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第14話 初めての祝勝会

週末の間に結構ストックを書き溜める事が出来たのでまだ当分毎日投稿は続けていけそうです。

書きなぐった自分の文章を再度読み返すと書き直したいところがたくさん出てきてしまって、ストックを書く作業よりもチェックして直す作業の方が時間がかかるのがなんとももどかしいですが・・・。

頑張って続きを書いていきますので、どうかお付き合いくださいませ。

 宿に帰るとドルトンさんが受付に居た。

聞けばマーサさんが回復したので治療所から宿屋へ移ってきたそうだ。

制作を頼む背嚢についての相談がしたいという事だったので僕の部屋で話をすることになった。


「とりあえず最低限ここにある荷物が入るだけの大きさの確保と、荷物が増える事を想定して容量を調節できる仕組みを考えてほしい。それと背嚢の中に入れられないような魔物素材だとか毛皮などを括りつけられるように、外側にも工夫が欲しい。あと、出来ればなんだが。このバッグに描かれている絵を入れられないか?」僕はエコバッグに描かれているパンダちゃんを指さす。


「おぉ、大熊猫ですね。かしこまりました。こういうのはマーサが得意なんじゃ。聞いてみましょう。」ドルトンさんは快諾してくれる。元々雑貨店を営んでいて、背嚢も制作していたとのことだったので、細かいところはプロに任せてしまった方が良いだろう。

っていうかこっちの世界にパンダ居るんだな。ちょっとびっくり。


「もうマーサは大丈夫なのか?無理に急ぐ必要はないぞ。」マーサさんが背嚢制作に携わってくれるようだったので一応聞いてみた。


「調合していただいたお薬がとてもよく効きまして、すっかり回復しておりますじゃ。とても質の良い薬草素材だったという事で効果も出やすかったのだと聞いております。」昨日飲ませた薬でもう退院して帰れるんだからすごい効果だったんだろうな。マーサさんあんなに弱ってたのに。


「それではこれで制作を始めさせていただきますのじゃ。儂は昨日お連れした雑貨屋の作業場を借りて制作を始めます、もし追加の要望があればいつでも言ってきて下され。」ドルトンさんはそう告げると自分の部屋に戻った。同じ階の3個隣の部屋を借りたらしい。


背嚢が出来てきたら、市場で食材を買い、旅に出よう。

領都というところが近くで一番大きい町だと言っていたので、とりあえずそこを目指すと決めている。



町の代表のオリバーさんから聞いた話によると、領都ミルドレイクはミルドレイク辺境伯が治める領地の中心都市で、このシルエラの町を含め8個の町と5個の開拓村からなる広大な領地らしい。


ミルドレイク伯はとても気さくな人柄だそうで、領地の税率もそれほど厳しくなく領民からとても愛されているそうだ。


このミルドレイク領という場所は守りの要所と呼ばれていて、国にとってとても重要な地だという事だった。隣接する2国家と接している場所柄、他国との貿易都市としてもとても重要な役割となっているそうだ。


だからというかなんというか、盗賊達がその物資を狙って集まってくるという事で。街道を行く行商人や旅人は、冒険者を雇ったりして警護してもらうのが当たり前なのだそうだ。

ミルドレイク伯も領兵の採用を積極的に行っていたり、各町のギルドでも冒険者の募集には力を入れているという。



このミルドレイク領では半年に1度隊商が各町を回って特産品等を買い上げていってくれるという事で、各町はその時に向けて特産品を作り貯めているのだそうだ。


5日後に丁度その隊商が来る予定だという事で、領都へ行くならそれに便乗すると良いのでは?とオリバーさんが提案してくれた。

ドルトンさんの背嚢が間に合えばそうしようと思っている。


のんびりと歩きで旅をするのも良いなと思っていたんだが、どうやらこの町から領都へ行くには山越えの厳しいルートを通らないといけないのだとか、だから初心者にはかなりハードルが高いとのことだった。




部屋のベッドで、どこまで飛ばせるかな?と靴飛ばし選手権を開催していると。オリバーさんが「祝勝会の準備が整いました。」と呼びに来た。

靴飛ばし選手権は結局壁ギリギリにつける妙技を見せた僕の勝利となって幕を閉じた。



オリバーさんに連れられて行くと、大通りの中心にある広場が祝勝会の会場となっていた。


広場の入り口にはたくさんのテーブルが置かれていて、その上には肉や肉や肉がこれでもかというぐらいドーンっと置かれていた。

広場の奥には大きな炉が設置されていて、豚のような動物が丸焼きにされいるところだった。


僕の中で絶賛大ヒット中のパンも籠いっぱい置かれていて、広場沿いにある店舗の中で既に次のパンが焼かれているのも確認できた。お店の前はパンの焼けるいい匂いで辛抱たまらない。


広場の中央には舞台が設置されており、それを囲むようにテーブルと椅子がたくさん並べられていた。


僕の席は料理を作っている炉の近くに用意されていて、広場中央に設置された舞台がよく見える特等席みたいな感じになっていた。


僕が席に案内されて着席すると、それまでざわついていた会場が自然と静かになった。

オリバーさんが僕の横に立って集まった皆へ顔を向ける。

「今日は祝勝会の準備ご苦労だった。家を失った者、怪我を負った者、被害は少なくはなかった。しかし誰も死なせる事なく無事に乗り切った。いやこちらにおいでの疾風様によって救われたのだ。」オリバーさんが僕を見る。

