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変幻

「お前がロゼか?ゼノス様の回りをうろつくな!」

子犬のような獣人の男に叫ばれた。

竜のブラッシングをしているとよく客が来るな~っと本気で思った。

取り合えず無視して竜にブラッシングをかけつづける。

「おい、聞いてんのか?」

俺は無視しし続けた。

「き、聞こえてないのか?………おい~。」

何だか可哀想になってきたせいでそいつに視線をやってしまった。

「聞こえてんじゃないかよ~!話きけよ~!」

俺はしかたなく男に言った。

「ゼノス様の回りなんてうろついてねえよ!むしろゼノス様に目障りだからうろつくなって言っといてくれ!」

男はぷるぷると震えて叫んだ。

「そんなこと言えるわけ無いだろ~!」

キャンキャン煩い犬だな。

俺は呆れた顔を作った。

「コメラ、リンに迷惑かけるなら噛み殺しますよ。」

そこにあらわれたのはフィンリルさんだった。

「フィンリルさん………言っとこうと思ってたんだ。俺をリンって呼ぶの止めてよ。聖女にバレると面倒なんだ。」

俺がそう言うとフィンリルさんは少し考えるように言った。

「聖女?………ああ、あのメスですか。なぜです。」

「何でだか、リンはゼノス様の死んだ彼女なんだと!それが俺だなんてバレたら面倒以外の何物でも無いだろ!」

フィンリルさんは俺に笑顔をむけた。

「わかりました。では、ロゼル。ケーキを焼いたので食べに来ますか?」

「行く!フィンリルさん、ありがとう。ロゼルって呼んでくれて目茶苦茶嬉しい。」

「それは良かった。」

フィンリルさんは柔らかい笑顔をくれた。



フィンリルさんに付いて行くとゼノス様の執務室の隣の部屋に案内された。

ゼノス様の隣の部屋がフィンリルさんの執務室らしい。

「何で子犬が付いてくんだよ!」

「こ、子犬!俺はちゃんと成犬だ!」

犬は認めるんだな~。

「コメラは呼んでませんよ。」

フィンリルさんの言葉にコメラはショックを受けたようだった。

「フィン兄貴~。」

「ロゼルは僕らには特別な人間なんですからね。ロゼルに何かしようものなら躊躇わずに殺しますから覚悟なさい。」

俺はフィンリルさんに出してもらったケーキを頬張った。

「フィンリルさん何時でもお嫁に行けるね。」

「ありがとうございます。ロゼルが嫁に欲しいなら何時でもお嫁に行きますよ。」

何だか笑顔が怖い。

「こらー!フィン兄貴まで誘惑してんじゃねぇ~。」

俺はムカついてコメラの耳を掴んだ。

ビクッと反応して逃げようとするコメラの耳をがしがしマッサージしてみた。

「うわ!っばっ、やめ、あっ。」

何だかヤラシイ声を出すコメラが面白くてさらにマッサージすると、コメラはポンッと音をたててポメラニアンに姿を変えた。

「………可愛い!ヤバイ!お前可愛いじゃねえかよ!抱っこさせろ!」

俺は茶色いふわもこのポメラニアンをなでくり回した。

可愛い事にポメラニアンはキャンキャン鳴いて見せる。

俺がさらに耳をマッサージするとポメラニアンは俺の腕の中で大人しくなった。

「ロゼル、君は変幻が怖く無いのですか?」

フィンリルさんは躊躇うように聞いてきた。

「何で?何処が怖いの?ポメだよ!可愛いだけじゃん。」

「………では、僕が変幻したら………」

俺は瞳を輝かせた。

「フィンリルさん変幻してくれるの?フィンリルさんは狼だよね!見たい!」

フィンリルさんはフリーズしたあと照れたような顔をしたあとこれまたポンっと音をたてて狼の姿になってくれた。

「か、格好いい!」

俺はポメラニアンを放り投げると狼に抱きついた。

「フィンリルさん素敵。」

「こ、怖くは無いのですか?」

フィンリルさんの声が狼からするのが少し不思議だが、俺はポメラニアンにしていたように耳回りをマッサージしながら言った。

「フィンリルさんを怖いなんて思ったことねえよ。」

「う、ロゼル、そこ、そこが………ああ~。」

フィンリルさんのヤラシイ声は何だかいけない事をしている気分になるな。

フィンリルさんの尻尾が千切れそうなほど振られていて可愛い。

「可愛い。」

俺はフィンリルさんにさらにマッサージしてみた。

その時執務室のドアが開いた。

「………お前ら、何でそんな格好してんだ?」

入ってきたのはゼノス様だった。

「マッサージしたらこうなった。」

