ドッジボール
高い天井に響く声。見渡せば、あちらこちらでバレーボールが跳ねている。全校生徒をしっかり収められる大きな体育館も、今日は貸し切りだ。通常の三分の一、三年生のみ。クラスカラーに染まったTシャツが各コートに散っていた。
網で仕切られた四つのコート、そのうちの一つ。二つのチームが互いに向き合った。三つのセットの奪い合い、優勝賞品、ドーナツをかけた、ボールのぶつけ合いが今、始まる。
ボールが目まぐるしくコートを飛び回る。外野で挟んでひたすら狙う、少々大人げなくも効率のいい攻めが、じわじわと内野の数を減らしていく。時折豪速球が放たれ、称賛と畏怖の声があがった。それを受け止め、反撃に転じる英雄には、黄色い歓声が浴びせられた。
激しい攻防を勝ち抜いた二組は、決勝戦に集う。試合開始の合図がなり、ボールが高く上がった。強者と強者のぶつかり合い。激しくボールが風を切る。セットを取り合い、引き分け、結果の判定に移った。
実力は互角。勝ち取ったセットは同数、また、残り人数でさえも決着がつかなかった。
勝敗は、代表者三人によるじゃんけんに委ねられた。一人目は負け、二人目は勝ち。両チームから熱い視線を向けられる中、三人目のじゃんけんが始まった。緊張、興奮のあまり無意識に大きくなる腕の振り。そこから繰り出される記号は、また互角。
何度もあいこを繰り返し、もはやギャグ、などと誰かが呟いたとき、勝敗は決した。三人目の代表が膝から崩れ落ちる。見守る相手チームから一際大きな歓声があがった。高校生活最後の行事が、ここに終わりを告げたのだった。
優勝することこそ叶わなかったが、この小さな行事は、皆の心に大きく刻まれただろう。投げたボールの感触、すれすれを通る風の音。果ては床の振動までもが、鮮明な記憶として、脳裏に焼きついていた。