございます。」そう言うとマリアは5m程上の木の枝に飛び乗って弓を構えた。
【ウォーターアロー】そう言うとマリアの放った矢が大きな水の矢になって物凄い速度でロングファングボアの頭を貫いた。いやむしろ頭を吹き飛ばした。すごい威力。
「お見事!」同じ弓使いの警護兵リーダーも絶賛する。
絶賛されたマリア本人はなんだか複雑な顔をしているが・・・。ちょっと手元でも狂っちゃったのかな?
そう、ここに着くまでの屋根上でマリアの身の上について少しだけ聞けた。
マリアのお母さんはエルフ族で、お父さんが人間族、マリアは所謂ハーフエルフなのだそうだ。
エルフは元々精霊との親和性がとても高く基本的に精霊魔法を得意としているそうで。
本来であれば高位の魔法まで行使することができるほど魔力が高いらしい。
しかしマリアはハーフエルフという事で精霊との親和性が元々低いため魔力もそれほど高くなくて、補助的な魔法ぐらいしか使うことが出来ないそうだ。
だから基本的に弓を使っての戦闘を得意としているという事だった。
さっき使ったのはここで一発と言う時に使うという、精霊魔法を補助とした一撃だったらしい。魔力量の関係で1日に3回ぐらいまでしか撃てないと言っていた。
マリアの実力を皆で確認した後は、その場で血抜きをして皮を剥ぐ。
巨大猪のお肉は今夜のごちそうにすることに。
っていうか肉を切り分けようとしてわかった事。お肉屋さんとかにあるような、部位ごとに名前が書かれたポスターとかあるでしょ。
魔物解体スキルの影響なんだと思うんだけど、あのポスターみたいに部位ごとに線が入って見えるんだよね。
鑑定で見ても部位の名称とかまでは出ないけどね。
とりあえずそれを目安に部位ごとに切り分けていく。
今夜はこの巨大猪肉を使って焼肉パーティーだ!!
「疾風様、少しお話があります。」夕食の後天幕に戻るとマリアから声を掛けられた。
「私のウォーターアローはあんなに凄い威力はありませんでした。矢の貫通力を手助けして、ロングファングボアの分厚い皮と骨を貫く程度のつもりで放ったものだったんです。」みんなから絶賛されたマリアがなんだか複雑そうな顔をしてた気がしたが、それには理由があったようだ。
「疾風様に助けられてから、身体のなかに感じられる魔力が少しずつ増えているような気はしていたんです。成長によるものかと軽く考えていたのですが・・・。先程の魔法の威力で確信いたしました。私の魔力が異常に上がっております。今は自分でも制御ができない程に。」マリアの魔力が上がった?まぁ魔力が上がったのならめでたい事だとは思うけど。
マリアが複雑な顔をしてるのは、なんで上がったのか訳が分からないからって事かな。
いや、思い当たる節はあるんだ。
マリアの怪我を治してる時、足りない血液を生成するのには魔力が足りなかった。
だから急遽自分の血液をマリアに許可なく分けた事。だってそうでもしないと失血が激しすぎて危ないところだったから・・・。
でもそれを知ってマリアは気持ち悪がらないだろうか・・・。
多分この世界には無い概念だと思う。他人の血を身体に入れるなんて。
でも訳も分からずにいる事の方が嫌だよな。僕は思い切ってマリアに打ち明ける事にした。
「マリアに言って無い事があるんだ。マリアを助ける時に、僕は未熟過ぎて魔力が足りなかった。大量に出血していたマリアの血を作ることが出来なかったんだ。」
「だから、許可なく僕自身の血をマリアに転送してしまったんだ。」思わず下を向いてしまう。怖くてマリアの顔がみれない。
「私の中に疾風様の血が・・・。」胸に手を当てるマリア。
「嬉しい。」顔を上げマリアを見ると綺麗な瞳から止め処なく涙が溢れていた。
「疾風様から頂いたこの魔力。一生の宝物とさせて頂きます。」嫌じゃないみたいで良かった。僕は少しだけホッとした。
今回の件、多分僕の血を大量にマリアに輸血した事によって、僕の魔力というか僕の能力の一部が入り込んでいるのだと思う。
どこまでの能力が入り込んだのかはわからないけど、少なくとも魔力が上がってる事から精霊との親和性が上がったのは確かだと思う。
これによってマリアにどういう影響が出るかは要観察と言ったところなのだろう。
でも今後はこういう事が無いように気をつけないとだめだろうな。
まぁ輸血が必要になる事なんてそうそう無いだろうけどね。
どちらにしろ文字通りマリアとの血の絆が出来たっていう事だな。