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聖獣王伝説  作者: 超人カットマン
聖獣王伝説×アーティファクト・ギア クロスオーバー第一弾 未来襲来編
45/55

第一部最終話 オニキスの残した思い

「五色……斬完刀!!!!!!」

 源、天音、そしてメタルドラグーンが持つ、この場に居る人間と聖獣全ての想いを乗せた最強の斬撃は、オニキスの目の前の地面に叩きつけられると同時に、激しい霊力の爆発を起こした。

「な、何このエネルギー?!」

「き、気を付けろ、吹き飛ばされる!!」

 その様子を少し離れていた場所で見て居た神司部と冒険部の面々は、発生したエネルギーの奔流に耐えながらこう言った。そのエネルギーの奔流はすさまじく、彼らは勿論、援軍にやって来て、今はそれぞれの日常に戻ろうとしている援軍たちも、そのエネルギーを感じ取っていた。

 そして、エネルギーの奔流が終了すると、まるで緊張の糸が切れたように、実体化していた神司部勢の聖獣は、揃って霊体に戻り、聖装の中でカードとなり休眠を始めた。

「これ以上の実体化は不可能と言う事か。」

 聖装に戻った聖獣達の様子を見て、源がこう言うと、その隣の天音はこう言った。

「いや、まだオニキスが倒せたかどうかを確認できていない。緊張を解くのはまだ早い。」

「そうだった。」

 天音の言葉に源がこう言うと、彼らも含めた面々は今までオニキスが居た場所に眼を凝らした。そこは先ほどのエネルギーの奔流で大量の砂煙が舞っており、状況を上手く読み取る事は出来ない。

 やがて、舞い上がる砂煙が晴れると、オニキスの姿を確認出来た。オニキスは人間の姿から、恐竜並みに巨大な九尾の狐の姿となっており、顔には切り傷が出来ていた。

「あの攻撃でもダメなのか?」

 オニキスの姿を見て、皆を代表して祐介がこう言うと、オニキスの姿を見た竜皇バロン・サムディは、こう言った。

「いいや、俺達の勝ちだ。」

 その瞬間、今まで空を覆っていた雪雲は晴れて、夏の日の暖かいと言うより暑い日差しが降り注ぎ始め、九尾の狐姿のオニキスは、雪が解けて土が露出した地面に倒れた。

「か、勝ったのか俺達?」

 オニキスが地面に倒れた所を確認し、半ば信じられないと言う思いで天音がこう言うと、源はその場から歩きだし、オニキスに近づきこう訊いた。

「僕らの勝ちだよ、一つだけ訊くけど、何でまた過去に跳んで大暴れしようとしたのさ? 機会はもっといくらでもあったはずだよ、この世界に干渉する事に限れば。」

 この問いに、オニキスはこう言った。

「俺、いや、俺達は時空の歪みに便乗してこの時代に跳んで来たんだよ。丁度いい具合に時空が歪んでいたんで、飛びこんだらここに付いたと言うわけだ。」

「え? ちょっと待って、貴方がここに来たせいで時空が歪んだんじゃ無いの?!」

 オニキスの言葉に、事態が起こった理由を知っている神司部の面々は、思わず驚きの声を上げた。彼らはこの世界に歪みを起こす存在が居り、それを頼りに事を捜査していたのだから。

 しかし、源はそんな事を気にしているわけでは無いので、改めてこう言った。

「奏楽さんからこう言われたよ、アンタを救ってほしいって。」

「そうだったんだ。」

 源の一言で、彼は何かを感じたのか、今回の事件を起こしたきっかけを語り始めた。

「俺自身は間違いを糺すとか何とか言ったけどさ、実際そんなのはどうだって良いんだよ。俺は基本他人なんてどうでも良いって考え方してるし。」

 オニキスの言葉を、源は理解する事が出来た。彼はオニキスがした事を、一応ではあるが見届けているのだ。

「今になって考えてみれば、理由って何だったんだろうな。俺がわざわざここまでやって来てお前らと戦って、挙句の果てにボコボコにやられて。」

 オニキスが違う時間軸の自身の前で、自虐的にこう言った時である、後ろで様子を見るメンバーの中で一人の人物が前に歩み出した。彼に遭遇したため、危うく死にかけの状態となり、自身の連れてきた面々と合流するのが遅れてしまった、アリスティーナである。

