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第18話 隊商出発!

おかげ様で少しずつPV数も概ね順調に伸びてきていて、励みにさせて頂いております。

よろしければブックマークやコメント、評価などしていただけると更に励みになります。

お時間がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

 3頭立ての、屋根付きで大型の荷馬車が合計10台。

弱い魔物ぐらいなら相手にできそうな、屈強な御者が10人

隊商の隊長と思われる、ヘビメタの人かな?と思えるぐらいのビジュアルをしたマッチョなおじさん。

そして彼らを護衛する隊商専属の警護兵が6人。

隊商はそんな面々で構成されていた。


この大所帯を護衛するのに6人じゃ足りないのでは?と思っていたんだが。

見た目通り御者も結構強いらしくて、いざとなったら隊長を含め全員で対処できるからこれぐらいの人数で十分なのだそうだ。


オリバーさんが隊長に事情を説明してくれて、僕を領都まで送ってくれる手はずを整えてくれた。

当初は単純に便乗させて貰うという事だったのだが、僕自身気が引けたので何かしらお手伝いできることもあるだろうと。護衛兼、調理担当という事で連れて行ってくれとお願いした。

 隊商の面々ともそういう事で挨拶を交わし、僕も臨時の護衛としてメンバーに加えてもらえることになった。


まずは荷積みの手伝い。シルエラの町から積み込む特産品を積み込んでいく。

ちなみにシルエラの特産品はまずは砂糖。サトウキビを栽培していて、それを加工して砂糖を生産しているそうだ。

そしてさらに祝勝会で飲ませて貰ったラム酒。これも酒場用に樽に入った物と、瓶詰された一般販売用の物がそれぞれ大量に積み込まれていた。

主にその2種類がシルエラの特産品だそうだ。


荷積みが終わると警護兵達と道中の警護の打ち合わせをした。

打ち合わせというか役割分担だね。


先頭と最後尾には索敵が得意なレンジャーである警護兵のリーダーと、警戒の魔法が使える副リーダーがつくという事で、僕は5台目の馬車の屋根上で左右の警戒を任された。


隊商の荷馬車は屋根部分にも荷物を載せられるように荷台になっているので、基本警護兵はその見晴らしの良い屋根上で警戒を行うようになっている。


他のメンバーも等間隔に屋根上での警戒に配置されている。


警護兵達は元冒険者だが、正式に隊商の警護兵として雇われており、一番新しい隊員でも既に10年近く働いているベテラン揃いだそうだ。リーダーや副リーダーはヘビメタ隊長とは隊商発足時からの付き合いらしい。


リーダーが40代ぐらいで、一番若い人でも30代前半ぐらいに見える。

御者さんたちは20代って感じだった。


ちなみに隊商のヘビメタ隊長はレイアノール・ロア・ゲッティンと名乗った。

そう貴族なのだ。

準男爵という事で彼は領地を持っておらず、ミルドレイク辺境伯との個人的な繋がりから、隊商を率いてミルドレイク領各地を回っているそうで、基本的には領都ミルドレイクに屋敷を構えているらしい。

見た感じ年齢は30代後半といったところかな、そして驚いたことにライオンの獣人だという事だった。よくみると尻尾が生えている。可愛い。


まぁそれでヘビメタみたいなビジュアルに見えたわけだ。あのワイルドなヘアスタイルはたてがみだったってことね。きっとあのワイルドヘアの中に猫耳が隠れているに違いない。


因みにミドルネームのロアってのはそのライオンの獣人の事を指すらしい。



ヘビメタ隊長との自己紹介の時、「俺のことはレイと呼んでくれ。」と言われたので、「わかったレイ。」と返事をしたら御者連中が大慌てで「レイ様だろ!!!」ってツッコんできたが、「俺がレイと呼べと言ったんだ、それで良い。」がーっはっはっはっはっ。って豪快に笑ってた。

凄く接しやすい隊長だった。ヘビメタ隊長とか呼んでごめん。


因みに隊商の隊長が獣人だからか、御者や警護兵の中にもチラホラ獣人の人が居た。



隊商の準備が整ったあと、町の人達が見送りに来てくれた。もうなんか凄いいっぱい。

町のみんなそれぞれ僕にお礼の言葉を投げかけてきた、まぁ僕は既に馬車の荷台にいるから囲まれることは無かったんだけど。

その光景に隊商の皆さんがびっくりしてた。


それに僕は馬車の上から手を上げてこたえた。



「では出発!」レイ隊長の号令で隊商が出発した。

町の門のところでは多くの人が手を振っていた。いつまでも。




シルエラの町を出発してから5時間、隊商は山道を登っていた。領都ミルドレイクとの間にあるチリアド山だ。

今回の5日間の行程の殆どをこのチリアド山越えで過ごすことになる。


今は温暖な気候だが山頂付近では相当冷えるという事で、警護兵のリーダーから分厚い毛皮のマントを貸してもらっていた。

今はまだそれほど寒さは感じ無いが、これが必要なぐらい寒くなるという事なんだろう。



まだ山道に入って間もないが、随分と開けた場所に出た。

まだ日も落ち切ってはいないが、野営するポイントについたという事で、今日はここをキャンプ地とする。デデン!