「そして今日、めでたい事にこちらの疾風様は15歳の誕生日を迎えられた。祝勝会を誕生祭として、疾風様の成人を祝わせて頂きたいと思う。」会場中からお祝いの言葉が飛び交う。あれ?誕生会になっちゃった?っていうか成人式?大混乱である。


僕が目を白黒させているとオリバーさんが小声でこっそりと話しかけてくる。「あまり派手に騒がれたくないという事だったので、お礼というよりはお祝いという意味を強調するような事を重ねてみました。祝勝会で皆が疾風様のところにお礼を言いに押し寄せるよりも、誕生日や成人を祝してパーッと乾杯する方があっさりと簡単に終わらせられると思います。」オリバーさんは僕に向かってウインクをしてみせた。


なるほど、普通に祝勝会を開いたら、町で囲まれた時のように収拾がつかない程騒がれるから、お祝いの乾杯でそれを含めて済ませちゃおうって魂胆なわけね。

それで済むならありがたいかぎりだ。


「では、今宵は疾風様の15歳の誕生日と成人を祝って! 乾杯!!」オリバーさんがグラスを掲げて乾杯の音頭をとる。


「乾杯!!」広場に集まった住民達が一斉にグラスを掲げて乾杯をする。

僕もそれに合わせて用意されたグラスに口をつけた。


【ブッッッッ!!】お酒だった。苦くて甘い香りのお酒、めっちゃ強いお酒だ。口に入れた瞬間アルコールのキツい刺激にむせ返り吹き出してしまう。

これ多分あれだラム酒だ、雑貨屋で買ったお酒も多分これだ。サトウキビから作られるお酒ラム酒。


そうか成人を祝う会だからお酒出されたのか、今迄成人は20歳だと思って生きてきたから、15歳で成人だって言われてお酒出されるとは思わなかった。

これは強いお酒なんだと自覚して、もう一度口をつける。ふむ、ものすごく甘い香りだけどプリンのカラメルみたいな苦みも感じて美味しいな。

そういえば昔チョコに入っていたのを知らずに食べた事があったっけ、あれはもっと甘かった気がする。お菓子用なのかな?


ラム酒を味わっていると近くの炉から出来上がった料理が次々と運ばれてくる。すぐそこで作ってるから、出来立てが一番に運ばれてくるのか。


最初案内された時、料理が並べれているテーブルが遠いから取りに行くの大変だなーって思ってたけど、誕生日の主役だから全部持ってきてくれるっていうことだったのか。

それと皆が料理を取りに来るテーブルが近いと多くの人が僕の周りに集まっちゃうから、一番遠いところに料理のテーブルを設置して人が集まりにくくしてくれたって事か。オリバーさん色々考えてくれたんだな。



僕が料理に手を付け始めると、舞台で舞踊がはじまった。舞台横で楽器を演奏する男達と、舞台の上で民族衣装を身にまとい踊る女性達。

ポリネシアンな感じの音楽と踊り。ハワイ旅行のテレビ番組でみた光景によく似ている。

そう言えば町の住民達の顔立ちもどことなくポリネシア人的な感じが漂っていた。

行ったことはないが、ハワイってこんな感じなのかもな。そう思った。海は見えないけど。


出てきた料理は塩で味付けられた焼いた肉っていう感じのものばかりだったがとても美味しかった。

焼きたてを一番いいタイミングで食べられる特等席だったこともあり、丸焼きも串焼きも美味しくいただけた。

最後に食べたステーキはラム酒とフルーツを合わせたような甘いソースがかかっていて特に美味しかった。あのソースは参考にさせてもらおう。


そういえば串焼きを、付け合わせの野菜と一緒にパンに挟んで食べたら、周りにいた給仕の人がとても驚いていた。

パンに何かを挟んで食べる文化がない様で、すごく珍しい事をしていると興味津々だった。

これはサンドイッチと言うんだよと教えておいた。


そのあと周りの人たちが真似をして食べていたから、もしかしたらサンドイッチこの町で流行るかもしれないな。



 オリバーさんは近くの席で常に僕の様子を見ていてくれて、人が集まりだすと定期的に人払いをしてくれていた。

舞台の上でも色々な種類の舞踊が続けられていて、飽きることは無かった。

給仕の人達もしつこく色々と聞いてくることも無く、自然と食事を楽しんでいた。


こういう派手な席は嫌いだったが、この日はとても楽しい祝勝会?誕生会?成人式?を過ごすことが出来た。

オリバーさんが気を使っていろいろ手をまわしてくれたおかげだろう。きっととても優秀な人なんだろうな。町の代表になるだけの事はあるな。

初めてのお酒に酔いも回った僕は、いい気持ちになりながらそんな事を考えていた。


あぁなるほどこれが接待というやつか。大人になったなと実感した夜は更けていった。

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