「それは、自分の過去に何があったのか、それをさらに過去の自分。まだ英雄となっていない彼に知ってほしかったんじゃ無いの?」

 アリスティーナは源の隣まで歩いて行くと、オニキスにこう言った。

「だって、ラフレシアとプトレマイオスの両者は弱らせた状態で監禁し、私に至っては十分に殺せたはずなのに、貴方はそれをしなかった。貴方には、最初から誰も傷つけるつもりは無かったんじゃないの?」

「え?」

 彼女の一言に、オニキスでは無く源が驚くと、アリスティーナは続けた。

「例えどれ程の時が経ち、考え方や見た目が大きく変わる事があっても、その人の魂の本質は変わらない物。例え何に裏切られても、貴方は誰かの味方となる事を止める事は出来ない筈。例え相手が悪人でもね。」

「アリス先生のあの言葉……」

「千年生きた貫録と言う事か。」

 後ろで彼女の様子を見る雫、迅は揃ってこう言った。

「だからこそ、自分が見てきた全ての人間の不幸を救いたい為、貴方は(かれ)の元に姿を現した。自分と言うイレギュラーと接触させる事で、タイムパラドックスとまでは行かずも、歴史の違う未来を求めた。そして、もう一つ……」

 アリスティーナがここまで言った瞬間である。九人の援軍と戦うも、そろいもそろって大敗を喫した異形の竜たちが、源や天音達の揃う場所へと戻って来た。

「げ、もう戻って来た。」

 周りを見て博明がこう言うと、

「流石に今この状態で戦うのは拙いね、そちらのお三方は?」

 千歳はこう言って、ウンディーネ、ミステリア、バロン・サムディの三者を見た。見立てで言えば、この中で一番強いのはその三者と、自身の所属する冒険部の顧問であるアリスティーナであり、一番消耗が薄く、尚且つ回復もある程度済んでいると思われるのは、その三者だけだからである。

 その三者の解答は、三者揃って、

「無理。」

 との事だった。ウンディーネとバロン・サムディは同じ意味で使った言葉だが、ミステリアだけは違った。

「戦う必要なんてありません。だって、彼らもオニキスも……………もう、消えますから。」

 ミステリアがこう言った瞬間である、まず最初にオニキスの体が光の粒子によって分解され始め、それに応じて周りの竜達も、実体を失おうとしているのか光の粒子と共に分解され始めた。

「な、何だ?」

「な、何が起こっている?」

 竜達が揃って自身の分解されていく体を見ながら言うと、ミステリアはこう言った。

「ついさっき思い出したんですけど、半獣は聖獣と人の特徴を持つ半端な存在である以上、条件を満たせば本当の意味で人間の肉体を死なせ、正式に聖獣に慣れた筈なんです。その条件は、全力を出して、負ける事。」

「全力を出して負ける、じゃあ、つまりオニキスは……」

 ミステリアの言葉を聞き、江美がこう言うと、源が彼に言った。

「アンタはそれで良いのかよ。奏楽さんのような事になる人が出ないようにする為、この時代に来たんじゃ無かったの? まだ何もしてないのに?」

 この言葉に、オニキスはこう返した。

「良く言うだろ、老兵は消えて若者に任せるのが時代の筋だって。俺の役割はもう終わり、俺のやるべき事は全て、これからお前がやるべき事だ。俺は信じて居る、お前が最後に使ったあの剣、きっとあれは全てを救い、あらゆる因果を断てる物だと。」

