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等号前夜  作者: おめかけ
9/15

第四夜 夢とは言わない②

 仕方のないこと、どうしようもないことを積み重ねて孤軽は生きる。たとえば流れ着いた海辺で黒髪の彼女を誰かが救う。家に連れて帰り、医者に見せてやり、暖かな寝床を用意する。やがて目を覚ました孤軽は、なにせ何年も海の中を漂っていたものだから意識も覚束ない。胡乱な声を上げ辺りを見回すと男の後ろ姿が見える。やあ目を覚ましたのですね、無事で良かった。そういって男は振り返り、孤軽の顔を見るや、たちまちのうちに表情を崩して啜り泣くと喉を切って死んだ。

 ああ。寂しいよ……。

 それでもまだ孤軽はぼんやりとしている。男の遺した言葉がさざなみのように耳の奥で響いてしまう。寂しいよ。

 そうね、と、静かに囁いて孤軽は起き上がる。もう二度と目を覚ますことのない男の代わりに生きるために服を着て、届くはずのない言葉を告げる。助けてくれてありがとう。男の頬をなぜ、ありがとう、と感謝する。けれどそんな言葉を一体誰が受け取ってくれるだろう、言葉は乾き、四方に散らばって落ちる。

 人間は怖いと魔女は思う。人目を避けるように海岸の浸食洞に住み着いて塩水を嘗めて生きていると、孤軽の存在に気づいた住人たちに石を投げられるようになった。仕方がないのでまた別の場所、なるべく人のいない場所を探して森の中を彷徨い、大きな樹のうろの中で眠ることにする。取り立てておなかが減るということもなかったので、気が向いた時に木の実や花蜜を食べて暮らした。何か月かすると不意に不安になって、とぼとぼと歩いて人里へ行き、遠くからこっそり人間の生きる様子を眺めてみてほっとする。ああ人の形をしている、私は一人ではなかった、世界にはまだ人がいた、と思う。そうする内にまた誰かに見つかって住処を追われ、孤軽は逃げて逃げてここではないどこか遠くを目指す。人が怖い、近寄りたくない、と思いながら、かといって永遠に離れていることもできない。孤軽は何が何だか分からなくなってきた。

 三十年ほどそんな生活を暮らしていると、ようやく自分以外の魔女に出会った。ねぐらにしていた洞穴を突然訪ねてきたその女は、ねぇ、と馴れ馴れしく話しかけて孤軽に近づいてくる。

 近寄るなと孤軽は言った。人間に関わると碌なことがない。なるたけ目を合わせないように顔を伏せ、腰を屈めたままでいると女はあははと軽やかに笑う。

「お婆さんみたいに腰を曲げて、本当に魔女みたい」

「魔女?」

「そうよ。だってあなた魔女でしょう」

「私が?」

「ええそうよ。私も魔女だからわかるのよ。あのね、千年生きると魔女になるの。でも千年生きたら誰しも一人だから、私あなたに会いに来たの。」

 女は孤軽の言うことをあまり聞かず、自分の言いたいことだけをべらべらと喋った。所々で孤軽も、殺されたいか、とか、死にたくなかったらどこかに失せろ、だのと脅し文句を並べてみたのだがあまり会話に慣れていないのでうまく伝わらない。

 困っている内に女は自分の娘の侍女になって欲しいと頼み込んできて、孤軽は困惑してこの目ではそんなことできるわけがない、と呻く。しかし女は素知らぬ顔で大丈夫大丈夫と笑って孤軽の手を取ると、目を閉じて微笑んでみせる。ほら、怖くない。孤軽はこの女を少し馬鹿だと思った。けれども女が何度も何度もあなたが必要だとしつこく食い下がるので、押しに弱い孤軽はついに負けてこくりと頷いてしまうのだった。この女と一緒に行けば少なくとも一人ではなくなる。それはそれで魅力的な言葉だった。


