表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣王伝説  作者: 超人カットマン
第三章
15/55

第十四話 神司集結

 龍皇バロン・サムディと、植物女皇ラフレシアの激しい戦いが行われた聖獣の森。その破壊の規模は尋常では無かったが、外部から呼び込んだ神司「綾小路源」とその仲間の聖獣たち、そして何より龍皇の協力もあり、主要な建物はある程度まで再構築されて、居住区の施設は復旧がほぼ完了している。

 住人達も少しずつ戻って来て、やがて夜になった。聖獣たちは皆寝静まり、聖獣の森の中は静寂に包まれている。

 植物女皇ラフレシアとその弟子のレイラは、街の中心の樹の中にある、ラフレシアの部屋で寝静まっていた。両者の寝顔は穏やかであるが、二人で寝るには余りにも広い部屋の中の適当な場所に布団を敷き、適当な方向に頭を向けて寝ている様子は、どこかシュールな印象を持たせる。

「むにゃむにゃ、花粉お替り。」

 レイラが呑気な寝言を言う中、部屋の中に何者かが侵入して来た。全員で数人おり、暗殺者なのだろうか、手にはダガーを持っている。

「良し、寝ている。」

 侵入者の一人がこう言うと、皆は武器を構えて、

「龍皇様の仇!!」

 と叫んで、ラフレシアに攻撃を仕掛けようとした。大きく飛んで、ダガーをラフレシアの首目掛けて振り下ろそうとしたが、それより前に彼女が周りに捲いておいた種が芽をだし、侵入者を捕まえた。

「むにゃむにゃ、花粉お替り。」

 そんな事態を知ってか知らずでか、ラフレシアは呑気な寝言を呟いた。





 翌日、戻って来た聖獣の森の住人達が、あちこちに散らばって復興作業を行っている中、ラフレシアとレイラ、森の軍隊の主要な兵士聖獣たちは、ラフレシアの部屋にそろい踏みしていた。その理由は、彼らの目の前でグルグル巻きにされている、ドラゴン族の聖獣たちの処遇である。

「それにしても、何の目的があってここを襲ってきたのやら。損はあっても得は無いと言うのに。」

 ラフレシアはこう呟くと、ドラゴン族の聖獣たちに訊いた。

「一体何が目的だ?それに、こんな勝手な行いを龍皇殿が知ったらどう思う事か。」

 この一言を訊くや否や、ドラゴン族の聖獣たちは一様に言った。

「はっ!よく言うよ。その龍皇を襲撃しやがった癖に!!」

「は?」

 聖獣たちの言葉に、ラフレシアを始めとする面々が疑問に思うと、

「シラを切るつもりだろうが、そうは行かないぜ。」

 ドラゴン族の聖獣はこう言って、昨日何があったかを説明した。龍皇ことバロン・サムディが帰る途中、謎の聖獣の襲撃を受けた為に撃墜されたと言う。今ドラゴン族の聖獣の中ではパニックが起こっており、今の所一番有力視されているのが、ラフレシアが部下に龍皇を襲わせたと言う説である。

「成程、そういう事ね。」

 ラフレシアはこう言うと、部下たちに言った。

「この件については私でも調査します。彼らは、私の部屋にふん縛っておきなさい。」

「はっ!!」

 兵士たちが返事を返すと、ラフレシアは部屋を出て行った。





 自らの居住場所であり、聖獣の森における役所の役割を持つ樹の中から出たラフレシアは、付いてきたレイラに言った。

「それじゃあ、私はしばらく龍皇の身に何があったのかを調べる。お前は綾小路源にこの事を伝えた後、私が戻るまでの間、ここを任せる。」

「はっ!…はい?」

 レイラはいつも通り元気よく返事をしたが、最後にラフレシアの出した指示を聞いた途端に、彼女は驚いた。

「あの、それは?」

 レイラが思わず聞き返すと、

「だから、私はしばらく留守にするから、留守番をしていろと言う事だ。」

 と、ラフレシアは彼女に言うと、

「文句を言うくらいなら、最初に私の出した指示を達成してくることだ。」

 と、レイラに言い放った。基本的に物腰の柔らかいラフレシアであるが、今回はかなりきつい言葉づかいをしている。

「は、はい!!」

 レイラはこう言うと、逃げるようにして聖獣の森を出て、源の元へと向かった。

 その背を見るラフレシアは、誰にも聞かれていない事を良い事に、自身の真意を語った。

「貴女はいずれ私の後を継ぐのだから、皆の上に立つと言う事くらい、慣れておきなさい。」

 そして、まだ自身が植物女皇などと呼ばれる前の頃を思い出した。先代の植物皇も何かがあった時などに、ラフレシアにこのような事をした記憶があり、

(あの方なりの、心配りだったのか?)

