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聖獣王伝説  作者: 超人カットマン
第五章
53/55

第三十話 本戦前夜

 夏休みが終了する少し前の事である。綾小路源は松井祐介、三藤直葉、名倉小雪と共にアリソンと出会い、更にはポラリスと小競り合いを起こすも、それを何とか蹴散らすことに成功する。

 アリソンと別れた後、源は祐介達とも別れ、途中で合流した姉と帰宅したのだが、そこには東京に教師として単身赴任している父親「綾小路猛」が帰って来ており、更にはその直後、驚くことが起こった。猛は少しの間家を留守にしたのだが、戻って来るとその隣に、源の姉である「綾小路優」を幼くした印象を持たせる容姿の少女が居たのだ。

 真に驚くべきは、彼女の存在そのものでは無く、猛のした説明である、

「この娘は遠縁の親戚の所に養女に出ていたんだけど、しばらく前にそこの夫妻が海外に単身赴任する事になって、しばらく家に居る事になったんだ。名前は綾小路恵、実感はわかないと思うけど、実はお前と彼女は双子なんだ。」

 源は父親の説明を聞き、

(フタゴ、二古、二子玉川?)

 頭の中で混乱しながらも、何とか漢字の変化に成功した。「双子」と、

「っていうか、僕に妹が居たの?」

 源がこう言うと、目の前の少女「綾小路恵」は口を開いた。

「ちょっと! 誰がアンタの妹よ!!」

 姉に似て穏やかそうな印象があるが、実際はかなり気の強い性格のようで、源にこう言い放つと、自分の部屋に使う部屋を探しに行くのか、ドカドカと二階に上がって行った。





 その後、手を洗いうがいをした源が二階に上がって行くと、階段の上で何故か恵が待って行った。

「何?」

 源がこう呟くと、恵は開口一発、こう言った。

「代わって。」

「は?」

 源が訊き返すと、恵は更に続けた、

「だから、貴方部屋代わってって事!!」

 この一言で、源は理解した。彼女は部屋を探すも気に入る部屋が見つからず、源の部屋の位置取りを見てそこを気に入った。その為、源に代われと言っているのだろう。

「何でさ、他にも部屋はあるだろう。」

 自分自身も模様替えと言う大掛かりな仕事をしたくは無いので、源はこう言い返すと、

「何よ?! 私の言う事が訊けないの?!」

 と、恵は言い返してきた。見た目こそ姉とそっくりだが、性格は正反対なんだ、と源が思っていると、騒ぎを聞きつけたのか母親の美里が上がってきて、恵にこう訊いた。

「話は聞いたけど、何で源に部屋の位置を変わってほしいの?」

 美里が訊くと、恵は少し黙りこみ、

「それは、その……」

 こう呟くと、源に向けてこう言った、

「こうなったら、どちらがあの部屋を使えるか、その権利をかけて勝負よ!!」

「はぁ?!」

 いきなり勝負をしようと言いだす恵に、源が驚きの声を上げる中、美里はため息をつきながら言った。

「良いけど、家を滅茶苦茶にしないでね。」

 どうやら、兄妹(?) の喧嘩を止めるつもりは毛頭無いらしい。





 と言う事で、源と恵は賭けの対象である、源の部屋の中へと入った。

「勝負は良いけど? 何で勝負するんだ?」

 源がこう訊くと、彼の後に部屋に入った恵は、部屋の扉を閉じるとある物を取り出し、源に言った。

「構えて。」

「はい?」

 恵の言葉に、源は驚いた。彼女が取り出し、彼に向けているのは、マシンガンを小型化し片手持ち出来るようにした形状のハンドガンである。

 源はこの時、背中合わせになって数歩歩き、振り返りざまに互いに銃を放つと言う、西部劇の決闘を連想したが、恵にはそのつもりは無かったようで、

「照覧あれ!!」

 彼女は一言こう叫んだ。その結果、今まで源の部屋だった場所はコロッセオを思わせる景色へと変貌した。客席に当たる場所には様々な姿の聖獣や神が居り、客席より奥には天秤を思わせる飾りがあり、観客たちの歓声や熱気に充てられてグラグラと揺れている。

