第20話 隊商は山を越えて
本日2本目です。前回と今回はセットで見てほしいので無理して2本投稿しました。
これ繋げるとちょっと長くなってしまうので別けたんですがテンポ悪いかな?
ちょっとその辺も今後の課題かなって思ってます。
その後隊商は何事もなく進んでいき、2日目の夜には山頂付近へとたどり着いた。
流石に山頂付近は気温も下がり、借りた毛皮のマントがとても役に立っている。
山の向こう側には火山地帯が広がっていて、温泉が出るところもあるそうだ。
山の中腹に位置するユガーラの町では温泉を観光の目玉にしているらしい。
明日の夜はそのユガーラの町で1泊するそうなので、久しぶりに温泉に浸かれそうで今からワクワクしている。
幸いこれまでの行程で魔物に襲われる事は1回もなかったが、火山地帯は危険な魔物も数多く出没するという事なので、厳重に警戒する必要があると言われた。
そして今夜の晩御飯はなんとカレー!?
隊商の皆さんが作ってくれているスープはなんとカレーだった!!
と言ってもインドカレーや家庭のカレーじゃなくて所謂タイカレー、その中のグリーンカレーってやつだね。ココナッツミルクが入ったアレ。
こっちにもあるんだなぁ。
僕グリーンカレーは特に大好きで、家でもよく作ってたんだ。
レトルトじゃないんだけど、具材以外のスパイスとかルーとかが入ったセットがあって、それをよく作って食べてたなぁ。
おばあちゃんも辛いカレーはダメだったけど、グリーンカレーは好きだって言ってた。
ご飯はあるのかな?って様子をうかがってたんだけど無い様なので、ご飯替わりっちゃなんだけど、僕はニョッキを作ることにした。
ニョッキはジャガイモと小麦粉を練り合わせたコイン状のショートパスタだ。
まずはお鍋で皮のついたままのジャガイモを茹でる。良い感じに茹だってきたら串を指して中まで柔らかくなってるかチェック。
中までちゃんと茹だったら、ザザーーっと取り出して、熱いうちに皮を剥く。それがポイント。茹でる前に包丁で軽く切り込みを入れておくとやりやすい。
布巾とかでくるんでグリグリしてやると簡単に剥けるよ。
くれぐれも火傷注意ね!
って、熱っ!!
言ってる傍から火傷したし・・・。
ん?赤くなった掌を見ていたら【熱傷:軽度】って表示された。火傷ってことだよね?これ。
今まで鑑定でこんなの出てきてたっけ?
あれ、治るなこれ。
なんとなく治るって感じた。
反対の手でその火傷部分を触る。火傷の部分の炎症を抑えるイメージで。熱くなった部分を冷やすイメージで。痛みが引いていくイメージで。
赤みが引いて痛みもない。
さっきまで出ていた【熱傷:軽度】って表示が消えている。
あー、神聖魔法ってステータスに書いてあったのってこれかー。
これって治癒魔法ってやつだよね。これ使えるって便利だなぁ。
ってニョッキ作ってる最中だった。
治癒魔法の覚醒で喜んでいたが、早く作らないとみんなを待たせちゃう。
ジャガイモの皮を剥いたらフォークを使って潰していく。
良い感じまで潰れたら広く薄くひろげて、そのまま少し冷気にあてて、冷ますついでに水分を蒸発させる。
良い感じに冷めたら、小麦粉を混ぜて捏ねる!
小麦粉の割合によって、ジャガイモ多めのホクホク食感から、小麦粉多めのモチモチ食感まで調節できるんだけど、今回はモチモチでいこうと思ってる。
良い感じに捏ね上げたら、今回は棒状に伸ばしていって。直径2cmぐらいの棒状にしていく。
今度はその棒を1cm間隔ぐらいでスライスしていって。そのスライスした円盤を掌の上に乗せて、フォークの背でグリって強めに潰してやって溝をつけていく。
それを何個も何個も・・・。全部に溝をつけたらそれを茹でる!
今回は塩少な目でね。
茹で上がったらグリーンカレーと一緒に盛りつけていく。
ニョッキ入りグリーンカレーの完成!