馬車を綺麗に並べると御者達は結界石を置いて行った。僕が買った物よりも更に大きいやつだ。


だがこれだけの規模の野営ともなると、結界石だけでは強い魔物には効果が薄いらしく、夜には見張りが必要になってくるとの事だった。

弱い魔物が近寄ってくることは無いが、強い魔物からはこれだけ多くの人の気配を隠しきるのは難しいらしい。


夕食の準備の前に警護兵のメンバーで見張りの順番決めを行った。経験の浅い僕は最後の見張り順を指名された。



さて、夕食の準備だが。隊商の面々は既に役割分担が決まっていて、それぞれに仕事を始めていた。

 隊商では、それぞれの役割がハッキリしていて。警護兵は道中の警戒、野営時の見張りが専門。

 御者連中は野営時の調理、諸々の物資調達を担当している。寝不足では馬車を動かすことはできないので見張りに立つことは無いそうだ。


という事で、僕は僕で食材を色々買い込んであるので、担当は警護だが1品追加という事で料理班にも参加させてもらう事にした。


御者の人達はスープを作っているようだった。それとあれだね旅と言えばの例の硬いパン。あれが用意されている。日持ちの良い食材しか持ち合わせていないからしょうがないという事らしい。

 基本隊商の野営ではそれが定番のメニューだそうで、道中魔物や大型の獣に襲われた場合には夕食が豪華になったりするそうだ。



それを見て僕は作るメニューを決めた。


まず僕が買った鍋だと全員分作るにはちょっと小さいので、隊商で使っている大きい鍋を一つだけ借りた。


そしてまずは下ごしらえ。

小麦粉に卵を割って、油と塩を少々。そしてひたすら混ぜる。そして捏ねる。

人数が多いから卵も10個使った。だから相当量が多い。

本来捏ねるのも一苦労だが、身体強化のおかげで全然楽だった。


良い感じの硬さまで捏ねたら1回まとめて、ラップ代わりに濡らして固く絞った布巾で包んで置いておく。


その間にソース作り。まずは狂牛の肉を細かく刻んでいく。ナイフと新しく買った短剣を駆使してトントントンと。

そして薄く油を敷いた鍋にぶち込んで、軽く塩を振って炒める。ある程度火がとおり、肉の脂が出てきたら1回鍋を下ろして。


トマトを10個、皮を剥いて刻む。適当な大きさにササっと刻んで鍋にドーン!

ローリエの葉を1枚入れて再び火に掛けて遠火で焦がさないようにゆっくり煮込んでいく。


トマトから水分が出てきたら砂糖と塩と乾燥バジルを細かくちぎって投入、味を見て調整しながらひたすら混ぜてさらに煮込む。


そして隊商から借りた大きい鍋に大量の水と一握りの塩を入れて湯を沸かす。

湯を沸かしている間に寝かせた生地を平たく伸ばして、折畳んでいく。そしてそれをまとめて7mmぐらいの幅で切っていく。


湯が沸いたらその切った生地を投入して、良い感じの硬さまで茹でたら、ザっと湯を切って、ソースをかけて出来上がり!


「平打ちパスタのトマトソース掛け!」ジャーン!って気が付いたら隊商の皆さんはもうスープが出来上がっていたようで、僕の後ろでみんなお皿を持って見ていた。恥ずかしい。


「順番に並んでくれ。」そう言うとヘビメタ隊長を先頭に綺麗に並んでくれた。

順番に盛っていくとみんなすごい勢いで食べ始める。

「なんだこれ!?うまい!!」「こんなの初めて食べた、なんていう料理だ?これ」「いい匂いだ早くくれ!」「もっとだ!おかわり!!」いや、そんな食べられると僕の分なくなるんだが?



なんとか自分の分を確保するとやっと僕も食べ始める。


パスタの食感も良い感じで上手くできている。手作りの生パスタはこの不ぞろいな感じが美味しいんだよなぁ。

一番最後だったので少し柔らかかったがこれぐらいが僕は好き。アルデンテとかもう過去のものだと言い切ろう。


ソースも塩と砂糖だけでよくできていると思う。狂牛から出た脂でコクも出ているし、砂糖でトマトの酸味も抑えられて良いとろみもついた。

香りもローリエとバジルが良い仕事をしてくれている。いや、こっちの名称でいえばリエッタとリコだな。ちょっと紛らわしい。


硬いパンも嫌ではないんだが、どうしても主食が欲しくて今回はパスタを作ってみた。


パスタ自体はそれほど手間もかからないので、朝食にはパスタだけ作ってスープに入れてもらうのもいいかもしれないな。


形状を変えるだけでも色々な料理と合わせることが出来るからパスタって便利だと思う。


ソース作りは鍋も炉も1個ずつ占領しちゃうし、これからはリクエストがあればって事にしておこう。



隊商のみんなも満足してくれたようで口々に料理の腕を褒めてくれた。



とりあえず余所者という立場からは脱出できたかな?

胃袋を掴んで、旅仲間として馴染みたい。その一歩は踏めたと思う。そんな夜だった。

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