「ここは、決闘空間?」

 たった一度だけであるが、神司同士の戦いで使われるこの決闘空間へ訪れた事のある源は、周囲を見回しながらこう言った。対する恵は、

「そうよ。神司が何かを賭けて戦うなら、ここ以外に場所は無いでしょう。」

 と、源に言った。

 源は、ポケットに入れておいたボールペンを、聖装である大剣にすると、それを構えて言った。

「だったら最初にそう言って………っていうか、神司?」

 彼にとっては光景が変わる事より、恵みが神司であった事の方が驚きであった。だが恵は、事前に何等かの形で源が神司であると言う事実を知っていたためか、彼の驚きにはあまり干渉せず、自身の聖獣を召喚した。ただし源や彼の仲間たちのように、決め台詞を言うことなく自身の聖装であるハンドガンのカートリッジ部分にカードを差し込むと、

「来て。」

ただ一言こう言って、ハンドガンを明後日の方向に放った。すると、放たれた弾丸は一定の距離を飛ぶと肥大化し、その中から竜の翼とも虫の翅にも見える翼を持ち、尾の先に竜の頭のような部位を持つ、三つの首を持つ巨大な狼が登場し、決闘空間内を円を描くように飛翔し、恵の前に降り立った。

その聖獣の姿を見た源は、

「ケルベロス?」

 と言った。すると、

「ほう、私のこの姿を知っているとは、神司としては結構やる性質じゃな?」

 そもそも聖獣には一部の例外を除き性別は存在しないが、精神的な意味ではメスなのか、ケルベロスは大人びた女性を思わせる低い声でこう言った。恵は、

「貴方の姿を見て、ケルベロスを連想しない方がおかしい。」

 と、ケルベロスに言ったが、当人は彼女の言う事を全く気にしていないのか、源にこう言った。

「その方も早う聖獣を出さないか?」

 対する源は聖装を構えると、自分はどの聖獣で行こうか、と考えた。ドラグーンとヘルニアは、廃工場地帯でアリソンと出会い、更にポラリスと小競り合いを起こした時に戦闘に出しているので、残っているフェニックス、エレクトード、ジェットシャーク、ステゴサウルス・Jackで挑もうと考えた。

 だが、

「源、俺が行く!!」

 聖装の中に居るドラグーンが、出たいと言い出してきた。

「いや、もう既に一戦やらかしたばかりだろ。」

 源がこう言い返すと、ドラグーンは、

「確かにそうだけど、出たとはいえ二回しか技を出してないうえに、ダメージも受けてないからどうにも消化不良気味。滾って仕方無いんだよ。」

 と、源に言った。なので、

「分かったよ。」

 源はこう言うと、ドラグーンのカードを取り出すと、聖装の鍔に付いているスロットの中に差し込んだ。

「湧き上がれ、変幻自在怒涛の剣!! 水龍騎ドラグーン、召喚!!」

 源がこう叫ぶと、周囲から水のエネルギーが収束してトカゲのような生物の形となって固まり、源の発する霊力を受けて全身に鎧のような鱗を持ち、尾の先に魚の鰭のような形状の斧を、両腕に十本の剣が仕込まれた手甲を装備した、翼を持たない青いドラゴン族聖獣「ドラグーン」となった。

「流切怒涛の剣勢、水龍騎ドラグーン、推して参る!!」

 ドラグーンは登場すると、こう叫んで構えを取った。

 こうして、お互いの聖獣が出てフィールド上で睨みをきかせるようになった事で、このタイプの決闘空間に出没し、審判兼立会人を務める白鳥を思わせる装飾を全身に持つ人型の聖獣「リブラ・スワン」は、こう宣言した。

