第21話 エルフの血は何色だ?
本日は普段通り1話投稿です。
ガタガタガタ。馬車の音が聞こえる。
あれ?なにしてたっけ。ストーンゴーレムと戦って。そうだ、警護兵の人が怪我をして、回復魔法使ったんだ。
周りを見回す。
馬車の荷台でマントを毛布代わりに横になってる。
「気が付いたか?大丈夫か?」声の方を見ると御者台から荷台を振り向くライオン丸、もといヘビメタ隊長。いや、レイ隊長。
「大丈夫だレイ。」僕が答える。
すかさず御者の人から「レイ様だろ!!」とツッコまれる。
御者台から荷台に降りてくるレイ隊長。僕の傍に座ると青い薬の入った小瓶を差し出す。
「魔力回復薬だ、飲んでおけ。」
薬を受け取るとグイっと勢いよく飲み干す。「苦っ!」そうとう苦い。かなり苦い。罰ゲームかよ!!ってツッコみたいぐらい苦い。
でもそのおかげでフラフラしてた頭がだいぶスッキリしてくる。
ヤバい薬を飲んじまった。
「お前大活躍だったなぁ。皆褒めてたぜ?」レイ隊長がにっこり笑って褒めてくれた。
「俺はたいしたことをしていない。」ほんとストーンゴーレム強かった。そして警護兵のみんなはとっても強かった。
各自の役割がハッキリしていて連携がよく取れた良いチームだと思った。
正直僕は要らなかったのでは?と思う程強かった。
「お前が居てくれなかったらオンジは死んでたぞ。大活躍だ。感謝している。」レイ隊長は頭を下げた。
「やめてくれ、必死にやったら治っただけだ。」運がよかった。
正直あの時は必死であまりよく覚えていない。次に同じような事があってもまた同じ様に上手くいくかはわからない。
「あまり謙遜してると、それはそれで嫌味だぞ。素直に認めろ。お前はよくやった。」レイ隊長が僕の頭をグシグシっと撫でてくれる。
「わかった、わかったから。」頭をグワングワンされながら僕は手をバタバタさせる。
「ぐわーっはっはっはっはっはっ!」レイ隊長が楽しそうに大笑いしてる。
その後そのまま荷台から屋根上の見張り台に席を移し、警護兵リーダーと一緒に先頭車で警戒任務につく。
魔力回復薬のおかげか、みるみるMPが回復していき、今は多分殆どフルまで回復している。
相変わらず霧が立ち込める道だが、標高も下がってきたからか、それとも周りにある火山地帯の影響か、だいぶ暖かくなってきた。
着ていた毛皮のマントは既に脱いでいる。
「そろそろ休憩場所に到着するぞ。」警護兵のリーダーが教えてくれた、その時だった。
「前方に魔物の気配!」皆に聞こえるように大き目の声で叫ぶ。
「2、いや3体。さっきよりもデカいぞ!距離は・・・。50m!」恐らくストーンゴーレムよりもデカい気配。
「馬車を止めろ!!」レイ隊長が全体に号令をだす。
警護兵のリーダーと僕は馬車から飛び降りた。
後ろから他の警護兵の隊員が集まってくる。
僕とリーダーは先に走り出す。
【ファイアアップ】【クイック】
少しでも馬車から距離をとらねば、積み荷に被害が出る。
霧の先から見えてきたのは。
馬車?大きな箱馬車が停まっている。
その馬車を守る様に立つ2人の人影、それに襲い掛かろうと身構えている体長5mぐらいの大きなトラ。その身体は燃えるように赤い。
トラの足元には既に何人もの人が倒れている。血塗れだ。
トラは低く構えて一人に飛び掛かる。
ヤバい!急げ間に合え!!僕が全速力で前方へ飛ぶ。
トラの大きく伸ばした前足の大きな爪が馬車の前に立ちはだかる女性の腹部を大きくえぐり取る。
そのトラに向かって体当たりをする僕。
間に合わなかった。一瞬だけ遅れた・・・。
腹部をえぐられた女性はその場に崩れ落ちる。