 その後、今度はその場に居る皆に向けて、こう言った。

「お前らに行っておくぜ。歪みの能力を得て、数千年の時を生きて分かった事だが、敵は入道雲だ。」

「は?」

 この言葉に、皆が疑問を浮かべると、

「途轍もなく巨大なのに、全く掴みどころがないと言う事だ。」

 と、オニキスは言った。

「もしかしたら、一言少ない上に、言っている事が分かりにくいから、誤解されやすいんじゃないんですか?」

 オニキスに対し、源がこう言うと、

「それはお前も同じ事だ。」

 オニキスはこう返し、最後に笑顔でこう言った。

「あばよ、後は任せた。」

 その瞬間、恐竜並みに巨大な九尾の狐の肉体を構成していたエネルギーが全て分解されたのか、オニキスはその場から消えるように居なくなった。

「……………………」

 冒険部の面々は、何とも言えない面持でそれを見届けたが、神司部の面々やその協力者達は、顔を伏せてプルプルと震えていた。怒りを堪えているのか、それとも涙を我慢しているのか、どちらにしても、未来の仲間の消える所を見届けたと言う事もあり、彼らには何かを感じる所があったらしい。

「お、オニキス様が………」

 同じくその様を見届けた、ジェミナ・ドライグがこう言った瞬間である。

「オニキス様の霊力供給は絶たれた、となると、俺達も………」

 マスター・カンヘルがこう言うとともに、彼とミノス・ドラゴニスの体が透けるようになった。消える寸前なのだろう。

「そういえば、俺とお前で始まったんだよな。オニキス一派は。」

 ミノス・ドラゴニスがこう言うと、マスター・カンヘルはこう言った。

「まあ、次合う時はコズミックウォーズ、敵同士だろうがな。」

 この言葉を最後に、両者は消え去った。

 続いて、シャーク・ドランとヴォルキャドンの体が透けてきた。

「まあ、悪くない共闘だったかな。」

 シャーク・ドランがこう言うと、見て居るゴールデンドラゴンはこう言った。

「赤銅色、アンタの事は忘れないよ。」

「赤銅色じゃなくて、シャーク・ドランだ。」

 ゴールデンドラゴンの言葉に、シャーク・ドランはこう返すと、

「今度会う時までにちゃんと覚えておけ、テストするぞ。本当だぞ。」

 と、言った。

 消える寸前に、ヴォルキャドンは、

「然らば、御免。」

 と、言い残し。その場から消滅した。

 その後、アーク・ヤンカシュとジェットワイバーン・レオ、ジェミナ・ドライグとムシュフシュが次々と消滅し、最後に一人ゴールデンドラゴンが残った。彼は自身と二度戦った相手、蓮宮天音を見据えると、彼が持っている渦巻いた角を指差してこう言った。

「次合う時までに、それを失くすんじゃないぞ。」

 聖獣は神司の霊力で実体化しているので、技や武器は勿論、毛や角も霊力で構成されている。その為、天音によって折られたゴールデンドラゴンの角は、折られた時点で実体化を失う筈だった。しかし、彼が触れた事で疑似的にアーティファクト・ギアのようになった為に、今も消えずに手元に残っている。

 ゴールデンドラゴンは、天音と戦った際に付けられた胸の傷に手を添えると、消える寸前にこう言い残した。

「この痛み、絶対に忘れないぞ!!」

 お礼参りに行くと言う予告か、それとも再び戦おうと言う挑戦の意志の表れかは不明だが、ゴールデンドラゴンには天音に対し何か思う所があったのだろう。


 こうして、オニキスと彼の連れてきた球体の異形の竜は、オニキスの敗北と共に、オニキスごと世界から消え去った。

 その後神司部と冒険部は、今まで疑問になっていた人物達の紹介を互いに終えた後、冒険部は元の世界へと戻って行った。一日くらいなら居ても問題はなさそうだが、長い赤髪と抜群のスタイルが特徴の美少女、知恵と戦術の女神「アテナ」を名乗る者が現れると、冒険部と神司部の面々にこう言った。

