3・思いも寄らない事態発生、だけど興味深いです
(5/16)推敲しました。少しだけ追加したものの内容全く変化なし、再読ご無用です。
(2021.4/5)久々に読み返し、一部修正しました。内容全く変化なし、再読ご無用です。
(8/26)2回めの修正、サブタイトルを力いっぱい間違えてました。
本来4章目にする筈のタイトルをコピペミスしてるのに今頃気づきました…
(8/26)前半部分の誤字脱字を修正し、後半も加えて本章をまとめました。
(8/23)前半部分です。
(2022.8/14)この後の展開と矛盾している箇所を修正しました。宮小路先生による痴漢行為を受けたとされる被害者が警察に被害届を出した、と云う内容を削除しました。内容的には『被害女性は現場を立ち去った』と云う内容に変更しています。
丸善先輩がナゼここに居るのかは当然不明で、何かの偶然である事は間違いの余地がない。
だけど私は何を思ったのか、丸善先輩の動向に無意識に興味を抱いたのであろう、丸善先輩の様子を隠れて観察してしまった。
丸善先輩は他のどんな商品にも目をくれることなく、ある商品を陳列している棚の前に立った。
そこにあるのは紙オムツである。
その様子に私は少なからず驚いた。
まさか、まさか丸善先輩、子持ちなのか?
そんな驚きとコーフンが更に私のイササカ薄汚い好奇心を煽り、そんな私はじっと丸善先輩の様子を伺った。
丸善先輩は棚から何やら小ぶりの袋状の物を自分より若干高い場所から1つ手に取ると、ほんの数秒だけパッケージに目を落としてその後すぐに手持ちのかごに放り込む。
そして丸善先輩は他の商品には用はないとばかりにスルーし、そのままレジ待ちの列に加わったのだ。
私は丸善先輩が何を買ったのかとりあえず確認するため、その商品の袋を手に取った棚にある商品を確認した。
そこにあったのはやはり紙オムツに間違いないが、ただしナンチャラースとか言う、あのドラッグストアなどでよく目にするのソレではなく、簡素な色気のない業務用然としたパッケージだった。
それが数種類並んでいて、新生児用のソレの横に仕切板を挟んで大人用・いわゆる介護用のソレが並んでいる、使い捨て紙オムツとその周辺用品一式の棚だ。
だがナゼこんな物を、しかも病院のコンビニで‥‥
私は何が何だかサッパリ理解できず首をかしげる。
ちなみに私がのぞいていた位置からどの銘柄を買い物かごに放り込んだのかまでは確認できず。
てか、ありえない話だがまさかホントに子持ちだったりして、と奇妙なことを考えてると、後ろからとっさに名前を呼ばれてびっくりして振り返る。
そこには呆れ顔のママの姿があった。
遅いから何をしてるのかと様子を見に来たらしい、てか油売ってないでさっさと買い物を済ませるよう促され、これから行くレストランの時刻に間に合うかを心配してるのだという。
ソレを先に言えと不平を冒頭に述べることだけは忘れなくても、私は自分の買い物のことはスッカリ忘れてしまってて、ソレならば自分のことはもう良いと言うことにして、丸善先輩に見つかるのを恐れ母親を後ろから押すように急かしてコンビニからコソコソと退出した。
目的のレストランは恵比寿駅から若干歩いた所にあるらしく、最初は病院前からバスで行く筈だったがそんな訳でタクシーで行くことになった。
はじめからそうすれば良いのにと性懲りもなく不平を重ねつつ、とにかく親子3人私を挟んで両親が左右に乗り込む状態で走るタクシーの中で、私はこの催しが一体何なのかを尋ねる。
すると右側のパパが、まぁソレは目的地に着いてからにしようやとイヤに勿体ぶるのだ。
私は焦れったく思っていたが、何だか半分笑ってて半分困ってるような複雑な表情のパパの顔を見てると、何だかソレ以上強引に自白させる気は起きなかった。
一方のママの方は久しぶりの外食に心躍るといったウキウキ感をにじませていて、何だかこれから始まる事についての深刻な様子は微塵もない。
て事はさほど大した内容ではないんだろうと、私は勝手に解釈しその場では大人しくしていた。
そして、目的地のイタリアン系レストランに着いた私達は、店内奥の半個室の席に通された。
何と言うか、過去に家族で外食したことがない訳では決してないが、こんな高級そうなお店は初めてである。
その雰囲気からして、たまには外食でもどうだ?的な意図は感じられなくなった。
