表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣王伝説  作者: 超人カットマン
第一章
5/55

第五話 剣竜襲来

次の日は日曜日、この日は皆一様にゆっくり休んだ。次の月曜日は祝日により休み、そして、火曜日に皆は再び学校にて出会った。

「みんなおはよう。」

 普段通り、江美が一番最後にやって来た。教室では、彩妃が源に宿題を見せるように要求し、薫と直樹は何が楽しいのか、恐竜と機械、どちらが強いのかを言い争っている。

(アーケロンド、今日は午後から修了式だから。午後にはなるべく事を起こさないようにね)

 皆の様子と一緒に今日の予定表を見た江美は、精神感応でアーケロンドに伝えた。そして、改めてカバンを見たときの事である。

「やば、宿題忘れた。」

 出されていた宿題をしていなかったことを思い出した。そして、目線の先には彩妃が源にやって来た宿題を見せるようにせびる光景、

「よし。」

 江美は立ち上がると、源の席に行った。





一方、源の席では、

「ね、お願い。」

 彩妃がいつものように胸の前で手を組んで、頼み込みのポーズをとっている。普段なら普通に宿題を見せてやっているが、今回ばかりはガツンと言うつもりなので、

「やだ。」

と、源は言った。

「今度アイスを奢るからさ。」

 彩妃は見返りにアイスを提案した。源は甘い物、特にアイスが好きなのだ。しかし、

「要らない、間に合ってる。」

 肝心の源はこう答えた。

(ああ、とうとう源に愛想をつかされた)

 彩妃が心の中でこう考えた時である、

「源、宿題貸して。」

 江美が源に話しかけた。彼女も宿題のノートを持っているので、恐らくは宿題をやってきていないのだろう。

「まあいいけど。」

 源は彩妃が頼んだときとは違い、割と協力的だった。

「ちょ、江美には貸すのに、私にはダメなの?」

 彩妃が源にこう言うと、源はこう言った。

「お前はそろそろ自分で宿題をするべきだ。それに、夏休みは逆に僕が宿題を見せてもらいにくるから。」

 すると、江美が小声で彩妃に言った。

「私と一緒に見れば良いよ。」

「江美、と言うか部長、ありがとう。」

 彩妃がこう言うと、

「いいよ、私も宿題忘れてたし。」

と、江美は言った。その時、担任の教師が教室に入って来たので、二人は席に戻った。





そして、大人の事情、ご都合主義等、様々な理由で午前中四時間の授業を飛ばし、午後の修了式になった。

「ええ、これまでの授業の日々も終わり、明日からはみなさんの楽しみにしている夏休みです。我々としても、みなさんには様々なことに挑戦してもらい、悔いのない時間を送ってほしいのですが、くれぐれも問題を起こさないようにしてください。最近は物騒な事件が増えています、知らない人に話しかけられても、簡単に付いて行くことが無いように・・・」

 全校の生徒が集まる体育館の、ステージ上でマイクを前に話す校長の話を片耳で聞きながら、源たちは江美の話を精神感応で聞いていた。

(それでだけど、今年は何かしたいことはある?)

(なんで今訊く?放課後の集まりで訊けば良いじゃん)

 江美の問いに、源がこう言うと、

(しょうがないよ、訊けるときに訊く、それが江美のやり方だし)

 彩妃が精神感応でこう伝えた。

 その時である、

(源、聖獣反応だ、物凄い勢いで暴れている。このままでは決闘空間を出て現実世界に出てきかねない)

 エレクトードが聖装の中で聖獣の気配を察知し、源に伝えた。

(対応なんて無理だぞ、今は修了式の中、抜け出すなんて)

