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おままごと

「ロゼル君!また来ちゃった!」

俺は笑顔を作ると振り返った。

「聖女様。今日もお美しい。」

俺はいつも通りにお世辞を言った。

最近聖女は俺の回りをうろついている。

「ロゼル君は私の事好き?」

「はい。」

「じゃあ何番目に?」

年頃の彼女が出来たみたいだ。

「そうですね~。5、6人目でしょいか?」

「………ちなみに一番は?」

俺は拳を握りしめ言った。

「勿論姫様です。」

俺は笑顔を作った。

姫様の愛らしさと言ったら桁違い!

「ちなみに人以外でしたら、この頭の上にいるアルが一番ですがね。」

俺の言葉にアルビノは満足したようにニャ~!っと鳴いてみせた。

「ねこちゃん?姫様とねこちゃんは同じレベルなの?」

「アルの方が上ですよ!」

聖女がどう判断したのかは解らなかったが、聖女はそれで満足したようだった。


聖女が勉強のために連れていかれると、今まで俺の竜に横になって隠れていたゼノス様が起き上がって私を見下ろした。

「ちなみにアルビノの次が姫様で?次は?」

「次?あー、ギルネストとゼノス様は同じぐらいで、3と4次がキリヤかな?で聖女様?聖女様よりフィンリルさんの方が好きだけど。」

「キリヤってあの、お前に嫁にこいって言ってたあいつか?」

「よく覚えてたな!キリヤ優しんだー!」

俺がキリヤの事を話そうとするとゼノス様は俺の口に噛みついた。

「黙れ。他の男の話は聞きたくない。」

ゼノス様は真剣な顔でそう言った。

俺は口を袖で拭った。

「いきなりしないでください。」

「いきなりじゃなきゃ良いのか?」

「いきなりじゃなきゃ、かわせます。」

「意味ねえだろ!」

ゼノス様は俺を見下ろして言った。

「俺はロゼが一番だぞ。」

「俺は違います。」

ゼノス様はため息をついた。

「ロゼ。取り合えずギルネストより俺を好きになれ。」

「無理じゃねえの?おっさん噛みついてくるから降格だ。4番目だな。」

ゼノス様はクスクス笑った。

「それでも4番目なら、もう少しキスさせろ。」

そう言ってゼノス様は俺の口に噛みつこうとした。

俺は鳩尾に拳をねじ込んでやった。

「おっさん。俺はか弱く無いんだぜ!」

脇腹をおさえたゼノス様が膝から崩れる。

「良いパンチもってんじゃねえか………」

「あざーす!」

俺が声を上げるとクスクスと笑い声が聞こえた。

「姫様!」

笑っていたのは姫様で、その後ろにギルネストと王子様まで立っていた。

「ゼノス殺されたいのか?」

ギルネストが殺気だっている。

ゼノス様はゆっくりと立ち上がると言った。

「俺がお前なんかに負けるとでも?」

ゼノス様とギルネストが殺意をにじませはじめる。

「姫様~!今日はお時間宜しいのですか?俺と遊ぶ時間あります?」

俺は姫様の手を握って笑いかけた。

「勿論、ロゼと遊びたくて来たのよ。」

俺は姫様を抱き締めた。

「ヤバイ。可愛い!姫様は神だ!」

俺が叫ぶとゼノス様とギルネストが顔をひきつらせて俺を見た。

「ロゼ!お前男で、誰と結婚したい?正直に答えろ。」

ゼノス様が叫ぶもんだから俺は姫様を抱えたまま考えて言った。

「………キリヤ?」

俺の言葉にゼノス様とギルネストがフリーズした。