 と、心の中で思った。





 その頃、綾小路源の自宅では神司部の面々が揃っていた。何故源の家に居るかと言うと、普段活動拠点にしている学校の家庭科室は暑いうえに、休みの日なので教室の鍵は開いていない。そのため、消去法により源の家に集まる事が決まったのだ。

「それにしても、意外と広いね。」

 江美達は初めて彼の家に来たと言う事で、あちこちを見回しながら思った。東京の富裕層の人間が住む豪邸程では無いが、家の中は広い間取りで構成されており、隅々にまで手入れが行き届いている訳では無いが、品の良さは感じ取れる。

「と言うか、僕の家に集まって何をするの?」

 台所に置いてある冷蔵庫、その中に入っていた烏龍茶を人数分グラスに注いで持ってきた源が、江美に訊くと、

「と言っても、特にする事は無いの。」

 江美は烏龍茶を受け取り、それを飲みながら言った。

「はい?」

 この一言に、会場を提供した源は勿論、呼び出された彩妃や直樹、薫が驚くと、江美は答えた。

「だけど、何かがあって神司部が集合しなければ行けない事態になった時の為に、こうして集まっていると考えれば良いじゃない。」

「そういう物じゃ無いだろ、俺は今日宿題の自由研究に行こうと思っていたんだぜ。」

「俺は家の扇風機を直そうと思っていたのに。」

 江美の言葉に、直樹と薫がそれぞれこう言った時である。

「彩妃、この近くに聖獣が来てる!!」

 彩妃の聖装の中から、イスフィールが言った。

「聖獣?!」

 この一言に、皆が周りを確認した時である。彼らは珍しい物を目にした。

 庭に茂みで覆われた何かが居て、少しずつであるがこちらに接近しているのだ。アニメなどではこのような形で標的に近寄り、その間まったくその事がばれない、と言ったネタが良くあるが、実際に見て見るとその様子は、誰かが接近している事が思いっきりバレバレである。

「……………」

 五人は揃って言葉を失うと、揃って庭に出てその茂みに近寄ると、茂みに手を掛けてそれをどかした。

 そこに居たのは、ラフレシアの命令で再びここにやって来たレイラであった。源とその聖獣には面識のある相手なので良かったが、それ以外のメンバーは、

「敵?!」

 と判断し、それぞれの聖獣と聖装を構えて臨戦態勢を取った。

「て、敵じゃ無いです!!」

 レイラが立ち上がってこう言うと、源はこう言った。

「うん、敵じゃ無いね、多分。」

「多分じゃなくて確実に味方です!!」

 源の言葉にレイラはこう返して、皆に言った。

「とにかく、私の話を聞いて下さい!!」





 その後、源の説得で臨戦態勢を解いた江美達と一緒に家の中に戻ると、五人でレイラの話を聞いた。

「実は昨日、龍皇バロン・サムディ様が、空を飛んで帰る際に何者かの襲撃を受けて、負傷されたのです。」

「龍皇が?」

 龍皇と面識のある源は、負傷と言う事実に驚いたが、他の面子は、

「りゅ、龍皇?!」

「ドラゴン族最強の聖獣?」

「そんな奴の話が出るなんて。」

「しかも、俺達が訊けるなんて。」

 江美、彩妃、直樹、薫の順番に、こう言った。彼らは、龍皇の存在自体は概念のような物で知ってはいたが、こうして実物の事を聞くのは初めてなのだと言う。

「今現在、聖獣の森に暮らすドラゴン族聖獣はどっちに付くかで混乱しています。なぜなら、今一番有力とされている容疑が、ラフレシア様が部下を使って襲撃させたと言う説だからです。実際、今朝も襲撃者が捕まりました。」