「それでは、聖獣バトル開始!!」





 聖獣バトルの始まりが合図され、最初に動いたのはドラグーンであった。

「前進!!」

 源がこう指示を出すと、

「応!!」

 ドラグーンは一言返事で前へと飛び出し、右の手甲より剣を解放して相手である恵の聖獣、ケルベロスへと斬りかかった。対するケルベロスは、大きくジャンプしてそれを回避すると、三つある首に生えた鋭い牙で、ドラグーンに噛みつこうとした。ドラグーンはそれを尾の先端の斧で迎撃すると、互いに距離を取った。

「あの野郎。」

 距離を取ったドラグーンと、

「あ奴。」

 同じく距離を取ったケルベロスは、互いを見ながらこう呟いた。

「強い!!」

 互いを強いと認識しているのは、神司の方も同じなようで、

(一切の指示を出さないであそこまでの動きをするなんて。)

 源は、恵とケルベロスの阿吽の呼吸に感心し、

(迎撃されるリスクがあると言うのに、あれほど迷いなく突っ込んでくるなんて。)

 恵は、ドラグーンが源にかける強い信頼に感心した。それと同時に、綾小路源と言う神司が、紛れもない強敵であると判断すると、ポケットから二枚の技カードを取り出し、それを聖装のカートリッジ部分、所謂スロットへと差し込んだ。

「カゲロウ・ハウリング&ハウリング・ブリザード!!」

 聖装の読み取った技カードの指令を受け取ったケルベロスは、中央の首が高温のエネルギーを秘めた咆哮「カゲロウ・ハウリング」、左右の首が氷点下を下回る冷たいエネルギーを秘めた咆哮「ハウリング・ブリザード」を放った。二つの咆哮は放たれると同時に一つとなると、熱と冷気を併せ持つ衝撃波となってドラグーンに迫った。

「ま、拙い!!」

 熱と冷気を同時に受けるとどうなるか、その事を分かっている故か、ドラグーンは思わずたじろいた。一方の源は、手元にある技カードに目を向けると、ドラグーンにこう指示を出した。

「ドラグーン、下を向け!!」

「?」

 ドラグーンは源の指示に驚き、自分の足元を見た。そこにあるのは、地面以外の何物でもない。

 一方の源は、手元にある技カードをスロットに差し込んだ。

「ドラグーンハイドロレーザー!!」

 源が技名を叫ぶと、ドラグーンは口の中に水のエネルギーをため込み、勢いよく吐き出した。この時、ドラグーンは下を向いていたため、ドラグーンハイドロレーザーは地面に命中し、その勢いに乗ってドラグーンは上空へと吹っ飛んだ。

 だが、これのおかげで相手の技を回避できたので、その点については良かったと言えるだろう。更には、吹っ飛んだ拍子にケルベロスの真上を取る事も出来た。

「ほう、相手の技を自分の技を使って回避か。あ奴かなりやりおるのぉ。」

 ケルベロスは、源の判断によってドラグーンの行った事を見てこう言うと、

「感心している場合じゃない! 真上を取られたのよ。」

 恵はケルベロスにこう言った。ケルベロスはその体の形状故に、真上からの攻撃に弱いのである。

「いっけぇ!! もう一発ドラグーンハイドロレーザー!!」

 源がこう叫ぶと、上空のドラグーンはもう一度口に水のエネルギーを集中させると、今度はケルベロス目がけてそれを放った。ドラグーンの口から放たれた激しい水流は、ケルベロスに命中するや否や、激しいエネルギーの爆発を起こし、周囲を水蒸気の煙で覆い尽くした。





