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好きって言って!  作者: 御手洗ねむ
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好きって言って!




 オレンジ色の夕焼けの光が、少し癖のある真っ黒な髪に反射してきらきらと輝いている。

 その眩しさに目を細めながら、私は大きく息を吸い込んだ。


「私のことが好きって、言ってほしいの」

「……は?」


 また突拍子もないことを、と思ったでしょうね。

 彼が逃げないようにと掴んだ腕は、幼い頃と比べるととても逞しくなっていて驚いてしまった。私も彼も、大きくなったんだなぁと少しむず痒い気分になりながらも、私はそう告げた。

 目の前には、ぽかんと口を開けたまま固まっている私の幼馴染みがいる。たとえすっとぼけた顔をしていたとしても、その美貌は崩れることなくいつも通り眩しいものだった。別に顔で好きになったわけじゃないけれど、と唇を尖らせながら、誰かに聞かれたわけでもないのにそう心の中で呟いた。

 いくら待っても何も言ってはくれない幼馴染みを不思議に思い、言葉を強請るようにしてその名を呼んでも、やっぱり何も言わぬまま、というか、微動だにしなかった。大丈夫だろうか、彼は息をしているのだろうか。



 ……まぁ、それも当たり前だろう。

 付き合ってもいないただの幼馴染みが、突然やって来たと思えば、好きって言って、などと宣ったのだから。



 しかも、数ヶ月ぶりの再会での、これである。それだけ驚いてしまっても、仕方がない。

 とにかく焦っていた私は、理由の説明などせずにとりあえず好きと言って欲しいと固まったままの彼に縋りついて必死にお願いした。正直、なんて言ったかは覚えていない。それほどまでに切羽詰まっていて、どうしようもなかったのだ。だって、タイムリミットはあと少しだったから。

 彼からしたら、私の必死なお願いはまたお遊びなのではと思ったのかもしれない。いきなり好きと言えだなんて、また変なことでも思いついたのだろう、と呆れてものも言えないのかもしれない。

 小さい頃から、幼馴染みを振り回してきた自覚はある。それはもう、存分にある。

 好奇心旺盛で、気になったものがあるとすぐに飛んでいっては周りに止められ、それでも隙を見ては逃げ出して追いかけた。いいとこの御令嬢であるにもかかわらず、あちこち走り回っていた私に、いつも付き合って守ってくれたのは幼馴染みの彼だった。とても、とても迷惑をかけていた自覚もあるけれど、それでもしょうがないなあと笑って手を繋いでくれる彼が大好きだった。


 彼は、私の初恋のひとで、今もなお恋い慕っているひとだ。


 けれど、今回は違う。いつものおふざけとは違う。私の、命に関わることなのだ。もちろん、好きだと言ってもらえる機会を手に入れたことが嬉しい、という気持ちもあるのだけれど、違うのだ。本当に、大変なことが起きたの。

 貴方に好きって言ってもらわないと、私、死んじゃうのよ。



 未だ目の前で微動だにしないまま立ちすくんでいる幼馴染みの胸に、こつんと頭を当てる。仕事帰りで鎧を身に纏っていたため、少しおでこが痛かったけれど、構わず擦り寄った。久しぶりに会ったから、少しでも近づきたくて。

 一瞬身体をぴしりと固めた彼は、ハッとすると腕を掴んだままの私の手を、掴まれていない方の手で恐る恐る包み込んだ。きゅっと握り込んだ後、大丈夫だよ、とでもいうかのように、ゆっくりと撫でる。それはまるで、迷子の子供を慰めるかのような、そんな優しい手だった。思わず肩の力を抜いてしまいそうになったところで、駄目だ駄目だと頭を振る。私が欲しいのはそれじゃない。

 顔を上げると、彼は困ったように微笑みながら首を傾げていた。頬には少しだけ赤みがさして、照れているのが分かる。私に対しても恥ずかしがってくれるのか、と驚いてしまった。それならば、こんな真っ黒なローブを被ったままではなく、綺麗なワンピースにでも着替えてくれば良かったと後悔する。……って違う違う、そんなことをしている場合じゃないんだった!

 緩みそうになっていた頬を引き締めて、じっと彼の瞳を見つめる。蒼く透き通った彼の瞳は、まるで吸い込まれてしまいそうなほど綺麗だっだ。その瞳に浮かぶ優しい光は、様子のおかしい私に向けて、どうした、大丈夫か、という暖かな想いを伝えてくる。優しい彼が、やっぱり私は大好きだった。

 だからこそ、言ってもらわなければいけない。今、私が欲しいのはそんな慰めではなく、言葉なのだ。

 私には、時間がないの!


「お願いだから、好きって言ってよぉ……」


 鑑定魔法士見習いの私、アリス・エトワルドは、困った顔で微笑む幼馴染みの騎士、セオドール・バレンティンをへにゃりと眉を下げた情けない顔で見上げながら、好きの言葉が欲しいと告げた。




 初めてですのでお手柔らかに。

 ゆっくり細々と書いていこうと思います。よろしければお付き合いください。

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