 レイラが皆に事態の説明をしようと話を続けたが、

「今度は植物女皇?!」

「植物族最強と謳われている?」

「何か凄いな。」

「一度に二人の大物が出てきた。」

 江美、彩妃、直樹、薫は再び驚き、こう言った。

 その中でレイラは、烏龍茶の入ったグラスを持つ手をワナワナと震わせながら、彼らに訊いた。

「話を続けて良いですか?」

「………お願いします。」

 レイラが怒っていると本能的に判断した四人は、揃ってこう言った。なので、レイラは話を続ける事にし、一回咳払いをすると、

「まあ、結果は間違えなく白です。ラフレシア様はそういう事をする性質では有りませんし、そもそも根本的に龍皇様と渡り合える聖獣は、聖獣の森にはラフレシア様だけです。後は四大聖獣や、他の部族の皇だけです。」

 と、皆に言った。

「戦うならともかく、倒すのに力の差は関係ないと思うけど。」

 話を聞いた彩妃はこう呟いた。彼女自身、上手く隙を見つけて攻撃を仕掛ければ戦力差なんて関係ないのではないか、と考えているからである。

 そんな彼女に、江美はこう言った。

「罠や服毒を用いない体術での暗殺と言うのは、相手を上回る力を持たないと出来ない芸当なの。龍皇様は空を飛んでいたのだから、罠を掛ける事が出来るのは必然的に妖精族だけになる。でも、妖精族では無く植物族のトップに攻撃を仕掛けたんだから、相手は術では無く力で龍皇をねじ伏せた事になる。」

 彼女の説明に、直樹は言った。

「だけど、誰が八部族の中で最強と謳われるドラゴン族の皇を襲撃し、負傷させるんだよ。」

「確かに、一般的な聖獣や、聖獣を知らない人間の近代兵器では無理です。ですが、神司であればどうでしょう。」

 直樹に対し、レイラがこう言った時である。源は理解することが出来た。何故レイラが、自分の所に来たのか、

「つまりそれは…?」

「はい…。」

 源の言おうとした事を、半ば彼の言葉を悟ったレイラが肯定した瞬間である。突然、家の近くで爆発が発生した。

「な、何?!」

 皆が驚く中、江美一人はこう言った。

「ほら、集まって正解だったでしょう。」





 江美の言葉はともかく、源達が揃って家を出ると、そこは現実世界と隔離された世界になっていた。どうやら、彼らの居た場所だけを、決闘空間として切り取られたようである。

 周囲には、城攻めの合図を待つ兵士のようにして、数多くのドラゴン族聖獣が居た。スタンダードなドラゴンの姿を取るファイヤードラゴンから、海を住処にするマリンドラゴン、空を住処にするスカイドラゴンに、地中や地上を住処にするモールドラゴンと、まるでドラゴン図鑑の中身が具現化したかのように、様々なドラゴンが揃っている。姿形はそれぞれだが、ただ一つ共通しているのは、全員が源達を敵と見なしていると言う事である。