「言っておくが、こことお前達の世界は本来、絶対に越える事の出来ない境界で阻まれている筈なんだ。原因は分からないが、今その境界線が曖昧になりつつあるんだ。取り返しの無い事態を防ぐためにも、今回の事は他言無用でお願い。」





「と、言う訳。その後、真影流の里の元の場所へと戻って来て、そのまま天聖学園へ帰ったんだ。あの時の疲れようと言ったら………」

 所は変わって、とある夏の日のイギリスのとある場所。天音はこう言って、話を締めくくった。時計を見ると、既に短針は違う時間を指しており、かなりの時間話し込んでいたと思われる。

「そういう事があったのか。」

 事態を知らない面々が、話が終わると共に一息を付き、こう言うと、

「でも、何だか皮肉な話ですよね。大切な人の死を悲しいと思いながらも、その性質ゆえに誰にも怒りを向ける事が出来なかったなんて。」

 と、アルティナ・G・セイバーは言った。顔はともかく声は知らないが、彼女とセシリアは、事件を起こした国の大臣「ディルスト・ヘレンズ」によって親を殺されており、今回その仇を撃つ事が出来たが、オニキスの相対した仇は、超人として奏楽を生み出し、彼とぶつかり合う運命を作り出した、彼の住む世界その物であった。世界を否定すれば、ただ一つの命であるオニキスは一溜りも無い。その上、自分の命と共に生きる竜達が居た以上、自分の命と引き換えにする事は出来なかった。

 なので、彼は世界に対する怒りを心の奥底に収める事で数千年の時をその世界で生き、ある時時空の歪みに入り込んで過去の自分と対峙した。自分でダメなら、違う自分にと一縷の希望を託して、

「俺さ、今も時々思うんだよ。」

 天音は、戦いの中で得た戦利品「ゴールデンドラゴンの角」をどこからか取り出すと、こう言った。

「もしかしたら、やり方次第じゃオニキスを本当の意味で救う事も出来たんじゃないかって。」

「天音……」

 顔を俯かせる天音を見て、義姉の花音は彼に言った。

「気にしてはダメ。彼の二の舞になるだけよ。」

「そうだな、そうなってしまった以上、今から変える事なんて出来ない。俺達に出来るのは、今をより良くするように変えていく努力をする事だ。それこそが、オニキスの残した最後の希望で、お前らに出来る唯一の手向け何じゃ無いのか?」

 それに続き、義兄の璃音もこう言った。

「そうよ、あっちには彼らとその仲間達が居るし、聖獣達だって彼らの為に強力する意志を持っている。それに私たちだって約束したじゃない、次にどちらかの世界で何かがあった時は、ちゃんと駆けつけるって。」

 最後に千歳がこう言うと、分かれる寸前に神司部と冒険部で結んだ、一種の同盟を思い出した。

「そうだな。オニキスが残した思いを達成するためにも、クヨクヨしてはいられないな。」

 千歳の言葉によって、顔を上げた天音がこう言った瞬間である。ほんの一瞬であるが、辺りに冷たい風が吹きすさび、その風に載って、

「ありがとう。」

 と言う言葉が聞こえてきた気がした。

「?」

 皆はあたりを見回したが、どこにも誰も居ない。

「気のせいか。」

 なので、皆はこう思った。

 ちなみにアリスティーナはこの時、

(そういえば、オニキスに付き従っていた、グレモリーを名乗る小悪魔。彼女は一体何者だったのかしら?)