 連れて行かれた孤軽は女の住んでいる場所があまりにも大きいので驚いた。あなたお金持ちなのねえと感心していると女はいつものように笑う。当たり前でしょう、私はこの国の王妃だもの。

 孤軽は女の娘の侍女として働くことになった。王妃の娘、つまり姫の侍女である。

 この国の姫に名前はなく、ただ姫とだけ呼ばれている。姫はやがて女王となり太后となり死ぬその瞬間まで名前はなく、死んでから後にその功績を讃える諡号がようやく与えられる。必要なのは権威と役職、その形であって、個人の名前ではない。彼女は死ぬまで名前を持たない。

 名もない姫は美しく、生ける玉石のように王妃に愛されている。そういう風に母に生まれたのだからそれは仕方のないことだろう。もとはといえば姫もまた母たる魔女の肉片ひとかけ、母の形の一部だったのだから。孤軽が初めて目にした姫はよく切なげに咳をして、かあさま、と恋するようにその名を呼んでいたものだった。

 幼い姫は咳をする。孤軽はそんな彼女をじっと背後から眺めて、この生き物は美しいとそう思うのかもしれない。姫はか細く咳をする。その吐息はどんな時でも天花粉の香りがする。そういう風につくられている。その蒼い瞳は五歳の時に填め込まれたもので、父親譲りの茶色い眼球を王妃の小指でぷつりと絶たれ、深海に眠っていた宝石を入れられた。

 ぬばたまの黒髪は天然ではなく人絹でできている。棘蔓草の汁を塗り込み、ニンフの舌で何度となく嘗めあげて磨いたしなやかで冷然とした髪だ。性欲亢進の異常者が一心にそして貪るようにしゃぶった艶めかしいその髪を、王妃はまち針で一本ずつ姫の頭に植えつけた。

 弱々しい乙女の腱の代わりに姫の体には三四本の鋼鉄線が張り巡らされている。三四本の鋼鉄線と四つの発条、そして無数の歯車がいかなるときも駆動している。

 姫は美しい。美しいように作られているのだから、それは当たり前のことである。だから姫は美しい。美しいという言葉以外ではもはや形容することができない。

 姫は美しいという言葉以外のなにものでもない。美しいという言葉そのものだ。  

 母に語られるままに姫はやがて粘体となり、自らの姿を恣意するようになる。孤軽はじっと、そんな姫の人生を侍女として見守り続けている。

 たとえばある夜、空に雷雨の迸る。

 目の前を薄気味の悪い粘体が這っている。姫、と口に出して呼んでみようかと思ったが、粘体があまりにも必死に這いずるのでもう少し見ていることにする。

 粘体は一瞬五指らしきものを形作り、廊下の先に填め込まれた窓へ向かって伸ばしかけるが、すぐに形を失って粘液が床に滴った。後を追う孤軽は眉を顰め、床を汚す粘液を大げさに避ける。粘体は何度も何度も手や腕や指を形作り、窓へと差し伸べては弾けて飛び散っている。

 粘体が何を求めているのか、孤軽にはわかっていた。それは光。窓の向こう側、遠く国の海辺に灯る漁り火だ。

 嵐の荒れ狂う城外で唯一、灯だけが暖かい。美しいと孤軽は思う。美しいものに人はどうしようもなく惹かれてしまう。それは仕方のないことだ。

 孤軽は姫を見つめている。母への思慕を命の枷に、幼いその身を粘体にされた姫が懸命に地を這っている。

 たとえば振り向くこともできるのだろう。姫は姫であるのだから、振り向いて助けを求めることもできるだろう。懇願ではなく命令でさえ彼女には許されている。この体をあの光に浸せと侍女に告げさえすればいとも簡単にその願いは叶うだろう。現に侍女である孤軽はここにこうして控えている。姫の後を追い、その姿を感じ取ろうと目を光らせているではないか。私は見ていると孤軽は思う。しっかと目を見開きあなたの姿をみていると。もしも振り向いてあなたが救いを求めるのならば、私はけして目を逸らしたりはすまい。