「な、ドラゴンの勢ぞろい。」

 江美が目の前に展開される壮大な光景に驚くと、源は言った。

「ラフレシアの指示を受けた神司が龍皇を襲撃した。その思われている可能性を教えるために、ここに来たんだ。」

 この言葉をレイラが肯定すると、

「大義は我らに有り!!やれ!!」

 ドラゴンたちの中でもリーダーのような立位置にいるレッドドラゴンがこう叫び、

「エイ、エイ、オウ!」

 ドラゴンたちはこう叫ぶと、源達に向かって行った。

「しょうがないな。」

 その様子を見た江美がこう言うと、五人は揃って聖装を構えた。

「行くよ!!」

「応!!」

 江美の言葉に、他の四人が呼応すると、皆は聖獣を召喚した。

「燃え上がれ私の相棒!!灼熱亀アーケロンド!!」

 江美がこう叫んで聖装の棍棒の溝にカードをスキャンさせると、大地から炎が吹き出し、その中から、

「我の力は大地の鼓動、灼熱亀アーケロンド、出陣!!」

 ドスドスと怪獣が歩くようにして、アーケロンドが出現した。

「その音色で魅了せよ、天唱霊イスフィール!!」

 一方の彩妃は、ギターに付けられたスロットにカードに差し込んだ。結果、どこから五線譜と音符が集まってイスフィールの姿を形成すると、

「天に響く鎮魂の歌、天唱霊イスフィール、奏参!!」

 イスフィールはこう言った。

 そんな中、普通に自身の聖獣、フレアノドンとギュオンズを召喚した直樹と薫は、二人の不必要極まりない演出を見ながら言った。

「何これ?」

「え、だって、決め台詞って必要でしょう。」

 二人の言葉に、江美と彩妃が揃ってこう言うと、

「調子に乗ってんじゃねえ!!」

 ドラゴンの一団が攻撃を仕掛けようと、彼らに近寄って来た。その様子を見た源は、一枚のカードを取り出し、聖装である大剣のスロットに差し込んだ。

「湧き上がれ、変幻自在怒涛の剣!!水龍騎ドラグーン、召喚!!」

 源がこう叫ぶと、地面から水が湧き出すと同時に中からドラグーンが飛び出し、地に降り立つと同時に、

「流切怒涛の剣勢、水龍騎ドラグーン、推して参る!!」

 と、ドラグーンは叫んだ。その後すぐに、江美達に迫っていたドラゴン族の聖獣を蹴散らして、彼女たちを守った。

「お前もか!!?」

 直樹と薫は、源まで決め台詞を使って召喚を行ったため、自分たちだけ何も言わないで召喚したと言う事で、浮いていると言う事をまざまざと思い知ってしまった。

 一方、ドラグーンが敵側に付いて居ると知ったドラゴン族聖獣たちは、

「な、貴様、我らが皇であらせられる龍皇様の一大事だと言うのに、ドラゴン族を裏切り仇に付こうと言うのか!!」

 と、ドラグーンに言った。

 この一言で、ドラグーンはドラゴン族の聖獣の中でどんな情報が流れているのかを悟り、皆に言った。

「成程、その場に居ない人物を黒幕に仕立て上げれば、皆のベクトルは同じ方向を向いて混乱を避ける事は出来る。でも、襲撃するのは幾ら何でもやりすぎでは無いのか。」

 簡単に言えば、現在ドラゴン族の間で流れている情報と言うのは、

「植物女皇ラフレシア、彼女と面識のある神司、綾小路源が彼女の指示を受けて、龍皇を襲撃した。」

 と、言う事であり、彼らはそれを鵜呑みにしてこうして源を襲撃したと言う訳である。

「それに、俺が命に代えてでも保証する、我が主綾小路源は、穢れなき白であると!」

 ドラグーンがこう宣言すると、ドラゴン族の聖獣たちは、

「奴はドラゴン族の裏切り者だ!!全員まとめてやってしまえ!!」

 と叫んで、一斉に襲い掛かった。

 




 まるで大河の激流を思わせるドラゴンの進軍であったが、皆は全く怯まなかった。

 アーケロンドが怪力で、向かってくるドラゴンたちを次々と放り投げる中、江美は聖装の棍棒を格闘技のようにして構えると、まるで流れるような動きで自らに近寄った相手を翻弄し、一瞬の隙を見つけて思いっきり殴った。これは彼女の実家で開いている道場で教えており、自身も習っている「流拳」と言われる格闘技で、変幻自在な動きで翻弄し隙を見つけて攻撃を加える技である。水のように比喩される特徴から「流拳」と呼ばれている。

 一方の彩妃は、不思議な術で相手を幻惑するイスフィールと背中合わせになり、聖装のギターの弦を弾き始めた。その結果、聖装からは綺麗な音色が響き始め、やがて彩妃が大きく弦を弾くと、聖装は巨大な音波を発して、周囲のドラゴンをあっという間に遠くに吹っ飛ばした。

「彩妃、素晴らしい演奏です。」

 イスフィールが背中合わせになった状態でほめると、

「ギターは唯一の趣味だから、好きな物である分、柔軟さは誰にも負けないよ。」

 彩妃はこう返して、今度はただ弾くのではなく、一定のリズムを持って弦を弾くことで、一つの曲を演奏し始めた。

 音を司る聖獣であるイスフィールの力を受けている影響でか、彼女の演奏する曲には指揮をコントロールする力があるようで、直樹、薫、源達の力はかなり高まっているようで、

「オラ、オラ、オラ!!」

 フレアノドンは、恐竜族特有の狂暴性による破壊力を如何なく発揮してドラゴンを蹴散らし、その背に乗っている直樹は、聖装のハンマーに炎を纏わせてフレアノドンの攻勢を逃れたドラゴンを次々と殴り飛ばした。

「使ってみるか。」

 薫は自身の聖装を見ながらこう呟くと、聖装であるブレードに付いた読み込み機の部分を分離させ、柄に付いて居るバーニアのようなパーツを発動させた。

 結果、パーツからは炎が激しく噴射され、薫の手を離れて飛翔し始めた。そして、近接戦闘であるために、力づくでドラゴンたちを倒していたギュオンズの近くまで飛んでいくと、鋭い切っ先を用いてドラゴンたちを蹴散らし、ギュオンズを支援した。

