第十二話 登録と青髪女性
遅れてしまってすみません!!
見て下さったら非常に嬉しきかな。
第十二話です。どうぞ!
商業都市ホルン。商業が盛んに行われるその街は、朝から道端に野菜や果物、アクセサリーや衣服などを売る店が多数出て商売をしている。王都より少し小さい街は、商人が多く集まり、人の数は王都を上回り、人間やそれ以外の種族も多数行き交う。街の門の前にも長い行列が出来て、検問を待っている。その一人、零司は少し焦っていた。
(やべぇな。身分証とか持ってないんだが。)
少し身を乗り出し前の様子を見ると、門の傍に立つ、鉄の鎧を纏った兵士に、並んでいる人が薄い板らしきものを渡しているのが見える。
(誤魔化すか。)
「次!」
考えがまとまった時、丁度声をかけられる。
「身分証を見せてくれ。」
「あのー実は身分証を持っていなくて。途中魔物に襲われて落としてしまって…」
出来るだけ落ち込んでる感じを出す零司。
「なに?…そうか、それは大変だったな。」
(上手く誤魔化せた!)
「少し待っててくれ。」
そう言われて、門の脇にそれ待っていると。
「待たせたな。」
「いえ。」
「とりあえずこれに手を翳してくれ。」
と、言って兵士が持ってきたの透明の水晶玉。
「これは、見極めの水晶って言ってな。手を翳した奴が善人か悪人かを見極めることが出来る水晶だ。手を翳して、赤色になったら悪人。青色になったら善人っつうわけだ。」
(なるほど、便利な物だな。)
現代日本にあったら重宝されるであろう代物に驚きつつも、手を翳す。水晶は青色に光り、善人であることが確認された。
「よし通って大丈夫だな。だがこれからは身分証を持っていた方がいいぞ?」
「はい。ありがとうございます。」
「いいってことよ。よし、改めて、商業都市ホルンへようこそ。俺はクルトンだ、歓迎する!」
そう言った男は人当たりの良さそうな笑みを浮かべ零司を迎える。
「俺はレイジって言います。よろしく。」
「おう!」
言葉を交わし別れる二人。とにかく、怪しい者だと想われて捕まらなくて良かったとひとまず安心する。
(いい人だったな。しかしクルトンか、だからか、顔が四角いのは。)
こらっ失礼。
街の道を歩く零司。現在は、冒険者になるために冒険者ギルドへ向かっている最中だ。零司は、クルトンと別れた後、冒険者ギルドを知らないのでクルトンの所に戻り聞きに行ったのだ。クルトンには、苦笑いをされてしまった。冒険者ギルドへ寄る前に、様々な売店に寄って、食べ物や服屋でこれまた黒のコートを調達した零司は、早速コートを羽織り、教えて貰った道を歩いて目的地へと到着した。
「ここか。」
零司の目の前には、石造りの大きい建物。木のドアの上には日本語では無い変な文字で"冒険者ギルド"と書かれた看板がついている。
(見たことない文字なのに何故か読めるなぁ。やっぱり転移補正的なものか?まぁどうでもいいが。)
あまり気にせずにドアを開ける零司。開けた瞬間目に入ってきたのは思っていたよりも綺麗で落ち着いた雰囲気のある内装。目の前には何人か人が並んでいるカウンターが並び、奥で女性が動いているのが見える。視線を右に逸らすと、いくつか木のテーブルと椅子が並び、屈強な体をした男達や、少ないが何人か鎧を付けた女性が飲食をしている。恐らくは酒場だろう。皆談笑しながら食事を楽しんでいる。しかし、そこに居た者達も、ドアが開き、誰かが入ってきた事に気づいて零司の方を見る。
そんな視線を全く気にせずに零司はカウンターへ向かう。その間も多くの視線は零司を捉えて離さない。
零司は、一番左端の人が誰もいない受付に行き、こちらに気付かず、書類に目を通している女性に声をかける。
「すみません。冒険者登録をしたいんですが。」
酒場の方で聞こえていた声が止み、その声だけが辺りに響く。
「は、はい。すみません。登録で…す……」
零司が声をかけると受付の女性は顔を上げる。ショートカットにした青髪が良く似合う可愛らしい女性。
その女性は、零司の顔を見ると驚いた顔で頬を赤らめ、言葉を詰まらせる。
「あのー?」
「は、はい、すみません!登録ですね!ええっと…この紙にお名前と性別。あと種族を書いて下さい!」
慌てた様子で近くから紙を取り出す。
「はぁ。」
女性の態度に疑問を覚える零司は、勢いに押される感じで髪を受け取る。
(名前は、レイジだけでいいか。性別男に、種族人間。と、これでいいか。)
この世界で、名字を持つのは貴族だけだと聞いたので、下の名前だけを書き、受付の女性に紙を渡す。
「えっと、零司さんですね。少々お待ちください。」
女性はそう言って奥に入っていく。
暇になった零司は、先程からじっとこちらに視線を向けている人達がいる方へ目を向ける。零司が目を向けると、こちらを見ていた女性が、持っていた食べ物を皿に落としたり、飲み物を喉に詰まらせて、咳き込んだ。
(おかしい奴らが多いのか?)
これを起こしている張本人は、全く気付く素振りも見せない。
「れ、零司さん。ギルドカードが出来ました。」
すると、横から先程の女性の声が掛かる。手には青色のカードが握られている。
「ギルドカードか。」
「はい。説明を致しますか?」
「お願いします。」
受付の女性による冒険者についての説目が始まる。
要約すると、冒険者はランク付けされており、ランクは、F〜SSSまで。冒険者になりたての零司はFランクからのスタートになる。ランクを上げるには、ギルドから発せられる依頼を達成する事が必要な様だ。
依頼には種類があり、素材調達がメインとなる採取系。街の住人の手伝いなどがメインの雑用系、そして、街の外に出る魔物の討伐がメインとなる討伐系。
他にもあるのだが、特殊な者なので割愛するそうだ。
依頼は自分の一つ上のランクまでしか受けられず、ランクは自分のランク以上の依頼を達成しないと上がらないらしい。FランクはEランクまでだ。
「だいたい分かりました。ありがとうございます。」
「いえ、これが仕事ですので。他に聞きたいことがありましたら、またお聞きください。」
零司の礼に笑みを浮かべる受付の女性。
「はい。ありがとうございます。では。」
「あ、あの!…えっと、名前!…私ミラって言います。これからはそう読んでください。」
先程より顔を赤くし、零司を見詰めそう言った受付の女性、元い、ミラ。
ミラ
商業都市ホルン冒険者ギルドの受付をしているショートカットの青髪女性。
零司は可愛らしいと言ったが実は22歳と、零司より年上。身長が154cmとちいさめなので、人に年下と見られやすい。胸は大きすぎず、小さすぎない。
「はい。これからよろしくお願いしますミラさん。」
笑顔でそう言った零司を見た、ミラや他の女性は頬を赤らめる。零司の顔はそれ程までに整っているのだ。
(さて、依頼でも受けますかな。)
零司は、少しワクワクしながら、依頼が貼ってあるボードに足を向けたが、くるりと踵を返し受付に戻る。
また、ミラのところへ行き声をかける。
「すみませんミラさん。近くに宿屋ってありますか?」
零司は、もうすぐ夕方になるのを忘れていた。
天然かな?天然だよね?
どうやら天然ドSのようです。
今回も見ていただきありがとうございました。