 ……それでも姫は、振り向くことも助けを求めることもせず、一心不乱な犬畜生として地べたを這って生きるのだ。

 孤軽はなおも無言のまま姫を静々と追いかける。姫はやがて窓へとたどり着き、震える体をなんとかヒトガタへと変え、そっと窓の外へ手を伸ばしたかと思うと力なく落下した。

 慌てず窓から身を乗り出し下を見やると、姫はまだ生きている。ふう、と息をつき、孤軽は窓に頬杖をついて観察を続けた。

 どう、と雨が石畳を叩く。重力に惹かれて視界を縦に両断する雨弾は情け容赦もなく姫の全身を打ち据える。姫は弱々しく蠕動しながら地を這う。

 蠢く姫はやがて現れた兵士に剣で突き刺され、鉄の擦れあうような鳴き声を上げる。雷にしびれるように痙攣し、悶え、そしてようやく人の形を取り戻す。姫は再び生まれくる化け物として自らの意思で自らの形を決めた。

 腰つきは淫らにくびれ、胸は高く張り出し、乳首はつんと尖っている。足はジガバチの如く細く、すらっとしたその腿は白桃色に染まっている。黒髪は長くまっすぐに垂れ、胸元を刺繍のように飾っている。

 粘体である姫は自身を美しく淫らな娘として規定した。うっとりと自分を眺め、楽しげに兵士を殺し、満ち足りた声で甘い吐息をつく。

 ……ああ。これでいい。これで……。

 姫はじっと手のひらを見つめてすっと目を細める。新しい体から滴り落ちる桔梗色の体液に目を向け、それを揚羽や弓やういきょうなど様々なものに操ることに興じ、可笑しそうに喉を震わせている。

 孤軽はゆっくりと庭に下り、姫の背後から傘を差し出して雨を遮った。私は、と姫は言う。

「私は私以外の誰かになれる。私以外を私にできる。それが母にもらった唯一の謎掛けだった」

 姫の背後に立つ孤軽はそのひたひたと浸みつく黒の瞳を静かに開いた。姫は子供が玩具を弄ぶように無心で体を変貌させている。


 孤軽の仕える姫はスライムである。その姿は千変として姿一つとなることはない。今日出逢う姫は明日には別人のように化けてしまう。黒髪の乙女として振る舞い、怠惰な娼婦を演じ、そばかすの村娘になったと思えば勇ましい女騎士に変化する。たいていの場合は女の姿でいるが、時には青年や老爺の顔をしていることもある。けれども姫が演じる姿はいつでも人の形をしていて、けだものや悪霊になることはない。生きる上では必要ないのだから、それは当たり前のことかもしれない。姫が人以外の形態でいるのは寝ている時だけだ。

 睡眠は小さな死である。生きている間は連続している意識が途切れるとき、人はそっと死んでいる。

 姫は自らの姿を望みのままに変えることができる。望んでいないことはできない。

 寝ている時の姫は水苔や泥によく似ている。ぶよぶよと不気味に膨れ上がり、どす黒い泡が弾けて消える。夢の中の彼女は自分をそんな風に思っているのかもしれない。

 小さな灯芯一つを提げて、孤軽は部屋の隅に控えている。じっと姫を観察して心底醜いと思う。

 昼間の姫は見るもの全てを蕩けさせる淫魔の姿をして、けれども古びたガラス玉のような目で言った。“寝ている時には魂も何もないだろう。人の形を留めていることはできないさ。もしかしたら夢見るままに次の朝、この形を失って人に戻ることもないのかもしれない” 平然としていた。それはそれで仕方のないことだ。そういう物言いだった。

 またくる明日をあなたは美しいと思いますか。ある時そう尋ねたことがあった。なぜそんなことを聞いたのか、自分でも不思議な言問いだった。そんなことは永遠を生きてから言え、と姫は不遜に笑った。