「感謝する。」

 ギュオンズはこう言うと、飛んできたブレードの上に飛び乗り、まるでスケボーに乗って移動するようにして空中を移動し、様々な方向から迫るドラゴンたちを、銃撃で攻撃した。

 その際、聖装を失った薫は無防備になったが、源の指示を受けたレイラが彼を守り、ドラゴンたちを阻んだ。

 そして、源とドラグーンは互いに背中合わせで立つと、ドラグーンは両手の剣、源は聖装である大剣を用いてドラゴンたちを斬り伏せて行く。

「くそっ、ここまで戦力差があると言うのに、何故こちらが押される!!」

 様子を見ていたドラゴンの一体がこう言うと、

「兵士が四十人居るのと、兵士四十人分の強さを持つのとでは、全く意味は違うんだ。」

 と、ドラグーンは言った。

 この一言を聞いて、数体の聖獣は後ろへと下がり始めたが、ドラゴンの一体が皆に言った。

「皆落ち着け、確かにここに居る聖獣じゃ奴らには勝てないだろう。だが、それは一対一で戦った場合だ。四十人の兵士で四十人分の強さを持つ者を倒す方法を使え。」

 その瞬間、後ろに下がろうとしていたドラゴンたちは、まるで目から鱗が落ちたかのように今までの行動をやめると、標的である源達の周りを螺旋状に回って移動し始めた。

「な、何だ?」

 皆がこう呟くと、ドラゴンたちは一様に口に熱エネルギーを集中させ始めた。火炎を吐き出そうとする前兆である。

「……!!まずい!!」

 ドラゴン族であるドラグーンは、この一連の動きを見て悟った。相手はドラゴン族の編み出した必殺の連携を行うつもりだと、

「でも、これをどうやって防ぐの?!」

 レイラも同じようにドラゴン達の目論見が分かったようで、こう言った。先ほどからイスフィールとギュオンズ、フレアノドンとアーケロンドは得意な飛び道具でドラゴン達を打ち落としているが、一体落としてもすぐに違う一体がその穴を埋めてしまうので、連携を崩すどころか、脱出の為の穴を作る事も出来ない。

「まずい…何も良い考えが出てこない。」

 源がこう言うと同時に、ドラゴン達は飛翔しながら一斉に火炎を吐き出し、源とその仲間たちは揃って火炎に包まれた。





 その後、火炎によって発生した煙を見ながら、ドラゴンの一体は言った。

「他愛も無い。いくら神司でも所詮は人間と数体の聖獣、我らにかなう訳もない。」

「これで、龍皇様の無念も少しは晴らせたか?」

 他のドラゴン達も勝利を確信しているのか、一様にこう言った。

 しかし、彼らは気が付いて居なかった、煙だと思っていた物は、実はまったく違う物であった事を、

「良し、帰ろう。」

 ドラゴンの一体がこう言って、自分たちの暮らす里に帰ろうとした時である。

「あ、あれ。」

 違うドラゴンの一体が、何か信じられない物を見た、と言う雰囲気で言った。それに合わせて、皆も同じ方向を見ると、思わず絶句した。

 煙が晴れるとそこには、木で作られたシェルターがあり、外装を分厚い氷で覆っている。

「まさか、あの煙は湯気だったと言う事か?」

 ドラゴンの一体がこう言うと、氷は砕けて辺りに飛び散り、シェルターを作っていた木は萎れて小さくなった。そしてシェルターのあった場所には、無傷の源達が立っていた。

「植物による守り?」

 一体何が起こっているのか、見当もつかない面子は、この場に居る唯一の植物族聖獣であるレイラを見た。しかしレイラは、

「私は何もしてませんよ。」

 と、皆に言った。

「え、じゃあ誰が?」

 江美がこう言って、周囲を見回した時である。

「勝手かもしれないけど、助太刀しますよ。」

 と、彼らの背後から声がした。そして、皆はその方向を見た瞬間、驚いた。

「松井祐介!?」

「と、名倉小雪に三藤直葉。」

 上から順に江美、源の順番である。そこに居たのは、彼らの影響を受けて自ら神司の集まる集団を形成した「松井祐介」と、その仲間である「名倉小雪」「三藤直葉」だったからだ。