俺はフィンリルさんから手をはなすと、ポメラニアンを捕まえてゼノス様に投げて寄越した。

ゼノス様はそれをかわすと言った。

「マッサージ?」

フィンリルさんは俺の足にまとわりつき、ポメラニアンはキャンキャン吠えていた。

ゼノス様の眉間にシワがよる。

俺はゼノス様に手を伸ばした。

「ゼノス様。」

俺の声に耳を寄せようとするゼノス様の耳を掴んでマッサージをはじめるとゼノス様は驚いた顔をした。

「ばか、やめ、っく。」

「ゼノス様、変幻したらもっと気持ちよくしてやるよ。」

ゼノス様にそう言うと、ゼノスは俺を見詰めると観念したように変幻して見せた。

「やっぱり、ゼノス様は美しい!」

俺は躊躇わずにゼノス様に抱きついた。

「ロゼル。僕もやってください。」

フィンリルさんが俺にすりよって見せる。

フィンリルさんとは反対の足にポメラニアンが頭を擦り付けていた。

「か、可愛い!幸せ!ふわもこにキリッと格好いいに王者の美しさ!皆素敵すぎる!」

俺は幸せを噛み締めながら順番に獣たちをなでくり回したのだった。



ハッキリ言って幸せだった。

そのあとの事なんて考えてなかったんだ。

ドアをノックする音。

「フィンリル、ゼノスはこっちに来ているか?」

ギルネストの声に三匹は一斉に元の姿に戻ったのだが、元の姿の達が悪い。

「………そうだった。変幻の後って全裸だった。」

俺は取り合えずガン見しないように目を手で押さえた。

音からしてズボンをはいているのがわかる。

「フィンリル?居ないのか?開けるぞ。」

ギルネストの声に俺は叫んだ。

「今開けるな~!」

「ロゼ?」

ドアが勢いよく開いた。

俺は目を押さえていた手をはずして3人を見た。

ギリギリだが3人ともズボンは、はけている。

ギリギリだが………。

「「「セーフ。」」」

3人がハモる。

ギルネストのこめかみに青筋が浮かんだのがわかった。

「3人ともアウトだ。ギルネスト取り合えず説明させてくれ。」

ギルネストが口元をひきつらせたのが見えた。

そして一気に殺気と共にギルネストの右手が炎に包まれた。

「ギルネスト!無詠唱魔法とか駄目だろ!」

ゼノス様が焦りだしたのがわかった。

「人の婚約者に貴様らは何をやらかして………」

ギルネストの殺気にゼノス様が俺の後ろに隠れた。

「ゼノス!貴様女を盾にして恥ずかしくないのか!」

ゼノス様の行動にさらにギルネストの眉間にシワがよる。

「お前はロゼに攻撃は出来ないからな!取り合えず話を聞け!」

ゼノス様の言葉にコメラとフィンリルさんも俺の後ろに隠れた。

「貴様ら~!息の根を止めてやる。」

俺は仕方なくギルネストに向かってダッシュした。

突然間合いに入ってきた俺に動揺するギルネストは燃え上がる右手が当たらないように右手を上げた。

俺は無防備になったギルネストの右耳を掴むと思いっきりマッサージした。

「痛たたたたた~!」

痛みのせいでギルネストの右手の火が消える。

「「「気持ち良いのに。」」」

3人は羨ましそうにギルネストに向かって言った。

ギルネストは真っ赤になってしまった耳をさすりながら言った。

「どう言う事か説明しろ!」

俺は苦笑いを浮かべて全てを話して聞かせた。



「………ってわけ。」

ギルネストは難しい顔をしたあと言った。

「ロゼ、君はその………異性の裸に叫んだりしないのか?」

「見慣れてる。」

ギルネストは完璧にフリーズした。

「ロゼ!見慣れるってなんだ!」

ゼノス様に肩を掴まれてゆさぶられた。

「だ、だって!運び屋って野郎が多いし、俺男のふりしてたから皆俺なんか気にしないで脱ぎまくるから。………キャーキャー言ってたら女だってバレるじゃんか!」

俺の言葉にゼノス様とギルネストの眉間にシワがよる。

「だから、見慣れた。凝視はしないからセーフ。」

「「アウトだ!」」

ギルネストとゼノス様がハモる。

本当に仲良しだな~。

「ロゼ………少しだけ………サラーシェとして………数日で良いからサラーシェになってくれないか?」

ぐったりとしたギルネストは絞り出すようにそう言った。

「え?無理。」

「友人としての頼みだ。」

こうして、俺は数日間サラーシェになることが決まったのだった。

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