第七話 森林迷子
ある日の事である。源は友人に呼ばれて、山の近くにある大きな公園で、昆虫採集を行っていた。と言っても、夏休みの前に参加することが決まった「神司部」の活動ではない。 彼の友人が一緒である。ただし違う学校の生徒であるが。
「おーい、こっち、こっち!」
彼を昆虫採集に誘った「高城博明」は、右手に補虫網、左手に大きな虫かごを持った状態で、補虫網を振り回して源を呼んでいる。
「はいはい、今行くよ。」
源も同じように、右手に補虫網、左手に虫かご、頭に麦わら帽子、服のポケットに聖装のボールペンを装備して、彼の後を追っている。
「と言うか大丈夫なのか?さっきから人の気配が無いのだが?」
源はこう博明に訊いた。
「人の気配がある場所に、珍しい虫はいないよ。こういう場所にこそ、普通じゃ目にかかれない大型の虫が居るんだよ。」
「いわゆる、カブトムシとかクワガタとか?」
博明の答えに、源はさらに訊いた。
ちなみに、なぜ源が彼と一緒に虫取りに言っているかと言うと、それには理由がある。今朝の事である、
「源、虫取りに行こうぜ!!」
と、早朝五時ごろに博明本人から、携帯電話にメールでコール。彼自身としては、朝の七時から行きたかったようだが、源が嫌がったので、妥協して三時間後の十時から行くことになったのだ。
「と言うか、ちゃんと採れる算段はあるのか?」
源がこう訊くと、博明はこう言った。
「昨日のうちに罠は仕掛けたから、それを見に行くだけだよ。」
彼が言うには、昨夜こっそり今登っている山に登り、適当な木を複数見つけて、自身だけが知る秘密の割合で調合した人口樹液を塗ったらしい。
「と言うか、良い虫は夜中だけ起きて、今は熟睡してるんじゃないか?」
源はこう言って博明の後を追って行った。しかし、一歩を踏み出した瞬間である。
「って?あれ?」
源は足元が、ヤケにフワフワしている事に気が付いた。
「ええぇぇぇぇ!!!!」
そして、自分の足元に何も無い事に気が付いた。
「まじかよー!!」
源はこう叫びながら、崖の下に落ちて行った。
「え?なにぃ!!?」
先導していた博明は、突然の事態に驚いた。そして、助けを呼ぶために、すぐさま下山した。
一方、崖から落ちた源は、しばらく後に聖獣たちの呼びかけで目覚めた。
「はいはい、起きて。」
ドラグーンの声が精神感応で聞こえた瞬間、源は先ほど起こったことを思い出して、皆に訊いた。
「っていうか、ここはあの世じゃないよね?」
「開口一発目のセリフがそれですか?」
源の言葉に、フェニックスは呆れて溜息混じりにこう言うと、
「ご安心を、死んではいませんよ。俺たちが常にストックしている霊力を逆流させて、源の心臓を動き続けさせていた。」
と、源に告げた。
ここで源は、以前より気になっていた事を訊いた、
「そういえばさ、前々から気になっていたんだけど、度々話に出てくる霊力って何?」
この問いには、夏休み前の戦いで源の仲間になった聖獣「ステゴサウルス・Jack」が答えた。
「霊力って言うは俺たち聖獣にとって、人間でいう所の食物や水、空気にあたる、生命活動を維持しあらゆる行動を行うためのエネルギー源だ。この世界に存在するもので、おおよそ霊力を発しない物は無い。人間のような生命体の場合、霊力は常に心臓の鼓動と共に生成されている。」
「そんでもって、聖獣は存在を保つために常にその霊力を摂取している。」
エレクトードが追加で説明した後、重要なことだと言って、こう源に説明した。
「いいか、気を付けるべきなのは、聖獣と言うのは兆候なしで人間を殺せる事だ。さっきも説明した通り、お前の心臓を霊力で動かしたように、人間が活動するにも霊力は必要なる。言うなれば、食物摂取で得るエネルギーで体を動かすなら、感情を動かすエネルギーが霊力だ。そして、聖獣を多く使役していると、それなりに霊力の消耗も激しくなる。」