 と、思っていたが、直に考えを止めた。こっそりやった占いの結果、このような結果が分かったからだ、

「近々、真相は分かる、か。」





 所は変わって、ヨーロッパの主要国の一つでもあるドイツ。夜も深くなり、人通りは勿論、人々の話す声は愚か、鳥や動物の鳴き声すら響かなくなった刻の事である。一人の女性が路地裏を走って逃げていた。その姿はマントとフードで良く分からないが、手元に何かを持っている事は理解出来た。彼女は今、ある存在から必死になって逃げてるのだ。

「待ちやがれ、絶対に逃がさねえ!!」

 彼女の後ろからは、綺麗な桜色の髪を持つ少年が必死に付いて来ており、その隣には黒い体と三つの首を持つ、犬を模した姿の聖獣「冥界獣(ケロべロス)」が居る。聡明な人は分かると思うが、彼は後に「黒蓮」と言う名前で蓮宮天音の新しいパートナーとなる個体であり、一緒に居る少年は知る人ぞ知るが、知らない人は全く知らない「桜花の断罪者」こと「サクラ・ヴァレンティア」である。彼は今日も今日とて、世界中の悪人を探して彼方此方を歩き周り、一人の悪人を見つけた。今追っている女性こそが、言い方は悪いが「今日の獲物」である。

 追われる女性はやがて、複数に道が分かれた広場へと足を踏み入れた。どの道に逃げようかと女性が思案していると、サクラは彼女に追いついた。

「ようやく追い詰めたぞ、観念してもらおうか。理由はあれど、アンタは多くの人間の命を自身の目的の為に奪った。その罪、冥界にて永遠に償い続けるが良い。」

 サクラは息を切らしながらも、臨戦態勢を整えつつ、噛まずに台詞を言った。これに対し、女性はこう言った。

「それは彼らがこの賢者の石に手を出したが故の運命。罪はしっかり償いましょう。ですが、まだ時期では有りません。」

 賢者の石と言うのは、錬金術に使う反応触媒の一つで、あらゆる金属を金に変える事が出来ると言われる物であり、微妙に効果は違うが、女性が持っている石がそれに該当する。彼女は錬金術師の家に生まれ、幼い頃より賢者の石が巻き起こした悲劇の話を聞いていた為、一族の伝統に則って賢者の石の守護者となった。しかし、あらゆる金属を金に変える賢者の石は例外なく欲望を呼ぶため、数多くの人間がそれを手にするか、もしくは奪おうと様々な事をしてきた。買収やそれに準ずる交渉など序の口、時と場合によっては暗殺や強盗紛いなの事を部下や息の掛かった者達にやらせて、女性の命や賢者の石を狙った。なので、女性は半ば正当防衛の為、一方的にそう言った人間を始末して来たのだ。

「もう遅い、アンタのやった事は既に見逃せる範疇を変え切っている。冥界にて永遠の裁きを受けよ。」

 しかし、女性の言葉にサクラはこう返すと、自身の肉体を触媒に冥界獣と契約したアーティファクト・ギア「トライファング・ケルベロス」を作りだし、女性を冥界に送るための冥界に続く穴を作ろうとした。

 だが、彼はすぐさまそれをとりやめ、その場を跳んで離れた。冥界獣と契約した事で全身の感覚が研ぎ澄ませれ、その感覚が貫くような殺気を感じ取ったのだ。

「?!」

 サクラが飛んで回避するや否や、今まで自分が立っていた場所のすぐ近くに、数本の針のように鋭い氷柱が現れた。回避したので被害は無いが、生え方から見て明らかに自身の喉元や心臓と言った、人間が傷つけられたら間違えなく即死する箇所を的確に狙っていた。だが、問題となるのは氷柱が自身を狙っていた事では無く、突然生えた事である。夜で気温は低いものの、今は夏である。その上、自然界の摂理の上で言えば、たとえ真冬であっても氷柱が一瞬で完成する事は有り得ない。

 有り得るとすればただ一つ、そういう芸当が出来る存在が現れたと言う事である。

「全く、折角ルックスは悪くないと言うのに、恥ずかしく無いんですか? こんな真夜中に女性を追っかけまわして。所謂ストーカーですか?」

 気怠そうにこう言いながら現れたのは、季節が季節であるにも関わらずコートを着込み、綺麗な銀色の髪を背中まで伸ばし、帽子を被った小柄な少年である。顔には何かで付いたのだろう、切り傷のような傷があるが、顔が可愛らしいためワイルドさが殆ど感じられない。

