エピソード7.7:屈折する逆光
エピソード5.5(https://ncode.syosetu.com/n4578fx/27/)の実質的な続きです。
直接的ではありませんが、自死に関する描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
ユカが仙台で再び勤務を開始してから3日後、時刻は間もなく17時30分。
『仙台支局』の公用車として使われている、セダンタイプの車。その助手席から降りたユカは、周囲をぐるりと見渡して……口元を引き締める。時折吹き付ける海からの風は、遮蔽物のないこの空間を、迷いなく駆け抜けていった。
「……また、ここやったとね……」
ユカがそう呟いた次の瞬間、運転席から降車した政宗が、スマートキーで車にロックをかけた。そしてスマートフォンで時間を確認した後、ユカへ声をかけた。
「時間だ。移動するぞ」
時は戻り、火曜日の18時過ぎ。
定時で帰宅した華蓮を見送った里穂は、華蓮の席に腰を降ろして……持っていたペットボトルのスポーツドリンクを一口すすった。そして、キャップを閉めながら、金曜日のことを話し始める。
「金曜日、分町ママからのタレコミで、私とココちゃんが『縁切り』をしたっすよ。って……あれ? そういえば分町ママはどこにいるっすか?」
里穂がキョロキョロ周囲を見渡したところで、統治が情報を補足した。
「分町ママは今日、名杙本家の用事で駆り出されいる。それに恐らく、数日前の記憶は既に曖昧だろうから……里穂から話を聞こうと思っていたんだ。」
「そうなんっすね。あ、話を戻すっすけど……とにかく金曜日、魚屋さんの公園で喧嘩してた、小学生くらいの『遺痕』がいたっすよ。名前は確か……矢嶋君と戸塚君、だったっすかねぇ……」
先日、里穂と心愛が対応したのは、とても口が悪い少年と、寡黙な少年だった。
突発的な事案だったこともあり、2人に関しての『生前調書』も見ることなく仕事をするしかなかった。だから、どうして2人が亡くなったのか――生前の2人に何があったのか、詳しく知ることも出来なかったのだ。
――マジで嘘ばっかりなんだよコイツ!! でも、俺がそう言っても……誰も信じてくれなくて……!!
口が悪い少年――矢嶋昌平は裸足だった。加えて彼の靴は戸塚歩夢が履いているという、とても奇妙な状況。
あの時は歩夢が逆上しそうになったため、早々に手をうって事態を終息させた。
そう……あの時全て、終わったことのはずなのに。
「うち兄、政さん、何があったっすか?」
里穂の問いかけに、立ち上がった統治が里穂へとクリアファルを手渡した。中には3人分の『生前調書』が入っており、そのうちの2名は顔写真で先の少年だということがすぐに分かる。
「あと一人は……へ? だ、誰っすか?」
残り1人分は、『三浦美紀』という名前の女性だった。添付されていた写真の中では、ロングヘアをハーフアップにして穏やかに微笑んでいる。
享年は34歳。彼女の死因は――4年前の災害だった。
「その『三浦美紀』という女性は、戸塚家で家政婦をしていたそうだ」
「家政婦さんっすか……確かに家庭的なことが得意そうな人には見えるっすね」
『生前調書』に記載されている経歴は、高校の家政科コースを卒業後、旅館の住み込みを経て戸塚家で働いていた、という内容。今どき少し珍しい気もするが、幼い頃に両親が離婚してから施設で育ったということで、自立する術を模索した結果なのだろう。里穂が資料を見ながら頷いていると、統治は努めて淡々と話を進める。
「そして……戸塚歩夢君の母親だと言われていた女性でもある」
「そうなんっすか……って、え? お母さん? 名字が違うっすよ? 離婚したっすか?」
踊ろいて目を丸くする里穂に、統治は手元の資料を見ながら言葉を続けた。
「結婚すらしていなくて……要するに、愛人のような存在だったらしい。戸塚さんの家は長いこと建築業を営んでいて、事務所が一番町にあるんだ。以前は沿岸部に住んでいたが、先の災害で家を流されて……今は家族3人で、仙台市中心部のマンションで暮らしていた」
「そうだったっすか……」
「歩夢君は成績優秀で、将来は父親を会社を継ぐと言っていたらしい。折しも震災後に仙台は建築バブルのような状況になったからな。皮肉な話だが……会社の業績は右肩上がりだそうだ」
統治の説明に、里穂は釈然としない表情で、『生前調書』を読み進めていく。
これまで聞いた説明と、先日相対した彼と……抱く印象が絶妙に一致しないのだ。
「なんか、思った以上に話が込み入ってきたっすね。でも……戸塚君、両親のことは特に尊敬してる様子とかなかったっすよ。むしろ真逆っていうか……」
里穂はあの時、対峙した歩夢にこんなことを尋ねていた。
――人のものは盗っちゃダメっすよ、歩夢君。お父さんやお母さんに習わなかったっすか?