「ほら、趣味があって真面目で、可もなく不可もない容姿に堅実で幸せになれそうかも?まあ、今から言ってもキリヤは俺と一緒になろうなんて思わねえだろうけど。」

ゼノス様はさらに怖い顔を作った。

「キリヤってお前を養う気でいたやつじゃねえか?」

「俺が仕事無くなったから面倒見てくれようとするなんて男前だよな!」

俺の言葉にゼノス様は項垂れた。

「………殺すか?」

「キリヤになんかしたら、いくらゼノス様でも容赦しねえよ!」

俺は姫様をはなして頭を撫でながら言った。

「ゼノス様はそんな小さい男じゃねえだろ?」

ゼノス様は俺を後ろから抱え上げると言った。

「やっぱり日給いくらでも出してやるから嫁にこい。」

「ふざけんな!ゼノス様の嫁なんてハードそうで体もたねえよ。」

俺はゼノス様の頭をポンポン撫でてやった。

ゼノス様は納得いかない顔をしていた。

そこで、ギルネストが言った。

「ロゼは俺の所に嫁に来なさい。そこの獣人より大事にしますよ。」

俺は少し考えて言った。

「ギルネストの事は大好きだけど、貴族なんて死んでもなりたくねえ。俺は自由がこんなに楽しいって知っちまったからな!一生一人でも良いから自由でいたいんだ。」

俺はギルネストに笑顔をむけた。

ギルネストもゼノス様と同様に納得いかない顔をしていた。

「ロゼ、私おままごとがしたいのよ。」

姫様の言葉に俺が首を傾げると姫様は可愛く笑って言った。

「ゼノスがお父様ギルネストがお母様で、ロゼはお姉様。お兄様はお兄様。」

王子様はビクリと肩を跳ねさせた。

「駄目?お兄様?」

姫様が首を傾げると王子様は笑顔を作った。

「じゃあ、そうしよう。」

王子様は俺のところまで来ると王子様らしい笑顔を俺にむけた。

「「王子から下心が見えている。」」

お父さんとお母さんは仲良しらしい。

「ロゼさん。よろしくお願いします。」

王子様とよろしくするつもりは無いのだが、姫様のためだから仕方がない。

俺は優雅に微笑むと貴族の女性らしい動きで王子様に頭を下げた。

「こちらこそ宜しくお願い申し上げます。王子様の方が年上でいらっしゃいますから、私も王子様の事をお兄様とお呼び申し上げます。」

ゼノスとギルネストが肩を震わせて笑いをこらえているのが見える。

王子様は苦笑いを浮かべて言った。

「ロゼさんが僕のお嫁さんになる訳ではない。」

「あり得ませんわ!お兄様。」

俺はさらに笑みを深くした。

「お姉様。では私の部屋まで行きましょう。」

姫様に手をひかれて俺は姫様についていくのだった。



なぜか今、姫様付きのメイド様5人に囲まれて居ます。

「ロゼルがまさか、女の子だったなんて!」

「私も貴女にお給金をかなりつぎ込んでしまったわ!」

「女だって言われても指名したのに!」

「むしろ今でも指名したい。」

「ゼノス様が買い取ったって聞いた時は自分の貯金を確認してしまったのよ。」

姫様付きのメイド様は俺の常連の客だった人達だった。

「あ、ありが……がーいででででで。」

ただ今、そんなメイド様たちに締め上げられています。

「ロゼルってば色白い。」

「顔小さい。」

「ウエスト細い。」

「目がぱっちり。」

「化粧でこんなに可愛くなれるのに、勿体無い。」

メイド様ウエスト細いって言うならコルセットは要らないのでは?

