竜
読んでくださる皆様は神様だと思っとりやす。
俺が竜のセッティングをしているとゼノス様とギルネストは挙動不審にキョロキョロしていた。
「どうした?」
「聖女様は神出鬼没だからな。警戒しておかねば!」
「今は王子が相手してるからさっさと逃げるぞ。」
「笑えるぐらい怯えてるな。」
二人に睨まれた。
「早く魔王を倒して聖女様にはお帰り頂きたいものだ。」
「同感!」
ギルネストとゼノス様は互いに頷き合った。
「まあ、良いけど!俺は姫様に優しく出来ないなら仲良くするつもりないしな。」
姫様は俺の顔を除き混んだ。
「本当に?」
「勿論です。安心して下さい。俺は姫様のお側に居ますからね。」
「ありがとう。ロゼ。」
満面の笑顔の姫様を思わず抱き締める。
「可愛い~!」
「あ、ありがとう!」
姫様の可愛いさにほのぼのしながら姫様を解放していると突然背後で声がした。
「これが、竜。」
可愛らしい声にゼノス様とギルネストは肩が跳ねるほど驚いていた。
「ロゼルさん。見学しに来ちゃいました。」
振り返るとそこには聖女と王子が立っていた。
「私も竜に乗ってみたいな~!」
何だか威圧感が半端ない。
「今日は先客が居ますのでまたの時と言うことで。」
「え~!私は今日が良いです!」
姫様が怯えたように俺の服をギュッと掴んだのがわかった。
「聖女様。ではあんたはいくら出す?この国の宰相様と魔法司令官様と姫様を乗せる以上の現金をポンっと払ってくれる訳だよな?俺は平民だって言ったろ?金が全てだ!あんたがどれだけ払えるのか聞かせろよ!」
俺は含みのある笑みを口元にのせた。
聖女は顔色を少しだけ青くして首を横に降った。
「今日は諦めるわ。こんど乗せてね。」
「それはそれは!ご指名ありがとうございます!料金設定の方は後でゼノス様に持っていかせますので!毎度あり!」
俺は姫様を抱えあげると姫様に笑顔を見せた。
「さあ、姫様まいりましょう!」
「はい。」
姫様に笑顔をもらいギュッと抱き締める。
「マジ可愛い~!」
「ロゼ。犯罪者のようですよ。」
「姫様も嫌がった方が良いんじゃねえか?」
ギルネストとゼノス様にそう言われ、姫様は照れた顔をして言った。
「わ、私はロゼが大好きだから………嫌じゃないです。」
「姫様~!俺も姫様大好きです。」
なぜだか突き刺すような鋭い視線を感じたが気が付かないふりをした。
空色の俺の自慢の竜は高く空に舞い上がった。
「た、高いです。」
「「「大丈夫ですよ。」」」
俺とゼノス様とギルネストはハモってしまった。
「ロゼは俺の運び屋だから安心して良いっすよ!姫様!」
ゼノス様は自慢気に笑った。
「自分が付いていますから落ちそうになっても魔法でどうにでもなりますよ。」
ギルネストは呆れたように言った。
「俺が姫様を落っことすなんてヘマするわけないでしょ!ゼノス様蹴りおとしてでも助けますから安心して下さい。」
「こら!ロゼ!」
「蹴られたくなかったら文句言うなよ!ゼノス様!」
俺らが煩いのか竜は嫌そうなオーラを出していた。
「ごめんなスカイ!煩かったよな!」
俺は竜のスカイの首を優しく撫でた。
スカイは気持ち良さそうにキュイーっと鳴く。
さっきまでの嫌そうなオーラはもうない。
「スカイは俺の相棒だ!姫様も撫でるかい?」
「は、はい。」
姫様もおっかなビックリスカイの首を撫でる。
スカイはさっきよりも喜んだように鳴いた。
「さすがロゼの竜!姫様に撫でられて大喜びじゃねえか?」
「ロゼ、竜にまでなんて教育をしてるんですか?」
俺は理不尽なものを感じたが取り合えず無視することにした。
「ロゼ………今日は本当にありがとう。………ロゼが居てくれて嬉しいの………」
姫様の控えめなお礼が可愛くて俺は笑顔で姫様の頭を撫でた。
「ロゼは姫様と居るときが一番可愛い顔するな!」
ゼノス様が少しムッとしたように言った。
「そんな顔俺が完璧獣の姿になった時しか見たことねえぞ!」
昔一度だけ見せてくれた完璧なトラの姿。
獣人は耳と尻尾の出ている部分と同じ獣に変化できるのだが、獣人は滅多にその姿を人に見せたがらないから一度しか見たこと無い。
「あの姿のゼノス様は美しいです。」
「………やめろ、照れるだろうが。」
ゼノス様が珍しく顔を赤くしていた。
「おっさんの照れ顔キモ!」
「マジで泣いちゃうから!」
ゼノス様がかなりのショックを受けたのは誰がみても明らかだった。
「ふふ、ふふふふ。」
姫様は本当に楽しそうにわらってくれた。
「姫様。また、俺の竜に乗ってくれますか?」
「勿論。ロゼのために私もお小遣いを貯めるわね!」
「姫様から金なんてもらえません!姫様は俺に笑顔を見せてくれるだけで充分ですから!それにゼノス様が姫様の分まで払ってくれますから!」
「こら~!ロゼのあほ~!」
「甘やかしてくれるって約束したよな!」
ゼノス様は項垂れた。
「言った。言いましたよ!くっそーロゼのあほ~!」
ゼノス様は遠吠えのように叫んだのだった。