"リン"ゼノス目線
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俺の知ってるリンと言う子供との出合いは偶然。
あの日、予定していた場所に乗せていってくれるはずだった運び屋が現れなかったのが切っ掛けだった。
しかたなしに、手近な運び屋の店に入ると一人の子供か叩かれていた。
柔らかな肉と血の匂い。
子供特有の柔らかそうな肉の匂いよりも血の匂いが強くて目がはなせなかった。
食べる訳ではないのに柔らかそうだとか思ってしまうのが獣だと自分でもおもうし、仲間達も一緒だと思った。
俺に気付いた店の奴が俺らを案内するように子供に命じている。
左目の回りが紫色になっていてかなりの殴られ方だったが子供は感情が読み取れない笑顔で俺らを案内した。
「おい、お前………俺らが怖くないのか?」
普通の子供は獣人を怖がる。
獣の特性のせいか普通の人間よりも大きい獣人は子供には、さらに大きく見えるみたいで泣かれないなんて初めてだった。
「だって、あんたらは獣だろ。」
俺達が一番言われたくない言葉だった。
子供にキレることもできずにこの弱々しい生き物を見下ろすと、子供は口元に笑みをのせていった。
「あんたらは、獣だ。ここにいるようなケダモノ達とは全然違う。怖くない。」
子供の言葉に俺達がどれだけの衝撃を受けたか………
子供がどれだけのめにあっているかが容易に想像が出来た。
俺達は子供を気に入った。
獣だと言われるのが嫌じゃなくなった。
ケダモノにだけはなるまいと、俺達は固く誓ったんだ。
「ゼノス様!また来たのか?暇なのか?」
言葉は可愛くないくせに、可愛い笑顔で走ってくる姿は愛らしい以外になんと言えば良いのか解らなかった。
「お前は鈴を転がしたような声で喋るな!」
何度もそんな話をした。
「リン!」
俺がつけた子供の名前。
「リン!」
「………なんだよ。うっせーな!」
口は悪いし生意気なクソガキが女だと気が付いたのはかなりたってからだった。
リンに初めて竜にのせてもらった日、雨に降られて完璧なトラの姿になってリンの体を温めた。
獣の姿になると嗅覚が鋭くなる。
女の匂いがした。
つねに血の匂いがする子供が男の匂いか女の匂いかなんて解るわけがなかったんだ。
「ゼノス様、俺を買ってくれないか?」
子供の精一杯のSOS。
俺はその時何も持っていないただの兵士に過ぎなかった。
族長には後を継げと言われていたが、その日暮らしで有り金全てを使いきっちまうような駄目な暮らしをしていた俺には子供を買ってやる金も甲斐性もなかったんだ。
心を入れ換えたんだ。
寝ても覚めても子供の精一杯のSOSが気になって、アイツをリンを俺が助けるって決めた。
だから、地位と名誉と金をてに入れる術を模索して一気にかけ上がった。
族長になり、城で名を上げ宰相になったんだ。
俺は間に合わなかった。
金を用意して店に行ったら、店は無くなっていた。
近所のやつを捕まえて聞いたら、皆殺しにされたと言われた。
認めたくなかった。
だが、店のあった場所にはリンと同じ血の匂いが立ち込めていた。
あの日、リンを見付けて俺がどんなに嬉しかったか。
思わず顔にふれ、昔と違って血色がよく殴られた痕のないリンを見てどれほど嬉しかったか。
昔と違って血の匂いがしないリンはあの時あまり感じなかった女の匂いをさせていた。
女になったリンを欲しいと思ってしまった。
キスをした事は後悔していない。
仕事を辞めさせ俺の専属の運び屋になってもらえた。
城に連れていってギルネストに会った時のリンは少し怯えているようだった。
俺が思ってる以上にリンはいろんな物を抱えているのだと知った。
しかも、ギルネストの元婚約者とかムカつく。
ギルネストは最年少で魔法使いになり、今や魔法司令官なんて役職の付いているイケメンだ。
リンが俺なんかよりギルネストを大事にするのも仕方がないのかも知れない………納得はしてねえよ!
リンは過去を捨てたいみたいだ。
だから………リン。
もう、リンじゃなくてロゼって呼ぶ。
そんな簡単なことでお前が過去を捨てられて未来を見れるならいくらでも呼んでやる!
「ロゼ!」
「ロゼル!るー。」
「ロゼの方が可愛いって!諦めろ!」
俺は今日もロゼの顔を見て安心するのだった。
ゼノス様好きです。