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僕と君は愛せない  作者: 朝澄 容姿
狂るいはじめる愛情たち
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3月1日 ある朝の待ち合わせ

長らくお待たせして誠に申し訳ありませんでした!本編、再開します!



「寒っ」


ドアを開け外に出ると冷たい風が吹き私の眠気を覚ましてくれる。

3月とはいえまだまだ冬の寒さは健在だ。

朝の情報番組の天気予報士はもう春の陽気が訪れただろうと言っていたが私が春の暖かさを感じるのは当分先になるに違いない。


幸運なことかどうかは分からないが落ち葉を吹き飛ばす身も凍えるような寒風が眠気も一緒に吹き飛ばしてくれたため、寝起き特有の睨み付けてるかのような威圧しているような人相の悪い顔では無くなった。


流石に寝起きの半開きの目を彼…優蘭に見せる訳には行かない。優蘭は私の全てを受け入れてくれるだろうけど優蘭に完璧じゃない私の顔を見せるのは私の女としてのプライドが許さないだろう。


そう考えながらふとあの日のことを思い出した。



優蘭の本心を聞けたあの日。



あの日の事は昨日の事のように思い出すが時の流れというものは早い前で一ヶ月ほど前の話になるのだ

時の流れは私が歳を重ねる毎に早くなって行っている気がする。そしてユウランと会ってからは更に早く感じるようになった。


熱いストーブの上に1分間手をおいていればそれは1時間ぐらいに感じられるが、可愛い女の子と一緒に1時間座ってみればその時間は1分ぐらいにしか感じられないだろう…。


と、かの天才数学者がこう言っていた



私は天才ではないから天才の唱える数学的理論は何一つわからないがこういう遊び心のある比喩は大好きだ。



あの日を思い返せば、優蘭の本心を聞けてよかったと心から思う。

あのまま優蘭のトラウマの核心を知らずにいれば私は間違いなく優蘭のことを傷つけていたに違いない、彼の姉のように…


優蘭は姉を語らない。なぜなら優蘭にとって姉とはトラウマの根源であり恐怖の象徴であるから。


だから私も聞かない、それが優蘭の傷を呼び起こさせるかもしれないから。


私は今、幸せだ。

優蘭と一緒にいる日々が幸せだ。


だからこれ以上は求めないようにしてる。本心では優蘭とキスもしたいし…セックスもしたい、だけど今以上の幸せを求めればこの関係は崩れてしまうのだろう。


私の愛と優蘭の思い、今はそれが均等に釣り合っている。しかしそのどちらかがズレてしまえばその均衡は崩れさり体重の違う者が乗っていたシーソーのように傾いて落ちてしまう。


そのシーソーから振り落とされるのはきっと私だ。優蘭はきっと私がいなくても生きていけるだろうけど、私はそうじゃない。優蘭が居ないと私は…



「銀楼さーん!」



寒空を切り裂き声が私の耳に届く。

その声は私の思考を一旦停止させる効力を持つ。一瞬心臓が止まったと錯覚する。


好きだ



私はこの声が好きだ。だから止まってしまう。



これは、優蘭の声だ。



地面ばかりを見ていた私の視線を少しずつ上にあげる。少しづつ、少しづつ。


そして長い時間をかけて視線は遊覧へと辿り着く。手袋をはめた手を振り制服のブレザーの上にダウンジャケットを羽織っている優蘭の姿がそこにあった。


「銀楼さん!早く!遅刻しちゃうよ!」


「うん!」


眠気に晒されている顔を優蘭に見せたくないとさっきは言ったが、寒風に吹かれずとも優蘭の顔を見れば眠気なんて吹き飛ぶ。そんなあたりまえの事も忘れていた自分に呆れつつ私は強く地を蹴り優蘭の所へ駆けた。



寒さに怯えてるのは私だけじゃなかったと心を躍らせている三月上旬。

春の陽気はまだ訪れていないが私の心は彼といる時は常に暖かくなっていた。


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