「よし、決まった!!」

 水蒸気が辺りを覆う中、ドラグーンが元いた場所に着地するところを見て、源はこう言った。だが、突如何かが風を切るような音が響くと、何かがドラグーンに激突した。

「痛!!」

 ドラグーンが驚くと、今度は先ほど違う方向から風を切る音が響いた。

「くっ!!」

 続いて放たれた一撃は何とか回避したが、その時に感じた風圧は、ある事を明らかにした。この場に聖獣が何体か居る事と、その聖獣は物凄く素早く動くと言う事を。

「ここが決闘空間であることを考えれば、恵の聖獣で有る事は間違えない。でも、一体どこから?」

 源が辺りを見回しながらこう呟き、フェニックスの技である「ウィンフレア」で水蒸気の煙を吹き飛ばそうか、と考えた。しかしそれより前に、どこからか虫の翅が動くような音が響くと、強風が吹きすさび煙を跡形もなく吹き飛ばした。

「高速移動の次は風? 今度は一体何が?」

 源とドラグーンが、晴れてゆく煙の向こう側に目を凝らすと、そこには当然であるが健在の恵と、三匹の巨大な狼と、尾の先が竜の頭を思わせる形状になった、巨大な蜻蛉のような聖獣が居た。

「狼型聖獣、黒一匹に白二匹、それと蜻蛉か?」

 その布陣を見たドラグーンがこう呟くと、源は聖装の鑑定機能を用いて、相手の聖獣が何者であるのかを調べた。

「白い狼型聖獣の内、一体の名前はアングルボザ、獣族の氷、鋼属性。戦闘力レベルは5000。」

 まずは、恵みの目の前に居る、三匹の中でも一際大きい狼型聖獣「アングルボザ」のことをドラグーンに紹介すると、続けて他の聖獣も紹介した。

「もう一匹の白くて小さめなのがフェンリル、氷、風、大地属性。後はアングルボザと同じく獣族で戦闘力レベル5000。黒い中くらいの大きさのがロキ、炎、大地、鋼属性。こいつも同じく獣族の戦闘力レベル5000。んで、最後の蜻蛉みたいなのがフライングドレイク、昆虫族で風、大地属性、戦闘力レベルは3000。」

 こうして、源は聖獣の紹介を終えると、ある事に気が付いた。何故聖獣が四体も一度に出てきているのか、と。その事を源に代わり、

「ちょっとおい!! 何でそっちは四体も聖獣を出しているんだよ!!」

 と、ドラグーンが訊いた。

「それは……」

 対する恵は一言こう言うと、パチンと指を鳴らした。すると、アングルボザ、フェンリル、ロキ、フライングドレイクは光に包まれて一つになり、背中に翼、尾の先に竜の頭のような部位、三つの首を持つ聖獣、ケルベロスへと変化した。

「あ、彼奴融合してやがった!!」

 ドラグーンが一連の動きに驚くと、源はこう言った。

「なるほどね、それならあの時の複合技とその威力も納得だ。」

 これは源が誰も見ていない所で調べていた事なのだが、通常の聖獣と言うのは、複数の属性を持っていたとしても、二つ以上の属性の技を一度に出す事は出来ないのである。だが、融合した聖獣は一体とカウントされる代わりに、精神が複数体分存在するので、該当する属性を持った聖獣が融合に参加していれば、技を一度に二つ以上出せるのである。

 先ほどケルベロスが放った氷と炎属性の技の連携も、普通なら両者が互いの性質を打ち消し合い、プラスマイナスが限りなくゼロとなり、破壊力は愚か威力と言える威力も無かった筈なのだ。それでありながら、両者の技の強みを殺すことなく一つにして見せた芸当は、一つの事実を如実に物語っていた。ケルベロスはこれまでドラグーンでも真面に戦えるように手加減していただけで、実際はもっと強いのだと言う事を。

「どうするよ?」

 ドラグーンが背後を向いて、源にこう訊くと、彼は恐ろしいほどに単純な答えを出した。

「目には目を、歯には歯を、毒で毒を中和する的な? 相手が融合してるなら、こっちも融合しちゃおう!!」

 相手がそう来るなら、自分も同じ手で対抗する。彼の決定に、ドラグーンは思わず内心で呆れてしまった。確かに自分も控えに居るフェニックス達と融合が出来るが、融合したからと言って、同じく融合している聖獣と対等に渡り合える確証は無いのだ。だが、今確実に実行できる対抗策がそれしか無いのと、自分達の方が相手より強いと言う思い込みとも言える自信があったので、源にこう言った。