 彼らの近くには、それぞれのパートナーである「ハイドラ」「ビッグフット」「ラベンダードラゴン」が控えている。どうやら、最初にラベンダードラゴンがシェルターを構成する木を成長させ、それをビッグフットの冷気で覆ったようである。

「助かったよ、ありがとう。」

 彼らに江美がこう言うと、

「お礼は後、今は連中を倒さないと。」

 小雪はこう言って、聖装である斬馬刀を構えた。それと同時に、祐介は扇、直葉がナイフを構えると、ドラゴン族の聖獣たちはこう言った。

「こうなったら、全員まとめてやっちまえ!!」

「おー!!」

 そして、ドラゴンが様々な方向から近寄って来た。普通の人間であれば、その迫力で気を失う所だが、彼らは怯まない。むしろ闘争心を高めて、彼らに向かっていた。





 結果として、源達と祐介達の圧勝であった。源が持つドラグーン以外の聖獣を召喚し、直葉もヨルムガンドを召喚した事で、神司側の聖獣が増えた事も理由に挙げられるが、一番の理由はドラゴン族の聖獣全員が、大技を使った後で消耗している所を無理に立ち向かって行った事と思われる。

 祐介は、大量のドラゴンが倒れると言うシュールな光景の中で、適当な聖獣一体に眼を付けると、彼に質問した。

「さてと、質問だ。一体誰がお前達にこうするように言った?」

「はい?」

 彼の質問に、質問されたドラゴンでは無く、逆に源達が疑問に思った。彼らは、混乱を避けるために流された噂を鵜呑みにした聖獣たちが襲ってきていると考えているからである。

 そんな彼らに、祐介は言った。

「何を勘違いしたかは知らないけど、こいつらは綾小路源が龍皇を襲撃されたと、誰かに吹き込まれてここに来たんだよ。」

「誰かに吹き込まれた?」

 皆が思わず祐介の言葉を復唱すると、ドラゴンはこう言った。

「ああ、どこの誰かは知らないが、機械族の聖獣が言ったのさ。龍皇を襲撃した張本人は、この町に住む綾小路源と言う神司だと。」

 この言葉に、ある一つの心当たりを見つけた源は、彼に訊いた。

「そいつさ、見た感じは妖精族だったでしょう。」

「良く分かったな、その通りだ。」

 ドラゴンはこう答えると、力尽きたのか倒れて、眠りに付いた。

 その様子を見た源は、皆に対しこう言った。

「何か大きな事が起こっているみたいだけど、どうする?」

「どうする、決まってるでしょう。」

 彼の言葉に、江美はこう答えた。

「私たちで何とかしよう。」

「うん!!」

 江美の言葉に、彩妃や直樹、薫と言ったメンツは勿論、途中から援軍に現れた祐介、小雪、直葉が同意したので、

「そうだね。」

 と、源は言った。

 その様子を見ていたレイラは、

「分かりました。それじゃあ、私は一旦戻って、ラフレシア様にこの事を報告します。後、彼らはラフレシア様の部屋で縛っておきます。」

 と言うと、彼らの傍を離れて誰かと連絡を取り始めた。知り合いと連絡し、ドラゴン達を連れて行くつもりなのだろう。

 そして江美は、皆にこう言った。

「それじゃあ、私たちで龍皇様を襲撃した黒幕を見つけましょう!」

「応!!」

 皆は揃ってこう言う事で、これから起こるだろう大きな戦いに臨む心を高めた。





 その頃、源達の居る場所とは全く別の場所に、数多くの聖獣が揃っていた。そこに居るのは、以前源と交戦した機械族聖獣「ドロシー」に、角の生えていない甲虫型の昆虫族聖獣、弓矢を持った巨人族聖獣、そしてクジャクの姿を取る獣族聖獣である。

 彼らを仕切るようにして、昨日龍皇を襲撃した少女の姿を取る聖獣が居て、彼女は源達がドラゴン族の聖獣を倒す瞬間を見ながら呟いた。

「これが、正統派聖獣の力……」

 呟く少女に、弓を持った巨人族聖獣はこう言った。

「でも、総合力で見れば強い方はそちらだ。だろう、ポラリス様?」

 巨人族聖獣に「ポラリス」と呼ばれた少女は、こう返した。

「そうだな。彼らに勝利すれば、私の評判も上がるだろう。良い意味でも、悪い意味でもな。」


 間もなく、大きな戦いが始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