そんなんで来るような店ではないと言うか、ウチの家族の場合そう言うノリならファミレスで充分だし、もっぱらの御用達はサイゼリアだ。
ただし決してこう云うトコに来られないレベルの経済状況では当然なく、てか私の通う都筑高だってそれなりの中産階級の家庭が通う学校なのだからして‥‥
だがサスガに高そうなお店で、私もイササカ緊張気味になった。
席につくとウォーターグラスに外国語のラベルが貼られたボトルの水が注ぎ込まれる。
その最中に私はウエイターにメニューを見たい旨を伝えると、彼はア・ラ・カルトのメニュー表であるかと逆に問われ、私は???となってしまう。
するとパパが今回はコースなので出てくる料理は決まってるので、個別に食べたいものがあればメインが終わった後にでも何かチョイスしてはどうかと言う。
私は既にその意味がよく解っていなかったが、ママが料理を足す程じゃない場合はケーキとかでも良いのだとアドバイスしてくれた。
私は最初の意図はそうではなかったのだが、二人にそう促されてウエイターにメニューは結構だと訂正した。
そんなやり取りをしていたら、私は今日今ココにいる理由をスッカリ忘れてしまっていた。
水を一口口に運んでいると、両親のグラスにシャンパンが注がれ、私のグラスには100%果汁のりんごジュースっぽいソフトドリンクが注がれた。
そして私達3人はパパの音頭でナニガシか解らんけどお疲れ様乾杯し、互いのグラスを鳴らす。
パパはそのまま一気に飲み干してしまい、正直こう云うところでの常識についてはイササカ怪しかった。
まァ確かにそんな大きいグラスではないので、普通にのどが渇いてたら一気飲みできてしまう量だ。
なのでウエイターが空のグラスに再びシャンパンを注いだ。
そんなパパは掴みに満足したのか、軽く手をポンと叩いて本題を始めると言い出す。
やっとかよ、と思いつつも私はりんごジュースをチビチビやりながら耳を傾けた。
そんな私の方を見てパパは言う。
来月から急に新潟に転勤になった、と。
私は次の瞬間、一体何をやらかしたのだ?と人聞きの悪い反応をパパに浴びせた。
◆
かくして私達家族は恵比寿での贅沢なディナーを終えて恵比寿駅にいる。
パパとママはここからどういう経路で帰るべきかを相談していて、パパ案は中目黒経由で自由が丘まで出て大井町線を伝うルートを、ママは山手線で渋谷へ行きそこから田園都市線に乗る案。
パパはソレでは1区間分のJR運賃が勿体ないとか言い、ママは東急を使うと乗り換えが多くてメンドクサイという。
私はドーでも良かったが願わくば自宅までタクシーを使う案を提示したが瞬殺される。
自分はテッキリ中金持ち世帯だとばかり思ってたが、両親ともにワリとドケチな正確だと思う。
だけど結局ママに押し切られてパパ案は廃案に、私達はごった返すJR恵比寿駅から外回りの山手線に乗り込むと、平日のこんな時間でも人間の数が減らない渋谷駅で降りて、改札を出たハチ公前の地下通路への階段を経由して田園都市線のホームへ向かった。
ところが、ここでアクシデントが発生する。
田園都市線は、現在人身事故の影響で上下線とも運転見合わせ中だったのだ。
さて、私達3人家族はふたたび別の電車に乗っていた。
この電車は急行電車で停車しない駅を通過しつつ、車内アナウンスでまもなく自由が丘駅に到着する旨発せられた。
つまり私達は結局東急東横線の車中にいるのだ。
当初のパパ案が復活したのではないが、私達は東横線で日吉まで向かい、横浜市営地下鉄グリーンラインを経由して自宅のある街へ向かうことにしたのだ。
その電車の中で、パパとママはコソコソと何やら会話しているが、どうやら今日のディナーでの本題だった新潟転勤についての会話の様だ。
私はあの時のパパの話を思い出していた。
冒頭で話した通りパパは国土交通省・観光庁職員であるが、省庁職員の転勤なんて普通にあるのは承知している。
だが普通は時期が決まっていて、ヨッポド何らかの事情がない限り期中のソレはありえないと思っていた。
て事はパパの仕事上で何か起きたと見るのが普通なのか、でもパパはその事情については仕事場の都合だと曖昧に濁した。
さてはパパは何かやらかしたのだろうか?と疑うのも自然なことだ。
だがママは、仕方ないわねぇ〜ってカンジで大して重要には受け止めていない様子なのも気になる。
そこから、少なくとも転勤の原因をパパがこしらえたのではなさげだと推測した。
