2;消えた窓
ウィーン…
いらだつボクを尻目にパソコンは、ひたすらうなっていた。
我慢が仕切れなくなって、むやみにマウスをクリックしてみる。
でも、無駄にクリック音が暗闇に消えて行くだけだった。
フリーズ。
ボクはまたしたうちをした。
最近、ボクの船のこの窓は調子が悪い。
キーボードを叩いても、パソコンは怪しい光をボクの顔に当てるだけだった。
相変わらず、画面は「一家惨殺」の記事を表示していた。
ボクは胸くそが悪くなった。
ボクはいらだってパソコンの主電源を長く押す。
すると、ボクのパソコンは鈍くうなりながら眠りについた。
ーこのおんぼろが…!
せっかく、毎夜の楽しみを行おうとしていたボクだけれど、そのパソコンの不具合によってすっかり機嫌を損ねたボクは、そのままパソコンの前をたった。勢い良く5畳半の隅に置かれたベッドに倒れ込む。
そして、自然と天井に貼られたボクの天使、グラビアアイドルのまり子ちゃんと目が合う。
そのポスターの中は、永遠に夏。
まり子ちゃんは、セクシーな水着姿でボクを挑発するように見ている。
溜息。
外そうかな…、あのポスター…。
ボクはそんなことをぼんやりと考えながら,気付けば深い眠りについていた。
…。
ボクは目が覚めた。
暗い部屋に、カーテン越しにほんの少し光が差し込んでいる。
恐らく、昼だろう。
ボクは、重い体をゆっくりと起こした。
そして、慣れた手つきで、ボクのパソコンの主電源を軽く押す。
…あれ?
ボクはちゃんと押せなかったのかと、再びパソコンの主電源を押した。
ー電源がつく事はなかった。
ボクはあわててコンセントを見てみた。
ー入っている。
主電源を押すが、つかない…。
ー停電か?
試しに部屋の電気を付けたら、すぐに付いた。
ボクは一気に血の気が引いて行った。
すがる様に何度もパソコンの主電源を強く押してみる。
ー何も変化はない。
本体を叩いてみる。
ー変化はない。
…。
ボクは唖然としてそこに立ち尽くした。
壊れたのだ。
ボクの船の唯一の窓が。