追憶・其は誰が為の夢を見る
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「私は……一体何を成せたのか」
彼は、呟いた。
誰が聞くでもない、独り言だった。
「私は、何を成せたのか」
もう一度、繰り返す。
答えなど分かり切っていた。けれど、彼は分からないふりをしていた。
「私は――」
何度自問しても、答えは決まっているのに。それでも彼は自分自身に問い続けた。
広く、威厳に満ちたその場所は、多くの者達で満ちている。しかし、それにもかかわらず、彼は独りだった。
彼を敬う者、愛する者、利用しようとする者。数々の想いと思惑の入り乱れたその場所で、安息など得られるはずもなかったのだ。
今にも逃げ出したい思いに駆られながも、彼はそこにいた。
「シウレスカ様」
目の前で跪く男が、彼の名を呼んだ。彼はそれを受け立ち上がる。
誰もが跪き整然とするその場所で、彼は誰よりも高い位置からその光景を見下ろし、声を張り上げた。
「臣民達よ」
――逃げるわけにはいかないのだ。
たとえいくつもの躯の山を築いたとしても、白金の玉座が崩れ落ちても。
私は――
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