 何年も何年も魔女たちは生き、やがて国王が死んだ。王妃は大層悲しみ、魔法で王を蘇らせた。再び動き出した骸の王を抱きしめ、王妃は熱く愛を囁き始める。良かったですね、と孤軽は言い、そうだな、と姫は答える。

 王が死んで政治は乱れたが、国の亡びをよしとして魔女たちは生きた。逃げ出すもの、はむかうものもいたが、いなくなった人間はその代わりに姫が演じていた。

 

 演じる姫を孤軽は見つめる。国からは次第に人が消えていく。

 姫は様々な人間を演じた。盗賊となって市井を荒らしたこともあったし、娼婦として覗き窓から睥を送ることもあった。荒くれ男として船着き場で働き、殴り合いをし、血を流す真似をした。占い爺いの姿で出鱈目な託宣を告げて回り、六弦弾きの旅人のように芸を売り、女剣士として他国の戦争に参加したりもした。時には何の変哲もない人間、使用人やお針子、果物売りや郵便屋となって街に暮らした。肉屋の主人として一日中店番をしてはした金を稼いだこともあった。

「生きることは楽しいな、孤軽。自分のやりたいようにやり、なりたい人間になる。こんなに素晴らしいことがあるだろうか。私はずっとこんな人生を望んでいたのかもしれない」

 姫は満ち足りた顔で穏やかに微笑む。

「そうだ。この次には恋というものをしてみよう。話に聞けば、それは随分と心地よいものらしい。人が増え、繁殖していくのも結局はその恋とやらのためだというし、恋をして、愛を囁き、この胸の想いを誰かと分け合ってみるのも面白いかもしれぬ」


 姫は恋をする。


 時は流れて百年後の夏、姫は目を閉じたまま孤軽に髪を梳かれている。

 ──恋をしたよ、と姫は言う。

 恋をしたよ。

 それはようございました。今度はどのような方ですか?

 十四歳の学生で、名はテネル。

 出会った時のあなたは?

 旅芸人の娘で年は九つ。迷子になった私が広場で茫然としているとテネルが隣に座って本を読み始めた。しばらくして私がぽろぽろと泣き出すとテネルは優しく私の手を握ってくれたよ。

 それはそれは。

 孤軽。

 はい。

 恋というものはいいものだな。

 そのようで。

 テネルにまた逢いたい、と、九歳の旅芸人の娘は心からそう思うよ。いとおしくて胸が張り裂けそうだ。昼も夜もテネルのことを思うと魂が燃えてしまう。

 なんとも麗しい、情熱のお言葉。

 そう言われると面映ゆい。恋について語るのはこの辺りで終えるとするか。

 姫はそう言ってふっと冷たい吐息を零す。姫は目を閉じている。

 百年後の夏の姫は目を閉じてじっと髪を梳かれている。髪を梳く孤軽もまた、姫が死んでしまわぬように静かに目を閉じている。

 恋について。

 百年後の夏の姫は百年の恋を経て、三十四人の男を愛し、別れ、あるいは失った。

 ある時姫は恋をした。美しい貴族の男だった。身分を隠し、男に愛を囁き、暗い森の中へ誘った。二人は愛し合ったが、何年か経つと男は病で死んだ。姫はまた恋をした。盗賊だった。女は男に付き合って盗みや殺しを行い、奪った財宝で優雅な暮らしを送った。男はある晩、番兵の矢を足に受けた傷がもとで死んだ。姫はある時魔術師だった。惚れ薬を買いに来た男がちょうど好みだったので、その薬を男に飲ませた。男は奴隷のように跪き、女王のように崇めた。姫は満足だった。次に姫は旅芸人になった。ナイフ投げの相棒と気ままに世界を放浪したが、ある時男が投げたナイフが胸に刺さった。死なずの姫を男は女を怪物だと罵り、気を狂わせた。仕方がないので狂った男の面倒を見続けたが、やがて彼は老衰で死んだ。