それに対する彼の回答は、こうだった。
――知りません。俺に指図出来る人間は、いませんから。
その表情には一切の変化も感情もなく……彼は黙して、それ以上の詳細を語らなかった。
里穂は彼が思春期で色々こじらせているのだと思っていたけれど……どうやら、それだけではないらしい。
「要するに、その三浦さんが今、『遺痕』認定されてるっすね。そういえば……戸塚君と矢嶋君は、どうして……」
2人が若くして命を落とした原因を探るべく、里穂は次に歩夢の『生前調書』を読み進めて……息を呑んだ。
戸塚歩夢・享年11歳
死因――自宅で首吊り自殺
「戸塚君、首吊り自殺っすか……!?」
「ああ。遺書はなかったが、彼はその数日前、友人を事故で亡くしていた。しかもその事故を目撃していたそうだ。そのショックもあったのではないかと言われている」
「事故で友達を……それって……!?」
里穂は慌てて『生前調書』をめくると、昌平の死因とその時の状況を確認して……悲痛な表情で目を伏せる。
「……矢嶋君、道路に飛び出したっすか……どうしてそんな……」
里穂の脳裏によぎるのは、現場で対峙した昌平と歩夢の姿。
昌平の服はボロボロだったけれど、昌平は小綺麗な格好のままだった。その理由が分かった気がする。けれど……それだけでは、昌平の靴を歩夢が履いていた理由にならない。
「うち兄、矢嶋君の大切な靴を、戸塚君が履いていたっすよ。それがどうしてなのか、全然分からないっす……」
「靴……」
里穂の言葉に統治は思案すると、「これは未確定の情報なんだが」と前置きをしてから情報を追加した。
「矢嶋君は道路に何かを取りに行こうとして事故にあった、という話もある。2人はもともと同じクラスで、あまり気が合うタイプではなかったそうだ。噂によると……母子家庭の矢嶋君を戸塚君がバカにしたような言動もあったらしい」
「そうっすか……」
里穂はそれ以上を尋ねることなく、『生前調書』をクリアファイルの中に戻した。
歩夢が履いていた靴は、色あせて少しボロボロになっていた。
そして、昌平は裸足だった。
もしも――歩夢が投げた彼の靴が道路の真ん中に落ちて、昌平がそれを取りに行く最中に事故にあったのだとすれば。
昌平は熱くなりやすく、周囲をあまり見ないタイプに思えた。目の前の靴しか見えなくなって、注意力が散漫になった可能性は十分に考えられる。
いや、でも……歩夢が果たして、それが原因で自殺をするだろうか? 確かに自分のせいで友人が亡くなったことに自責の念があったかもしれないが、里穂が相対した彼は後悔の念を抱いているような雰囲気ではなく、むしろ真逆だったのだ。
分かったこともあるけれど、分からないことも出てきてしまった。
複雑な感情を、里穂はため息で外に吐き出すと……気持ちを切り替えて周囲を見やる。
「それでうち兄、この三浦さん……結局誰が切るっすか? 私っすか?」
里穂の問いかけに、統治はユカへと視線を向けた。ユカもまた静かに頷いて、手元のコーヒーをすする。
「里穂ちゃん、部活の大会前で忙しかやろ? 今回はケッカちゃんの仙台復帰ってことで……しっかり対応してくるけんね」
と、いうわけで……ユカは政宗と2人で、仙台の沿岸部へとやって来た。ユカは心愛や環を帯同させようかとも思ったのだが……政宗が首を縦に振らなかったのだ。
「政宗、なして心愛ちゃんを連れてこんかったと? まさか、彼女がこの現場にトラウマがあるとでも思っとるんじゃないやろうね?」
車を停めた広場から、目的のポイントへと砂利道を歩く。