話の中でパパはこう言った、本来なら家族全員で引越しを進められたし引っ越し代も出されるとの事だったが、私が高校入学したてである事とママが都内で医療技術士の仕事をしてる手前、単身赴任とする事にしたので事後承諾を願う、と。
そんな事今更私に相談、てかもう決まった話をされてもな、と思うが、正直私もこの期に及んでまた転校などメンドクサイしご免こうむる。
結局そうなる結果なのは知れてるという事だろう、だから事後承諾って話だ。
てかタダでさえ血の滲む思いをして苦労して合格を勝ち取った、准・名門進学校『横浜都筑の丘高等学校』であるからして。
て事は、ゴールデンウイークの休みを利用してパパの引っ越しと言う事になるわけか。
アニメでは良くある話、パパの転勤にママが付いて行き高校生の娘が一人暮らし、てな展開、ソレも悪くないんだけどな。
何せ誰もいない方が私の変態研究がはかどると言うものだ、いや寧ろそうなって欲しいかもな、とチョッと思ってしまった。
その方がイロイロな変態性についての研究が家の中であれば堂々と出来るわけだし。
勿論、不意の家族の帰宅に十分警戒をすることも忘れてはならないと承知しているので安心して欲しい。
そう思った瞬間、ふと丸善先輩のあの時の様子が脳内に蘇った。
ただでさえある意味ミステリアスな風体の丸善芳佳先輩、小さな体でロリ全開の17歳女子高校生。
それにしても彼女と幼馴染という八嶋未来先輩、あの巨体は既になんか凄い。
何故にこの凸凹コンビが存在するんだろう?
事実はマンガアニメより奇なり、である。
ソレこそ心身ともに健康体のコレクションモデル、的なカンジで、おっぱいも決して小さくはないけど大きくもない、バレーやってるとかでお尻と太腿が少々大きめだった。
NHKの5分間の体操番組で出演してる健康優良女子のソレを1・25倍拡大したような、普通にスタイル良い女性のふた回り以上拡大版と言えるソレである。
性格も明るくてまるで犬っコロみたいな。
ホント都筑高の七不思議と言える存在である。
そうか、もし丸善先輩が『子持ち』だとすれば八嶋先輩はソレも知ってるハズだろう。
イヤイヤ待てよ、丸善先輩のあの小さな体で子供が生めるだろうか?
ソレはあまりに失礼な妄想か、取り消そう。
寧ろ八嶋先輩の方が子持ちです、と言われればスンナリ納得しそう、と言うか‥‥
幼馴染の八嶋先輩のために丸善先輩が、なーんて事もあるのかも?
とまぁ、そんな不謹慎且つバカみたいな妄想考えている間に、私達家族は自宅のある最寄り駅の隣の駅に到着した。
この駅は私が学校から行き帰る際の乗換駅で、横浜市営地下鉄の始発・終点駅である。
私は妄想に夢中になってたせい?なのか、日吉駅と横浜市営地下鉄路線内での乗換駅で、無意識に自動的に乗り換えていた様だ。
そしてこの駅からパパは自宅マンションまでタクシーで帰ろうと言い、私は勿論ママも同意して帰宅の途に付いた。
◆
さて、思いもよらないことは突然に、そして時期を同じくして連鎖的にやって来るものだと思い知ることになったのは翌日の事である。
私はいつもどおり真夢と登校する。
その電車内での会話で私のパパの転勤話を持ち出そうとしたが、実は真夢は母子家庭で父親絡みの話題には個人的に注意している。
もっとも真夢自身は全く問題にしていないかもだが、彼女の過去の事情を完全に掌握してるわけじゃないのでドコに地雷が埋まってるか解らない。
なので慎重に越したことはないし、追々時間をかけて少しずつ話していく方が何かと無難であろうという配慮しつつ、今日まで友達付き合いを続けてきた。
と言ってももうサスガにお互い高校生だし、大丈夫だろうと思ってはいる。
そんな訳で会話の主題は恵比寿のレストランの話となったが、真夢自身もあまり畏まった席よりファミレスで自由に飲み食いしたほうが性に合うと、私と同じ反りを示してきた事にチョッと安心したものだ。
お互い中金持ちな家庭だが性根は庶民丸出しである。
で、そんな他愛もない話をおかずにしてたら教室の前に来てしまったのだが、校内の様子が何かおかしい事に気づく。
真夢も同じ様に雰囲気の違和感を感じていたが、また昼を一緒に取る約束をして1組の教室に向かった。
ソレをしばし見送った後、私も6組教室に入るなり既に親しくなったクラスメートと挨拶を交わし席に座ると、隣の席の娘が私の肩をとんとん叩いてこの違和感の正体を噂話としてダイジェストで語りだした。