全員に配り終えたら早速実食。
カレーがめちゃくちゃ辛いけど、ココナッツミルクが良い仕事してるなぁ。辛さをまろやかにしてくれてる。いや辛いけどね凄く。僕が作ってたやつの3倍ぐらい辛い。
ニョッキも良い感じにモチモチしててグリーンカレーを程よく絡めてくれる。
小麦粉だけのパスタとは違ってジャガイモのホクホクした食感もちゃんと残ってる。
パスタばっかり作ってるけど、皆さん飽きてないかな?ってみてみたら、みんなすごい勢いでお替りしてる。
今回はお替りできるように多めに作ってニョッキはご自由にどうぞって感じで大皿に盛っておいたんだ。
あっという間にそのニョッキが消えているところだった。僕の分無いかも・・・。
まぁ皆さん満足して頂いたようで僕も嬉しいですよ。
そういえば僕の乗ってる馬車の御者さんが猫の獣人なんだけど。長い尻尾がとっても可愛いんだ。あ、男の人ですよ、可愛いって言ってるけど。
晩御飯食べてる時、僕の前に座っていたんだけど、その尻尾が時々パタンパタンしててもう僕はそれが気になって気になって・・・。
最終的にシパッて掴んでみたんだけど、なんか凄い怒ってたな。
「やめるにゃ!」って怒ってたから余計可愛くて多分僕すんごいニコニコしてたと思う。
可愛いは正義だなぁ。
その後は何事もなく寝て、何事もなく起きて、何事もなく朝食を食べて、何事もなく出発した。いよいよ3日目スタート!
山頂付近からは物凄い霧が濃かった。今は山を越え、更に随分下ってきたが、それでもまだ濃い。
10m先ぐらいまでしか見ることが出来ない状態だ。
そのせいで馬車のスピードも出せずにずっとノロノロと進んでいる。
そんな中嫌な気配がする、左の霧の中だ。
「魔物の気配だ!左約50m」距離は大体だが、大声でみんなに知らせる。
馬車は止まらずゆっくりと進んだまま。
10m先までしか見えない中気配を探る。耳を澄まして注意深く様子をうかがう。
辺りはただでさえ隆起した火山岩で見晴らしが悪い。その影も注意深く観察する。
「多分相手は5体ぐらい。かなり大きいぞ。」前後の警護兵へ知らせる。
前後の警護兵たちが馬車から飛び降りる。
僕もそれにならって馬車から飛び降りる。
僕の隣にいる一番若い隊員が、左手に持った大きな盾を右手に持った剣でガンガン叩く。「ここだここだ!こっちに来い!」
挑発のスキルだろうか。盾をガンガン叩いている。
幾つかの気配がスッとそちらに意識を向けて向かって来る。他の車両に乗っていた警護兵達も集まってきた。
【ファイアアップ】【クイック】身体強化の魔法を自分にかける。
大盾を持った隊員が盾を前に構える。他の隊員たちはその後方に控え、様子をうかがう。
弓を装備したリーダーが皆に細かく指示を出し始める。僕は一番後方で待機してくれと指示された。まずは皆の動きを見て自分の役割を考えよう。
気配が動き出し、大盾の兵士に襲い掛かる。
霧の中から飛び出してきたのは身の丈3mは優に超える石の魔物。鑑定の結果は【ストーンゴーレム】だった。
大盾でストーンゴーレムの一撃を防ぐ隊員。
しかしあまりにも相手がデカすぎた。1撃で5m程吹き飛ばされる。それをグッと堪え次の一撃に備える。
隊員の一人が呪文を唱え、大盾の隊員の身体が青く光る。鑑定の結果【プロテクション】と出た。防御魔法だな多分。
しかし相手は1体ではない。霧の中から姿を現したのは合計3体。それらが一斉に大盾の隊員へ襲い掛かる。その攻撃を器用に大盾一つで捌いている。
それを横から大剣を持った隊員が斬りかかり援護する。しかし、大剣は石の身体に弾かれてしまう。
そこへ更に別の隊員が巨大な火球をストーンゴーレムへ撃ち込む。火球は1体のストーンゴーレムの石の身体を大きく砕いて吹っ飛ばした。