「了解!!」

 そして、ドラグーンは一旦源の傍へと戻り、源は控えとして聖装の中で待機していたフェニックス、エレクトード、ジェットシャーク、ステゴサウルス・Jackのカードを取り出すと、

「聖獣融合!!」

 と宣言し、聖装のスロットの中に四枚のカードを差し込んだ。その結果、ドラグーンの傍には赤、黄、銀、茶色のそれぞれ四色の光球、四体の聖獣の魂が現れドラグーンの中へと入りこんだ。ドラグーンはまず全身の筋肉が強化されてこれまでより一回り大きなサイズになると、全身に鎧ともいえる炎を身に纏った。炎はすぐさま鋼鉄のように固まって装甲になると、背中の炎は鳥の翼のように大きく変化すると、同じく鋼鉄のように固まり飛翔ユニットとなった。尾の先の斧は、四本のスパイクに変化すると、両手の手甲はリボルバーの付いた銃に変化を遂げた。

「メタルドラグーン!!」

 エレクトードの電撃と筋力、フェニックスの火炎と飛翔能力、ジェットシャークの堅い装甲と銃火器、ステゴサウルス・Jackの防御力と鋭さを併せ持ったドラグーン、メタルドラグーンへの融合が完了すると、融合が終わるまで律儀に待っていてくれたケルベロス、恵はこう言った。

「ほう、やはりあ奴らも融合が使えたか。なんというか、合体ロボットみたいじゃな。」

「男の子はああいうの好きだから。」

 その後恵は、戦闘力レベルは上だから、とケルベロスに告げた。なのでケルベロスは、弾丸とも思える速度で飛び出し、メタルドラグーンへと襲い掛かった。

「速い?!!」

 源とメタルドラグーンはケルベロスの素早さに驚くも、ただの直進であると見抜くと、落ち着いて回避を行い、背中のユニットに光を纏わせて翼を作り上げると、上空へと退散した。

「追って!!」

 恵が指示を出すと、ケルベロスはすぐさま停止し、背中の翅で飛翔しメタルドラグーンを追って行った。蜂のように滑らかな軌道で空を飛ぶメタルドラグーンと違い、直角に曲がりながら飛ぶ所は、どこか蜻蛉を連想させた。

「喰らえ!!」

 空を飛びながら、メタルドラグーンは腕に装備した銃をケルベロス目がけて発射した。リボルバー式なのだが、まるでガトリング砲のように弾倉は激しく回転し、銃口からは何十もの弾丸が放たれた。ケルベロスは直角に飛翔する事でそれを回避すると、メタルドラグーンの頭上へと回り込み、鉄柱も噛み千切る牙で襲い掛かった。それをメタルドラグーンは、ラリアットをするように銃身を振り、ケルベロスの頭部を弾き飛ばした。

 地上で様子を見る源と恵は、一連の動きが終わりケルベロスとメタルドラグーンが距離を取ると、互いに技カードを聖装で読み込んだ。

「ケルベロス・インパクト!!」

 恵の読み込んだ技は、三体の狼型聖獣が融合している聖獣のみが使える特別な技「ケルベロス・インパクト」で、技の指示を読み取ったケルベロスは、全身に三匹の狼の幻影を読み込むと、メタルドラグーン目がけて飛び掛かっていった。ただの突撃ではなく、獲物と捕らえた相手、今回の場合はメタルドラグーンの回避行動を、自らの発する殺気で封じる事で、技の命中を確実なものに出来る。