「要するに、聖獣をそれほど沢山使役するな、ってこと?」
源がこう訊くと、
「まあ、一昔前ならそう言っただろうな。お前はすでに五体聖獣を使役している。霊力切れで死ぬのは時間の問題。だけどな、お前はその問題を解消する物を持っている。」
エレクトードはこう言って、自身の力でボールペンをブルブル震えさせた。
「聖装は聖獣を収納すると同時に、人間を始めとする生物が大気中に放出している霊力を吸収し続け、俺たちに与える効果がある。少なくともお前がこれを持ち続ける限り、最大十体までの聖獣を使役可能だ。」
すると、今まで話に参加しなかったジェットシャークが言った。
「それよりも、早くここから出ないか?ここは霊力にあふれて、居る分には気分が良いが。長居する必要は無いだろう。」
そして、主の霊力消耗を避けるためだと言って、聖獣たちは空気中の霊力だけで実体化し、周りを見回していると、小柄な少女がこちらを見ているのが見えた。薄い緑色の髪と、小柄ながら出る所は出ている体つきが特徴で、彼女は警戒しているようで、陰でこっそり見ている。
「あ、そこの君!」
フェニックスが呼び止めようとしたが、少女はそれより早く、地面に潜ってその場から居なくなってしまった。
「あら、地面に潜って行った。」
皆がその場を見に行くと、そこには掘られたと言うより、生えていた木をくり抜いたように綺麗な穴が開いていた。
「この穴は?」
「ああ、間違えない。」
聖獣たちは、揃ってこう言った。
「あの娘、植物族の聖獣だ。」
そして、一人と五体で、しばらく森の中を歩いた。
「しかし、近所の山の中にこんな空間があったなんて。」
源が周りを見回しながら言った。生い茂る木々の葉は、光をしっかり遮断しているが、それでも必要最低限の温もりは損なわない。様々な草が生えそろう地面も柔らかくて、歩くのに問題は無い。
「いや、ここは人間界じゃない。言うなれば、人間界と死者の世界の狭間。言うなれば、三途の川の直前みたいなもんだ。」
すると、ジェットシャークはこう言った。
「死者と人間の世界の狭間?」
言葉の意味が良く分からない源が訊き返すと、
「簡単に言うところ、聖獣の世界と言うわけだ。」
フェニックスがこう説明した。
その後、しばらく歩き続けると、
「お、丁度いいや、町があるな。」
源は前を見てこう言った。そこには、木のような形状の建物が数多く立ち並ぶ光景が広がっていた。
そして中央には、RPGゲーム等に出てくる「世界樹」のような巨大な木が生えている。
「少なくとも、ここに付いての情報は手に入るだろう。」
エレクトードもこう言ったので、皆はその町に向かった。
一方その頃、源たちが見た巨大な木の中では、
「そうですか、この場所に人間が。」
木の中にあるとあるスペース、玉座に座る長い緑髪の美女がおり、彼女は先ほど源たちが見た少女から、この場所に人間が来ていると言う情報を聞いていた。
「とりあえず、目的を聞く必要がありますね。一旦ここまで来てもらいましょう。」
女性がこう言うと、少女はこう言った。
「御意にございます。ラフレシア様。」
「はい寄ってらっしゃい、新鮮な果物が入ってるよ!!」
「そしてこちらは珍しい食用昆虫、今ならお買い得のサービス価格!!」
町にやって来た源たちは、市場と思われる場所にやって来た。そこでは、動物や恐竜、妖精の姿を取る様々な聖獣が、様々な物を売っている。人間界でも見られるありふれた物から、人間界に居ては絶対に見られない珍しい物まで、品ぞろえは大型デパート並みに豊富である。
「聖獣も一端に町を持ってるんだな。」
源が感心しながら周りを見回すと、
