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プロバビリティ~操る者~  作者: 春夏秋冬
4/5

1-4.得る

 家に鍵をかけ、最寄りの宝くじ売り場へと歩き出した。家から5分ほどの場所に売り場はある。心なしか早足になっていたようで、3分程でついてしまう。自然と心拍数が上がっている。早足によるものか、これから起こるであろう“奇跡”のためなのだろうか。

しかし、軍司にはどちらでも良い。とにかく早く試してみたい。


「よし。」

誰に言うでも無く、自分の心へとつぶやいた。覚悟はついた。驚く準備もできた。後は、一歩を踏み出すだけだ。

軍司は売店へと歩みを進めた。


「すい、すいません。」

気の弱さが出たのか、一言目がかすれ言い直す。


「はい、いらっしゃいませ。」

販売員は笑い皺に目立つ優しそうな、おばちゃんだった。それだけでも気が楽になる。軍司は心の中で息を吐き、自然にしようと努力する。

「あのー、スクラッチありますか?」

「はい、ございますよ。どれにしますか?」

選ばせてもらうつもりだったので、好都合だ。おばちゃんは、棚に並べられた10枚1束になったカードを指さす。


顎に手をあて、目をこらして念じていく。

―――まずは《1等当選確率》から………無いな。よし次だ。

《2等当選確率》は‥‥


「ゆっくり選んでくださいねー。」

軍司の真剣な目つきから、何かを察したのかおばちゃんが一声かけてきたが、軍司には届かない。なぜなら

―――あった。あった!!

《2等当選確率 100%》

一呼吸おいてから、はっきりとおばちゃんを見て

「すいません。右から3番目、上から2番目をください。」

「はい、ちょっと待ってくださいね、2000円になります。」

スクラッチを取り出しながら、値段を言われたが財布に目を向けることはしない。

おばちゃんが指定通りのカードを取り出すか凝視していた。取り出したのを確認してから2000円を取り出す。

「はい、どうも、ありだとうございました。当たりますように。」

いつ聞いてもこのような、おばちゃんの心遣いはうれしいものだが、今回は違う。

―――当たってんだよ、おばちゃん!


軍司は走った。我慢が出来ないのだ。早く結果を知りたい。これで当たっていれば、この能力は本物だ。

家に駆け込み、靴を脱ぎ散らかしながらテーブルへと向かう。息をととのえ、朝から出したままの10円を持ちスクラッチの袋を破る。


「《2等当選確率 100%》は―…。これか!」

一呼吸をおき、なぜか正座に座り直す。目をカッと見開き、一気に行く!

「おりゃー!!!」


きれいに削り終えてから、10円を持った手を高々と掲げ握り拳をつくる。


「勝った…。」


何に勝ったのかよくわからないが、軍司の中では確かな勝利があったようだ。


スクラッチカードは2等に当選していた。





 「うー…。寒い。」

昼を過ぎるあたりでは、半袖で十分な季節になってきたが、まだまだ朝は寒さが残る。

窓を開けたまま寝眠っていれば、寒さで目を覚ます。しかし眉間にしわを寄せていた顔は、自然と笑みに変わる。昨日の事を思い出せば当然だろう。


軍司はあのスクラッチの後、宝くじを連番で購入。宝くじはどれも当選確率は同じだったものの《1等当選確率》の数字を変化させられるか試し、見事に成功。今、テーブルには《1等当選確率 100%》の宝くじが置かれている。連番での購入のため前後賞もいただきだ。

これを思い出しただけで笑いは止まらないのだが、そのあとコンビニでサッカークジを購入。もちろんこれでもプロバビリティを使い、《1等当選確率 100%》にしてある。

まだ結果の出ていないサッカーの試合結果すらも操ったことになる。選手やサポーターには悪いが、「今回限りにする」と、身勝手な約束を心に決める。この能力、プロバビリティは使い方によっては物凄い効果がありそうだ。軍司はプロバビリティについて自分なりの考察をした方が今後のためになると、翌日を使い1日考える時間に使うことにした。