「真正面から来るか? なら、こっちも真正面から受け止めてやる!!」

 攻撃が来るのを見たメタルドラグーンは、構えを取りながらこう叫んだ。その瞬間、

「レーザーソード!!」

 源が聖装で読み取った技カードの指示が、メタルドラグーンに届いた。なので、メタルドラグーンは両腕の銃をフォークを思わせる特殊なユニットに変形させると、そこから光の剣「レーザーソード」を両手に発生させ、ケルベロスに向かって行った。

「はぁぁぁぁ!!!!」

「うぉぉぉぉ!!!!」

 両者の技が激突した瞬間、途轍もないエネルギーが発生し周囲に激しい衝撃波をまき散らした。この時、特殊な防御壁で守られている為いかなる事態になろうと、一切動じない観客席の聖獣や神々が、強い衝撃に充てられてバランスを崩さないように客席にしがみつき、リブラ・スワンも防御の姿勢を取った。

 やがて、発生した衝撃波が止むと、メタルドラグーンのレーザーソードを発生させているユニットを、ケルベロスの両側の頭が噛みついて止めている場面が目に入った。激突の結果は互角だったようである。

「そのまま噛み砕いて!!」

 恵は相手の両腕が塞がっているのでチャンスと考えたのか、少女とは思えない程えげつない指示を出した。ケルベロスはその指示の通り、ユニットに噛みつく顎により力を込めた。メタルドラグーンの両手のユニットは、その力によってミシミシと鈍い音を立てたが、元々頑丈なのか砕ける様子は見られない。

 対する源は、メタルドラグーンにこう指示を出した。

「両手のユニットを外して!!」

 この時、メタルドラグーンとケルベロスはともかく、恵が驚いた。彼女の見立てに置いてのメタルドラグーンは、飛翔能力と防御力、圧倒的な火力で戦いを繰り広げる性質の聖獣で、容易に分離と融合が行える為飛び道具が効きにくい上に、高速移動と鋭い牙によって接近戦に強いケルベロスと相対するには、強力な打撃技を出せる腕のユニットは、何に置いても守るだろうと考えていたからである。だからこそ、彼女はケルベロスにそれを噛み砕くように指示を出したのだ。

 一方のメタルドラグーンは、源の指示を受けるや否や、躊躇う素振りを微塵も見せずに腕のユニットを取り外し、青い鱗で覆われた割と細い腕を露わにした。このため、メタルドラグーンはケルベロスの噛みつきを逃れて自由になり、逆にケルベロスは、ユニットを両側の口でくわえている事で、実質中央の頭でしか攻撃が行えない状態となった。なので、メタルドラグーンは中央の頭に優しく手を添えると、

「喰らえ!!」

 頑丈な鎧で武装した膝を振り上げ、その頭の顎を強く蹴り上げた。

「ガッ!!」

 ケルベロスは鈍い声を上げると、蹴られた勢いでそのままひっくり返った。

「今だ!! 尾を掴んで回転!!」

 そのままケルベロスの、竜の頭のような部位の付いた尾が出てきた所を見ると、源はメタルドラグーンに指示を出し、メタルドラグーンはその尾を掴んで激しい横回転、所謂ジャイアントスイングを始めた。

「良し! 決まり!!」

 源は互角の状況を、こちらの優勢に持って行けた事で思わず喜んだが、恵の方は今の状況をどうとも思っていないのか、静かな声でこう指示を出した。

「反撃よ。」

 すると、メタルドラグーンが掴んでいるケルベロスの尾、その先端にある竜の頭を思わせる部位が、口に当たる部分を開き、そこから火炎を吐き出した。

「ぐわぁ!!」

 思わぬ反撃に、メタルドラグーンは思わず驚き、尾を掴んでいる手を放してしまった。だが、回転によって相当な勢いが付いていたため、ケルベロスはそのまま物凄い勢いで飛んでいき、地面に激突した。