「まあ、人間的に言う有史以前には、聖獣が人間の文明を発展させるのに様々な形で手を貸したんだ。これくらいは簡単だよ。」
フェニックスはこう言った。
「とりあえず、情報を集めたほうが良いな。」
一方のエレクトードは、適当な露店の店主に、この場所の情報を訊こうとした。
しかし、それより前に、
「すいません、これいくらですか?」
エレクトードを除くメンバー全員が、とある露店の商品を見て、そこの店主にこう訊いた。
「早速か?」
エレクトードは若干呆れながらも、そっちに行った。
「これかい?どれも300円だよ。」
店主である、女性の姿をした妖精型聖獣は、店先に並べられている商品を指差しながら言った。そこには、色とりどりの花を組み合わせて作ったと思われる、ペンダントが複数あった。
「となると、人数分で1800円か。ここって日本の円は使える?」
源が店主にこう訊くと、やって来たエレクトードは、
「と言うか、それ以前に金はあるのか?」
と、訊いた。
「ああ、3000円ある。」
と、源が答えると、
「まあ、ここには世界中から色んな部族、属性の聖獣が集まるから、一般世間で金と認められていれば使えるよ。ただし、クレジットは基本無効だからね。」
様子を見ていた店主の聖獣はこう言った。
「じゃあ、六つくださいな。」
と言う事で、源は財布を取り出すと2000円を取り出し、それを店主の聖獣に渡した。
「毎度、それじゃあ好きなのを6つ持って行きなよ。」
2000円を受け取り、お釣りの200円を渡した店主の聖獣が、こう言った瞬間である。
「おらおら!!どきなどきな!!」
どこからか、いかにもな効果音と一緒に、どすどすと何かが走って来た。
「なんだ?」
源たちがこう言うと、店主の聖獣はこう言った。
「ああ、奴らは月に一度のペースでやって来る、聖獣暴走族のディノニクスズだよ。」
「何それ?自分の足で走って暴走族気取り?」
源が思わずこう叫ぶと、
「ああ?!なんか文句あるのか?!!」
訊いていたのか、ディノニクスズの一体がこう言った。ちなみに、ディノニクスズの名前の由来は、構成員が全員「ディノニクス・walker」と呼ばれる、恐竜族の聖獣だからだと言う。
「というか、普通暴走族は何かに乗って暴走する者でしょう。普通に自分の足で走るのは、その辺の格闘技の道場とか、警備会社のする事じゃん。」
源がこう言うと、連中の頭と思われるディノニクス・walkerが言った。
「な、お前、なんで俺たちが普段は警備会社をしてるって知ってる?」
「お前ら警備会社なの?!」
その場にいる聖獣たちが驚くと、源は彼らに言った。
「なんで警備会社が暴走行為をしてるの?」
「お前には関係無いだろ!!」
ディノニクスズの構成員の一人がこう言うと、
「はいはい、喧嘩している場合じゃ無いでしょう。行きますよ。」
ドラグーン達が両者の間に立って、事態の収拾を図った。すると、どこからか何かが走って来る音が聞こえた。
「何だ?」
源と彼の聖獣たちが、その方向を見ると、何故かディノニクスズは、
「それじゃあ、お気をつけて!!」
と、言い残し、その場を離れて行った。
「あいつら?どうしたんだ?」
皆がこう思っていると、何故か他の聖獣たちも、どこかに隠れ始めた。
「もしかしたら、ディノニクスズより上位に立つ暴走族が来るのか?」
エレメントトードがこう言った瞬間である、源の足元から何かが暴れるような激しい騒音が響き、地面が割れて巨大な芽が現れ、人間の少女の姿を取った。源たちの居る場所に走って来たのは植物族の聖獣で、途中から地面の中を移動してきたようである。
「何者だ!!」
源を庇いながら、ステゴサウルス・Jackが訊くと、
「な、君は?」
フェニックスは驚いた。その聖獣は、先ほど彼らがこの場所に入り込んだ時、一番最初に見た聖獣だったからだ。