数ヶ月前、心愛はこの近くでユカからの実地研修を受けて――目標を達成出来なかったことがある。
その時のユカは、仙台に来たばかりで……方針の違いで、政宗と言い争いになったこともあった。
道すがら問いかけるユカに、政宗は静かに首を横に振った。
「いや……『生前調書』の内容とか、先に切られた戸塚君との関係を考えると……未成年にはキツイ内容になるかもしれないと思ったんだよ」
「そりゃあ……まぁ……」
「前みたいに甘やかしてるつもりはないけど、今回はちょっと……直感でヤバい気がしたんだ。『中級縁故』に合格して次を目指すんだったら、人間の汚い感情にぶつかることも沢山出てくると思うから、彼女たちが対面するのはその時でいいと思ってる。それまでは俺たちが汚れ役だ」
「……了解。政宗がそこまで言うんやったら、あたしはそれに従うだけやね」
ユカはそれ以上深入りせずに頷くと……彼とほぼ同時に足を止めた。
2人がやって来たのは、沿岸部でもまだ復旧工事が手つかずの場所だった。災害が発生する前は住宅が立ち並んでおり、人の生活があった場所なのだが……災害で建物の全てが流され、今はかろうじて残った基礎部分を、背の高い雑草が覆い隠そうとしている。このあたりは地権者との話し合いが上手くいっておらず、復旧そのものが宙に浮いた状態となっているらしい。
「ケッカ、俺達がここにいられる時間は10分だ」
「それだけあれば問題なかよ。もう――そこにいらっしゃるけんね」
ユカはそう言って、ある方向を見据える。
彼女の視線の先には――揺れる草の中で佇んでいる、一人の女性がいた。
その横顔が写真で見た風貌と一致することから、彼女が今回の対象者なのだということが分かる。濡れた衣服が体に張り付いており、頭部を怪我してしまったのか……顔の輪郭に沿って、血が固まったような跡がついていた。確かにこれは、心愛が見たら卒倒してしまうかもしれない。
残っている『関係縁』は、左手の方に1本。赤い色が変色しており、顔に張り付いている血の色に似ている気がした。
ユカは足元に気をつけながら歩みを進め、数メートル手前で立ち止まる。そして、背後にいる政宗がスマホで写真を撮影した音を確認した後……息を吸って声をかけた。
「……こんばんは、三浦美紀さんですか?」
「……?」
ユカの声に彼女――美紀は振り向くと、「はい……」と、戸惑いながら返答する。そして、ユカの姿に気が付くと……眦を下げて、優しく目を細めた。
「あら、もしかして……歩夢君のお友達、ですか? わざわざこんなところまで来てくれるなんて」
「えぇまぁ。歩夢君、いないみたいですね」
とりあえずその設定に便乗しながらジワリと近づくと、美紀は「そうなんです」と頷いた後、どこか申し訳無さそうに言葉を続ける。
「歩夢君、塾や習い事で忙しくて……折角来てくれたのに、ごめんなさい」
美紀はこう言って、ユカに軽く頭を下げた。その様子は母親のよう……にも見える一方、言いようのない距離感も感じてしまう。
ユカはポケットに入れたハサミをこっそり確認しながら、更に一歩、彼女へと近づいた。
「あの、美紀さんは……歩夢君のお母さん、なんですか?」
「え……?」
刹那、美紀の顔に驚きが宿った。直球すぎた質問だったかもしれない、ユカが心の中で己の選択を反省していると……美紀は表情を最初の状態まで戻すと、淀みなく言葉を続ける。
「そうですね。血の繋がりはありますが……戸籍上は、私の息子ではありません」
「戸籍上は、違う……?」