 源がこう言った瞬間である、突然源の意識が途絶え、その場で倒れた。

「え?わぁぁぁ!」

 この出来事に、皆は一様に驚いた。すぐに担任の教師が駆け寄ったが、

「ああ、俺たちで保健室まで連れて行きます。」

 直樹と薫が自ら名乗り上げ、源を担いで体育館を後にした。





 そして、ある程度体育館から離れてから、

「おーい、そろそろ起きろ。」

 薫は源に声をかけた。その瞬間、

「了解。」

 源はこう言って起きた。何が起こったかと言うと、以前源の聖獣がやった精神への介入、それを応用して、源を一時的に意識不明の状態にしたのだ。

「まあ、事情は分かるけど、どうする?」

 直樹がこう訊くと、

「とにかく、決闘空間に入って聖獣を実体化させて、暴れている聖獣を探して止めないと。」

 源はこう言って、ポケットからボールペンを取り出して、

「装具形態。」

 と言って、先端を押した。結果、ボールペンは光を発して、剣の形になった。同じように直樹と薫も聖装を装具に変化させると、

「決闘空間、展開!」

 三人で決闘空間の中に入り、源はドラグーン、フェニックス、エレクトード、ジェットシャーク。直樹はフレアノドン。薫はギュオンズを、それぞれ実体化させた。

「それじゃあ行くぞ!」

 三人は、ジェットシャーク、フレアノドン、ギュオンズに掴まって、学校を飛び出した。その際、窓ガラスが割れたが気にしない。と言うか、決闘空間では現実世界へ被害は来ないので、関係は無いのだが。





一方、惜しくも源を運ぶ役目に入れず、体育館に残された江美と彩妃は、

「退屈だ。」

と、思っていた。校長の話は思った以上に長く、それが終わっても、次に来るのは、無駄に長く感じる、夏休みの心得の発表だ。

「と言うか思ったけど源ってさ、なんか聖獣に良いように使われてない?」

 彩妃が小声で江美に訊くと、

「そうかな?仲が良いんじゃなくて?」

江美は小声でこう訊き返した。

「だと良いんだけど。」

 江美の答えに、彩妃は若干不安そうに言った。





 一方、暴れている聖獣の居る場所にやって来た源たちはと言うと、

「な、何だあれ?」

 源はその場に居る聖獣、と思われる存在を見て言った。そこには、物凄い勢いで回転するノコギリのような物が、地面を抉り、建物を切り裂いて進んでいるのだ。

「鑑定形態。」

 源は聖装に向けてこう言うと、剣の先端で円を描き、そこに対象を映した。

「こ、これは?」

 源はそこに映った存在を見て驚いた。足は短く、頭は小さいが、尾は長く、先端に四本棘のような物が付いている。特徴的なのは背中で、山のように盛り上がり、三角形の板のような物が沢山付いている。

「何だこれ?」

 源がこう言うと、近くまで来た直樹が、映る姿を見てこう言った。

「これは、ステゴサウルスだな。」

「捨子サウルス?」

 薫がボケとしか思えないことを言うと、

「ステゴサウルスだ。」

 直樹は訂正し、ステゴサウルスと言う生き物に付いて説明した。

「ステゴサウルスってのは、ジュラ紀と白亜紀の間に生息していた恐竜で、ステゴって単語には、屋根に覆われた、と言う意味があるんだ。」

 その時、源は言った。

「分かった、あれは恐竜族の聖獣、鋼と大地属性、名前はステゴサウルス・Jackだ。」

「ジャック? 人の名前?」

 直樹が名前に疑問を持つと、恐竜族であるフレアノドンが説明した。

「恐竜族は人間の誕生より前に地球を支配した生き物だ。そのことに敬意を表して、恐竜族の聖獣には大抵、あいつのように個体を表す名前の後に、人間の名前のような名前が付いているんだ。」

 すると、ここで直樹が核心を付くことを訊いた、

「じゃあ、フレアノドンにもそういう名前があるの?」

 フレアノドンの答えは、

「いいや、俺の場合最初から名前が捩られてるから、無い。」

だった。しかし、ここで今まで話に入ってこなかったギュオンズが言った。

「薀蓄も良いけど、今はあいつを止めないか?」

 見ると、今もステゴサウルス・Jackは大回転を続けて、地面や建物を破壊している。このままでは、現実世界と決闘空間を隔てる壁が破壊されて、ステゴサウルス・Jackは現実世界へ出てきてしまう。決闘空間だから良いが、このまま現実世界に出られると、物凄い被害が出るだろう。