「と言うか、なんで地中から?」
先ほどの移動と、今回の移動を含めて、源が疑問を口にすると、エレクトードは説明した。
「植物と言うのは地面から生えているだろう。植物族の聖獣はその特性を利用して、地中に根を張り巡らせる要領で、地中を移動出来るんだ。」
「そういう事です。」
彼らの前に現れた植物族聖獣の少女は、エレクトードの言葉を肯定すると、彼らにこう告げた。
「私はレイラ、あなた方をお迎えに参りました。植物女皇ラフレシア様がお待ちです。」
「植物女皇ラフレシア?!じゃあここは、聖獣の森か?!」
レイラの言葉を聞くや否や、源と一緒に居る聖獣たちは驚いた。
「ラフレシア?世界一デカい花の名前?」
何の事か分からない源が、聖獣に訊くと、
「前に話しただろう、聖獣王へ至るための手がかりである八つの部族の皇と、四体の聖獣の事。ラフレシアは現在の植物族の女皇の名前で、聖獣の森と言う場所に引きこもって、ロクに出てこないんだが、まさかここがその聖獣の森だったとはな。」
ジェットシャークが、説明を行った。
「それなら、お言葉に甘えて案内してもらおう。出口の場所も教えてくれるはずだし。」
説明を聞いた源はこう提案し、レイラと名乗る植物族の聖獣に付いて行く事にした。
そして一行は、街に入る前に見た、巨大な樹へとやって来た。表面は樹のようだが、中は一端のビルのような構造になっており、様々な高さに足場や階段が備え付けられている。
「女皇の居る場所だから、国会みたいな場所を考えてたけど、むしろ六本木ヒルズに近いんだね。」
源が周りを見回しながら呟くと、レイラは皆に言った。
「ラフレシア様は最上階に居られます。こちらへ、最上階には特殊な方法でしか行けません。」
皆を先導するレイラは、エレベーターの役割を果たすのだろう蔦の生えたスペースを通り過ぎ、一本の蔦の前にやって来た。
「これは?」
「ラフレシア様への部屋にのみ伸びる蔦です。これに掴まって、最上階へ登ります。」
源の質問にレイラが答えると、どこからか如雨露を取り出して、蔦の一番下にしがみ付いて、皆に言った。
「伸ばしますから、上の方に掴まっていて下さい。」
なので、一番上に源、その下にエレクトード、その下にドラグーンがしがみ付いた。ステゴサウルス・Jackは蔦にしがみ付けないので、一旦聖装の中に戻り、フェニックスとジェットシャークには飛行能力があるので、自分の力で飛んでいく事になった。
「それでは行きます。そちらの二名も、遅れずに付いて来てください。」
「冗談、エレベツタに追いつくなんて無理だから。」
レイラの一言に答えが返って来たところで、レイラは如雨露で水を垂らした。たった一滴であるが、水を浴びた蔦「エレベツタ」は高速でぐんぐん伸びて行った。
「成程、だからエレベツタか。」
高速で伸びていくエレベツタに驚きを見せながら、源は言った。エレベツタとは、人間界では見る事の出来ない特殊な植物で、特殊な溶液を混ぜた水を一滴垂らすことで、どこまでも高速で伸びる能力があるのだ。訊く所によると、ここには人間の文明に適しなかった植物が多く存在しているらしく、今しがみ付いているエレベツタも、文明の中に適応出来なかった植物の一つなのだと言う。
そして、グングン伸びていくエレベツタを追って、フェニックスとジェットシャークも飛んで行った。
蔦が伸びる事数十秒後、エレベツタはある階層で成長を停止した。
「着きましたよ。」
レイラがこう言って、蔦が離れると、同じく蔦にしがみ付いていた源やドラグーン、エレクトードも蔦から離れた。すると、エレベツタはみるみる内に萎れていき、縮んでいった。
「何これ?」
源が訊くと、レイラは答えた。
「何とは?エレベツタは指定した場所まで伸びたら、自然に縮んで次に備える。常識です。」
