第四話 狩りと人助け
第四話です。着々と進んで行きます。
では、どうぞ!
姿を隠し、部屋から抜け出した零司は暫く道なりに進む。
(しかし、広いな。やっぱり此処は王城の中なんだろうな…出口は何処にあるんだ?)
通路には人の気配などは全くしない。
(早いとこ出ないとなぁ…)
出口を探し始めて、約10分
(やっと見つけた。)
城の門には左右に警備が二人。零司は真ん中を堂々と抜ける。
そのまま少し歩き、城の出口から出てた所でため息を吐く。
「ふぅ…やっと出れたぞ。城の中広すぎだろ。」
愚痴をこぼしながらも、街の中へと歩みを進める。
(しかし、やっとステータス以外にここが異世界だって事が分かったな。)
零司がそう思うのも無理はない。
召喚されてから見たのは自分と同じ人間族のみ。
唯一確認したステータスも、自分の脳内に表示されただけであって、何処か空想の産物なのではないかと少なからず思っていた。
しかし、今は目で感じている。
目の前には人、人、人。でもその姿は地球にいた時に目にしたものとは別物。
鉄の鎧を身につけている者、ローブの様な服を来ている者、そしてあれは獣人だろうか?臀部の少し上から生えているのか、ふさふさの尻尾。頭の生えた獣耳。犬耳、猫耳、その他にも様々な種類が存在している。街の大通りには、馬車が当たり前の様に走っている。街並みは中世ヨーロッパ風だが、通りは清潔に保たれている。
「あぁ…ここが異世界ミスティアか…」
零司は逸る気持ちを抑え、街の通りを歩く。
(まずは、服装をどうにかしないとな…その為にも、早いとこ資金の調達をしないとな。…ん?…くくっ…獲物発見。)
零司は、何気なく横道を見て悪い笑みを浮かべる。その視線の先には三人の如何にもチンピラと言った輩が中年の男性に絡んでいた。
「おい、オッサン。俺ら金無いんだよ、つーことで有り金全部だしてくんない?」
「ほら、早く。」
「か、金は持ってないんだ!」
「嘘、つくんじゃねぇよ!」
チンピラの一人が男性の腹を殴る。
「ぐっ…!」
「ちっ、おいやるぞ。」
「「はいっ」」
そいつはリーダーらしく、他の二人に指示を出す。三人が、男性を取り囲み暴行を加えようたした時、
「あのー、ちょっといいっすか?」
間の抜けた声で零司が問いかけた。
「あ''??誰だお前!邪魔するんだったらお前もやるぞ!」
突然の乱入者に邪魔をされた三人は零司に詰め寄る。
「いやー邪魔しに来たんじゃ無いんだわ。」
「だったら何だよ!舐めた態度とってると痛い目みるぞ!」
「良いですよもう、やっちゃいましょうよ!」
「そうですよ!」
自分らを前にして、飄々とした態度をとる零司に、今にも殴り掛かりそうな三人。
そんな事も気にせずに零司は、
「三人にちょっと用があってな。」
そう告げると、表情が一転。獲物を見つけた肉食獣の様な獰猛な笑みを浮かべ、
「俺、金無いんだよ、つーことで有り金全部出してくんない?」
チンピラが発した言葉をそっくり返す。
「「「ぷっ、あははははっ!」」」
「お、おいお前何言ってんだよ!」
チンピラのリーダーは馬鹿にした様に笑いながら零司に言う。
「この状況で、そんな事が言えるとはなぁ!こっちら三人!お前は一人だぞ!お前何か数秒で…」
ドンッ!
数秒で倒せる…そう言いかけたチンピラの体が突如ぶれ、横の壁に叩きつけられる。
「数秒で?何だよ。…良いか?拒否権はない。」
未だ獰猛な笑み浮かべた零司は二人問う。
チンピラ二人はギギギと言う音が聞こえて来そうなほど硬い動きで仲間が叩きつけられた壁を見る。
「う、嘘だろ…今何をしたんだよ…」
「し、しかも、か、壁にヒビが…」
壁は、蹴られたチンピラが当たった拍子にひび割れていて、その下には息はあるが完全に気絶しているチンピラが倒れている。
(あーやべっ。ちょっとやり過ぎたなー。)
それもそのはず、零司のステータスはこの世界の住人の何倍も高い。零司自身は力をつもりでも、それは相手に取ってしてみれば圧倒的な力量の差があるのだ。
(まぁ良いか!こいつら恐喝してたみたいだし。)
結果、開き直ることにした様だ。
「さて、と、次はどっちだ?大丈夫大丈夫!…次はうまく手加減するから。」
零司は、黒い笑みを浮かべながら、二人に詰め寄る。
「ひ、ひぃ!!」
「だ、誰か!たすけ…」
ドンッ!ドンッ!
声を発することも出来ずにチンピラ達は意識を手放す。
「こんな感じか。」
気絶しているチンピラ達の懐から硬貨の入った袋を取り出し中身を確認する。中には金貨や銀貨がたくさん入っていた。
「あ、あの…」
袋の中身確認していた零司に、誰かが声を掛ける。
「ん?あぁ、おじさん。大丈夫か?殴られてたみたいだが…」
声を掛けたのは、チンピラ達に絡まれていた中年の男性。
「は、はい。あの、助けて頂きありがとうございます。な、何かお礼を…」
男性は少し怯えた様子で零司に言う。
「じゃあ少し教えて欲しい事があるんだけど…」
零司が教えてもらったのは二つ。
一つ目は貨幣について。
使われているのは硬貨で、貨幣は全大陸共通であるらしい。
単位は"テル"。硬貨の種類や価値の目安は、
鉄貨=一枚1テル=1円
↓
銅貨=一枚100テル=100円
↓
銀貨=一枚1000テル=1000円
↓
金貨=一枚100,000テル=100,000円
↓
白金貨=一枚10,000,000テル=10,000,000円
となっていて、硬貨は100枚毎に切り替わるらしい。白金貨に至っては一般人が見ることはまず無いらしい。零司が貰った(奪った)硬貨は、3人で、金貨2枚に銀貨15枚銅貨50枚。合わせて、40万テル。チンピラ達は結構金を持ってたらしい。
二つ目は街について。
この街は、リグルス王国王都で、ここから一番近い隣街まで歩いたら4日ほどかかるらしい。
「門の近くに馬車を貸し出している店があるからそこで借りていくといいよ」
と、男性は教えてくれた。
「本当にこれだけで良いのかい?」
助けた男性は、名をトルダンと言い、商業者らしい。
「かなり有益な情報が聞けたから大丈夫。 」
「そうか…今日は本当にありがとう!お陰で助かった!」
「こっちも田舎から出てきてお金が無かったから丁度良かったよ。じゃあ俺は。」
「そっか、うん!じゃあまたどこかで会ったら今度は飯を奢らせてくれ!」
「あぁ。またな!」
二人は微笑みながら別れの言葉を交わし会う
「さて、隣街は確か、商業都市ホルンだったっけな。夜になる前にこの街を出るか。」
トルダンと別れ、零司は一人呟く。
折角の旅だからと、馬車は借りずに歩いて街に向かう様だ。
街の西門を抜け、街と違う石畳で舗装されていない、地面を踏みしめる。
(これからだ。街の外にはどんな景色が広がってるのか楽しみだな。)
これからの旅に思いを馳せ、零司は歩き始めた。
やっと旅が始まる…彼はこの旅で誰に出会い、何を感じていくのか…(前振り)。
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