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僕と君は愛せない  作者: 朝澄 容姿
君咲優蘭と銀楼鈴音
9/38

12月15日 幸せと不幸は表裏一体:前編

「君咲くん、映画面白かったね」



「うん、結構…怖かったけど」



「フフ…君咲くん怖いの苦手なんだ」



「得意では無いかな」



「私は好きなんだ、こういう…ゾワッとするヤツ」



「意外だね」



「フフフ…よく言われる」



僕と銀楼さんは今、隣町まで来てデート(?)を満喫しているところだ。

先刻に見たかなりグロめの映画の感想を語り合いながらイルミネーションの光があまり目立たない昼間の繁華街を歩いている。


こんな普通の友達のような他愛もない話をしながら歩いているが、銀楼さんとは外で話したことはそこまで多くない。


なので昨日の夜一緒に遊ぼうと言われた時はベッドから転げ落ちそうになったものだ。

出来るだけ会話を続けさせるために、昨日の夜中には睡眠時間を削り死に物狂いでネットサーフィンをし話題を探していた。



そのために今日寝起きが悪かったのはまた別のお話。


腕時計を確認する。時間は12時25分を指していた。

よし、満を持してこの時が訪れた!!


「そろそろお昼だね」


「うん、昼ごはん食べに行く?」




よし!乗ってくれた!!

内心ガッツポーズをした。

なぜならこの街でのグルメはばっちりリサーチ済みであからだ。

今の「柴崎グルメ」を網羅した僕にはイタリアン、フレンチ、和食、中華料理に至るまで全て最高の店を紹介できる。



そして銀楼さんが食べたいと言ったジャンルの店を僕が華麗に案内するーーー

ハハハ最高のシナリオの完成だ!



「銀楼さんは何食べたい?」


「んー」


少し悩んでいる様子、

じゃあ普通にオススメの店(食べログ評価がよかった店、自分で足を運んだことは無い)を紹介しようかな?


「僕のオススメはー」


「あっ…あそこのインド料理は?」




…なん…だと?



「私、カレー好きなの…君咲くんが良ければでいいんだけど…」


「あっ…うんいいねぇ!カレー好きだよスパイシーがね、良いよねナンつけて食べるとね、また美味しいんだよね」


「私はナンはそこまで好きじゃないかも…ごめんなさい」

「っっっ!?」


予想の斜め45°の返答に焦り色々地雷を踏んでしまう。

何がナンだよ!僕も別に好きじゃないよ!ナンを推してくる変なやつみたいになってんじゃん!!


1度呼吸を整えよう。

誤算だった、まさか銀楼さんがカレーが好きだったなんて…なんか上品に高級フレンチを召し上がっているとばかり思っていた。


「?どうしたの?変な君咲くん」



「あっ、いや、違っ…」



スゥゥゥゥ


1回冷静になれ、君咲さんを不審がらせたらまずい!

地獄の気まずいデートだけは避けなくちゃ!

呼吸を整え、会話を続けよう。


「ん、いやなんでもないよ?じゃあ、行こっか」


「ありがとう」


少し空回りしたけど別にいい、銀楼さんが楽しんでくれるのなら


そう思い僕達はすぐ近くのインド料理店へと向かった。










「うわ〜〜…美味しそう」


「は、はは、ほんとだぁ〜」



う、嘘だろ…


銀楼さんがインド料理店に着くや否や真っ先に頼んだ「殺人級!激辛カレー」

名前からして相当ヤバそうなカレーだったが料理が運ばれてきて初めてそのヤバさを知ることになる。



カレーのルーは地獄の川の様な毒々しい赤色に染められ、人の血のような色をしている。

そしてライスも人の臓器のような色に染めらており、心做しか脈を打っているのではないかとすら思う。

テーブルに運ばれてきただけなのにその辛さは僕の汗腺を刺激し汗が止まらない。

こんなの食べたらどうなるか…容易に想像がつく。



「銀楼さん…これ、本当に食べるの?」


「?うん、そうだよ?」


僕の質問に首を傾げながら当たり前のように答える銀楼さん。



…正気じゃない…こんなの食べたら…飛ぶぞ!!


てかなんで銀楼さんは汗ひとつかいていないんだ

銀楼さんの目の前に置かれたカレーは僕の汗腺を鬼のように刺激する癖に目の前の銀楼さんに対しては何にひとつ手を加えない。


…めちゃくちゃだ…


「じゃあ…君咲くん、お先に頂きます」


「あっ…はい」



ま、マジかよ…


スプーンから溢れるほど目一杯にすくった殺人カレーを銀楼さんは口に運ぶ。


パクッ


た、食べた……

1度口に入れたら1週間はまともに口が開けなくなりそうな激辛カレーを

何度も咀嚼する。

そしてそのカレーが喉を通る。カレーが食道を通過する度にに、尖った喉仏がピクリと動く。


「うん…美味しい…」


両手を頬にあてとろけるような幸せそうな表情を浮かべ銀楼さんはその勢いのまま、殺人級カレーを頬張る。


「あ、」


急に銀楼さんは絶え間なく動かしていたスプーンを止める。


「…どうしたの?」


僕がそう質問すると、銀楼さんは満面の笑みでこっちを向く。


「君咲くんも…食べる?」


「え?」



あ、ま、まじか!!