彼女はこう言っているが、源にとって聖獣の世界の事象と言うのは、何をとっても非常識であるのだ。彼も聖獣五体持ちの神司として、全てとは言わずともなるべく許容しようと考えているが、それでも難しい物は多く存在している。
一方のレイラは、源の考えている事は関係ないと言わんばかりに先行し、ある場所の扉の前にやって来た。
「こちらが、植物女皇ラフレシア様の居室です。」
レイラはこう言うと、扉を三回軽く叩いた。
「どうぞ。」
しばらくすると、中から女性の声で返事が聞こえたので、レイラは扉を開けると、
「どうぞ。」
と言って、源たちを部屋に招き入れた。
部屋に入ると、源たちは揃って驚いた。聖獣たちは、初めて名前に「皇」と入った聖獣の暮らす場所に入ったと言う感動で。源は、またもや常識を外れた光景に、度肝を抜かれたのだ。
その部屋の中は葉脈のような模様で覆われており、その脈は何かを運んでいるのか、定期的に脈打っている。一面緑色の壁と床で覆われたその部屋の中央には、玉座と思われる場所があり、そこには、
「まずはようこそ、聖獣の森へ、と申しておきましょう。」
青々と茂る植物を思わせる緑の長髪と、至る所に植物を思わせる模様の付いた和服を身に着けた美しい女性が居た。
「あの人?と言うか聖獣が?」
源がこう言うと、レイラが言った。
「そうです。こちらが聖獣の森の管理者にして、この世全ての植物を司りし植物族聖獣の女皇。植物女皇ラフレシア様です。」
「うわぁ、初めて見たけど、これは…」
源の連れてきた聖獣たちが言葉を失っていると、ラフレシアは優しげな笑みを浮かべながら、
「では、来たわけですし、早速戦りますか?」
武器に使っているのだろう、腰に差した刀「ノイバラ」に手をやり、物凄く物騒な事を訊いた、
「やりませんよ!!」
源はすぐさま、大声でこう返した。
「そうですか、神司の方は大体、私の存在を知るや否や、勝ち目がなくとも戦いを挑んでくる者ですから。てっきり皆様方も、」
ラフレシアが意外そうに言うと、源はこう言った。
「水の始祖にまったく歯が立たない状態で、勝てる相手じゃない。これくらいは理解できます。」
そんな源の言う事を聞いたラフレシアは、
(以外ですね、今までそんな事を言う神司は居なかったと言うのに)
と、思った。すると、レイラが口を開いた。
「ラフレシア様、いくら相手が神司でも、いきなり戦う等と言う事はおやめ下さい。」
「そう?」
ラフレシアがこう言うと、源はこう言った。
「自分らに戦う意志は有りません。後、一刻も早くここを出たいんですけど、出口はどこですか?」
すると、ラフレシアはこう訊いた。
「出口?貴方は自らここに入って来たのでは?」
「はい?」
源は驚き、何があったのかを改めて思い出した。
「確か、昆虫採集に来て、崖から落ちて、それで気が付いたらここに…」
「その過程で、不思議な感覚に囚われた瞬間は有りませんか?」
源の呟きに反応したラフレシアがこう訊くと、
「不思議な感覚、そういえば、落ちるときに何かの木の傍を通った瞬間、意識が飛んだ気が。」
源は落ちた時の事を思い出し、こう言った。
「成程な、その木がここの入り口に繋がっていたと言う事か。」
エレクトードが納得すると、ラフレシアは言った。
「私としましても、来る者は拒まず、去る者は負わない主義です。レイラに案内させますから、くつろぐなり帰るなり、好きに過ごして下さい。今は…」
その瞬間である、突然部屋に大きな衝撃が走った。地震では無く、何か固い物が凄い速度で激突したような。
「な、何ですか?」
源が訊くと、ラフレシアは言った。
「なんてこと、こんなタイミングで奴らが来るなんて。」
頭を抱える彼女が言うには、最近この森を襲撃してくる聖獣の集団が居て、その攻撃による影響が、今の衝撃であると言う。