 恋はおおむね成就した。なにしろ姫は美しい。男の望むあらゆる姿になれるのだから、女としては夢幻のかんばせを秘めている。

 恋をして、愛を交わす。交えた舌で言葉を紡ぎ、語る思いを魔法にする。

 けれども恋はむつかしい。なかなか思うようにはいかない。上手くいったと思っても、時がたてばすべては泡と弾けて消える。

 最初のひとは若い騎士。褥を重ね夜を超え、通じ合ったはずの姫と騎士との言葉でさえも、時の流れの内に色褪せていく。けして変わることのない姫の美貌にやがて騎士は怯え、醜く老いていく自らを嘆いては女を責めるようになった。その次も、その次の次も、恋人はおいていった。

 恋人に合わせて姿形を変えることにした。青年が大人になり、老爺となり、姫は娘から夫人へ、夫人から老婆へと変わった。幸せだった。夫は老衰で死んだ。男の死骸を見下ろして姫はため息をつき、再び若い姿へと戻る。

 姫は恋をした。恋をしたはずの記憶がいつしか昨日となり一昨日となり、去年の冬の口づけを幻肢痛のように思い返しながら別の男の瞳を覗く。

 姫はその日、恋をした。その日の恋の熱情をいつかは褪せる過去として飲み込むものと知っていてその日、それでもなお恋をする。

 愛しているよ、と男は言う。私もです。姫は言う。愛しています。幾重にも愛の口説を重ねる。大好きよ。愛おしくてたまらないの。あなたが必要なの。食べてしまいたいくらいよ。

 姫は男を抱きしめる。変わらぬ愛を傾け、男の全存在を受け入れ、やがてその腕の中に男の骨だけが残る。人間は死ぬ。

 生き続ける魔女たちは恋について語りながら国の衰退をぼんやりと眺め続ける。

「何かが滅びゆく光景はもっと美しいものだと思っていたが、案外そうでもない。退屈なものだ」

「そうでしょうか。たとえどんな形の死であったとしても、そこにある限り私は美しいと思います。樹や花が咲いて、いつかまた涸れて土に還るその景色を見守るだけでも、私には十分です」

「百年を経てお前はまだ世界を美しいと言う。随分とまた気の長いことだ。次の百年を生きて百度この世の木々が死に絶えてもお前はそんな自然のありさまを微笑みと共に見続けているのかな」

「ええ。きっとそうでしょう」

「百年だ。途方もなく時は流れた。私は恋をしたがお前はどうだ。たまには恋と言うものをしてみようとは思わんのか」

「恋はするものではありません。落ちるものです。それに、恋というのならば私はとうに落ちています。私はこの世界に焦がれ続けているのです」

「その世界に生きる人間に恋はしないのか」

「人間はいつも私の視界を横切っていくだけですから」

 孤軽はそう言って薄く笑う。ただ人間は存在している。その存在を美しいと思う。美しいと思うその光景は一幅の絵画と何一つ変わらない。人間は視界の中で蠢く形でしかない。分かりあうこともなく見つめあうこともない。形に恋はしない。そう思っていた。

 けれどもやがて孤軽は姫に告げることになる。

 ──姫さま。私は恋をしました。

 恋を告げ、頬を染め、孤軽はそっとはにかんで笑う。

 ──その方は二号というそうです。おかしな名前ですね。二号さまは人形兵士として作られ、でも今は人間になりたいのだそうです。

 尋ねもしない内から恋を語り続ける孤軽を姫は悲しそうに見つめ、そうか、おめでとう、とだけ呟いた。もじもじと、けれど心底から嬉しそうに、はい、と孤軽は答えた。

 孤軽はとうとう恋に落ちる。千年生きて千年一人の邪眼の魔女が、千に一つの恋煩いへと墜落する。

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