「だな。」

 皆はこう言うと、神司は安全な場所で様子見を行い、聖獣は戦いの場に向かった。

「喰らいな!」

 フレアノドンは空中からステゴサウルス・Jackに近寄ると、口から火炎を浴びせた。しかし、ステゴサウルス・Jackには効いていないようで、回転の威力は止まらない。

「何て回転だ!前からの攻撃は無効だぞ!」

 飛翔するフレアノドンがこう言ったときである。突然どこからか飛んできた石に激突し、フレアノドンは落下した。

「な、どこから?」

 直樹が周りを見回しながら叫ぶと、周りを見ていた薫が言った。

「どうやら、奴の回転に巻き込まれた石が飛んで行ったんだ。」

 すると、今度は飛行機からロボットの姿に変形したジェットシャークが現れて、こう言った。

「ならば、まずは回転を止める!」

 そして、腕に装着された翼の変形した剣でステゴサウルス・Jackの回転攻撃を止めた。これで一応動きは止まった、しかし、

「な、何ていう力だ。」

 ジェットシャークの翼がステゴサウルス・Jackの力に耐えられないようで、ミシミシと悲鳴を上げている。

「まずいな!」

 ギュオンズはこう言うと、動きを止めているステゴサウルス・Jackに、真横から体当たりをした。

 これで、ステゴサウルス・Jackは真横に倒れ、その隙にジェットシャークはその場を離脱した。

(? もしかして)

 様子を見ていた源は、ステゴサウルス・Jackの様子を見てこう思うと、皆を集めてこう言った。

「奴の攻略法が分かった。」

 そして、一つの作戦を教えた。

 そのうちに、ステゴサウルス・Jackは復帰し、以前と同じように回転攻撃を始めた。

 一方の源たちの聖獣は、一か所に集まっていた。ただ一体、ジェットシャークは空中からステゴサウルス・Jackを見据えると、装備した機銃でけん制の攻撃を行い。

「おーい、鈍間!捕まえてみろよ!」

と言って、自分以外の味方聖獣が並んでいる方向と垂直になる方向に飛んで行った。結果、挑発に乗ったのかは不明だが、ステゴサウルス・Jackがジェットシャークを追って行った。

 それを見た源は、息を止め、慎重にタイミングを見計らうと、

「いまだ、一斉攻撃!」

と叫んだ。その瞬間、ドラグーン、フェニックス、エレクトード、フレアノドン、ギュオンズは同時に得意な飛び道具を放った。

 結果、五体の聖獣の飛び道具を受けて、ステゴサウルス・Jackは態勢を崩し、大きく真横に吹っ飛んだ。

「やるじゃん、ギュオンズの一撃で、奴が真横の力に弱いって分かったんだ。」

 薫が関心したようにこう訊くと、

「さっきのギュオンズの攻撃、あれで簡単に倒れただろう。」

源はこう答えた。

「ところで、あいつの魂が露出してるぞ。キャプチャしなくて良いのか?」

 上空のジェットシャークが声をかけた。見ると、ステゴサウルス・Jackの体から、青白い光の玉、聖獣の魂が露出しているのが見えた。

「よし、公平性を保つためにジャンケンにしよう。」

 なぜか直樹がこう提案すると、三人はジャンケンをした。結果、直樹、薫、源の順番で、優先順位が出来た。

「それじゃ俺が。」

 直樹は聖装のハンマーでステゴサウルス・Jackの魂に触れたが、魂はその場にとどまり、聖装の中には入らなかった。

「あ、あれ、あれれ?」

 直樹がハンマーをブンブン振り回していると、

「嫌われたね。」

 薫が現れてこう言い、自分の聖装で魂に触れた。しかし、彼でも同じだった。

「となると、本命はあいつか?」

 二人は揃って源の方を見た。源は二人と同じように魂に近づき、聖装で触れた。結果、魂は彼の聖装の中に入り、源の手元に、先ほど倒した聖獣、ステゴサウルス・Jackのカードが現れた。

「この間の訓練と続き、これでもう五体目。」

 源が驚いていると、直樹と薫がこう言った、

「感動に浸るも良いけど、そろそろ教室に戻ろう。ただでさえお前は体調不良で抜けたんだ。みんなが教室に戻る前に戻るぞ。」

 そして、三人は新たな仲間と一緒に戻って行った。

 しかし、彼らは間に合わず、保健室に居なかった理由の言い訳に苦労することになったのは、また別の話。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