僕を追ってきたリーダーが、僕が体当たりしたトラに向かって同時に3本の矢を放つ。
その3本の矢が次々と突き刺さり、たまらずトラは後ろに飛ぶ。
「トラは俺達に任せろ!お前は怪我人の手当てを!!」リーダーは僕に指示を出すとトラを引き付けて馬車から離れていく。
僕が倒れた女性の元へ駆け付けると、他の警護兵のメンバーもトラの元へ向かっていくのが見えた。
任せてしまって大丈夫だろう。
倒れた女性へ目をやると、【腹部裂傷大・動脈切断・出血多量・危篤】と表示されている。
顔はみるみる青白くなっていく。ヤバい、時間がない。
大きく裂けた腹部に手を当てる。
まずは動脈だ、動脈縫合。内臓は大丈夫だ。傷をふさぐ。足りない組織を再生。
ヤバいもうくらくらしてきた。それぐらい酷い。魔力が足りない。組織を再生する作業の魔力消費がヤバすぎる。
【出血多量・危篤】ダメだ、今度は血が足りない。血液の再生に回せる魔力がない。どうすればいい?輸血?血液型がわからない。
【輸血OK】僕の血を分けられる?直感でわかった。
「僕の血を輸血!」身体からごっそり抜ける僕の血液。魔力も血も限界だった。
一瞬で力を失い前のめりに倒れこむ僕。
ぽいん。
「おいおい、幸せそうな顔で倒れやがってよぉ~。」警護兵のリーダーが笑いながら戻ってきた。
トラは倒せたようだ。
僕は幸せな感触を味わいながら意識をなくした。
ガタガタガタ。馬車の音が聞こえる。
あれ?なにしてたっけ。あれ?デジャブ?
ぽいん。
幸せな感触。
目を開けると幸せな景色が見えた。
大きな枕をかき分けて上を見る。女性の顔だ。凄く綺麗な女性の顔。年の頃なら20歳ぐらい。綺麗な青色の瞳とスッとした鼻。銀色の髪の毛にピンっと長い耳。
あ、エルフかな?この世界で初めてエルフと出会えた。ラッキー。やっぱエルフって綺麗なんだなぁ。なんだかいい香りするし。
ん?なんでそんな美人エルフとこんなにも密着しているんだ?
何があったっけ・・・。
「おいおい、いつまで気持ちよさそうな枕で寝てやがるんだ?」レイ隊長の声で強制的に現実に戻される。
「はっ!」飛び起きると美人エルフはびっくりした顔で僕を見ていた。
「やっと起きたかよ。とりあえず飲んどけ。」今日2度目の魔力回復薬を手渡される。
ゴクゴク。「うぇ、まずぅ~。」今日2度目のまずい薬。
「この度は命を救ってくださいまして、ありがとうございました。」美人エルフは僕に深々と頭を下げた。
この美人エルフめちゃくちゃ綺麗。っていうか何?メイド服?萌えるぅ~。
ほんと大混乱。まだ現実が呑み込めない。
「お前さんが助けた女性だよ。トラにやられてたんだろ?」レイ隊長が助け船を出してくれる。
「あぁ~。なるほど。」やっと理解。必死で治したっけ。良かった、救えたんだな・・・。
あれ・・・、薬飲んだけどまだクラクラする・・・。ぽてっ、再び美人エルフの幸せ枕へダイブ。
全然フラフラするんですけど?
あ、血が足りないのか・・・。血が足りねえ、何でもいい、食いもんじゃんじゃん持ってこいだ。
「血が足りねぇ・・・。」力が出なくてそれしか言えなかった。
美人エルフは僕の頭をギュッと抱きしめてずっとなでなでしてくれた。
「見てらんねぇぜ。」がーっはっはっはっはっはっ!レイ隊長はガハガハ笑いながら御者席に戻っていった。
昨日はこれまで投稿したことがない割と早い時間に投稿したせいか、PVの伸びが過去最高でした。
今日はそれに味をしめちょっと早めの時間にアップしてみます。どうなることやら~。
もしよろしかったら感想やご意見など頂けると嬉しいです。
それでは引き続き良い休日をお過ごしください。