縛霊師
「サグさんおはよー!」
元気な声が聞こえてくる。
「お早うございます。姫は今日も元気ですね」
「メヘヘ~。じぃちゃんいる?」
「そこの机に突っ伏して寝てますよ」
「ありがと♪」
そう言うと元気な声の主がこちらに近づき
「じぃ~ちゃ~~ん、起~き~て~~」
肩を揺さぶってきた。
「山行くんでしょ~~。早く行こーよ~」
「ロティ、もうちょっと寝かせておくれ」
山へ行くのを忘れて昨日は夜遅くまで起きていた。
「準備もしてないの?」
「準備…全然してないなぁ」
「じゃあさっさと準備して! し終わったらおぶって行くから寝てていいよ♪」
山に行く用意をしたらおぶって連れて行く、と言われたので必要なものを用意する。
◇◇◇◇◇
「くぁ~~~」
「あ! ようやく起きた!」
準備が終わって寝て起きたら山に着いていた。しかも孫娘のロティではなく左供衛門におぶってもらっていた。
「もうすぐ目的地だよ~♪」
筋骨隆々で鍛えることが好きな左供衛門より、孫娘のロティにおぶさりたいと思っていると目的地までもう少しだった。
山は頂上に近いほど強いヤツが出てくる。動物だったり魔物だったり魔族だったり人だったりイロイロだ。
今回は山の半分を過ぎた辺りだと思われている所が目的地だ。山頂は常に雲など何かしらに覆われているのでハッキリと山のどこら辺まで登ったか分からない。
「♪ あそこにいるけどアレは~?」
いつの間にか辿り着いていたようだ。
「ん~じゃあ、最初はアレで」
「わかった♪」
そう言うとロティは駆け出した。
山に来たのは霊を捕まえるためだ。
「じぃちゃ~ん♪ 早くはやく~♪」
ロティが棍で霊を攻撃して弱らせていた。
「そ~急かさないでくれ。これでも老体なんだよ」
収納空間から縛霊するための道具を取り出す。そこら辺で拾った石を丸く加工し縛霊魔法を掛けたものだ。
ヒュッ!
それを霊に投げる。
カチャ
石は霊に当たると地面に落ち
「ウオォォォアアァァァァォォォァアアァァァァ」
霊を吸い込み始めた。
「ァァァァァァォォォオオオオオアアアァァァァ………」
石が吸い込み終わると
カタカタカタカタカタカタタカタカタカタタカタカタカタカタカタ
霊が出ようとして石が震えだす。
それに近づき手に取って縛霊魔法を掛けた。すると石の震えが止まる。
「終わった~? 早く次行こ~♪」
「元気だなー。とりあえず次は魔霊で」
「よーし! 魔霊出てこ~~い♪」
ロティが元気よく歩き出すと左供衛門が近寄ってきた。
「姫はいつも元気ですね」
「一体誰に似たんだか」
「あの元気のよさはケルムゥさんに似たんじゃないんですか」
「…そうかもしれんな」
「でもあの行動力はノヴァさん似ですよ」
「行動力はワシより両の方に似てるだろ」
「そうですかね」
そんな他愛ない話をしながら次の霊を探しに向かった。
霊:魔力を持たない普通の幽霊
魔霊:魔力を持った幽霊
モイル家紹介
クルロット・モイル
愛称はロティ。種族はマイルゴート。獣寄りの獣人。女子高生冒険者。
アーノヴァ・モイル
通称はノヴァ。ロティからはじぃちゃんと呼ばれる。ロティの父方の祖父。種族はマイルゴート。人寄りの獣人。縛霊師。
両・モイル
通称はリャン。ロティの父親。種族はマイルシープ。獣寄りの羊の獣人。賭師 (ギャンブラー)。
ケルムゥ・モイル
愛称はケルムゥ、ムゥちゃん、ケルちゃん。ロティの母親。種族はヴォルナルド。獣寄りのキツネの獣人。主婦冒険者。