つまり、今日の軍司は病欠を決め込み、職場を休む気でいた。

大金が手に入れば、職場ともおさらばだ。やめる気になったら周りの目を気にして、やすまなくていい。随分と気楽なもんだ。


「電話は入れとくか。」


上司に直接、電話をかけ小言を言われたが、病欠を手に入れた。

朝飯を食べ、ソファーに腰掛けてさっそく考察に入っていく。


―――まずはこの能力と《プロバビリティ》名づけた。

今現在での能力は

1.念じた物の確率がわかる。

2.その確率を変化させることができる

3.プロバビリティの能力は有限、もしくは期限がある可能性がある。


「ん?3番については、プロバビリティで調べてみればいいな。」

考えをまとめるうちに気が付いた。やはり自分の能力をしっかりと認識しておくことは重要である。定期的にプロバビリティについて考察していくことにした軍司は、能力の有限、期限について念じ始める。


「プロダビリティの能力は有限の可能性は?」

独り暮らしの部屋でつぶやくと何とも不気味な姿だが、かまわない。目の前にはお決まりの文字が浮かび上がる。

《プロバビリティの能力が有限の可能性 0%》

「よし!次は…。」

《プロバビリティの能力に期限がある可能性 0%》


「なるほどな。」


これでプロバビリティが無くなる可能性がかなり少なくなった。そう“少なくなった”である。軍司はかなり慎重な性格である。この能力は誰にも知られてはいけない。自分一人のものにしておかなければ、どのように利用されたり騒がれるか分かったものでは無い。現にサッカークッジも一度だけの使用と心に決めているほどだ。

そしてまた軍司は思考の中に潜り込んでいく。



 ―――よし、続けよう。

しかしプロバビリティは最強の能力なんじゃないか。

例えば戦場に行っても死にはしない。なんたって俺には弾なんて当たらないんだからな。そりゃそうだ、《俺に弾の当たる確率 0%》にしてやればいいんだ。そうすれば戦場を縦横無尽に動き回ったって、絶対に死にはしない。

ハハ!素晴らしい能力じゃないか!俺は世界で最強だ!


…いや、待て待て。落ち着け軍司。落ち着くんだ。世界はそんなに単純じゃない。人が知りえないことなんて山ほどあるんだ。ましてはこの俺だ。そう簡単にはいかないさ。

戦場に行っても何も鉄砲の弾だけが飛んでくる訳じゃ無い。爆発物だってあるさ、近距離ではナイフでだって刺される。そんなもんを、いちいち頭の中で確率を“0”にしたって、切がない。

こんな平和な日本でだって、変なことであっさり死んだりするんだ。とりあえず、まずありえないがそんな危ないところへは、プロバビリティがあったって行きたくはない。なるべく目立たないように生きていくことが妥当だろう。


しかしこの能力は不思議だ。いったいなんなんだ?なぜ俺なんだ。

いや、やめよう。考えてもわからないことは、今はいい。今考えるべきは、これからの行動だ。

まず、宝くじなどで資金繰りがうまくいけば、仕事を辞めて都会に出よう。やはり東京がいいだろう。東京には知り合いも少ないし、上手く紛れて生活していけそうだ。

家を構えたら、株のデイトレイドでもして日銭を稼ぎ、安定したらまたその時、先について考えていこう。


今後の方針も決まり、コーヒーを飲みながら一息ついていたが、昨日から気になっていることを思い出す。

「時間もあるし、試してみるか。どうせうまくいかないだろうからな。」

軍司は念じる。

《俺以外に能力をもった人間はいるか》


「いねーよな…。」

念じてみて、半ばどうでもよくなってきたことだが一様は気になる。そして軍司の前に文字が浮かび始める。

《軍司以外に能力を持った人間がいる可能性 100%》

軍司は衝撃のあまり、言葉を失った。


ご観覧ありがとうございます。

誤字脱字、感想、ご意見などありましたらよろしくお願いします。

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