「詳しいことは知らされていないんですけど、旦那様と奥様との間に子どもが出来なくて、子どもを産ませるために私が選ばれました。私はこの家の地下で妊娠して、日々を過ごして、歩夢君を産んで……そこから先は家政婦としてお世話になっています」
恐らく事実だと思うが、それを何の悲壮感もなく当人から語られると……背筋に言いようのない寒さを感じた。ユカは平然としている美紀に狼狽えつつ、踏みとどまって問い続ける。
「どうして、そんな……」
「分かりませんが、私には身内がいないので……多分、そんな理由で。あの時は確か……『あけみ』で働いていたんですけど、ママからその仕事を辞めるように言われて……それから、この家でお世話になっていました」
「そう、ですか……あれ……?」
彼女の話を聞きながら感じた違和感に、ユカは密かに首を傾げた。しかし今は、その違和感の理由を深追いすることが出来ない。目の前にいる彼女は、何の悲壮感もなく言葉を続ける。
「ここでは何不自由ない生活でしたし、私が逃げれば旦那様や奥様が困ってしまう……そう思うと、気分が高揚するんです」
「……」
遂にユカは相槌をうてずに黙り込んでしまった。しかし美紀はそんなユカの様子を特に怪しむこともなく、どこまでも饒舌に話を続ける。
まるで、誰かに聞いてもらえるのを待っていたかのように。
「手当がつくので、旦那様の相手も苦痛ではありませんでした。ただ……歩夢君は、ちょっと困った子で。お友達に意地悪をすることもあったので、その度に私が見舞金を持って土下座をしに行きました」
ユカは美紀の話を聞きながら、政宗の直感に改めて感謝をしていた。こんな話……とてもではないが、中学生に聞かせられない。
ユカは口の中に溜まった唾を飲み込むと、気を取り直して話の核心へと迫る。
美紀は間違いなく、己の死を自覚している。そんな彼女ならば答えてくれるような……そんな気がしたから。
「美紀さんは……自分がどうして死んだのか、覚えていますか?」
この問いかけに、彼女ははっきりと頷いた。
「はい。歩夢さんから、学校へ自分を迎えに来てほしいと電話がかかってきて……家を出て少ししたところで、津波にのまれました。あの時、この家にいたのは私だけだったので……きっと、死んだのは私だけですね」
美紀はこう言って、ぐるりと周囲を見渡す。
かつてここに、大きな家が建っていた。
広い庭と、洋風の優雅な佇まい。代々建築業を営む家主と、同業者から嫁いだ聡明な妻と、その息子……絵に描いたような理想の家族像は、きっと、周囲の憧れでもあっただろう。
都合が悪いことを……隠しているだけだとも知らずに。
「あの……私からも一つ、聞いていいでしょうか?」
「何ですか」
美紀の問いかけにユカが応じると、彼女はどこか嬉しそうな表情になって……はにかみながら口を開いた。
「歩夢さんは……元気ですか?」
「……」
その問いかけに、ユカはしばし思案した後……苦笑いで、首を横に振る。
「彼はちょっと、仙台でも友達とトラブルになっていましたね」
「そうですか……」
ユカの答えに、美紀はどこか寂しそうな表情で頷くと……急に虚ろな眼差しで虚空を見つめ、ブツブツと呟き始める。
「また、謝りに行かなきゃ……私が、行かなきゃ……」
「美紀さん……」
「私が行って……あげないと……歩夢さんには……私、が……」
そう言いながら、彼女が一歩踏み出した次の瞬間――ユカは静かに、美紀に残る『関係縁』を左手に掴んでいた。そして、右手でハサミを取り出すと、ポイントを定めて刃を入れる。
