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"サラーシェ"ギルネスト目線

自分は本当に面白味のない子供だった。

あの頃、婚約者候補だと言われて会わされた女の子達は皆、自分がする話を退屈そうに聞いていた。

サラーシェに会ったのはそんな婚約者候補達に話をするのが嫌になった頃だった。

「お初にお目にかかります。サラーシェと申します。」

礼儀正しい挨拶に可愛らしい容姿。

動きが何だかぎこちなくて支えようとしたら泣かれた。

理由は簡単で全身アザだらけだったから………

ドレスの袖をたくしあげると彼女は泣きながら見なかったことにしてくれと頼んできた。

彼女を憐れに思った。

彼女は俺の役にもたたない話も聞いてくれた。

実用的な話をすると、なおのこと喜んだ。

彼女は逃げたいのだと直ぐに解った。

だから火のおこしかたとか野宿の仕方とか食べ物の探しかたとか、彼女が逃げ出した時にためになる話をした。

竜の飼いかたを話したのは自分が話したかったからだ。

「ギルネスト様の出してくださるお茶は本当に良い匂いがしますね。」

サラーシェが珍しく自分から話したのはうちのお茶の話だった。

うちのお茶は匂いは良いのだが苦味が強い。

俺は気まぐれにそのお茶で飴玉を作った。

彼女の傷が良くなるように治癒魔法を練り込んで作った飴玉だった。

「サラーシェ!口を開けろ!」

彼女は素直に口を開けた。

俺は彼女の口の中に飴玉を入れてやった。

彼女は驚いた顔の後にへにゃりと笑った。

彼女はつねに笑顔だったが、その時の笑顔で何時もの笑顔は笑顔じゃなかったのだと知った。

「サラーシェ………僕の前では無理に笑わなくて良い。」

自分の言葉に彼女は泣きそうになりながら言った。

「笑顔で居ないと泣いてしまいそうなのです。だからギルネスト様………そんなことを言わないでください。」

サラーシェは無理矢理笑顔をつくった。

彼女のために何か出来ないかと必死で考え出来る事は全てやってやりたい。

「サラーシェの手首には三角があるな。」

「さんかく?」

「ほら、手首に三つの黒子。これを線で繋ぐと三角形だ。」

「三角形。」

彼女は柔らかい笑顔を作った。

サラーシェは自分の前でよく笑うようになっていた。

自分はそんなサラーシェの事を好きだと思うようになった。


そして、直ぐにサラーシェは自分の前から姿を消した。


逃げられたのだ。

自分はそう思った。

彼女は逃げる術を探していた。

だから………逃げたんだ。

自分は汚い人間でサラーシェがこれで幸せになれるかも知れないと思う半面、俺の側に居てほしいかったと言う身勝手な感情に悩まされた。

サラーシェが居なくなって心にポッカリ穴があいたみたいで自分はその穴に知識を詰め込む事で埋めようとした。

自分には魔法が使えたから、必死に魔法の勉強をした。

戦場に行き名を上げ誰からも恐れられる魔法司令官なんて役職をもらう頃、自分と同じように名を上げる兵士がいた。

ゼノス。

「お前は野心があるのか?」

親しくもない獣人に自分から話しかけるなんて初めてだった。

「野心なんてねえよ!そんなもんより欲しいもんがあるんだ!金で買えるなら買ってやる。だからいくらでも金が払えるように俺は名を上げる。単純だろ?」

獣らしい考え方かも知れない。

自分は名を上げればサラーシェが自分に会いに来てくれるかも知れないと思ってしまったからだろうか?

ゼノスはそのまま名を上げ、宰相にまで登り詰めた。

飲み屋で荒れるゼノスを止めに行かされたのもゼノスが宰相になった直後だと思う。

「ゼノス!いい加減にしろ!」

「ギルネスト!俺は無力だ。何も救えない。何も手に入れられない。………あの子を助けられなかった。リン。」

ゼノスが欲しかったものが人間なのだとその時初めて知った。

ゼノスはそれ以上なにも言わなかった。

助けられない悔しさはよく知っている。

サラーシェは今何をしているのだろうか?

自分はそんな時でも彼女の事を思った。



「ゼノス!またお前は城に部外者を勝手に入れるつもりか?」

ゼノスの後ろに隠れた人物。

魔法でそいつの横にテレポートする。

「顔を見せろ!」

うつ向いていた人物が顔を上げた。

「………サラーシェ。」

思わず声がもれた。

「リン!どういう事だ?」

ゼノスの言葉にサラーシェがゼノスの手に入れたいものなのだと解った。

サラーシェは昔の儚さなんて微塵も持ち合わせていなかった。

父親に怯える所は変わっていなかったが。

そこで初めてサラーシェが父親に売られて今まで必死に生きてきたのだと解った。

「あの男がつけた名前なんか二度と呼ぶな。」

ガサツで口も悪くなっているが、彼女からは自由の匂いがした。

自分は同じ人物にまた惹かれている。

サラーシェはロゼルと呼ばれたがったが無理だ。

ロゼ。

サラーシェはもう居ない。

自分は彼女の口にあの頃喜んでくれた飴玉を入れてやる。

あの時と同じ笑顔。

ゼノスになんて渡さない!

自分は彼女の笑顔にそんなことを勝手に誓ったんだ。

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