お茶会?
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ゼノス様の執務室は異様な光景になっていた。
肩車された姫様とゼノス様と獣人とあまり関わらなそうな魔法司令官殿それに青い顔をした王子様に俺。
「どうしたらこんなことになるんですか?」
執務室でお茶の準備をしていてくれたフィンリルさんは呆れ顔でゼノス様に聞いた。
「何でだろうな?俺にも解らん。」
ゼノス様は姫様を柔らかそうなソファーに下ろして俺の方を見た。
「ま、ロゼが喜べば俺は何でも良いけどな。」
「ロゼル。る!がたらないぞ。」
「百歩ぐらい譲ってやったろうが!何で姫様は良くて俺は駄目なんだ?」
「可愛いが歩いてるような姫様に言われんのとおっさんに言われんのは雲泥の差だろうが!鏡見た事あんのかよ?」
「………泣いちゃうぞ。」
「おっさんの涙に何の価値がある?」
「酷い。心が砕け散る。」
「そんなやわなハート持ち合わせてねえだろ?むしろ砕けた所を見せてみろ!」
「いやいや、無理だから。」
俺は迷わず姫様の隣に座った。
「姫様は何から食べます?」
「ロゼは甘いものが好きですか?」
「はい!大好きですよ!姫様の事も大好きです。」
俺は姫様に満面の笑みを浮かべた。
「ロゼはお兄様の事は嫌いですか?」
返答に困る。
「お兄様は優しくて素敵な人なんですよ!」
「………好きか嫌いかで言ったら嫌いです。」
俺は王子を見た。
少なからずショックを受けた顔をしている。
人に嫌われたことが無いのだろう。
俺はソファーからどくと、王子の前に立った。
「あんたは一国一城の主になる人間だろ!ヘタレてんじゃねえよ!姫様に心配かけんな。胸はって笑って見せろ。」
かなり戸惑った顔の王子は苦笑いとも言えないひきつった笑い顔を作り、そのあと爽やかに笑って見せた。
「それでいい。」
俺は王子に笑顔をむけた。
王子は顔を赤らめてうつ向いた。
怒ったのかと思って王子の顔を除きこもうとしてみた。
「「天然たらしが。」」
「ギルネストとゼノス様は何?どんだけ仲良しなんだよ。」
「「別に仲良くない。」」
「シンクロ率が半端ないんだけど?」
俺は二人を交互に見た。
「それより、なぜゼノスは様付けで自分が呼び捨てなんだ?」
ギルネストは納得いかないと言った顔だ。
「ゼノス様は雇い主で、ギルネストは友達だろ?」
「………雇い主と友人の優先順位はどっちだ?」
「友達かな?ギルネストが困ってたら助けたいと思うし!」
俺の言葉に納得いかない顔をしたのはゼノス様だった。
「なんだ?ロゼは俺が困ってたら助けたいと思わねえのか?」
「いくら出すかによる。」
「金か!ロゼは俺の金にしか興味が無いのか?俺はロゼを特別扱いしているのに!」
「たのんでねえよ!おっさんの行いが悪いからだろ?」
「どこがだよ?」
ゼノス様に睨まれた。
「ゼノス様が噛みついたりするからだと思わないところがゼノス様がリンに嫌われる理由だと思いますが?」
フィンリルさんは全員分のお茶をテーブルに置きながら言った。
「噛みついた訳じゃなくキスしただけだろ?」
「だけではすまなかったでしょ!無闇にリンにさわらないでくださいよ!ゼノス様の稼いだ金が全てリンの物になってしまいますから。」
「お前がロゼに金を渡したんだろ!」
「俺はリンのためならゼノス様の財布を何度でも差し出しますよ!」
「フィンリルさん!俺の名前はロゼルだって。」
「リンの声が俺は好きだからリンで良いんだ。」
有無を言わせないオーラを出しながらフィンリルさんは俺に笑顔をむけた。
「まあ、フィンリルさんなら良いけどさ。」
「おい!俺に対してだけ厳しくないか?」
「行いが悪いからだろ!」
「お前が俺好みに成長してるのが悪い。」
俺が呆れて居るとサッとギルネストの背中に庇われた。