「ケルベロス?!」

 恵が予想外の勢いによって、地面に激突してしまったケルベロスに呼びかけると、ケルベロスは元気よく起き上がり、左右の口で加えていたユニットを違う方向に吐き捨てると、恵にこう言った。

「恵よ、今のはお主の判断ミスじゃぞ。」

「煩いな! 貴女なら十分受け身が出来ると思ってあの指示を出したのよ! それに出来ないなら、初めにそう言って!!」

 ケルベロスの一言に、恵はこう言い返した。彼女は神司となって日が浅いためか、聖獣の能力をしっかりと把握できていないようである。その事を源がメタルドラグーンに伝えると、彼はこう返した。

「なるほどな、神司としての資質と聖獣の相性の良さが、融合を可能にしていると言う事か。おそらくお前ほど修羅場を経験している訳じゃなさそうだ。」

 そして、勝負を決めるのは今しか無いと伝えた。なので源は、メタルドラグーンとケルベロスの居る場所を再確認し、その線上に途中で取り外し、ケルベロスが吐き捨てた腕のユニットがあるのを見ると、一つの手を思いつき、三枚の技カードを取り出した。

「決めるぞメタルドラグーン、そのままケルベロス目がけて飛んで!!」

 源はこう指示を出すと、取り出した三枚の技カードを聖装のスロットの中にまとめて押し込んだ。

「イカロス・サンシャイン&ウイングブレード!!」

 結果、メタルドラグーンの光の翼は剣を思わせる形状になると、太陽光のような光を発するようになった。メタルドラグーンはその状態で急降下し、ケルベロスに向かって行った。

「ケルベロス! 飛んで上を取って!!」

 恵はケルベロスにこう指示を出したが、ケルベロスは背中の翅を一ミリも動かそうとしなかった。

「どうしたの?」

 恵が訊くと、ケルベロスはこう答えた。翅が動かないと、

「イカロス・サンシャインの効果を知らんのか? エンジンで有ろうと魔法で有ろうと翅であろうと、あらゆる飛ぶ手段を封じる技じゃ!」

 ケルベロスがこう説明すると、恵は先ほども使った技カードを取り出し、それを聖装に読み込ませた。

「カゲロウ・ハウリング&ハウリング・ブリザード!!」

 それにより、ケルベロスは三つの口より冷気と熱気を含んだ咆哮を放ち、メタルドラグーンを迎撃しようとした。

 対するメタルドラグーンは、先ほどとは違いそれに怯むことなく突撃すると、地面スレスレを飛翔し、地面に転がるユニットを回収し腕に装着した。その瞬間、

「レーザーソード!!」

 先ほども使用したレーザーソードをもう一度発動し、背中と両手合わせて四つの刃を持った状態になった。

「な、何のつもり?」

 恵はメタルドラグーンを見て、思わずこう言った。ケルベロスの発した技は飛び道具であり、打撃技を試みて正面からツッコめば、火炎と冷気による干渉と、咆哮による振動で粉々に砕かれてしまうのは自明の理であるからである。

 すると、彼女の疑問の回答を述べるように、源がこの戦いにおける最後の指示を出した。

「レーザーソードを地面に突き刺せ!!」

 メタルドラグーンは指示された通り、レーザーソードを地面に突き刺した。その結果、レーザーソードが地面に引っかかった事でメタルドラグーンは体制を崩し、そのまま轟音を轟かせながら手裏剣のように縦回転し、ケルベロスに向かって行った。回転により発せられる轟音は咆哮の振動を掻き消し、次々と振り下ろされる四つの刃は、冷気と熱気の層を切り開いてしまった。

「え? 何あれ?! あんなの有りなの?!」

 恵には、余りにも相手の使った戦術が予想外だったのか、思わず戸惑いを見せてしまった。その為、ケルベロスに致命的な隙が発生してしまい、メタルドラグーンの縦回転斬によって縦一文字に切られ、そのまま霊力を失って聖装に戻って行った。