銀楼さんはスプーンに溢れんばかりのカレーを掬い僕の前に差し出してくる


「あーん」


「…」



どうしよう、恋人同士(銀楼さんとは恋人じゃないけど)で「はいあーん」って奴をやるのは小学生からの夢のひとつだったが今回はイレギュラーケースだ

確かに、銀楼さんみたいな美女からそんな事をして貰えるなんて全男が夢見ていることだ、現に隣の席の人からの羨望の眼差しが痛い。


だけど…


僕の前に差し出されたスプーンの上に所狭しと乗っている血の色したカレーを見る


これ食べたら流石に死ぬだろ!!!!!



銀楼さんとカレーを交互に眺める。


銀楼さんはなかなか食べてくれない僕に対して頭に『?』の疑問符を浮かべているだろう。

ただ、これは確実に命に関わる…



「君咲くん?食べないの?」


上目遣い。銀楼さんの切なる視線が僕を射抜く。



「食べまーす!」



やってやるよ!あんな視線に打たれて食べない男がどこにいる!

もう激辛なんてどうでもいい!!




君咲優蘭!いきまーーーす!




パク


「……あ、意外といけー」



思ったよりも辛くなくて安堵したその0.5秒後。


僕の口の中で辛さが目を覚ました。



「…あぁぁぁぁぁあおあ」



先刻のホラー映画を見てた時より大きい、今日1番の絶叫がカレー店の中に響き渡った。






「まだ口の中辛い?」


「いや、もう大丈夫…」


辛さにやられた僕は30分以上店のトイレにこもっていた。そしてやっと辛さから解放された僕は銀楼さんとともに店を後にしそこからショピングモールへ行きウィンドウショッピングをしていた。



「あ、メガネショップ…」


「?優蘭君どうしたの?」


「あぁ…いや、なんでもないよ」


「逆に気になる…」


銀楼さんは僕に近付き真実を明らかにしない僕を咎めるように頬をふくらませ近寄ってきた。


頬をふくらませてる顔も…可愛い…



「う…あれ、妹がかけててさ懐かしいなって」


そう…家に残してきた妹…三女の真依が掛けていた。

真依はゲームが好きでずっと部屋に閉じこもってゲームをしていた、たまにそのゲームに付き合っていたんだけど真依は強すぎてなかなか勝てなかった…

よく夜中までやってたっけ…


と感慨に浸る。あの頃は妹達と楽しく暮らしていたがそれはもう遠くの話、もう戻らない過去を夢想した所で何も変わらない…今は銀楼さんとのデートを全力で

楽しもう…


「って」


「どう?似合う?」


僕が感傷に浸っていると、さっきまで隣にいたはずの銀楼さんは店に置いてある黒縁のメガネをかけ僕の前に立っていた。


「…」


「…少しは反応してくれてもいいんじゃない?」


「あっ…」


いや違う、銀楼さんが可愛すぎて言葉を失っていたんだ…美人とメガネという最高のコンボ、それは単に可愛さが足されただけじゃない、可愛さはさらに大幅アップしてる、可愛さの暴力だ。



「…いやごめん可愛すぎて言葉が」


やべ。思わず心の声が漏れてた。

銀楼さんの顔を伺う、見たら肩をプルプル震わせ顔を伏せている。

もしかしてまずいこと言ったかな…?




「…ありがとう」



顔を赤らめ、照れている銀楼さんがそこに居た。





「おっ…ふ…」





僕はあまりの銀楼さんの美貌にやられ言葉を失ってしまった。





さっき僕がベタ褒めしたことに気を良くしたのか、その後服などが売ってある店にも行った。


色々な服を試着をしている銀楼さんにこの服は似合っているか似合ってないかどうかを僕が判断する役目を与えられた。


それも僕が夢見ていた『デートイベント』のひとつだったりするが、流石に気持ち悪がられそうなのでそれは口が裂けても銀楼さんには言えない。


しかし、いざ本番となると僕の語彙力の低さ、そして銀楼さんが選んだコーデは全部非の打ち所がなく似合っている為僕は


「おっ…すっごい…似合っている」


としか言えなかった。

真面目にやってと銀楼さんはまた頬を膨らませ憤慨していたが僕は誠心誠意真面目にやった。ふざけてるなんて心外だ。

そうだ、全部似合う銀楼さんが悪いのだ。



次にゲームセンターへ行った。

一緒に音ゲーをやったり、レーシングゲームをしたりした。


「……これほしいの?」


「え?」


クレーンゲームが立ち並ぶエリアを歩いていたら銀楼さんはおじさんのような顔をしたピンク色のハムスターのぬいぐるみに羨望の眼差しを向けていた。


「……ほ、ほしい」


「任せて!」


銀楼さんの頼みとあらば僕にできないことは無い。

バックから手早く財布を取りだし、手始めに10枚の100円硬貨を投入した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ありがとう!大事にするね!」


「う…うん」


全能感に浸っていた僕だけど、クレーンゲーム自体あまりやった事はなく結果は悲惨なものとなった。


ぬいぐるみは取れたは取れたのだが、何度も失敗しお金を溶かし続ける僕を見兼ねた店員さんがぬいぐるみを取りやすい位置まで動かしてくれて、そのあと何十回かやってようやく取れた……と言った結果に終わった。


勝負に勝って試合に負けたとはまさにこの事だろう。



財布の中身が先程と比べてかなり軽くなっていたが、まぁ……銀楼さんの笑顔が見れたから別にいいだろう…。




その笑顔……プライスレス!!











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