「ゼノス、ロゼに近寄るな。」
「ギルネストには関係ないだろ?」
「彼女は俺の婚約者です。」
「もう違うだろうが!」
ギルネストとゼノス様がにらみあっている。
そんな二人を見ていると姫様が俺の服を引っ張った。
「?」
俺が首を傾げると姫様は顔を真っ赤にして照れながら言った。
「私も、ロゼが大好きよ。」
「一生お側でお仕え申し上げます!」
俺は思わず叫んでしまった。
「「こら!ロゼ!」」
「息ぴったり~!」
俺は思わず笑った。
「ロゼさん!」
まだ少し顔の赤い王子が話しかけてきて驚いた。
「僕は君と話をすると悩み事が無くなっていく気がするんだ!だから、また僕と話をしてくれないだろうか?」
「面倒臭い。」
思わず本音が漏れた。
「ロゼは私も、面倒臭い?」
姫様が心配したように俺を見上げた。
「姫様を面倒臭いなどと言うやつは俺が退治して差し上げます!」
「ロゼは姫様の事気に入りすぎじゃないか?」
ゼノス様は呆れたように言った。
「ゼノス様、俺は可愛い物が大好きなんだよ!可愛いは正義!俺のポリシー。姫様は可愛いイコール正義!」
「可愛いイコール正義?」
「おっさんは可愛くないから悪だな。」
「俺ほど正義感の強い男は居ないだろ!」
「………。」
俺はゼノス様を無視して大量のお菓子の中からショートケーキにホークをさして口に入れた。
「おい!無視すんな!」
「おっさんの事なんて、興味が無い。なにこれ旨い!」
「それは俺が作った。リンが喜んでくれて良かった。」
フィンリルさんが笑ってくれた。
「フィンリルさんはいつでも嫁に行けるな!」
「婿になってくれるなら、何時でもリンに嫁ぐぞ。」
フィンリルさんはニコニコ笑った。
「うん!フィンリルさんは可愛いの規格外だから………悩むな。」
俺が本気で悩むとゼノス様がショックを受けた顔をした。
「ロゼ。こっちを向きなさい。」
ギルネストの声にギルネストの方を見るとニコッと笑った。
ギルネストは手に持っていた飴玉を俺の口に入れた。
「あっ………これ。」
「お前が好きな飴だろ。」
「好き。これ何処にも売ってなくて、廃盤かと思ってたんだ!」
「何処にも売ってないに決まってる。俺が作った飴だからな。お前がこれを口に入れた時だけは笑ったから。いつも持ち歩いている。」
ギルネストは口元に笑みを浮かべた。
俺は思わず満面の笑みを作った。
友達の優しさが本気で嬉しかった。
「ギルネストだって可愛くないだろ!」
ゼノス様が睨む。
「友達に可愛さ求めてないから。」
「理不尽だ。」
「ゼノス様は俺の物を奪うけどギルネストは俺にいろんな物をくれるからな。」
「俺だっていろいろやっているだろ?」
「そのぶん俺から奪ってんだろ?」
「奪ったつもりはない!」
俺はゼノス様を睨んだ。
「突然キスするは、仕事をクビになったのもおっさんのせいだろ!おっさんにキスされたせいであのあと客に違う意味でキャーキャー言われて大変だったんだからな!」
「それはロゼが男のふりしてたのが悪いだろ!」
「女なんて稼げねえだろ。女の運び屋は大変なんだぞ!指名されても男客!やたら体触られたり襲われそうになったりリスクが高い。」
その場にいた全員が驚いた顔をしていた。
「俺は胸も無いしガリガリヒョロヒョロだったから大丈夫だったけどあのまま買われた店に居たらどうなってたか!あそこは治安も悪かったしな。知ってるだろゼノス様。」
「あいつらはあそこで死ぬ運命だった。」
「俺もあの日死ぬ運命だったと思う。それを助けたのがアルビノだ。俺はアルビノのために生きてる。アルビノか森に帰りたいって思うまでは一緒に居る。邪魔するなよ!」
ゼノス様とギルネストは深く深くため息をついた。
俺は口の中の飴玉を噛み砕くと笑った。
「まあ、今は楽しいから気にすんなよ!」
俺は頭の上の子猫を膝に抱えなおし子猫の頭を撫でたのだった。