「やった!!」

 源は勝利した事で喜んだが、

「目、が、回るぅ~!!」

 メタルドラグーンから分離した五体聖獣たちは、勝負を決めた時の回転の影響が残っているのか、フラフラとしていた。





 その後、聖獣バトルの決着が付き、源が聖獣を戻したことで、二人は減の部屋へと戻ってきた。

「所でさ、突然の事だったから聞きそびれたんだけど、何でこの場所が良いの?」

 勝負の間も、心の隅で気にしていた事を源が訊くと、恵は少し考えてあと、こう言った。

「あの、笑いませんか?」

「?」

 彼女の言葉に源がどういう意味だ、と思うと、彼女はこう言った。

「ここが、私にとって一番縁起がいい場所なんです。風水的に。」

「は? ふーすい?」

 恵の言葉に、源は思わず呆れて声を上げた。源の声で、彼が呆れていると言う事を理解したのか、恵はこう言った。

「自分で言うと何だか嫌ですけど、私って不幸に愛されているんですよ。風水的に凶方に向かえばロクな事は無いし、朝の占いを無視すれば更にロクな事は無いし、本当ですよ!!」

 彼女が、自分が部屋の場所に拘る事を説明する中、先ほど戦った聖獣ケルベロス、その中央部を構成する狼の聖獣、アングルボザがテレパシーで補足を行った。

「こやつの風水とかに逆らった時の不運は確かに凄いぞ、この間なんか、凶方に用があって出かけたら、途中で渡った歩道橋が崩れた。」

「は?」

 アングルボザの補足、源は驚いた。そういえば前に、どこかで歩道橋が崩れる事故があり、新聞やニュースで良く取り沙汰されていたな、と。

「その不運のせいで、こやつには友達いなかったんだ。我儘と思えるだろうが、聞き入れてくれんか?」

 補足を終えたアングルボザは、最後に源にこう頼んだ。恵自身は、余計な事を言うな、と言っていたが。

 源は少し考えると、こう言った。

「まあ、いいけど。家具移動させるの手伝ってよ。」

「え? 良いの?」

 源の申し出に恵が驚くと、彼はこう言った。

「まあ、僕は部屋の位置には拘らないし、ここが良いならどうぞ。」





 その後、源と恵とで協力し、元々源の部屋にあった私物を空き部屋に移動させていた。

「模様替え? 私も手伝おうか?」

 その時、偶然源と恵の姉である優が通りかかり、こう声をかけてきた。この時、それを聞いたのが源であれば、手伝いを頼んだであろうし、そうでなくても他にやって欲しい事を頼んだ筈である。

 だが、それは源ではなく恵で有ったため、彼女はこう言った。

「良いですよ、手は足りてます。」

 その後、持っていく荷物がまとまったのか、彼女にこう言った。

「あとそこ、邪魔です。」

「え、あ、ごめん。」

 恵にこう言われた優は、その場から引いて道を譲り、恵はそこを通って部屋へ荷物を運んで行った。

「ワタシ、邪魔、か。」

 優は一言こうつぶやくと、そのままその場を後にしていった。

 その後、ベッドを運ぼうと部屋の中で四苦八苦していた源が、部屋の中から顔をだし、恵にこう訊いた。

「あれ、さっき姉さんの声聞こえた気がしたけど? 姉さん居たの?」

「気のせい。」

 恵はこう言うと、彼に訊いた、

「源って? もしかしてシスコン?」

 源はこの問いにはあえて答えず、恵にこう言った。

「まあ、気のせいなら良いけど……さ。」


 この時、源も恵も、彼らの聖獣たちも微塵も考えていなかった。恵が優に言った一言が引き金となり、後に大きな事件が発生する事になるなど。

 そして、その事件を皮切りに、彼らは世界の命運さえ左右しかねない戦いに巻き込まれる運命、それから逃れられなくなる事を…………


 これで第五部「世界神司編」は終了し、次回より六部「森林侵攻・四皇集結編」に入ります。

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