しかし次の2体がその魔法使いの隊員に襲い掛かる。挑発が解けたようだ。
大盾の隊員が慌てて盾をガンガン叩いてアピールする。しかしもう間に合わない。
僕は素早くその魔法使いの人を抱え横に飛ぶ。
2体のストーンゴーレムはそのまま勢いよく通り過ぎていく。
通り過ぎたゴーレムめがけて大きなハンマーを持った隊員が大振りで殴り掛かる。
2体のうちの1体が大きなハンマーの1撃で崩れ落ちる。
残りの1体はゆっくりと振り向くとハンマーの隊員と睨み合う。
その反対側、霧の中から残りのストーンゴーレムが近寄ってきていた。
大盾の隊員が慌てて盾を構えてそれを防ぐ。
1m程ズズッと後ろに押された後、ガッシリと耐える隊員。
プロテクションの魔法を使った魔法使いの隊員が、大剣を持った隊員に魔法をかける。
大剣を持った隊員は赤く光っている。鑑定の結果【ファイアアップ】と出ている。
大剣を持った隊員は、大盾の隊員が対峙している2体のゴーレムのうちの1体へ向かって切りかかる。
先程は弾かれていた剣が突き刺さる。しかし身体の中心ぐらいまで進んだ刃がそこで止まる。
ストーンゴーレムはよくもやったくれたなと、その大剣の隊員の腹を殴りつける。
殴られ吹っ飛ばされた大剣の隊員。
その後ろから追い打ちをかけるように残り1体のストーンゴーレムも飛び掛かる。
僕は素早くその間に立ちはだかり、右手に持った短剣のナックルガードの部分で下から掬い上げるように殴りかかり斜め上に受け流す。
【スババババババババババッ!!!】SEと共にゴーレムの身体部分が砕け散る。
身体に大剣が刺さったゴーレムはこんなもの効かんとばかりに、大剣が刺さったまま僕に向かって走って来る。
すぐさま魔法使いの隊員が大きな火球を剣が刺さったゴーレムにぶつける。脆くなっていたゴーレムはその場で砕け散った。
後ろを向くと大きなハンマーを持った隊員が残りのストーンゴーレムを叩き潰していた。
隊列からヘビメタ隊長が駆け寄ってくる。「怪我はないか?」警護隊の無事を確かめる。
しかし1名大剣を持った隊員が横たわっている。【打撲・脾臓破裂・内出血大・重体】僕の目にその情報が映る。
大剣の隊員の傍へ駆け寄り、損傷部へ手を置く。周りの隊員達が集まってくる。「大丈夫か!?」「しっかりしろ!」みんなで声を掛ける。
腹部へ置いた掌に集中すると内臓が傷ついて大量に血が出ている個所が透視したように透けて見える。
破れた脾臓を貼り合わせ、血管を塞ぎ、お腹の中に溜まった血を元に戻す。複雑な工程を同時にこなしていく。
体内に大量に出ていた血は、不思議とそのまま血管に押し戻すことが出来た。
そして最後に腹部の打撲の痛みを散らし、炎症を抑える。
ふぅ・・・。クラッと、バランスが取れなくなってその場でしりもちをつく。なんとかなった、と思う。
昨夜自分の火傷を治した時の数十倍の魔力を持っていかれた・・・。ちょっと暫く立てそうにない。
「お、お前治癒魔法使えるのか!?」ヘビメタ隊長がびっくりした顔で僕を見ている。
「スゲーなお前!」「ありがとう!」他の隊員も口々に声を掛けてくる。
ちょっと今それどころじゃない・・・。
僕はその場に座り込んだまま気を失っていた。
これ作中に細かく書くと文章も長くなるしテンポも悪くなるので書きませんでしたが、一応決めておいた警護兵6人の構成です。
1、リーダー:レンジャー、弓・ダガー・指揮
2、副リーダー:魔法(補助
3、隊員:魔法(攻撃
4、隊員:大剣
5、隊員:ハンマー
6、隊員:大盾
タンク1 魔2 近接火力2 遠距離&指揮1っていう構成です。
パーティーの連携を描きたくて書いたんですが・・・。
一応自分の中ではテンポよく頭に思い描いた連携を書いたつもりです。
もし上手く想像出来なかったら自分の文章力不足です。すみません。