 彼は天音達に倒された後のオニキスで、半獣としての生を終えた後、この世界で正式な聖獣として転生し、持ち前の歪みの能力で勝手に人間界への扉を作り、人間界にやって来て遊び惚けているのだ。因みに今は人間に化けた姿を取っており、本来の姿は恐竜並みに巨大な九尾の狐である。

「す、ストーカー?!」

 悪人たちには断罪者として恐れられるサクラは、今まで言われたことの無い不名誉な呼称に驚くと、オニキスにこう言った。

「別に俺はストーカーがしたい訳じゃ無い。そこの女が犯した罪を償わせる為、冥界に送ろうとしているだけだ。」

「人を人が裁くか、何の為に?」

 サクラの言葉に、オニキスはすぐさまこう返した。

「何の為?」

 サクラが疑問符を浮かべると、オニキスは言った。

「人間が犯した罪は、人間の法で裁くべきだ。そうは思わないのか?」

「だが、彼女の犯した罪は既に法で裁ける範疇を超えている。」

 一方、話の話題になっている女性は、彼等の話が盛り上がっていると判断し、広場から伸びる道の一つに入り、そのまま逃げて行った。

「あ、待て!!」

 サクラはそれを追って行こうとしたが、その道には分厚い上に巨大な氷の壁が現れ、サクラの進行を阻んだ。

「な、何故邪魔をする?」

 サクラがオニキスに訊くと、彼はこう答えた。

「ストーカーから女性を守る、悪い所は何も無いでしょう。」

 この言葉に、サクラはこう言った。

「お前みたいな……お前みたいな罪を見て見ぬふりをする奴が居るから、法で裁けない悪がこの世に溢れる。だから、俺の父さんや母さんは………」

「事故か? 事件か? 偶然か、お礼参りか? 誰かに親を殺された。故の断罪者と言う事か。」

 サクラに対しオニキスはこう言うと、彼にこう問いかけた。

「断罪者たるお前に問わせてもらう、“野心の為に非情になれるか?”」

「は?」

 この問いに、サクラは言うまでも無いと考えると、すぐさま答えを出そうとした、しかし、

「答えなくていいよ。もう分かっているから。むしろ、質問の意味を理解してくれると嬉しいな。」

 と、オニキスは言った。ここで、サクラは完全に話や目的の腰が折れて、相当な時間を食ってしまった事を思い出した。もうすでに女性は相当遠くに逃げているだろうが、冥界獣の嗅覚を用いれば、すぐに見つける事は出来る。

「とにかく、俺達には無駄話をしている時間は無い。どうしても通さないと言うのなら、押し通る。」

 サクラはこう言うと、再び臨戦態勢を取った。この時、冥界独特の許容しがたい気迫が周囲に発生したが、あらゆる修羅場を潜り抜けたオニキスには通用しなかった。

「はぁ、手加減は出来ないけど良いよね。どうせ殺しても死なないだろうし………」

 オニキスがこう返した所で、ドイツの町のある場所にある広場にて、断罪者と転生者の戦いが始まった。





 これは、異なる形で聖獣と友誼を持った世界が交わる事で行われた、最初の戦いに付いて綴った記録。そして、他に類を見ない能力と技巧を持ちながら、歴史にその名を残すことは無かった、最強の強敵(とも)の物語である。


 約三か月近い時間を駆けて、堂々の完結です。

 最後のオニキスの問い、サクラは果たして何て答えたのでしょう。そして、質問の意味を理解できたのか、それはまた別の話。(と言うか、単に分からなかっただけ)

 今回のクロスオーバーは、後一遍の外伝をやった後終了しますが、クロスオーバーは後二回やりたいと考えています。(天道先生の許可が下りれば)


 第二弾のキャッチコピーは

「神司部&冒険部、原点の時代へ。」

「過去を変えて、未来を糺せ。」


 第三弾は

「前代未聞、神司VS天星導志」

「最恐の敵は、正義と言う名の悪意」


 です。

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