その内容は、担任の宮小路先生が電車に轢かれたと言う衝撃発言だったが、その本筋を話そうとした瞬間、教室の入口から別の教師がけたたましく生徒に静粛を促しながら入ってきた。
入ってきたのは教頭職の女性教師。
ズングリムックリの如何にもと言った、悪い言葉を用いらせてもらえばババァ風情の人物、見た目からしてヤバそうで声もデカイと来た。
そんな教頭先生がそのデカイ声とともに手に持った帳面で教卓をバシバシ叩いて生徒らを威圧し、私たちが姿勢を正すとその次からはボリュームを3割下げて話を始めた。
その内容は、6組担任の宮小路智徳先生が、昨夜東急田園都市線の電車と接触し重症の大怪我を負い病院に搬送されたとのことだった。
教室の生徒一同は今初めて聞いた者から噂を耳にしていた者まで様々だったが、一様に驚きの声を上げていて、同様に反応した私もソレを聴いてハッとしたのだ。
昨夜のアレは、ソレだったのか、と。
教頭先生は再び声のボリュームを上げて黙れと一喝すると、シンと静まってすぐにクラスメートの男子が容態について質問した。
ソレに対し教頭先生は今言った通り重症の大怪我としか聴いていないと回答した。
教頭先生がそこまで話した時、突然校内放送が鳴り響く。
各教室の全校生徒に、緊急に体育館に集まるよう指示が下されたのだ。
教頭先生はそんな指示は聴いていないが、と言った怪訝な表情を見せ、とりあえず指示に従うよう生徒を促す。
私たち6組の生徒は、突然の知らせにまだザワつきつつ廊下を移動していたが、私が今朝登校した時には既に雰囲気がおかしかったのは、生徒の何人かが当該鉄道で登下校しているため昨日の内に情報が入ったものと思われ、その噂話が既に広まっていたようだ。
私の隣の席の娘、名前は星野久美子ちゃんと言うのだが、体育館までの道中にさっきの話の続きを聞かせてくれた。
電車に轢かれる元となった要因が、何と宮小路先生が電車内で痴漢行為をはたらいたとの噂が流れているらしいのだ。
そして1組の生徒に数人目撃者も居るとかナントカ。
この体育館への招集もその辺が絡んでるのでは?との事だ。
体育館に全校生徒が集まると、とりあえずその場に適当に腰を下ろさせ私語を慎みつつ話を聞けとの命が下る。
壇上には校長先生のご登壇、実は校長も女性である。
そしてその脇に集まった教師陣と先程私たち6組にやって来た教頭が何やら忙しく情報交換し合っている様子が見え、思わぬ自体が発生した様相を垣間見ることが出来た。
女性校長は教頭のババァ系とは真逆の、言ってみれば切れ味鋭いやり手のキャリアウーマン風、年齢もまだ50代前半と聴いている。
ブランド物のダークなスーツに赤いスカーフを巻いて、真っ黒なロングヘアーを背中に流している姿は、一部の生徒からカッコいいとの評判であるが個人的には女帝的なラスボス感のほうが若干強かった。
そんなイケメン女性校長はこう述べた。
英語教科担当の宮小路先生が電車に接触し瀕死の重傷を負い、病院のICUで懸命に治療している最中であるとのこと。
そして電車と接触する原因となったのが、電車内で公序良俗に反する行為を行った可能性があり、その追求を逃れようと逃走をはかった際に人とぶつかって自ら線路内に転落してしまったらしいこと。
またその被害女性は現場を立ち去ったものの、実質加害した宮小路先生からの事情聴取が先出のとおり困難なため、職場である本校に来校し周辺事情を確認したい、とのお達しがあったとのこと。
女性校長はその要点を述べた後、最重要事項として各教師含め全校生徒にこう通達した。
警察には無関係である生徒にいかなる質問も直接行わないよう申し入れているが、それを反故にして何らかの聴取を行われた際は、絶対に個別に取り合わないこと、学校命令で何も答えられないと拒否せよ、と命じたのだ。
最後に、この件について何らかの事情を知るもの、或いは聴いたもの、大小問わず情報を持つものは授業中でも構わないので速やかに申し出よ、との内容だった。
俗に言う『隠蔽工作』感が全校生徒に漂ったのは言うまでもない‥‥
◆
昼休みである。
今日のお昼は6組の教室の私の席と久美子ちゃんの席を合体させた食卓である。
そしてお昼の献立は、私はダイスキなチョココルネパン3個とペットボトルのお茶。
毎回昼食を共にしている真夢はもはや慣れっこと言った無表情を見せていたが、今回はゲストに隣の席の久美子ちゃんが参加してて、彼女は結構驚いていた。