刃が交わった次の瞬間――美紀の姿は、跡形もなく消えていた。
「なんか……スッキリせん話やね。結局、戸塚君がどうして自殺したのかは……分からんかったし」
仕事を終えた2人は砂利道を車のある位置まで戻っていた。数十メートルの直線距離を歩きながら……ユカが静かに口を開く。
海から吹き付ける風が、背中をグイグイと押しているような気がしていた。
まるで――ここから出て行けと言っているかのように。
「美紀さんと繋がっとった『関係縁』は、彼女が『旦那様』って呼んどった男性やった。でも……特に愛情があるような感じではなかったかな。彼女の感情がいっちょん分からん……」
「そっか……無理して理解しなくていいと思う。ケッカは、特に具合が悪いところはないか?」
「あ、うん、それは大丈夫なんやけど……」
政宗の問いかけにユカは頷くと、再び前を見て……足を動かす。
このモヤモヤを一人で抱えるには……少しだけ、荷が重いから。
「美紀さんは美紀さんなりに、お母さんになろうとしとったようにも見えるし……でも、彼女が自分の境遇を受け入れて、一切嘆いとらんとがうすら寒かとよ……」
事実を詳細に、淡々と……時に少し楽しそうに語る美紀の本心がどこにあるのか、もう、誰にも分からないけれど。
ただ、あれは……演技ではなく、心からそう思っているような気がしてならない。
そして、とても歪な関係で繋がっている大人しかいなかった歩夢も……感性が年齢以上に大人びて、屈折してしまった。
彼はその軋轢に耐えられず、命を絶つことを選んでしまったような……そんな気さえする、歪み。
勿論これは、ユカの想像でしかないけれど……彼らの家に巣食っていた問題が根深すぎて、ユカの理解の範疇を越えているのだ。今は何を想像しても……何の確証も得られない。
「彼は、大人がトラブルをお金と土下座で解決してきた姿を見て、大人なんてこんなもんかと思ったのかもしれんけど……会ったことないけんが何とも言えん。そして……面白いくらい、彼の戸籍上の両親が出てこんっちゃんね……」
ユカがどこか吐き捨てるように呟いた言葉に、政宗は同意しながら空を仰いだ。
「今から10年以上前とはいえ……こんな話が仙台にあったなんてな」
「当事者が全員おらんくなったし、『旦那様』とやらに聞いても何も教えてくれんやろうけど……」
車まで戻ってきたところで、政宗がロックを解除した。ユカは助手席に乗り込んで扉を閉めると、密室になったことを確認して……口を開く。
「生まれた子どもの戸籍って、簡単にいじれると思う?」
彼女の問いかけに、政宗は黙って車のエンジンをかけた。そして、ヘッドライトをつけると……ゆっくりと車を動かし始める。
夕闇が濃くなりはじめた沿岸部の道路を進みながら……政宗はハンドルを握ったまま、静かに口を開いた。
「統治には報告するけど……里穂ちゃんや心愛ちゃんに、詳細は伏せよう」
「政宗……」
「特に里穂ちゃんは聡明な子だ。まだ知らなくて良いことも多いから……ケッカは報告書を書いたら、まず俺に出してくれ。いいか?」
「分かった」
ユカは短く頷くと、窓の外へと視線を向ける。
右側を向けば、壊滅した沿岸部が真っ暗闇に包まれているのに……道を挟んだ左側を見れば、多くの街明かりが瞬いていて。
対象的な光と闇、その中央で……言いようのない感情を抱く。
「……これ以上、厄介なことにならんといいっちゃけどね……」
ため息交じりに呟いた後、ユカはカバンからスマートフォンを取り出すと……調べ物をしながら、車内での時間を過ごした。