「ろ、肋骨が折れる~!」

「「「「「もうちょっとだから我慢なさい!」」」」」

このままここに居たら殺される。

そう思った。


「姫様、完成です!」

メイド様の一人が姫様に報告して、他のメイド様が俺を姫様の前につきだした。

姫様と別室で待っていた奴等が息をのむ音がした。

「ロゼ!綺麗だわ!素敵!」

姫様が可愛く笑ってくれたから俺は頑張ったかいがあった。

「久々のコルセットに声は高くなるし、死にそうなんですが………」

「女は我慢なのよ!」

知ってます。だからこそ、女性を尊敬してるんですよ。

そう説明したいが、声を出すのも辛い。

呆れた顔のアルビノは窓際のカーテンのかなに日向ぼっこをしに行ってしまった。

なんだか悲しくなった。

「お姉様。」

姫様の言葉に思わず癒され笑顔になった。

「ロゼ!やっぱり結婚しよう!」

ゼノス様が叫ぶ。

俺は睨み付けるのが精一杯だった。

「………」

ギルネストは複雑そうな顔をして言った。

「かわらないな。」

そして、軽く笑って見せた。

「いや、変わったか?何処かはよく解らないが。」

ギルネストは、あの頃の俺を唯一知っている男だ。

「胸じゃない……か?……体があの頃とは別の……別の意味で悲鳴を……あげてる。………苦しい。脱ぎたい。」

「ロゼ!頑張って下さいね!淑女はそれで、ダンスもするのですよ。」

姫様の言葉に目眩がした。

「だ、ダンス!死ぬ。」

「大丈夫ですわ!ロゼなら出来ます!」

姫様はニコニコ笑った。

有無を言わせないオーラを姫様が出していた。

その時、ゼノス様がソファーの後ろに隠れた。

そして、ドアをノックする音と同時にドアが開いた。

そこにいたのは聖女だった。

「王子様にギルネスト様もこんなところに居たんですね!」

王子はフリーズ、ギルネストは口元をひきつらせた。

俺はゆっくりと聖女の前に立ちはだかった。

「どちら様でございましょう!」

絶対にバレない自信がある俺は聖女に向かって言った。

「え?貴女は?」

「私はサラーシェ。ラグナーラ侯爵家のサラーシェと申します。」

俺の言葉にギルネストが驚いた顔をした。

「あなた様はどなた様でしょうか?」

「サラーシェ、彼女は異世界から来た聖女様だ。」

ギルネストは俺に合わせる事にしたらしい。

「まあ、聖女様でいらっしゃいましたか!宜しく申し上げます。」

ギルネストはソファーから立ち上がると俺の横に立って俺の肩を抱いた。

「聖女、こいつは自分の婚約者だ。仲良くしてやってくれ。」

婚約者が居ると言って標的から外れる事にしたらしい。

「ギルネスト様の婚約者!」

俺は優雅に微笑むと言った。

「ギルネスト様がご迷惑おかけしていませんか?」

「サラーシェ。」

俺はクスクス笑って見せた。

「ギルネスト様は誰に対してもすぐに怖い顔をなさいますから。知らぬ間に聖女様を困らせているかもしれませんわ。」

ギルネストは俺の言葉に苦笑いを浮かべた。

「サラーシェは俺の事をそう思ってるのか?」

「私はギルネスト様がどんな人間か存じ上げております。どんなに恐ろしい顔をなさっていても、お慕い申しあげておりますわ。」

ギルネストは驚いた顔をして、柔らかく笑った。

「君は変わらないな。」

ギルネストは俺にむかって懐かしむように呟いた。

聖女様に睨まれたのがわかる。

「聖女、すまないがサラーシェは久しぶりに帰ってきたので、報告がてら姫様と王子と話をしなければならない。大事な話なので席を外してくれ。」

ギルネストの言葉に聖女は渋々去っていった。


聖女が居なくなって、張り付けていた笑顔を崩すと俺はソファーにどさりと座って深くため息をついた。

「しんどい。」

「俺は懐かしかったぞ。」

ギルネストはなぜか満足そうだ。

「煩い。二度とやりたくない!」

俺はソファーに横になった。

「行儀が悪くても良い!早く脱ぎたい。姫様~!」

「まだ、おままごとしてないわ。」

姫様にそう言われ苦笑いが浮かんだ。

俺はソファーに座り直し、背筋を伸ばした。

「そうでしたわね。私は姫様の姉の役ですものね。」

俺はその日、姫様の姉を演じきったのだった。

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