12月16日 夜が更けるまで
話は現在に戻ります。
「…晴れて私たちは恋人になれたわけだけど」
「うん」
さっきの告白(?)から数十分経ち僕達の興奮はやっと冷めてきた。
しかし冷静になって考えてみるととんでもないことになったな…
女性恐怖症の僕がとても美人な彼女を手に入れるこれが最高に矛盾してて笑いさえ起きてくる。
きっと目の前でその美しい黒瞳をキラキラさせている彼女も同じことを考えてるはずだ。
「…今日起きたこと覚えている?」
「え、あ、ああ」
彼女の話は想像していたものではなかったが、その話はあまり触れたくのないものだった。
忘れるはずもない、それは僕達のデートの途中起きた悲劇だ。
ガラの悪い男達に襲われ、僕はボコボコにされ銀楼さんは男達に連れ去られそうになるという最悪の事件。
「もちろん、今すぐに忘れたいけど…」
だがあと一週間は僕の顔にある傷が忘れさせてくれないだろう。
色々なことが起こったからか、今はアドレナリンがドバドバ出ているため大して痛みは感じないだろうけどきっとあと数十分もすればアドレナリンも切れ激しい痛みに襲われるだろうと予想している。
「…その時助けてくれて嬉しかったよ。男に触られているという恐怖で口が開けなくなったけどとても嬉しかった…」
「ああ、別に大したことじゃないよ、返り討ちにあっちゃったしさお恥ずかしい…」
1番あの事件を忘れたいのは銀楼さんのはずなのにその事件を呼び起こして僕にお礼をしてくれるなんてなんて優しい人なんだ…と少し感動してしまったのは別の話。
「恥ずかしくなんかない…もし現実に白馬の王子様的な人がいたなら、私にとってそれはユウラン君だよ」
「あっ、うんで…でも僕ほんとに何もしてないからお礼は悠二君にね…ね!」
「…私優蘭君以外と話せないんだけど…」
「あっ…そうだね…ごめん僕の方から伝えておくよ…」
「ありがとう」
恥ずかしすぎて直視できない。
切実な疑問、さっきは出来たのに何故今はできないのだろうか?
「でも恐怖で失神してしまった私をここまで抱いてきてくれたのは紛いもない優蘭君だよ、だから私にとっては本当に王子様だよ」
はっきりと言っておくが僕は王子様と言われるには些か男らしい顔をしている訳では無い。恥ずかしさで死にそう。
「だけどこの体、他の男たちにまさぐられた」
あ、そう言えばあの時銀楼さんは胸や尻などをあの男達に触られていた、許せんぶち殺してやるとその時は唇を噛んだものだ。今でもぶち殺してやりたいが。
その役目は悠二君が買ってでてくれた先刻メールが届いたがあの男達は無事悠二に調教された様で安心した。
「うん…」
「だから優蘭君の手でその記憶を上書きして欲しい」
「え…?」
「今でも頭の片隅にあの人達の厭らしい声がガンガン響いてる…だから優蘭君にその記憶を上書きして欲しいの」
「…うん…どうやってすればいいの?」
銀楼さんの細い指が僕の指と絡み合いそのまま銀楼さんの胸まで誘導される。
「触って、私の体を」
「えsmpねえ!?」
エロ漫画顔負けのいきなりの急展開。
衝撃のあまり僕はよく分からない言葉を口にする。
「お願い、ユウラン君…君の手で私の体を…」
銀楼さんは消え入りそうな声で僕に懇願する。
だけど僕は無理やりされた事があっても、それ以外では女の人の身体を触ったことなんてない。そんな僕には少し、刺激が強すぎる…
でも、それで銀楼さんの傷が少しでも癒えるのなら…
「い、いいよ」
僕にできることなら、なんでもする。
「ありがとう…」
銀楼さんの手に誘導され僕は銀楼さんの体に触れる。
女性の柔らかくすべすべした肌の感触が僕の手を包み込み、バクバクと手を通じて銀楼さんの胸の鼓動が僕に伝わってくる
銀楼さんも…ドキドキしてるのか…
ぶっ
突如目の前が真っ暗になった。僕の顔が銀楼さんの胸に抱き寄せられたのだ。銀楼さんは強く、強く。僕のことを抱き締めている。
「銀楼さん…」
「ユウラン…君…大好き…私の…ユウラン君…」
銀楼さんの儚く、そして甘い甘味性の声が静寂の宿る公園に木霊する。
僕達はこれが正しいことなのかは分からない、いや正直歪んでる。だけど
今はこれでいい…
そう思った師走の夜。
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「はぁ社会科見学かぁ…」
私はベットの上で今日学校で配られた手紙に目を送る。
私の通う学校では一年に一度全学年別々のことろへ社会科見学という名の遊びに出かける、去年までは私も毎年楽しみにしていた。
え?なんで今年は楽しみじゃないかって?
それは
お兄ちゃんが居ないから。
私は社会科見学の感想をお兄ちゃん夜が更けるまで話すのが毎年の楽しみだった、だけどそのお兄ちゃんはどこかへいなくなってしまった。
私の中ではお兄ちゃんと沢山話すための口実として社会科見学があったのだから当然お兄ちゃんが居なくなれば社会科見学の存在意義も低下する。そういうものだ。
それに社会科見学の場所もなんか地味そうな場所だ
「はぁ最悪…」
思わず声に出る。
本当についてないなぁ…
「真奈ーご飯できたわよ!」
お母さんの私を呼ぶ声が聞こえる、あ、ご飯出来たのか…
あまりご飯が喉を通る気はしないのだがお母さんが折角作ってくれたご飯を無下にすることなんて私にはできない。ベットから降りて、私は部屋を出た。
私の名前は、君咲真奈。君咲優蘭の義理の妹。
え?社会科見学どこに行くかだって?
それはーー
大桜区、という所らしい。
ちなみに優蘭の通っている高校の名前は
大桜高校です…。
あっ…(察し)
波乱の幕開けですね!!✨