て言うかゲストなのは真夢の方で、彼女は1組から6組に遠征してきてるのだからして。
そう言う真夢はコンビニのおにぎり3個。
私と対して変わらないレベルだが、それぞれ辛子高菜・肉キムチ・紀州梅干しと辛いもの3本バリエーションだと意味不明に威張る。
一方の久美子ちゃんは何と2段の重箱にミニおせちかよ!と言わんばかりの色とりどりの内容のお弁当である。
彼女曰く、母親が料理が大好きで得意であるため毎回凝った弁当をこしらえるのだが、正直量が多すぎて毎食余ってしまうのだとか。
そもそも学校に持ってくるのが重いので勘弁して欲しいとも付け加えた。
そして、折角だし私たちにも食べて欲しいとお裾分けしてくれるのだ。
確かに久美子ちゃん決してデブではないが、フクヨカなモチッとした雰囲気で母性の搭載量がハンパない印象だ。
昼食の話題はやはり宮小路先生の件。
周囲の昼食グループからもその話題で持ちきりである。
真夢情報によると、クラスの子が2人1時間目の授業中不在で、校長ら職員相手に目撃者として事情聴取を受けたらしい。
また、警察の来校は生徒に事情を伝える時間をもらうのと昼休みの時間帯を避け、午後1時半以降にして欲しい旨伝えてあるのだそうだ。
これは久美子ちゃん情報だが、実際の現場の動画がSNSに上がっていたとか?
だけど検索しても出てこないので元動画が削除されたかも知れないと話していた。
私も実はその人身事故の影響を受けた一人である事を、この場で公開した。
同時に、パパの転勤が急に決まってゴールデンウイーク中に新潟に転居すると言う話をしたら、久美子ちゃんが反応した。
彼女のお父さんの出身地が新潟県らしい。
毎年お盆休みとお正月にお父さんの実家のある湯沢町へ行くのだとか。
さて、私たちのパパ話に特別な反応をしなかった真夢にチョッと安心した。
何故なら真夢は、実はDV被害に遭っていたらしい話を母親経由で聴いていたからだ。
程度の程は知る由もないのだが、当然本人に直接訊ける訳はない。
真夢自身から開示されない限りは知らないふりをしていなければならない。
そんな理由があったから積極的に父親の話題を振れなかったわけだが、この程度なら大丈夫そうだ。
もっともソレよりも、私にとっては興味深いことがあるのはお解り頂けたことだろう。
私は俄然この事件に興味を示した事は否定しない。
つまり例のアレ、だが真夢や久美子ちゃんには悟られないように注意しなければ。
結局宮小路先生の件はヒソヒソと噂が流れるのは相変わらずだったが、如何せん情報が少なく午後から警察が来る云々の話も教室からはそんな様子が伺えないせいもあり、午後は皆授業に専念していて徐々にその会話は薄れていった。
廊下の窓から常に閉められている門から車の出入りが見られたが、恐らく波風立てない配慮なのかアカラサマな警察車両を使わず覆面パトカーとかそう言う類の車だったりしたのかも知れない。
私自身も難しい授業に食らいついていかなければならない身の上でもあるため、気にはなってたけど授業に集中するよう心に鞭を何度も食らわせていた。
そんな午後の授業も終わると、ホームルームの通達には再度教頭先生がお出ましになって、くれぐれも学生の本分を怠らぬようキツく締め付けた。
ついでに今日の部活動はそう言う事情で全活動中止を言い渡され、私は前回の課題となったアレコレが遂行できず少なからず残念だった。
そんな事を考えてたら、終業の挨拶を終え生徒たちが思い思いに散り始める中、お隣の久美子ちゃんが私に話しかけてきた。
てか、宮小路先生の件から久美子ちゃんとの間が急に縮まった気がしている。
或いは彼女の方が積極的にアプローチする切っ掛けを模索していたのかも知れない。
久美子ちゃんは不意に、私に何の部活に入るか決めたのかを質問してきたのだ。
私は『社会学研究会』という同好会の名称を出したが、彼女はナニソレ?的な表情をしたため昨日の丸善先輩の説明を粗筋にして伝えた。
すると久美子ちゃんは何となーく引いた感じの苦笑いを浮かべていたが、その同好会に私が入るつもりなのかを訊いてきた。
すると私は、自分自身の欲求と願望を処理するポジション?居場所?としてはソコ以外にないのかなという思いが既にあったものの、久美子ちゃんには、どうかなぁ‥‥という曖昧な返事を返しておいた。
ソレを聞いた久美子ちゃんは、実は、と話の本題を切り出してきたのだ。