第11話 人見知り、色々と考える
ところで、この前書きってところ。何を書けばいいのでしょうか?今更ですが疑問に思っています。
日記みたいに適当な事書いていましたがそれでよいものかどうか・・・。
そんな感じですが、今回疾風は色々面倒くさい事考えます。読んでても面倒くさいでしょうが、どうかお付き合いください。
最初は自分よりも小さいゴブリンだった。
相手から襲ってきたとはいえ、生き物を殺したっていう事実に抵抗を覚えた。
罪悪感を拭うために穴を掘って弔いもした。
2度目は自分よりもはるかに大きなフォレストウルフだった。
敢えて書かなかったが、実は墓を掘ろうとしていたのだ。毛皮を剥いだ後に、短剣を使い地面を掘り始めるとサラから諭されたのだ。
『森から生まれた魔物だ。死したならば森で生まれた他の魔物の糧としてやらんか?』
『生き物の命を奪うという行為は、生きていれば当たり前のように起こる事。お前様から貰ったおにぎりだって、パンだって、生き物の命を貰ってるのであろう?生きるとはそういう事なんじゃよ。』
『この狼の血肉は、今回持ち帰らぬという事であれば、その血肉は同じ森で生まれた他の魔物に分け与えてやるのが儂は良いと思うぞ。』と。
その時に自分の中で葛藤があった。
弔い方に関しては物凄く納得できたし。
2回目のフォレストウルフとの戦いの後でも。
草原に放置するのではなく、わざわざ森の中にまで運んでいった。
問題なのは、たとえ襲われたからと言って生命を奪う事が許されるのかどうかという事だった。
ゴブリンに関しても、フォレストウルフに関しては。自分が生きるために、命を分けてもらう。という目的じゃない。
ただ襲われたから殺した。という単純な行為だった。
多分ゴブリンに関してもフォレストウルフに関しても、謝れば許してくれるような相手ではないと思う。
こちらには害意が無いという事を主張しても通じなかっただろう。
だから仕方なく殺したのだ。やらなければ自分がやられていたから。
それで納得してきた。
でも今回はどうだろう。盗賊達とは話ができたはずである。謝れば命までは奪われなかったかもしれない。
町へ着く前に襲われた盗賊は、馬車の荷物さえ置いて行けば命までは奪わないと言っていた。(それが真実かどうかは、今となってはわからないが・・・。)
僕の父はルポライターだった。当時、ある大物政治家の汚職疑惑を追って取材を続けていた。
その最中、母と車で高速道路を移動している時に、前後から大型トラックに挟まれるという事故に遭い亡くなってしまった。
葬儀の際、父のライター仲間だという男性が来て、おばあちゃんに事故の真相を話してくれた。
父は知り過ぎたから消された。
事故に見せかけられて殺された。
そして、その後そのライター仲間も事故で亡くなったとニュースで言っていた。
だから僕は正義の味方になりたかった。
悪い事は悪いと言える人間になりたかった。
法が信じられなくても、自分が信じた正義を貫ける人間になりたかった。
今回自分の正義を貫いた結果、盗賊に死者が出る事になった。
そのかわり、守りたかった町の人達の命は守ることが出来た。
もしそれが逆だとしたら、僕はきっと自分を責めただろう。
くどくどと考えたが、結局行きつくのはこの答えだった。
人間を殺したという事実は変わらないが、自分の正義を貫くために行った事だ。すべての責任は自分がとる。この先この事実が問題になるような事があれば、自分の命をもって償う事にしよう。
「テンテーンテケテケテンテンテテテテ♪」
天井の模様であみだくじをしていると。
トントン! 部屋の扉がノックされる音で我に返った。
ドアの方を見るがドアは開かない。こちらの返事を待っているのか?
「誰だ?」ドアに向かって声を掛ける。
「ドルトンです。疾風様がこちらにおると聞きまして、訪ねてまいりました。」宿に行ったら僕が居ないからと探してくれたようだった。
「入れ。」僕はドアに呼びかける。
「失礼します。」ドルトンさんは静かにドアを開けて入ってきた。
「昨晩は大変な活躍だったと聞いておりますじゃ。町は今疾風様の話題で持ち切りですぞ。」ドルトンさんが教えてくれた。嘘!やめて!?
「そうか。」内心ほんと勘弁してくれって感じで動揺しまくりだったが平静を装って返事をした。
「門番から聞いた話ですと。昨夜の盗賊達は、昨日町へ着く前に捕らえた盗賊達を助けるためにやってきたそうですじゃ。」
「この町の周辺で悪さをしておって、物流が悪かったのも奴らのせいだったようですじゃ。これで流通も回復して、色々な物資が領都から届くようになることでしょう。」この町に薬草が無かったのもそのせいだったらしい。
領都からやってくる物資が途中で馬車ごと消えてしまっては、なぜ荷が届かないとか知る術も無いしな。
「今、外は燃えた家々の処理やら、怪我人の手当てやらで大騒ぎですじゃ。町の代表も落ち着いたら挨拶に来ると申しておりました。」
あぁ・・・。それ別にいらないな。
とは言えないよなぁ・・・。とほほ。
「マーサはどうだ。」気になっていた事をドルトンさんに聞いてみた。
「おかげ様でもうすっかり顔色も良くなりまして。今朝には少し話ができるぐらいまで回復しましたんじゃ。本当にありがとうございました。儂らの事もそうじゃが、この町まで救ってもらって。疾風様には頭が上がりませんぞ。」ドルトンさんはペコペコ何度も頭を下げていた。
「やめてくれ。俺は俺がしたい事をしてるだけだ。」顔をそむけて首元のストールをぐいっと上まで上げる。もう目の上まで覆っちゃうぐらい。
「町のみんなも同じ気持ちですじゃ。疾風様のお怪我が早く良くなるように、みな祈っておりますのじゃ。」
「今治療所のリリィが食事を用意しております、この後すぐ持ってくると思いますのでもう少しだけお待ちくだされ。」治療所のマーサさんの元へ戻るというドルトンさんが教えてくれた。
そういえばお腹がペコペコだった・・・。
今は何時ぐらいだろうか?時計のない生活は不便だなぁ。
窓の外を見るが太陽は見えない。ただ青い空が見えるだけだった。
しばらくするとドアがノックされリリィさんが食事を運んできてくれた。
ドロドロになるまで煮込まれたじゃがいものような野菜のポタージュと、昨日食べた柔らかいパンだった。
こちらの食事は基本こんな感じなんだろうな。スープとパン。
ポタージュはじゃがいもの甘さと塩味が良い感じにバランスがとれていてとても美味しい。
男爵というよりメイクイーンのようなじゃがいもなのかもしれない。
パンはそのままでも美味しいが、スープに浸して食べると更に美味しかった。
色々と考えて、かなり頭がぐじゃぐじゃになっていたが。美味しい食事でいい感じにリセットできた。
リリィさん美味しい食事をありがとう。
「ごちそうさまでした。」料理の載ったトレーを前に手を合わせた。